残暑の見舞い


「あ〜!暑いわね!こうも暑かったらヤってられないわ!今すぐ何とかしなさい!クラーク!」
いつもの館のいつもの談笑室。露出激しい服装のセシルが団扇を扇ぎながら唸る
「そういうのはいつも手前の仕事だろ・・、どうしたんだ?『氷狼刹』は・・」
同じくシャツにズボン姿のクラークが唸っている・・。
「この間町で暴れちゃってロカルノに取られちゃった♪」
「役立たずが・・。しかし何だよこの異常気象・・
通気性と温度調節に細心の注意を計って造った家が窓全開にしてもこの温度だぜ!」
「た・・確かに・・まいりますね。数年に1度起こる現象らしいですけど・・ここまですごいとさすがに・・」
何時ものロングスカートはどこへやら・・、
すっかりミニなスカートにワンピース姿のキルケもまいっている。
「こうなると涼が必要ですね・・、ですがセシルさんの魔剣では凍傷になってしまいますし・・」
流石のクローディアも浴衣姿。眼帯も蒸れるので外して髪を下ろし、そこを隠している
「・・ふむ、そうだな・・。では少し涼みに行くところを探すか・・」
一人いつもと同じなロカルノ・・、しかも服装から仮面まで・・
「ちょっと!ロカ!なんで貴方は平気なのよ!おまけに仮面までつけて暑苦しいったらありゃしない!」
「そ・・そうですよね・・。おまけに汗一つかいていないなんて・・」
「ふっ、北国育ちだからな。」
「理由になってねぇ・・。でもどうする?このままじゃ館中に汗の臭いが染みついちまうぜ・・」
「あっ!そう言えば先月発売された『ハイデルベルクウォーカー』に良いスポットがありましたよ!」
豆電球マークを輝かせキルケが思い出す
「何だ?その『ハイデルベルクウォーリヤー』って?」
「国内で販売されている観光宣伝を目的とした雑誌だ。
国内の流行の場所や色々と突っ込んだランキングもしているらしい」
「そうそう!その中でも『ハイデルベルク騎士団にて抱きたい女騎士ランキング』では
セシルさんがダントツで一位らしいですよ!
もはや不動の地位で『慎み深く優しい微笑みを投げかける姿を見せない超美人』
って載っていました!」
「・・慎み深く・・」
「・・・・優しい微笑み・・・」
「・・・・・・・超美人・・・・・・・」
目の前でだらしなく寝転ぶ女性に白い眼差しが・・
「な・・なによ!いいじゃないの、仕事と私生活の態度を分けていただけよ!」
「当てになんねぇな、その雑誌・・でっ、キルケ。良いスポットって?」
「ああっ、そうでした!実は港町ローエンハイツ近辺に新しく海水浴場ができたんですって!!
ローエンハイツの航路変更ができて船が通らなくなった地域を
街の貴族が利用してこの間オープンしたそうですよ!」
「海水浴か〜、ガキの頃以来だな・・。まっ、せっかくだ!大いに涼みにいこうか!」
「賛成〜♪じゃあ用意しなくちゃ!」
「用意・・?あの・・兄上・・私は・・」
「ううん?クローディアは水着なんてないからな・・。セシルから何か良いやつ貸してやれよ?」
「・・・私・・の?・・(ウニャリ・・)いいわよぉ♪」
一瞬、激子悪魔な笑みを浮べるセシルさん。
にやけながらも用意を開始し面々は涼を求め海水浴へ・・


・・・・・・・

ローエンハイツにほど近い海水浴場
『ヴァーゲンシュタイン海水浴場』と書かれた看板があるがあまり手は加えられていない。
人も何組かいるのだがあまり混んではいない様子だ
それ以上に見事な青い海・・、白い砂浜が心を解放する
「見てください♪クラークさ〜ん♪」
砂浜にゴザを引きそこに寝転ぶクラークの前に姿を見せるキルケ・・。
燃えるような紅い水着を着込んでおり結構際どいビキニだ。
髪はそのままに麦わら帽子を被っている
「キ・・キルケ・・。随分と肌を出してないか・・?」
「海は心を開放させるんですよ♪どうです?似合ってますか!」
挑発なのかお尻を見せてポーズを取っている
「ああっ、可愛いぜ」
「きゃっ♪でもクラークさん・・その水着ってなんですか・・?」
「んっ?これか?これこそが東国の漢の熱き血潮の結晶さ!」
クラークがつけているもの・・、それは東国民族の崇高な心『フンドシ!!(ヴァージョンレッド)』
赤いフンドシとは中でも一際清く美しく、その長さも通常の3倍、麗しさも3倍
局部の締めつけも3倍と正しく漢がする熱き下着だ。
『赤フンドシは伊達じゃない』っと昔、親父にも殴られたことがなかった漢が
言ったとか言わなかったとか・・
「変わってますね〜、でも赤でお揃いですね♪」
「おっ、そういえばそうだな!はははっ」
笑いながら褌をヒラヒラとさせる・・、そこへ・・
「あ・・兄上・・」
「うお・・何だ・・クローディア・・」
恥ずかしげに姿を現すクローディア、見れば俗に言う『スクール水着』・・。オマケに紺色。
髪も下ろしており初々しい姿で股間と胸に手を当てている
「セ・・セシルさんの騎士時代の水着だそうですが・・」
身体のラインがよく見えるのでかなり恥ずかしい様子・・、顔も赤らめておりまるで少女のようだ
「そうか・・、いつもよりも幼く見えるな」
「・・は、恥ずかしいです・・」
クラークの言葉に硬直するクローディア。
そしてその張本人が颯爽と登場する・・
「似合ってるじゃない〜♪クローディア♪」
からかう様に登場するセシル・・、キルケとは対象的に青い紐縛りな水着・・なのだが
全裸に近い激際どい代物・・、それこそ局所のみ隠しているようだ
「おい、エロ水着女。一緒にいたら恥ずかしい。アッチイケ」
「ほんとは欲情しているんじゃないの〜?
あっ、こっちをクローディアに着せてあげたらよかったかしら?」
「!!!・い・・いえ!それは遠慮します!」
「何?肌出して誘惑しないと男も落とせないわよ♪」
確かに周りの男の視線は釘刺しの如く・・

「露出しすぎも困るのだがな・・」

そう言いながらセシルの頭をクシャクシャ掻いてやるロカルノ
素晴らしい肉体をあますことなく披露し着ている水着はブーメランパンツ。
かなりぴっちりしていてちょっともっこり♪
それでも仮面をつけているのはご愛敬で、周りの女性の視線は仮面と股間に釘刺し♪
「・・・・、ロカルノさん。すごいです・・」
「・・あう・・あう・・」
キルケ&クローディアも唖然唖然・・・
「んっ?どうした?」
「子供には刺激が強いわね〜、じゃあ泳ぎましょう♪仮面もっこりん♪」
「???ああ・・では行くか」
そう言いながら二人は海の中へ・・
「・・ロカルノの趣味・・か?」
取り残されたクラークは脳裏に残された鮮烈な光景を思い出す
「兄上・・あの・・膨らみは・・」
「気にしちゃダメです。しっかし・・、浜風が涼しいな〜、お前等もゴロゴロしようぜ?ほれっ、ゴザ」
「クラークさん、泳がないんですか?」
「悪いな、俺金槌なんだよ・・・、クローディアもな」
「ええっ・・、昔海に食材取りに行った時に姉上の悪ふざけで溺れた以来・・」
「そ・・そうなんですか・・」
「悪いな、まぁ、波の音を聞きながら涼を感じるのも悪くないだろ?」
「そうですね♪じゃあ隣失礼します♪」
川の字になって海を見る3人・・、見様によっては一組のカップルとその妹のような感じだ

・・しばしボ〜っと辺りを見ているとそこには見覚えのある人物が・・

「綺麗ね・・」
「なんだよ、タイム。お前海に来た事なかったのか?」
「あまりね、クロはどうなの?」
「実家がすぐそこにあるんだしな。ここも良く来ていたぜ・・、良い場所案内してやろう♪」
可愛らしいパレオを身につけた赤毛の女性とトランクス水着にサングラスをつけた金髪男が
目の前を通りすぎる

「おわっ!クロムウェルか!!」
「「!!!!!」」
クラークの声に二人が硬直!
「ク・・・クラークさん!何でこんな所にいるんだ!そして何で女連れなんだ!!」
「うるせー、俺だって涼みたい時だってあるんだ。
っうか本編だとまだ会ってないんだからもっと驚け」
「クラークさん、そこはノータッチです」
「お・・そうか・・。ともかくどうしたんだ?お前達?」
「ああっ、タイムが働き詰めで少し身体を壊しかけたからな。
しばらく休暇を取ってこうしてのんびりしにきてるんだよ」
タイムの腰にイヤらしく手を廻しながら説明するクロムウェル。
タイムもプライベートだから怒りもせず 顔を赤くして照れている
「も・・もう、恥ずかしいからあんまり言わないで・・」
「まっ、がんばることは悪いことじゃないぜ?セシルも見習えっての・・」
「・・やっぱり・・一緒か・・」
クロムウェルの言葉に無言で顎を刺すクラーク・・、その光景に二人は唖然・・
「な・・なんなの、あの水着・・」
「あれが騎士かよ・・、おまけにロカルノの奴。海水で仮面錆びるんじゃねぇか?股間も素敵だし」
「捲きこまれると厄介だ。少し距離をおくといい・・」
「ああっ、まぁ水入らずでのんびりすらぁ!また本編でな!」
「し・・失礼します」
クロムウェルに肩を抱かれ二人は人気のない岩場に移動していった・・
「・・岩場で若い男女が二人っきり・・、きっとすごいことになってますね♪」
「あいつの事だ。よもや手を出さないことはないだろう・・。
タイムさんの静養のためだ邪魔しちゃ悪いな」
「岩場で・・・不謹慎です」
クローディアはそれが羨ましいのか少し避難しちゃっていたりしている
ともあれ、3人も何もしないのも何なのでサンオイルをヌルヌル塗って至福の時を過ごしている
・・クローディアには水着が水着なのであまり大胆な事はできないのだが・・

しばし時間が経つと入り口のほうから一人の男とその両脇を掴む二人の女性が入ってきた
「いや〜、森の中の生活が続いたら海とかが恋しくなるもんだね」
「ローエンハイツ近辺は久しぶりですからね・・・」
「私なんて海ははじめてよ〜、すごいねアル!泳ぎましょう!!」
碧髪の優しそうな男と長い黒みのかかった銀髪の女性、
そしてバンダナを頭に捲いた黒髪の女性がクラーク達の隣にシートを敷きはじめる
「水着・・恥ずかしくないですか?」
「よく似合っているよ、レイブン」
「そ・・そうですか・・」
シックでそれこそ泳ぐための白の水着を着た銀髪女性レイブンにアルは微笑みながら応える
ちなみに彼は水着じゃなくて短パンと軽い上着に麦わら帽子姿だ
「アル〜!レイブンさんばっかり褒めなくて私も褒めてよ〜!」
「マリーも可愛いって」
バンダナを解いた黒髪女性マリーはレイブンとは対象的に黒で背中がぱっくり見せちゃっている
「じゃあどっちが可愛い?」
「・・僕には決められないです、ごめんなさい・・」

「アル、苦労しているなぁ・・」
「!!クラークさん!うわっ!!」
隣に恩師がくつろいでいたことに気付かずアル大仰天!
「女二人で海水浴か、随分いい身分になったじゃないか(ニヤリ)」
「僕がそんな性分じゃないのは知っているじゃないですか・・。
それよりもクラークさんも涼みにきたのですか?」
「まっ、そうだ。結構ご無沙汰だなぁ」
「すみません、仕事と・・二人の相手に忙しいので・・」
アルの苦笑いの言葉に当の二人は彼の耳を引っ張り
「「アル!」」
「いたっ・・すみません」
「モテモテだな?」
「アル、この人誰?なんか変な格好だし・・」
「ああっ、この人はクラークさんって言って僕の恩人だよ。変な格好は・・僕にはわからないな」
「変じゃない!これこそが正しき漢の水着だ!」
「クラーク=ユトレヒト・・。噂通りの変人のようですね」
レイブンが少し微笑みながら言う
「あんたが元天使のレイブンさんかい?こんな優男に惚れて大変じゃないのか?」
「ふふっ、でも幸せですよ?」
「これで私とレイブンさんの二人をうまく愛してくれたらいいんですけどねぇ」
「ははは、こいつには大変なことだぜ?」
「クラークさん〜、アドバイスを教えてください〜」
「アドバイス?そりゃあ簡単だ!」
そう言うとそのやりとりを見ていたキルケとクローディアを両脇に抱え頬寄せるクラーク
「愛すればいいのさ!気持ちの赴くままにな!」
「兄上!私達まだそんな関係では・・!」
「あん、クラークさんったら♪」
・・・反応も人それぞれ・・
「クラークさん、変わりましたね・・」
「海は男を解放させる・・。まぁ、お邪魔だろう。お二人さん、もみくちゃにしてやっちゃいなさい♪」
「言われるまでもないです」
「そうそう♪泳ごう!アル!」
「ああっ、ちょっと!まずは準備運動をぉぉぉぉぉぉ!」
二人に両腕を掴まれて引きずられながら海に向かうアル
・・・羨ましいシチュエーションなのにどこか哀れだ
「お〜い!岩場にはクロムウェルがいるから気をつけろよぉぉぉぉぉ!!」
一応の忠告、それが耳に届いたのか着水する寸前でこちらを見たが変な態勢で海に帰っていった
「あれも愛・・ですねぇ・・」
「そうか・・?」
女性に振りまわされる一人の男に幸あれ・・

一方
「あ〜す〜ずしい!!やっぱ海はいいわね〜!!」
「む・・だが・・あまり海水に濡れると仮面が錆びる・・」
「取ればええやん・・」
ボートにてノンビリと海に揺られる二人、周りには他に泳いでいるものがいるのだが・・

「さ・・鮫だぁ!!」

一人の男が叫んだと思いきや水面に浮ぶは鮫特有の・・
「「「うわぁぁぁぁ!!!」」」
それを見て他の人も驚き急いで岸へ上がろうとする
しかし
「鮫〜?ねぇロカ、鮫って美味しい?」
「食用には向かないな・・」
「そっ、なら別にいいわ」
全然動じない二人・・、広めのボートに寝そべるうちにその周りに鮫の集団が集まってくる
「・・だが、確か卵は珍味として有名だ。それにヒレを加工したものは高級食材になったんだったか?」
「えっ!!じゃあ金になるじゃないの!!」
良い事聞いた!っと起き上がった瞬間・・

ザバァ!!

海面から大きく跳ね上がり大きな口を開け襲いかかる鮫・・かなり巨大だ
しかし臆することなくセシルの目に金欲の光が輝く
「金ぇ!!」

ドス!!

クロスカウンターよろしく頬にキツイフックが決まる!
「カ〜ネカネカネカネカネカネカネカネカネカネカネカネカネカネェ!!!!」
金欲ラッシュ・・鮫の牙を拳で打ち砕き内臓を破裂させ巨体を浮かす・・
「カネェ!!」

ボス!!

止めに心臓への一撃が決まり強い痙攣とともに鮫は動かなくなった
「これでいくらになるかしら♪うふふっ♪」
「・・ふっ、乱暴だな」
直も寝転んだままのロカルノ・・、目の前では悪魔が海の悪魔を仕留めたのに全く興味なさそうだ
「金になったら奢ってあげるわん♪・・んっ?」
不意に船の周りが目に入った。仲間を殺されたのがわかるのか他の鮫達が勢いよく周りを回っている
「・・ふ・・ふふ!畜生如きが仇討ちぃ!?いいわ!教えてあげる!
この海岸一帯の生態系の王はこの私!!!セシル=ローズよぉぉぉぉぉぉ!!」
鮫の尻尾を掴みそれを武器として高らかと咆哮を上げる・・・
海上死亡遊戯が高らかと始まった

・・・・・・

しばらくして・・
「なんだか海に鮫が出たんですって、やっぱり海って恐いですねぇ」
浅瀬で遊んでいるキルケが不安そうにクラークに言う
「・・鮫ねぇ。そんなに人を襲うことはないと思うんだがな・・でっ、どうなったんだ?」
「それが・・」
説明しようとした途端に絶句するキルケ・・
そしてその視線の先には
「大量〜大量〜!!ほらっ、クラークも降ろすのを手伝いなさい!」
ボート一杯に積んだのは撲殺された鮫の群・・ロカルノも呆れている様子だ
「何やってんだお前・・」
ともかく鮫の死骸を砂場に置くクラーク・・
しかしセシルは正しくホクホク顔
「だって、鮫ってお金になるじゃない?ヒレとか卵とか高いんでしょ?でしょでしょ♪」
「・・・・・卵を食用する種はまた別の鮫ですよ?セシルさん?」
撲殺された鮫を見てクローディアがボソリと言っちゃう・・
「え゛!何故に!?」
「いやっ、それにヒレだって食用に加工するにはいくつもの工程が必要ですし鮮度も必要です
この近くにそんな仕事をする施設なんてありませんし・・」
「クローディア!嘘だと言って!!」
「嘘だと言っても現実は変わりませんが・・」
「じゃあ私は骨折り損のくたびれもうけってわけ・・・」
力なくうなだれるセシル・・
「ふっ、それ以前に鮫に襲われてそれを迎撃するのは当然の行為だろう」
「うるせ!高見の見物しておいて〜!こんなゲテモノ!空に返してやるぅぅぅぅぅぅ!!」
やり場のない怒りを鮫にぶつけ尻尾を掴みハンマー投げのように大空に飛ばす
セシル・・
「周りの目が・・痛いですね」
「ああっ、俺達先に着替えて帰るわ。後頼むな?」
荒れるセシルを余所にクラーク達は『私達無関係です』を決めこんでさっさと出ていく
「ふっ・・、仕方のない・・。セシル、私は少し休む。気がすんだら起こせ」
ロカルノはロカルノで完全マイペースだったり・・

「おのれぇぇぇぇぇ!!」

一人荒れるセシル、大量の金貨になるはずの鮫は轟音とともに空に消えて行った
・・・・・・・・・
その日海水浴場近くの漁村では空から鮫が降ってくるという恐るべき現象が見られた
村民は海神様の祟りだと怯え海水浴場の閉鎖を訴えはじめた・・とか・・




残暑お見舞もうしあげまする♪



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