第9節 「駆け抜ける刃」
その夜・・、月明かりもない新月だ。
・・・・・グレゴリウス邸・・・・
屋敷の中の一室、異様な物体が並ぶ実験室の中・・・
レンガの壁の中、カンテラの明かりが薄暗く光っている
その中で家主のセルバンテスが落ち着かない様子でうろうろしていた。
「まだか!?まだあの小娘は見つからないのか!?」
かなり気が立っている様で使用人に叱咤している・・
「はぁ・・、異端審問会の者も隣街はずれの教会で見つけたのを最後に・・」
「・・ちっ!!もういい!下がれ!」
「はっ・・・」
慌てて部屋から飛び出す使用人・・
「後はあの娘がいれば儀式は整うというのに・・」
椅子を蹴り飛ばし、そう呟く。
「あの冒険者どもめ、あんな下賎な輩に頼んだのが間違いか・・、生かしておかん!」
・・・・・
しばらく息巻いていたのだが外が騒がしいことに気づき怪訝な顔をする
やがて使用人が青い顔をしながら駆けこんできた
「セ、セルバンテス様!賊です!!」
「なんだと!!?」
一方・・
セルバンテスが侵入者に気づいた時、
すでにユトレヒト隊一行は屋敷内に進み、存分に暴れていた
「ふんっ、大した警備体制だな。」
愛用している槍「戦女」を肩にトントンと叩きながらロカルノが呟く
「ほーんと、やっぱりあの黒魔術師がメインディッシュかしら・・ね!?」
襲いかかる警備兵を蹴り飛ばしながらセシル
クラークがその兵を受け止め、素早く首をしめ武器を叩いた
「おいっ、あんた。セルバンテスはどこにいるかわかる?」
「しっ、知らない!俺は何も知らない!」
あまりの力量の差にすでに戦意喪失の警備兵
「う〜ん、やっぱ探すしかないかな?おっと、もういいよ。おやすみ♪」
首筋をトンっと叩き、警備兵を簡単に気絶させた・・
「さて、このまままとまって探したんじゃ時間がかかるな。
二手に分かれてセルバンテスを探すとしようかな?」
「いいだろう。ああいう姑息な奴はどこかの隠し部屋に隠れているものだ。
隠し部屋を探せ」
ロカルノが口元を手で覆いながら賛成した
「・・・探すのはいいけど、メンバーはどういう振り分けにするの?」
「そうだな〜。俺とキルケ、ロカルノとセシルでいいんじゃないの?」
「・・どういう基準?」
「戦力をうまく二等分しただろ?」
「つまり、あなたは私達よりも強いから近接戦闘はあなた一人で十分、
ということかしらぁ??」
声に怒りがこもっている・・・・・
「まぁまぁ、苦情なら後で聞くよ」
「ふんっ、憶えてなさいよ!行くわよ!ロカルノ!」
「ふっ、じゃあ何かあったら落ち合おう」
「ああっ、気をつけろよ」
・・セシルとロカルノが廊下の闇へ消えて行った・・
「さて、俺達も行くか?」
「ハッ、ハイ・・!」
ガチガチのキルケ・・・
「あ〜、もうちょっとリラックスしたほうがいいよ、・・・疲れるぜ?」
「・・でもこういうことするの初めてなので、緊張します・・」
「あっ、そうか。それもそうだね」
っというよりかは貴族の屋敷に殴りこみかける人間なんてそうそういない・・・・
「でもクラークさん達はやけに手馴れてますけど・・・・こうしたことって・・」
「(ニヤニヤ)まっ、想像に任せるよ、さっ、しゃべってないで行くぜ!!」
廊下の暗闇に二人は走っていった
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