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「デビルソース」



「ひさびさに一人で街にくるのもいいわね〜♪」

のんびりと伸びをして小さな町の表通り、沢山の露店が並ぶ中、
短いデニム短パンにヘソだしな白シャツを着た絶世の美女セシルが歩いている
特に仕事もないユトレヒト隊なわけで一人ぶらぶら気分転換とのことだそうだ
「ロカルノはかまってくれないし、眼鏡侍はあの二人とイチャイチャしているし〜、面白くないわねぇ・・」
ミィとじゃれあうにも最近あの猫少女と共に暮らすこととなった龍少女メルフィと仲が良く
その間になかなか入り込めないセシルだったのだ
そんなわけで街で伸び伸び探索に出発、町に巣食う裏世界の人間には戦々恐々、彼女に世話になっていた獣人女性には
股間ムズムズな状況なのだが本人は特に目的があるわけでもなく
いつもは軽く挨拶して素通りする通りをじっくりと見て回っている

「やぁ、セシルさん。今日はどうしたんだい?」
色んな店が立ち並ぶ通りで誰もが彼女に挨拶をする
それほどまで彼女は人気があるのだ。ただ、国にその名を轟かせている金獅子と言われる騎士としてではなく
気さくで町を守ってもらっているお姉さん騎士として・・っという人がほとんどだったりする
「まぁ特に用事はないんだけどねぇ」
頭の後ろに腕を組み苦笑い・・
「ははっ、ユトレヒト隊が暇なら世の中平和ってことだ!」
「そうなりゃ私たちの生活が厳しいわよ〜」
店番をしているおっちゃんの言葉にも笑顔で返すセシル、これが裏ではさまざまな悪事(?)を働いている女とは
ここにいる全ての人間は夢にも思わないだろう
「それはそうとして・・おばちゃん、何作っているの?」
普段余り食品露店通りを通ることがあまりないセシルなだけに街頭調理しているお菓子に目が向いてしまう
「ああっ、木の実を揚げた物にベリージャムソースをかけた物だよ。食べてみるかい?」
「へぇ〜、余り見ない物ねぇ」
「キルケちゃんは皆で食べるお菓子が好きだからね。こういうのは通りで立ちながら食べるんだよ
はい!」
気前よく紙の皿に盛り付けるおばちゃん、一口大の丸い木の実に赤紫の甘いソースが掛かっており
爽やかな香りがセシルの鼻を刺激する
「ありがと〜!はむ・・・、・・・美味しい!」
「そうだろ!あたしの自慢さ!」
「木の実ってこんなサクサクしているのねぇ・・」
「ああっ、クルミに近い種だからね。揚げるとさらに触感が良くなるんだよ。
そして決め手がこのソース!」
「うん!香りもいいし甘すぎないのが私は好きねぇ・・こういうの難しいんじゃない?」
「まぁそうでもないよ?基本は好きな香りのハーブを粉末にしてハニーソースと一緒に煮込むんだよ。さらに甘みをまろやかに
するのに色々と果物をすり潰して煮込むと出来上がりさ♪」
「へ〜!!簡単!私でもできそう!」
「自分なりの味が出るもんだから、やってみるといいよ!」
「ありがと!今度試して見るわ!!そんじゃ!」
「がんばりなよ!」
上機嫌で手を振り館へと戻っていくセシル、
・・この露店のおばちゃんは自分の犯した罪を知らない・・

・・・

館に帰ってきたセシル、おばちゃんの話にすっかり感化されて向かうは
一直線に厨房に・・
しかし

ガチ・・ガチガチ!!

「・・な・何?何で厨房に鍵がかかっているのよ?」
普段厨房への入室を厳しく監視されているために近寄れないセシル、故に施錠されていることに今初めて気付いた
「それなりに剣の腕がある集団なのにコソドロが怖いの?まったくだらしがないわねぇ〜」
呆れるセシル・・しかし、ドアに貼り付けてあるメモ用紙を見ると途端に表情が変わった
その内容は

”セシルの入室を禁ず。全員あいつがここに入らないように監視すること”

・・っとある
「・・・へぇ・・・そういう事なのぉ・・それだったら私にも方法ってものがあるわねぇ」
おもむろにつぶやきつつドラノブに再び手をかけると
ゴキ!
無理やりに回りドアノブを破壊・・
「この程度の鍵で私を止められるとでも思って?おほほほほ・(べギュ!)もげっ!!」
「・・ドアを壊すな」
女王様笑いをするセシルを後ろから踏みつけるは彼女の保護者(?)ロカルノ
「いっ!いつの間に!?」
「今帰ってきたところだ・・それよりも厨房に何のようだ?」
「え・・あ・・・ああ、飲み物が欲しかったのよ〜♪(オロオロ)」
料理したい・っと言えば確実に捕縛されて数日監禁されるのが目に見えているために
きわどい嘘をつくセシル
「・・・ほぉ・・?」
対し流石に彼女の相方をつとめているロカルノ、そんな言葉など全然信用していないご様子
「な、何よ!お茶飲みたいから厨房に入ろうとしただけ!
それなのに私だけ入れないなんて・・しどいわ(ヨヨヨヨ)」
「・・ふぅ、まぁよかろう。茶なら私がいれる・・居間で待っていろ」
「・・は〜い(ニヤリ)」
「何がニヤリなんだ?」
「何でもない何でもない!」
「・・、まぁいい。ドアの修理はクラークに頼むとして費用がお前が出せ」
「ええ〜!!!」
今月の彼女の財布の中身はまた厳しくなりそうだった

・・・・その深夜・・・

実は少し声がもれているこの館、クラークとキルケ、クローディアのその行為が終わったのを見計らい
セシルはまるで某夜行性な台所の悪魔のようにカサカサと動き出し厨房へ・・
しかし、1Fにはアミルとメルフィの部屋がある
厨房から多少離れているとはいえ、深夜に厨房の灯りがついているのは怪しいと思ったのかすぐさま部屋へとカムバック
「ふふふ・・予想通り、予備の鍵はまだしていなかったわね・・」
部屋に戻り安堵の息をもらすセシル、彼女の部屋は予想通りとでもいうかそこそこ散らかっており
机の上には彼女の毒牙にかかった欲求不満な獣人妻からの感謝の手紙が山ほどあったりしているが
それ以外は普通にだらしがない女の部屋のようだ
「私も美味しいベリージャムソースが作れれば料理が得意だってことアピールできるわね♪」
上機嫌に床に厨房からかっさらってきたハニーソースと果物を置く
これだけを見ればよほどのことがない限り良い物ができそうなのだが
「加えて、セシル様直々に選抜したハーブを混ぜれば出来上がり♪」
町からの帰り道に速攻で摘み取ったハーブを広げる・・・が、彼女にとってのハーブの種類の認識が少しおかしいのか
そこにあるのは全て食蟲植物の類・・
蟲を呼び起こすために甘い匂いを放っているのをハーブと勘違いしたのかどうか・・それは誰にもわからない
「個人の部屋でお料理できないと思っているのが甘いわよ〜♪」
鼻歌まじりに荷物の山からがさがさと取り出したのは小さな箱が二つ
「・・冒険者としての必須アイテム、それはつまりこんな部屋でも使える事を意味する」
彼女が持っているこの二つの物はどちらも少し大きな街にいけば手に入るキット

一つは簡易製薬キット
フラスコ、浄水器、乳鉢、保存用携帯試験管のセットとなっており薬草の知識さえあれば緊急事態には
非常に頼りになる代物、秘境探検などに行く冒険者にとっては必需品とも言える物
もう一つは簡易発炎符
火を起こすのに簡単にしたもので特殊加工された布に魔方陣が描かれた物。魔力をこめると火を起こすことができ
非常に便利。だが、魔素に反応して誤発することもありひらひらした布にはしっかりとした箱に保管されているのが特徴

っと場数を踏んでいる冒険者が愛用する物でありセシルも一応に持っているわけなのだ
そんなわけで鼻歌まじりに食蟲植物の花を乳鉢に入れてすりつぶしていくセシル
どう考えてもありえないドス黒い色が出ているのだが彼女の感覚は無問題
甘い匂いだけが出ているので無問題
「すりつぶすのはこのぐらいにして〜♪おつぎわ〜」
発炎符の上に三脚と厨房から持ってきた小さな鍋を置き火をつける
鍋にはハニーソースがなみなみと注がれて部屋にさらに甘い香りが広がっていく
「うう〜ん♪いい香りぃ♪」
上機嫌でポコポコと煮詰まっていくハニーソースを見つめるセシル
そして
「ルルルルル〜♪」
歌を口ずさみながら食蟲粉を入れ果物を握り潰して放り込む
・・もはや甘味料を作っているというよりかはタチの悪い製薬実験のようにしか見えないのだが
彼女は至って上機嫌
黄金色なハニーソースが粉によりどす黒くなっても無問題
だって甘い匂いがするから
「い〜い香り♪私ってお菓子作りの才能あるかもぉ♪」
煮込みながらお菓子職人になった気分になるセシル、館の面々がいれば全力で否定していただろう
「よし!もうちょい煮込んで完成ね♪味見は明日キルケにお願いしよっと♪」
ついに凶行がクライマックスを向かえ
その夜、キルケは何故か食中毒にあった夢を見てうなされたとか

そして翌日

いつもの如くにユトレヒト隊の生活ははじまる
「フンフンフ〜ン♪」
厨房にて昼ごはんの準備をしているキルケ、最近では料理の腕も一級になってきており人数分の昼食も
彼女一人で楽々こなせるようになってきた
メイド服にエプロンとかなりその筋には生唾物の服装でスープの加減を見ている
そこへ
「キルケ〜♪」
ふらりと入ってくるセシル・・鍵は壊れたまま・・
今日の昼間にその作業をすることになっているのだ
「セ・・セシルさん!?」
セシルにとって入室禁止スペースである厨房に楽々入ってきたことにキルケ、大いに焦る
「・・どしたの?」
「いえ!なんでもないですぅ!!」
「そう?あっ、そだ♪ね〜、ちょっといい♪」
上機嫌なセシル、その笑みが悪魔のようにキルケには見えた
「にゃ・・にゃんですか!!!?」
「私ねぇ、町の露店のおばちゃんに美味しいベリージャムソースの作り方教えてもらって作ってみたの♪」
「!!!!」
”作ってみたの”の言葉にキルケ、大口を開けて凍りつく
「今日のおやつに試して見てよ♪き〜っと美味しいから!」
「ど・・どどどどどどどど・・どんな物ですか!?」
「良くぞ聞いてくれました♪ジャン!」
取り出したるは試験に入った漆黒でドロドロした液体。・・ブルーベリーソースにも見えないこともないが
異常なほどに黒い
「・・・・・あ・・・の・・」
予想以上の破壊的な見た目にキルケは言葉を失う
「凄い甘い匂いがするの♪昼食のデザートに使って!」
そういうと無理やりキルケに試験管を渡して満面の笑顔のまま厨房を後にするセシル
「・・・・・・(ガタガタブルブル)」
渡された未知の液体を恐る恐る開けてみる
すると

ぷあぁ・・・ん

「ううっ!!?・・何・・この匂い・・」
確かに甘い香り・・だが少し異常なまでに甘い香りがする。しかも鼻についてどこか不快感をおぼえるようなモノ・・
咄嗟にキルケは鼻をつまんでそれを防ぐ
そして流しに野菜の皮を置きほんの一滴、液体を垂らす

ジュワァァァァ

とたんにあわ立つ野菜の皮・・それが治まるころには液体が落ちた地点はすっぽりと穴があいていた
「セシルさん〜、また生物兵器ですよぉ・・」
甘味料ではなく消化液・・そんなものを使うわけにもいかずにキルケはオロオロしだす
「どうしよぉ・・、うう・・」
そこに
「キルケ〜♪」
セシル、再び。キルケの顔が再び凍りつく
「あら、やっぱり良い香り〜って・・なんで鼻つまんでいるの?」
「ひゃ・・ひゃんでもないです!!!」
この匂いが良い香りといっているセシルが同じ人とは思えなくなってきたキルケ
「そう?味見なら私もするわね♪テーブルに座っているから出来上がったら言ってね♪」
・・キルケ、出口を奪われる・・
「は・・はい・・」
そういうと壊れたドアを閉め厨房の火を全て消す
「・・(はぁ〜!はぁ〜!・・ど・・どうしよう・・?)」
必死に冷静になるキルケ。そして妙案はいつも突然やってくる
「!(そういえばクラークさんが庭装備していたはず・・厨房の窓から・・何とか出ていけば・・)」
隅っこにあるキルケでもギリギリ通れるかどうかぐらいな窓、それに全てを託すキルケ
「・・(で・・でも、逃げている間にまたセシルさんが入ってきたらダメだし・・そうだ!)」
食器の棚の一部を取りドアの前に置いて突っ返させる
これでよしと深呼吸を一つしながらキルケ、大脱出・・
日頃クラークとクローディアに剣の訓練をしてもらっているだけに幼さが残るとはいえ彼女の体はかなり
鍛えられている
コスプレを良くするので華奢に見られてしまうのだが実は身体能力はかなり高まっているのだ
そんなわけでセシルに気付かれないように窓から脱出を試みる
どす黒い劇物も持参になんとか身体を潜らせでんぐり返ししながら脱出成功、小柄な体躯が始めて役に立った瞬間だ
そしてキルケは厨房の方を振り向き異常がない事を確認した後一目散にクラークの元へと走っていった

・・・・・・

「やれやれ・・この時期は雑草の生えるスピードが違う」
館で起こっている事件など露知らず、館から隣接する教会までの広いエリアの草抜きをしているクラーク
一人だとさすがに滅入ってくるのである程度距離を置いたところでクローディアが襷掛けをして
草を引っこ抜いている
こうした雑用などは意外に体力を使うので二人が子供の頃から身体を作るのに行ってきた事、
今でもその精神を忘れずにこうして庭掃除に勤しんでいるのだ
「お〜い!クローディア!少し休憩しようか!」
「わかりました!」
関節を鳴らしながらクローディアと合流するクラーク、これから冷たい水でも飲んで一息つこうとした時

「クラーーークさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」

必死の形相で駆け込んでくるキルケ・・目には涙を浮かべている・・
「キルケ・・おい、どうした?」
「セシルさんが!セシルさんがぁぁぁぁぁぁ!」
アタフタしているキルケ・・それを見てクローディアは
「まさか・・悪戯を・・」
頬を赤らめてそう呟く、それにクラーク
「なんだと!あのケダモノ女!ついに俺の女にまで!!!」
珍しく大激怒・・・
「あ・・いや・・怒ってもらえるのは嬉しいですが・・違います」
「あ・・そ・・ってか何だよ、その試験管」
落としてはならないと言わんばかりに必死に掴んでいる試験管、それを見るだけでクラークには凄まじく嫌な予感がよぎってきたり
「・・セシルさんの・・作品です(ヨヨヨ・・)」
「「・・・・・・」」
その一言で全てを察知、産業廃棄物の何倍もタチの悪い劇物を握らされているのだ(?)
「これを、今日のお昼のデザートに使ってくれって〜・・」
「あいつ・・俺らを確実に殺す気だな・・」
「兄上、かねてから聞いていますが・・それほどまで酷いものなんですか・・?」
「クローディアさん、これ、野菜の皮を消化しました・・」
「・・・・」
キルケの衝撃的な発言にクローディアは冷や汗を一つ流している
そこへ

「キルケ〜!!!調理ほっぽりだしてどうしたのぉぉ!!」

上機嫌の悪魔が走ってやってくる、それにキルケの顔が大いに引きつってしまうのだが
「お〜い!セシル!こっちゃこい」
「何?あっ、私のソースじゃない♪そうかぁ!調理する前に皆で味見していたわけね!」
セシル、大いに勘違い
「そんなところだ。ついでにお前も舐めてみろ・・ほれ!」
不意をついてセシルの口に試験管を突っ込ませ半分ほどを一気に喉に通らせる
・・正しく剣士ならではの一瞬の早業・・
あの甘ったるい匂いが漂う前に
「・・・・あ・・ら・・」
セシル、轟沈
「なんだこの匂い・・すごいなぁ・・」
「それにセシルさんが一発で昏睡させるとは・・」
改めてセシルの料理の腕前を危険視する二人
そして半分ほど残った劇物を見て
「・・全部こいつに飲ますのはまずいか・・」
「ですね・・」
「しょうがない、人里離れたところに捨ててくるか。二人はこいつを解放してやってくれ
・・死にゃしないだろうからな」
試験管に栓をしてクラークは思案にくれながら脅威の甘味料とともに山へと入っていった

・・・数日後・・
プラハから少し離れたところで人害の魔獣が大量死しているのが発見された
付近は魔獣のせいなのか草木一本すら生えておらない荒地と化しており
その中に何故か試験管が一本落ちていたらしい
ハイデルベルク騎士団ではこの事件の調査を続行しているが何が原因なのかついにはわからなかったという
そして
「う〜、お腹痛いの〜!」
「自分で作ったものだろう、我慢しろ」
「なんか痛んでいたのかしら・・こんなので下痢なんてぇぇ・・」
「・・(・・下痢で済むところがこいつらしいか・・)」
「何よロカルノ!苦しんでいるか弱気女性にさげすんだ目をして!」
「仮面で視線は見えないはずだが・・」
「愛の力でお見通しよ!」
「・・ふっ、いいからトイレに行って来い。下痢止めの薬でも買ってきてやる」
「お願い・・お・・やばぁぁぁぁぁ!!」
ダッシュで駆け出していくセシル
それを見ながらロカルノは
「ついでに厨房用の鍵を後3つは買っておくか・・」
っと呟いた・・


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