第八話 「腕に力 心に決意」
・・・・・・・・・ハ・・・・・・カイ・・・ヲ・・・・・
ス・・ベテ・・ノ・・・ハカ・・イ・・ヲ・・・・
(誰だ・・?小生に語りかけるのは・・)
ハカイ・・セヨ・・・ワレヲツカイ・・・
(破壊する・・?小生はそんな事をなど望まぬ!)
ハ・・カイ・・ヲ・・
(黙れ!小生に語りかけるな!)
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「あれっ、サブノック様。お疲れみたいですね・・寝不足ですか?」
主のいないツクヨの道場にてちゃぶ台を囲み三人が朝食を頂く。
ツクヨが王都に向かい出発して数日、何の連絡もないが故に三人は訓練をする事に没頭している
アイゼンも調査に対する協力をすると言いながらもその指示がない事を理由にミズチの面倒を見る事に力を置いているらしい
それでも、一日の内数時間姿を暗ませているところを見ると密かに情報を仕入れている事は間違いはない・・
「うむ・・なにやらうなされてな・・」
畳ちゃぶ台に似合わない軍服調戦闘服を着たサブノックだが珍しく顔色はよろしくはない
・・まぁ、東国の食卓に並べられた物に慣れておらず箸で一つ一つ突き刺して食べているところを見ると食事も楽しめないのは当然なのかもしれない
因みに朝食はミズチが作っており、東国の朝の定番となっている飯、味噌汁、納豆に後はその日取れた物を一品・・っと言ったところで
流石の聖魔も『納豆』と呼ばれる食べ物には顔を曇らせてながらも何とか食べている
「ははは・・ミズチ、若いのぉ・・」
サブノックの隣で胡坐をかきながらまるで自宅にいるかのように寛いでいるアイゼン
この姿をツクヨが見たらまた文句を言う事は間違いない
「へっ?何がですか?」
「いくら『あくま』と呼ばれる種であってもまだ若い男、加えて大陸には美人(・・であろう)妻を残しているんじゃ。
股間の剣も鞘に戻れずに疼いておるのじゃよ」
お下劣中年剣士、ここに有り・・
だがミズチは何の事か判らなく首をかしげている
「???・・股間の・・剣?サブノック様、暗器でも携帯しているのですか?」
「・・アイゼン殿・・」
自分に振られて困ってます・・っと目で訴えているサブノックさん。
もちろん、欲求不満のせいではないので良い迷惑である
「これ、ミズチ。御主も幼き面影を残しおるが成人した女子ぞ?異性の体の事を知らないでどうする?」
「・・え・・あ・・すみません・・」
何故怒られているのか・・ミズチには到底理解できるはずもない
戦巫女として育てられたが故に異性に興味を持つ事よりも任務をどうこなしていくかのほうが大切、
周囲よりも実力で劣っていたミズチならばなお更であり男の股間に何があるのかなどわかるはずもない
「ううむ・・対魔組織というのは女子に抱かれ方も教えんのか・・。
いかんな、実にいかん!サブノック殿!ミズチに『男』と言うものを教えてやれぃ!」
「・・遠慮しておきます。万が一・・否、億が一妻の耳に聞こえれば小生は生きておれませぬので・・」
「・・ううむ・・、恐妻家か・・。御主も苦労しておるのぉ・・」
「心遣いありがとうございます・・」
その言葉だけは心の底から礼を込めて言う。
清楚で都市一と呼ばれた妻も今では見た目はさらに美しくなるものの中身は色んな意味で変わっていった・・
良く言えば逞しくなった・・のだが・・
一度その変貌ぶりを気にしたサブノックは村の既婚女性に相談した事があるのだが結局は「女から母になった」っという説明に終始したとか・・
「それはそうと・・大丈夫ですか?サブノック様」
「うむ・・何者かに語りかけられるような夢を見ただけだ・・・。まさか・・っと思うけどな・・」
「余り深くは考えん事じゃぞ、サブノック殿・・。まぁ調子が悪ければ休めばよかろうて。
ミズチは飯の片付けが終われば鍛錬じゃ。
ツクヨからの連絡もまだないし国内で不吉な動きもない・・実戦に耐えれるだけの力を今の内につけておけ」
「はい!」
茶碗片手に元気に返事をするミズチ、いつもは冗談をかます老人も剣の事となると別人のような気を放つ・・
それを感じ取った時点から彼女の鍛錬は開始されるのである
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
軽く朝食の後片付けを終わらせてからその日の訓練は本格的に開始される
サブノックは自身でウォームアップ、アイゼンは軽く体をほぐす程度だが
ミズチは彼らと同じようにいくわけにもいかず特別メニューを用意されていた
それは実剣を持っての素振り千回
なまじの剣士ならばそれだけで悲鳴を上げるのだがこれはアイゼン流剣術の準備運動として行われていたので
それを聞いたミズチもやる気を出して数日前から慣行している
っとは言うものの・・
「・・九百九十八!」
「九百九十九・・!!」
「千!・・ぜぇ・・!ぜぇ・・!!」
それが終わるのは昼前、初日に比べてみればまだマシだがそれでも腕がパンパンになっており終了と同時に地面にヘたれ込む
因みにその間アイゼンとサブノックは二人して組み手・・。
剣を持っての訓練はしないもののサブノックの攻撃は一度たりともアイゼンの体には届かなかったという
「うむ、しばし休むが良い。・・初日に比べたら多少は早くなったものじゃな」
「・・す・・少しは・・慣れ・・た・・みたいです・・」
縁側で倒れながらミズチが唸る・・本人はそう言うもののすでにくたびれている
「まっ・・やり始めて数日でこの時間ならばよくできているほうじゃ。
千回気合を込めて剣を振る、これこそ刃に魂を込めるために行う業じゃ」
「あの・・お弟子さんは・・もっと早かった・・ですか・・?」
「・・う〜む、あ奴は確か・・今日のミズチの半分の時間で終わらしておるな。それでもわしより遅いがな♪」
「そう・・・ですか・・」
実力の差にミズチ、思わずホロリと涙を流したり・・
「まっ、休んでおれ、さて・・サブノック殿。そろそろ剣を持っての訓練ともいこうか」
軽く肩を回しながらそろそろ温まってきた老人は剣気を込めながらサブノックに言う
「・・わかりました。では・・」
得物を片手に一礼するサブノック
アイゼンとサブノックが手に持つ得物はいつも使用しているものと全く同じであるが刃を潰している訓練用の刀
アイゼンが使用する刀なぞ訓練用に刃を潰した代物はいくらでもあるがサブノックの斬馬刀ともなると同じ物は多くはない・・
だが、ツクヨの道場の武器庫にはかつてゼンキが訓練にしようしていた斬馬刀が納められていたがために
サブノックはこれはありがたいとばかりにそれを使用して訓練に挑んでいる・・当然、本人の未許可・・
レプリカである斬馬刀の形状は本物の『悪滅』と瓜二つ、手に持った感触から重さまで本物と同じようである
「しかし・・握れば握るほど・・本物の『悪滅』と同じですな・・」
構えながらその得物を見つめる・・、刃は潰れてこそいるのだがこれだけの質量があるならば相当な鈍器ではあるのだが・・
「当然じゃ。そりゃわしら四天王が行動を共にしていた時にあ奴が斬馬刀を処構わず振り回しておったが故にツクヨが突っかかって造られたものでな。
ゼンキを納得させるがために重さから握りの拵えまで全くの同じよ」
「・・なるほど・・。それ故に遣う必要がなくなった今、造らせた責任でここに保管しているのですね」
「・・・・・・・・、まっ、それもあるのじゃが・・あ奴も不器用故・・っというのが一番大きいであろう。
さて、無駄話はここまでじゃ。幾ら刃を潰しておろうがそのような得物、当たってやるわけにもいかぬ。そこそこ本気で参るぞ」
「手加減は無用です・・いざ・・」
静かに構えるサブノック、対しアイゼンは軽く腰に刀を下げて握りに手を添える
そして先手必勝とばかりにサブノックが深く切り込むがアイゼンは紙一重でソレを回避しながらその軽く踏み込み右腕で肘打ちを出す
鳩尾に軽く入りサブノックは少しよろめくが・・彼が次の動作に入る前にアイゼンはそのまま素早く腕を戻しながら抜刀!
無造作に放たれる一撃は鞭のようにしなった銀の軌道を残しサブノックの腹に入る!
刃こそ潰しているが金属である事には変わりがなく通常ならば肋骨を粉砕しかねない威力なのだがそこは聖魔。
唸りながらもすかさずこれ以上の追撃を放たせないために蹴りを放ち牽制する
鋭い蹴りにアイゼンは軽く飛びのき再び刀を納め抜刀の型を取る
踏み込み式の居合いと直感したサブノックは真っ向から迎え撃ち駆け込みだす!
キィン!
一瞬にして甲高い金属音が轟きアイゼンから放たれた神速の居合いとサブノックから放たれた剛の剣がぶつかる!
力は五分、二つの刃はぶつかり合ったままピタリと止まってしまった・・が・・
「・・ふふ・・見事・・」
軽くアイゼンが笑う・・。見ればアイゼンの刀には無数の皹が走っており地金がやられているのが一目でわかる
「いやっ、これは得物の差です。剣の腕ならば小生など足元にも及びません」
「何を言うか。それだけでかい物を持ちながらもわしとやりあったのじゃ・・それ相応の腕はあるわい・・
それに、初手からしてまともに受けていれば骨なぞ軽く粉砕されておろうしの」
「恐れ入ります・・」
「まっ、居合いの間合いがちと掴めていないようじゃの。・・・、まぁあの漢も防御なんぞ二の次じゃったから仕方あるまいか・・」
ニヤニヤ笑うアイゼン、彼の心の中では懐かしき戦友と剣を交えているような気になっているのであろうか・・
その様子をへたれこんでいたミズチは毎度の事ながらキョトンとしながら見つめている
「・・すごいですねぇ・・」
「わしもサブノック殿もそれなりの修羅場を潜ってきておるからの。
それに比べてみれば男に抱かれた事もないミズチなどは赤子同然よ!」
「・・アイゼン様、何か違っていませんか・・?」
この老人の言う事を鵜呑みにしてはならない、ミズチは心の中でそう固く決めるのであった・
「何を言うか、性も剣も表裏一体・・。いかに異性と交わるかが剣の上達につながるのじゃ」
「・・そうとなればアイゼン殿は・・やはり・・随分ご体験を・・?」
「・・・、剣の道に女は不要よ・・」
「「・・はぁ・・」」
女性遍歴は自信がないアイゼン、早速に前言撤回をする・・
ツクヨがその場にいたのなら恥話の一つでも始めていたかもしれない
「さて、そんな事より・・ミズチ、少し相手をしてやる。腕の疲労も符で治っていたであろう?」
疲労に倒れながらも護符を両腕に貼っていたミズチ、それにより疲労回復を促進していた。
そうでもなければ訓練にならないのだ
「はい!お願いします!」
アイゼンの言葉に起き上がり深く一礼するミズチ、伝説とまで言われた剣士に手ほどきを受ける事が真に名誉な事と瞬時に気合を入れなおす。
その素直さをなにげにアイゼンは気に入っている
・・まぁ彼の弟子の中で礼儀正しいのは隻眼の彼女だけなのでそれも仕方ないといえばそうなのだが・・
「全力で参れ、少しでもかすれば合格・・っと言ったところかのぉ」
そう言いながら使い物にならなくなった刃を鞘にしまいながらそれを腰から取り出し軽く振り回す
鞘でミズチの攻撃を受けようというのだ
「・・はい!」
対しミズチは足首に『建御雷』背には『森羅』を装備しており決戦装備とも言える
そのままアイゼンの前に立ち深呼吸を一つしながら目を瞑る・・。
そして音もなく彼女の背より現れる真紅の四剣『鳳雛』、何度も繰り返した成果なのかもはや自由自在に操れるようだ・・
「では・・・参ります!」
キッと表情を引き締め軽く命じるとともに四剣は散らばりそれぞれが別の軌道を描きアイゼンに襲い掛かる!
対しアイゼンは鼻をほじりながらヒラリヒラリと・・
襲い掛かる剣撃はかなりの鋭さを持っているのだが流石に剣の達人が相手では物足りないらしい
それはミズチも百も承知、避ける動作にあわせて『森羅』を抜き気合一番に切り込む!
『建御雷』の加護の甲斐あってその踏み込みは以前の比ではなく獣人戦士並の特攻を見せている
だが・・
「ほ〜れ、もうちょい踏み込まんかい」
アイゼンは顔色一つ変えずに振り下ろされる一撃をギリギリ当たるか当たらないかの間合いで回避する。
渾身の一撃は刹那にてアイゼンに見切られていたのだがミズチはそのままさらに踏み込み今度は天に向けて大振りに切り上げる
通
常ならば確実に相手を捉えている間合いなのだが相手は剣の達人、ヒラリと華麗に回避する
「っと・・!ふっ・・!」
飛びのいたアイゼンの足が地に付く前に宙に浮いた真紅の四剣が包囲していた
宙ならば動きは制限される、渾身の一撃を放ちながらも『鳳雛』を牽制、かつ必殺の一撃へと利用したのだ
彼が地に足を付く前に一撃でも掠らせる、ミズチはそう心に念じながら四剣にてアイゼンを襲わせる
しかしアイゼンがニヤリと笑った瞬間・・
フッ!
その姿が瞬時にして消えて四剣を空を切りながら地面に突き刺さった
「えっ・・!?」
完全に捉えていたはず・・ミズチが呆然とした瞬間に目の前にアイゼンの姿が音もなく現れ彼女の額にピシッと軽くデコピンをした
「これで一本じゃ・・。中々見所はあるぞ?『鳳雛』の応用はわしも肝は消えたわえ」
そう言いながら豪快に笑うアイゼン、その様子からして肝が消えたとは思いがたい・・
「ですが・・かすり傷一つでもつけるつもりでしたが・・」
「たわけが、わしの弟子でもこのわしの相手などまだまだ勤まらんもんじゃ。
掠らせる機会を見つけられただけでも上出来じゃて」
ミズチの頭をポンポンと軽く叩きながら笑うアイゼン・・、
彼にしてみれば僅かであろうとも手傷を負う事は剣士としての負けに等しい
・・そうした考えを持っているがために例え相手が落ちぶれ戦巫女でも実戦訓練となれば回避に関しては遠慮はしない
「・・お見事です。アイゼン殿・・」
「なぁに、朝飯前じゃよ・・」
「ですが・・、姿が全く見えませんでしたね・・。ほんとすごいです・・」
本人的には確実に捉えたと思っていたがためにその超人的な動きには尊敬してしまう
「・・ああ、あれか・・。まっ、剣士の技ではないのだがな」
「・・っと言いますと?」
「戦友に教えてもらった忍の技での。人の目で捉えられぬ速さで踏み込む術と空を駆ける術じゃ。
本来相当な訓練を積んだ忍でなければ習得できんのじゃが〜、なぜかわしにその資質があったようなのでついでに習得したんじゃよ」
事も無げに言ってのけるアイゼン、それが全然嫌味っぽくないところが彼の持ち味なのかもしれない
「そうなんですかぁ・・、あっ・・戦友で忍となるともしかして・・」
「左様、『不屈のリュウビ』じゃよ」
「うわぁ・・すごいですねぇ・・。あの伝説の忍ですか!」
英雄の話にはいかなる状況にも目を輝かせるミズチ、ある種大したものではあるが
毎度の事ながら異国の話についていけないサブノックは耳を傾けるので精一杯だ
「おおっ、サブノック殿にはわからぬ話じゃな・・。以前も言っていた四天王の残り一人じゃ・・まぁ、行方不明なんじゃがな」
「なるほど・・。ですが、『しのび』とは・・一体・・?」
「国に使える諜報員みたいなものですね。情報収集や工作、果ては暗殺なども得意として『忍術』と呼ばれる独特な術を扱う人達です
私達戦巫女が裏社会で人外を相手にするのに比べて忍は裏社会で人を相手にする組織ですね」
一応裏社会なミズチが説明する、これもカムイ独特なモノなので大陸から来たサブノックが知るよしもないのだ
「・・なるほど、そのような職があるのですね」
「まっ、独特なモノじゃからのぉ・・。それでリュウビというのはわしらが主に仕えていた忍での、一流派の頭領をしていた者じゃ。
真面目で姫一筋の堅物じゃったが腕は確か。その身のこなしを捉える者は我ら以外はおらなんだ」
「・・それほどのものが行方不明ですか・・」
「・・・・・色々あるんじゃよ・・奴は純粋過ぎたのじゃな。まぁ・・生きている事には違いあるまい。
大方、大陸に渡って身を偽りながら今もどこぞの国の間者として働いておるのではないかな」
勝手に予想するアイゼンだがその予想は見事に的中しており、
かつてリュウビと呼ばれていた老忍は第二の名前を名乗り、今も指導に当たっている
「そうですか・・・。それだと四天王は本当にアイゼン様とツクヨ様だけになるんですね」
「世の全ては盛者必衰の理に成り立っておる、そんなもんじゃよ」
軽く笑いながらそう言うアイゼン、飄々としてはいるもののこの老人、確かに達観はしている
少々昔話に華を咲かせていた三人だが・・
「アイゼン様ーー!!」
ツクヨ宅に対して叫ぶ男の声にほのぼのとした空気は一気に緊迫したものへと切り替わっていった
・・・・・
その声の主はカムイ王タケルが派遣した者であり、調査の結果を報告するものであった。
それによると全国に該当する遺跡を調査した結果それに当てはまる物が一箇所だけあったという
宮廷に仕える陰陽師と武士数名で派遣されていたのだがその遺跡の近辺に立ち入った瞬間に異形に襲われかかったのだが
なぜかその異形は牙を向けずに威嚇するだけだったという。
異常な行動に加え王からの「深追いは厳禁」という申しつけがあったがために一行はすぐに退却しそれを報告したらしく
他に有力な情報がないということでツクヨやタケルはそこが目標と断定し使いを走らせたのだ
「・・・ふむっ、ご苦労じゃな。では・・その遺跡の近くにて落ち合う・・おぬしはその事をツクヨに伝えてくれ・・
もっとも、あ奴ならばわしの考えなど看破しておろうがの」
男の話を聞き終えたそういうアイゼン、威厳を全面的に押し出しており使いの者を圧倒させている
男もおそらくはアイゼンの事をよく知っているらしくやたらと丁寧に扱っていた
「かしこまりました。それで・・我らはいかに援軍を用意すれば・・」
「無用じゃ」
「・・はっ?」
ピシャリと言うアイゼンに男の目は丸くなり何が何だかわからない御様子
「これよりの戦は間違いなく人外の異形が相手、平和で少しボケて来ているカムイの軍勢を動かしたところで悪戯に死者を増やすのみじゃよ」
「し・・しかし!それでは・・アイゼン様とツクヨ様のみで・・世を滅ぼす怪奇に立ち向かわれるのですか!?」
「わしらだけではない、そこにいる三白眼の男と青臭い巫女もそうじゃ。それだけで十分、タケルの坊ちゃんにも強く言っておいてくれ」
「・・は・・はぁ・・」
そうとは言われても・・っと呆然とした男の顔には正しくそう書かれている
「案ずるな。英霊達の夥しき血にて平静を取り戻したこの地・・再び戦乱などに巻き込ませるかよ。」
「・・かしこまりました。そう、ご報告いたします・・ではっ、これにて失礼いたしまする!」
「おう、道中転ぶなよ」
神妙な面持ちで一礼し早速にカムイに向けて旅立つ男にアイゼンは軽く声をかける。
男も歴戦の勇者の言う事を信じる事にしたのか深く一礼をし颯爽と走り去って行った
「・・さて、では旅立つか。わしらもぼやぼやしていられんしのぉ・・」
ゆっくりと起き上がるアイゼン、そこにいるはすでに臨戦態勢に入ったが如く鋭き眼光を放つ剣士
「かしこまりました、ではすぐに準備をします」
同席している二人も決戦を予感しつつ、戦場に赴く準備に取り掛かるのであった・・
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