「屋敷の中身は何だろな?」
「へい彼女!僕と一緒にデートしない!?」
「きゃ・・きゃあああ!!」
・・本日13敗目、街の大通りにてのナンパに失敗するこの俺クロムウェル、・・なぜだ!?
フィートはあんなにうまくいくのに・・、って女も悲鳴あげて逃げるなよな
くそっ、折角休みを有意義に過ごそうと思って頑張っているのに
これじゃあ馬鹿みたいじゃないか!
交通の邪魔にならないように通りの隅に移動して作戦を練り直さなければ!
「あ・・あの・・」
「こんな男前放っておいて全くルザアンってのは・・」
「あ・・あのぉ!」
んっ?おおっ、俺に話し掛ける女性が!!?
たぶん長いであろう金髪を後ろで止めて着ている物も良家のお嬢さんっぽい
・・こりゃあ貴族の娘だな
「俺に用かい?お嬢さん・・」
キラーンっと白い歯を見せる・・、出だしは好調・・
「あの、貴方はクロムウェルさん・・ですか?」
おおおおおおっ!?
俺を知っているうえで話し掛けるとは・・脈有りですか!?
「おう、そうだ!なんだい、俺とデートしたいのかい?
心と身体に忘れられない傷・・もとい体験をさしたるぜ♪」
「い・・いえっ、そう言うわけじゃないんですが・・お願いがあるんです」
・・あら・・、一転厄介事?
「な・・なんだよ?」
「あの、私、騎士になってルザリア騎士団に勤めたいんです!
もうすぐ騎士団学校に行くんですがその前に憧れの騎士団屋敷を案内してほしくて・・」
「おいおい、それだったら正規の騎士にお願いしたら早いんじゃないか?
受け付けで言えばそのくらいはやってくれると思うけど・・」
タイムはそんなに心が狭いわけじゃない、まぁ機密事項があるところは駄目だけど
「その・・皆さん任務に忙しいと思いまして・・」
・・俺だといいんかい・・
「・・まぁいいか、案内してやるよ。俺だってルザリア騎士団の教官なんだしな!」
「ありがとうございます!!」
深深と礼をするお嬢さん・・、まぁ思ったことをズバリと言うけれども良い娘だな
「それで、君の名前は?」
「はい!ニクスと申します!よろしくお願いします!」
・・礼儀正しいけれども人が良さそうっぽい・・騎士って結構荒い職なんだけどな
まぁいいや。夢があるのは幸せだし少しは貢献してやるか
・・・・
ルザリア騎士団屋敷、
貿易都市ルザリアの守りを担うだけあっての規模を持っている
屋敷は3階建て、
隣には男性騎士寮と女性騎士寮があり他にも専用の訓練場まである
まずは屋敷のロビー、受付のサリーさんが俺の顔を見るなり警戒してくれている・・
むかつく!!
警戒するならお前を捨てたフィートにしろってんだ!
「何よ、変態・・そこの娘を孕まして自首しにきたの?」
ひ・・ひでぇ!!
「違うわい!・・・こいつは見習い騎士、
ルザリアに配属になりたいからここを見学したいんだってよ。案内するからいいか?」
「ニクスです!よろしくお願いします!!」
「・あ・・あら、そう。ちょっと待って。
団長の許可と重要機密が漏れないかの確認をするから」
そう言うとパタパタ足音を立てて奥へと入っていった・・
タイム以外ではスーツ姿の女は受け付けだけだが、可愛げがねぇ・・。
金髪なのが尚更だね
「何度か来た事がありますが・・広いですね」
そう、まぁ立派な吹き抜けホール、受付がドシンと中央にあり左右対照に階段と扉がある
他にも一般市民の待合室代わりになっておりソファもいくつか・・
屋敷の造りは中をグルッと繋がっているシンプル構造、
そして中央に大きめの中庭がある・・
ここは俺が不祥事があった時には公開処刑場と化する場所です・・
「そうだな、まぁここだけでも結構威厳があるだろう?
なんだかお堅いところにきたってよ?」
「そうですね・・、ここが私の未来の職場かぁ!」
目を輝かしている・・、いいねぇ。
でも、こういう純粋なのは・・汚れやすいもんなのだよ
「変態、見学の許可が出たわよ?」
「おおっ、サリーさん。意外に早かったな」
「まぁね。ただほとんどの騎士は外に出ているから人は少ないわよ?」
「いいんだよ、そこまでしなくてもよ。じゃあお前さんはそこで孤独と戦っていてくれ♪
大変だよな〜?仕事でもプライベートでも孤独で♪」
「へ〜ん〜た〜い〜!!!」
おおっ、怖っ。現役の騎士なのに乱暴者だぜ・・
「さっ、怖いお姉さんに襲われないうちに案内するぜ・・」
「は・・はい・・」
剣幕に圧されながらもさっさと1Fの扉に飛び込む・・帰りが少し、怖い
屋敷の廊下は質素な廊下で重厚な造りになっている。
常に中庭が見えるように庭に面した壁はガラスを張ってあり開放感があるんだ、これが
「さて、一階は主に担当地区ごとの部屋と上官室に会議室。後は応接室に食堂だな」
「担当地区?」
「他はどうか知らないけどここは地区ごとに担当を分けているんだよ。
工業地区、商業地区、住宅地区、貴族地区、テント郡・・ってな。
そこの情報の中心があるってわけだ。
まぁ現場にも小さな詰め所がある・・これは知っているだろうけどな」
「そうなんですか・・」
「あら・・知らないか。まぁあるんだよ。それを統括するのが上官室。
まぁ団長の一歩前の情報整理しているところだな。ここは立ち入り禁止。
結構重要度のある部屋だからな」
「は・・はぁ」
「ここじゃ・・知り合いはテント郡だな、俺が連れて行ってやる」
廊下を歩きながらテント郡担当の部屋まで案内し中に入る
ノック?
ここの代表がしないから俺もしねぇ
「お〜い、元気〜?」
中は机が四つありボードと本棚がある程度、まぁテント郡担当は四人だからな。
ここも最近設置されたわけだし。
因みに本棚にはテント郡住民の帳簿・・個人情報満載ってわけだ
「へ・・変態!どうしたんだ!」
ボードに貼ってあるテント郡の見取り図を凝視していた我らがソ=ガイナイトことスクイード
短いツンツン黒髪が特徴の熱血野郎だ。
一応ここの長になった
他には白髪の狐人シトゥラと俺の妹カチュア、そして有望株のキースがここの面々。
珍しく全員揃っている
「ああっ、この騎士団に入りたいって見習いがいてな?
学校に入る前にここを案内してやっているんだよ、ほれっ?」
「ニクスです!あの・・貴方がスクイードさんですか・・?」
「えっ?僕を知っているのかい?」
「・・どうせロクでもない噂とか知っているんだろ♪」
それでも意外と言えば意外なんだけれども
「いえっ!この人の働きぶりに感動して私も騎士になろうと思っていたんです!
お会いできて嬉しいです!!」
な・・なんと!?握手を求めている!?
・・やっぱこの娘、配線がおかしいんじゃ・・
「そ・・そうか!僕の働きを認めてくれる住民がいたんだ!!」
思わず感涙のスクイード、
・・・・・・・・・お前本当に人望ないのかよ?
「でっ、大変な地区を担当している四人が全員ここで何やっているんだ?」
「何っ、次の炊き出しの計画だ。
今までは井戸の近くで行っていたがテント郡も広くなってきたからな」
四人の中で一番の冷静人物シトゥラ、もはやここの騎士団員だな・・私服だけど
「そうそう!人が増えるのはいいんだけれども去る人がいないから増える一方なのよね!」
「・・まぁ、余所の難民の溜まり場に比べたら環境がいいからな。
就職の手助けもしているのも要因か」
カチュアとキースのカップル・・、息が合っている会話だぜ・・
「ふぅん・・。いっその事区画整備して等間隔にテントを建てさしたらどうだ?
そのほうが見回りもしやすいし分けやすいんじゃないか?テント郡一丁目とか・・」
「それは僕達も考えている。
セイレーズ老とも話し合って近いうちに整備するのだが・・そうなったら人手が大変なんだ。
他の地区から応援を要請しようと団長に報告するつもりなんだけれども・・」
「どこも忙しいからな、・・まぁ俺からも言っておいてやるよ」
「お兄さん、タイム団長に命令できる関係なの〜?」
「ふふふ・・、そういう関係だ♪さぁ、ニクス。次行くぞ〜」
「は・・はい!お邪魔しました!」
礼儀正しくお辞儀をして退室・・良家のお嬢さんだねぇ
「・・スクイードにあこがれているのか?」
「はい!会えてよかったです!」
「・・そうか、まぁ・・ご愁傷様。会議室は何室かあるけれども・・これは見ても仕方ないな。
この部屋も一番小さな会議室改造したもんだからこれと同じか多少大きくした程度。
食堂は〜・・仕事と関係ないか?
ルザリア弁当が美味しいらしいから覚えておくように」
「はい!」
「よろしい。じゃあ2階行くぞ〜」
一路二階へ・・ホールだけでなく屋敷の四隅に階段があるのでそれで上る
結構機能的な造りなんだな、これが・・
二階の構造は一階と全く同じ。それだけに分かりやすい
「さて、二階だけれどもここは騎士として能力を向上させる講義室、
24時間体制故に休憩が必要なので休憩室と仮眠室。
今までの仕事の内容が保管されている書庫や武器庫、事務室がある。
後は長がいる団長執務室だな
・・・書庫や武器庫は団長が持っている鍵がないと開かないので案内はできない。
事務は〜・・まぁどこを見ても一緒か、俺も入ったことがないし。
だから講義室と休憩室、それに団長室を案内しよう」
「お願いします!」
うきうきなニクス・・そんなに楽しいものなのかね?
・・・・
「ここが講義室、以前までは作戦や陣形を整えるために
タイム団長が色々と教えていたが今はこいつ、アンジェリカが魔導論の講義をしている」
講義室は結構広く教卓も一際でかい・・。机の数からしても
たぶん騎士団全員が座れるだろうな。
今は使用されておらず広い講義室に一人教壇で魔導書を広げている女性が一人
黒い法衣に黒いミニスカ、そこから覗かせる細い足がなんともそそられる魔術師アンジェリカ
魔法都市アルマティで教官をやっていた彼女だが最近ルザリアに引っ越してきた
オレンジのウェーブ髪をして活発そうだけれども性格は落ち着き払って知的そのもの
・・因みに俺と同じ宿に住んでいる
「あら?どうしたの・・・?」
「ああっ、見習騎士に屋敷を案内しているんだよ。アンジェリカは一人でどうしたんだ?」
「次の講義の予定を考えていてね。カリキュラムも大変なのよ?」
「へぇ・・。あっ、ニクス。彼女はアンジェリカ。
魔法都市アルマティのアカデミーで教官をしていた超A級魔術師だ」
「ええっ!?あの・・アルマティの!?・・すごい・・」
「そんなに大したことじゃないわ。貴方、騎士になりたいの・・?」
「はっ、はい!ここで働くことを夢見てがんばってます!」
「そう・・、魔術の素質もありそうだし・・学校でがんばったら一人前になれるわ。がんばって」
「アンジェリカさん・・ありがとうございます!!」
おいおい・・こいつが他人を褒めるなんてよ・・
「何?クロムウェル。驚いた顔をして・・」
「いやっ、何でもない。邪魔しちゃ悪いから俺は行くな」
「ええ・・わかったわ」
軽く応え再び本と向き合うアンジェリカ・・
こんな広い部屋で一人黙々と本を読むのってなんだかすごいよな・・
・・次は休憩室・・、
まぁ騎士連中のプライベートだから軽く見せる程度。
女性騎士用と男性騎士用の二部屋用意されているが・・女性用は俺入ったことないからな。
男性騎士の休憩室はまぁ雑誌やら色々と散乱、そして壁にはタイムの絵が・・
何を祭ってんねん
男の世界を余り見せるのもあれなんで軽く見ていよいよ本打ち
「・・ようこそ、ルザリア騎士団屋敷へ。貴方が見学希望者かな?」
団長室。タイムの職場で質素な造りそのもの・・
でも突然の来客でもタイムは軽く笑顔を見せ歓迎している・・これが信頼される上司ってわけだ
「は・・はい!ニクスと言います!あの・・わがままを言って見学させてもらい・・」
「いいさ、ルザリアの民ならばこうした場を見る権利もある。
この施設を見て励みになってくれるなら我々としても本望だ」
「はい!」
「流石に寛大だな?
ついでにニクスに騎士団学校でうまくやっていけるコツを教えてやれよ」
「・・コツ・・か。まぁああいう場では例えうまく事を進めても教官から叱咤される。
怒られることは気に止めないほうがいい。
それを気にするのは自分が失敗したと思った時だけだな」
・・・うわぁ、そんなところ絶対行きたくねぇ・・
「わかりました!ありがとうございます!」
「では・・、仕事が忙しいのでこれにて勘弁してくれ。
クロムウェル、彼女を送ってやってくれ
・・くれぐれも粗相のないようにな」
「・・別に手をださねぇよ。じゃあまた後でな」
凛々しく振舞っているわりには気にしちゃって・・
まぁいいや。後で機嫌取りに行きますか♪
「さて、こんなところだな。後は寮と訓練場・・これは外から見えるからいいだろ?
因みに男性寮も女性寮も結構立派な大浴場がある・・、
これは一般人にも開放して俺も利用しているけれども中々オツだぜ?」
「え・・、なんで・・・女性浴場があることまで・・」
「・・俺はなんでも知っている・・」
「は・・はぁ、でも・・ここって3階建てですよね?」
「ああっ、3階は倉庫と臨時の仮眠室、それとタイムの私室があるだけだ。
そこまでは見られないだろ?」
「それもそうですね・・。でもありがとうございます!おかげで良い勉強になりました!!」
「おうっ、そりゃよかった。俺もこんだけ屋敷を周ったのは初めてだ・・まぁ学校がんばれよ。」
「はい!」
胸を張り敬礼をするニクス・・、とりあえずは屋敷の前まで送り彼女は颯爽と走っていった
・・一年ぐらいしたら彼女もここに配属になるのかな・・・・、
ううん、世捨て人チックな俺にとっては何やらすごいことだな〜。
まぁその時は皆で歓迎してやるか
そんなことよりも・・・・タイムとイチャイチャしよう〜♪
ドタドタ!!
おおっ、入ろうと思ったらタイムが鎧を着て出てきた!数人部下を従えている・・
「どうした?タイム?」
「工業地区で強盗が入って立て篭もっているらしい。今から出撃する」
「俺の助けは必要か?」
「いてくれたら・・心強い・・」
「よっしゃ!手を貸すぜ!」
なんだかんだ言いつつも俺もルザリア騎士団の仲間、今日もがんばりますか!
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