「飛竜 シウォングに立つ」



「ライ、お手紙です・・」

やや書類が積まれている執務室に秘書嬢のレイハが手紙を受け取り入ってきた
質実剛健で飾り気はあまりない執務室、それだけに地味なスーツをキチッと着こなし長く綺麗な黒髪を団子状に
纏めているレイハにはよく似合った環境だ
「・・んあ・・?」
それに応え書類の影から顔を見せるは真龍騎公とも呼ばれるこの国シウォングの代表ライ
立場からして王なのだが本人としては「代表」という言葉の方が合っているらしい
それは服装にも表れておりおおよそ位が高いとは思えない
「・・・・、寝てませんでしたか?」
「寝てない寝てない、ちっと考え事していたんだよ」
「・・??ライが・・考え事を?」
「なんだよ、そんなに意外か?」
首をかしげるライだがそう言われるとレイハも困る
「いえ・・そうではないのですが・・、参考までに何を?」
「・・聞きたい?(ウニャリ)」
怪しい光を目から放ちイヤンな笑みを浮かべるライ・・
「(ゾク!)い・・いえ!仕事も途中です・・さぁ、再開しましょう」
思わず身震いしてしまい焦るレイハ、ライの笑みの意味には本能的に理解してしまう
・・身体が覚えている・・っと言ったところなのだ
「いやいや、ではレイハさんが郵便官から手紙を受け取る間考えた事を実演しましょう♪」
上機嫌で席を立ち執務室の扉に鍵を閉めながら笑うライさん、正直異様は気配出しまくり
「い・・え・・ライ・・仕事を・・んっ!?」
何とか仕事に戻らそうと説得するもあえ無く撃沈、本心としては彼女もこうしたいという願望があるので
無理もなく・・
しばし机の上でレイハは我を忘れる快感に酔いしれた

・・・・

しばらくして
「・・・はぁ・・はぁ・・・」
机の上で惚けた瞳で荒い息をしているレイハさん、対しライは鼻歌交じりでレイハの机にて仕事を続けている
「あ・・ん・・スーツに・・しわが・・」
「やっぱ着たままっていいよなぁ(ニヤリ)」
「こ・・これでは来客の案内ができません・・(ヨヨヨヨヨ・・)」
「今日は来ないだろ?まぁ後で着替えなさい♪よしっ、終わり!」
「・・うう・・なんで急に効率が上がるのですか・・」
行為の後、仕事の遅れを取り戻すためにライのペン捌きは亜光速に突入する
対し秘書であるレイハはもう腰砕けかけで仕事に復帰するには時間がかかり・・
まぁ無理すればできるのだが彼女も女、男に抱かれた後のまどろみは感じていたいのだ
「まぁ気分だ♪」
「・・(ヨヨヨヨ・・)」
「さて、手紙か〜。どこからだ・・ん・・プラハ?」
レイハを誘う際に床に落ちた手紙を取り出し封を開ける
立場状ヤバイものが入っており本人があけるべきではないというのが当然なのだが差出人が誰なのかわかり
安心して空けている
「・・ふぅん〜、またクラーク達が遊びに来るってよ。」
「そ・・そうですか・・なら麻酔の準備を・・・」
服装を但しスーツの皺を気にしながらレイハが応える
麻酔、家族を守るためでその対象はユトレヒト隊の「キンパツケダモノ」ことセシル=ローズ
警戒して毎回来る度にレイハが調達しているのだ
それならば家族である薬師アルシアに頼めばいいのだが彼女は彼女でセシルと仲が良いゆえ・・
麻酔以外に元気が出る成分が入っていたら逆効果にもなるのだ
「う〜ん、向こうで色々対応しているみたいだから大丈夫だろう?そっちで準備しなくてもいいって書いているぜ?」
「・・そう、ですか?」
「ああっ、それと・・今回は早く到着できそう・・だってよ。」
「・・??ハイデルベルク=シウォング間では馬での旅は少々厳しいですし交易隊に厄介になるのが最速と思われるのですが・・」
「そうだよな、早馬ならまだしもそこまで急ぎの強行軍でもなかろうに・・」
首をかしげながら手紙の内容を読み返すライ、レイハも共に手紙を見ながらその内容を確認をするのだった


数日後

騎士団面々の生活に変化が起こることはそうはなく各自いつも通りの日課(?)をこなしている
ライとレイハは事務仕事、シエルは屋根で日向ぼっこ、アルシアは薬草採りにルーは魔導院のスパルタ講義
アレスやリオ、ディは庭掃除等をこなしカイン夫妻(?)はいつもの如くに出張中・・
そんな中ルナは庭先でゴロゴロ寝転がっていた
狼姿のまま地べたを転がり穏やかな日差しを全身で浴びている
「わう〜・・♪」
腹を広げヌボーっとしているルナ、猫だけでなく狼だって日向ぼっこが好き・・っと
「クゥゥ・・・・・ン」
目を閉じながらウンッと伸びをするルナ
そこへ
「わう?」
急に影が出来る・・自分をすっぽり包むほどの大きさの影・・上空には奇妙な物体が二つ浮かんでおり・・
「ワンワン!」何!?何〜!?
驚きながら吼えるルナ・・それは巨大な飛竜
二頭並んで滞空していかたと思うと音もなく地面に着地する
「到着ですね♪早い早い〜♪」
「地道に来るのとは大違いだな〜」
その背中には見慣れた面々の姿が・・

ピカー!

「クラーク!キルケ!」
ルナも嬉しく変身して手を振りだす
「ようルナ、遊びにきたぜ♪」
広くごつごつした背中から飛び降りるクラーク
「こんにちわ〜♪」
笑顔で降りてくるキルケ、後に続いてクローディア、別の角がある竜からもロカルノが降りてくるのだが
「・・・・(キョロキョロ)」
彼らがきたということは天敵がすぐそばにいる。クラーク達と会った喜びを一旦しまいこみ周囲を睨みつけるルナ
「ふっ、セシルか・・」
「セシル!どこ!?」
「あそこだ・・」
さらりとロカルノが指差した・・そこには飛竜の首元に座っているセシル・・しかし両手は後ろで括られており
目はイッチャっている

「エ・・エヘヘ・・お空が青いわ〜」

「キャイン!!」
その異様な光景にクラークの物陰に隠れるルナ
「大丈夫だ、しばらく元には戻らないだろう」
「・・ほんと?」
「ああっ、なんせ両手のバランスを取られた状態であんな飛行したんだ・・よく落ちていなかったもんだな」
ニヤリと笑うクラーク、それにつられロカルノもニヒルに笑う
「実際何度か落ちた。まぁ落下する前に回収したのだがな・・」
「・・・・、失敗したら死んでますよ?」
「何、こいつはそのくらいじゃ死なん。全く・・だらしがないぞ」
飛竜に乗り込みセシルの首根っこを掴み引きずり降ろすロカルノ
「あ〜、え〜、お〜」
「・・クゥン・・(ガタガタブルブル)」
意味不明な唸り声を上げるセシルにルナは震え上がる・・が襲い掛かってくる様子はなく・・
そこへ

「よ〜!早く到着するってのはこの事を言っていたのか!」

流石に竜が庭先にいるとなれば中の住民も気付きライとレイハが駆けつけてきた
「おう、まぁそんなところさ」
再会を祝し握手するライとクラーク、しかし隣のレイハは呆然としており
「・・、このような飛竜を・・どこで・・?」
「んあっ、まぁ新しい家族だ」
「ほ〜、竜を飼ったのか〜、ってんなことできるのか?」
「ちと特別だ、二人とも〜、もう戻れよ!」
クラークが飛竜に声をかける
すると

ピカッ!

眩い閃光が走り次の瞬間には巫女衣装を着たピンク髪の少女と黒いシックなドレスを着た紫髪の女性が立っていた
「ううむ、シウォングか〜。飛びがいがあったな!」
「メルフィ様、セシルさんを落としちゃだめですよ」
「なぁにちょいとしたドッキリだ!」
普通に会話する二人だがライとレイハには状況がわかるはずもない
「・・っというわけだ。」
クラークは軽く指差してそう言うのだが
「いやっ、わからんわからん」
「ん・・そっか?じゃあゆっくり話そう・・中入っていいか?」
「え・・あ・・はい、どうぞ・・」
珍客に驚いていたレイハだが職務を思い出し極力平静を保ちながら一向を案内した

・・・・・・
・・・・・・

「・・なるほど、高位飛竜族って種族なのかぁ・・」
居間でお茶会ばりに集まり軽く説明を終えようやくライが納得した
その頃になると魔導院からルーも帰宅しており興味深げにそれを聞いていた
「話には聞いたことがあったがこれは意外ダナ。」
ライの膝の上にデーンっと座りながらジロジロと高位飛竜族の少女メルフィを見てやる
「なんじゃ?妾は見世物じゃないぞ?」
レイハが用意した茶菓子をほおばりながら同じくジロジロ見るメルフィ
「ふっ、知識を持つ竜は非常に高潔と聞いたがどうやらそうでもないらしいナ」
「なんじゃと!?」
ギロリと睨むメルフィを押さえ込むようにもう一人の竜人アミルが静止させる
「まぁまぁメルフィ様・・、それよりもルーさんもどうやら・・亜人のようですね」
「む・・まぁそんなところダナ。推測だが多分お前と同じくらいの年齢ダ」
「・・はぁ。そうですか・・。」
「魔女・・だったというところじゃな。」
ふんっと腕を組み自信満々に言うメルフィ・・
「・・よくわかったな・・おい・・」
「妾はこれでも博識でな。だが・・ライと言ったか。お前の存在・・これは・・」
「そうですね、ライさんからただよう気配・・異様なモノが・・」
「ん〜、まぁ色々あるんだよ」
本当に色々あったのだが彼が言うとさほどそうとは感じず・・
「ふむ、まぁ本人の意思が強いからそれが悪いほうには向かないだろうな」
「当たり前ダ!トカゲ人間がライを簡単に評価スルナ!」
「誰がトカゲ人間じゃ!!?小娘!」

「メ・・メルフィ様〜」
「ルー、ストップだ〜」

「「ぬぅぅぅ!!」」
わがまま娘なだけに一触即発、しかしそれを鎮める担当も揃っているがために戦にはならず・・
「・・それにしてはレイハさん、何だかスーツに皺がついていますよ?」
「え・・あ・・これは・・」
ライのイタズラのためにレイハ所有のスーツには全て皺が・・それが目立たないように隠していたのだが
家事が得意なキルケには隠しきれずに・・
「レイハも色々と仕事が忙しいからなぁ、でも身だしなみはキチンとしなきゃいけないぜ♪」
「・・すみません・・(ギロリ)」
そうした張本人が何抜かしとんねんっと睨むレイハさんだが本人は全くのノーダメージ
「ふっ、では数日厄介になろうか・・」
「おう、ゆっくりしてくれ・・あいつも大丈夫のようだしな」

「あ〜・・う〜・・」

唸るセシルの方を見て安全確認・・ルナは怯えているのだがどうやら襲い掛かる様子ではなく
久々の再会に一同は各々動き出した


「先生〜久しぶりです〜♪」
「あぁら、キルケちゃん♪来ていたのねぇ」
薬草狩りから還ってきたアルシアにキルケは眩しい笑顔で迎える
この二人の関係・・かつては襲った者と襲われた者なのだがそれからはなぜか仲が良い
まぁその一件によりキルケが「目覚めた」ことが大きく関係しているのだが・・
「はい♪遊びにきました〜」
「それじゃ、部屋でゆっくり話しましょう♪」
そう言い薬草入れの籠を持ちつつ二人はゆっくりとアルシアの部屋に・・
・・・・
「はい、ハーブティーよ♪」
調合用の器具が並ぶアルシアの部屋にて彼女がハーブティーを入れキルケに渡してあげる
すっきりと爽やかな香りが部屋を包み華やかなティータイムに入るかと思いきや
「それで、どこまで進んだのかしらぁ?」
「お尻はもう完璧です♪後は最近Mの素質が目覚めましたね〜」
「へぇ・・じゃああの優男が色々攻め攻めなのぉ?」
「ええっ♪縄の痣があったりしてますよ、クローディアさん♪」
話題はキルケの「姉」であるクローディア、彼女が気持ちよくクラークと結ばれたいということで
キルケが色々とアルシアに手紙で教わりそれを仕込んだのだ
まぁかなり余計なお世話なのだがキルケにとっては大満足・・クローディアも恥ずかしがってこそいるが
兄と濃密に絡めて嬉しかったりするのだから結果オーライか
「ふぅん、やっぱ男って見かけによらないみたいねぇ・・」
対しアルシアはクラークが縄を持ってハァハァいいながらクローディアを苛める姿がどうしても思い浮かばず・・
「そうですよ♪」
「それで〜、キルケちゃんはまだ前は使わないのぉ?」
「うう〜ん・・それなんですけど・・まだまだ結婚までは行かなそうですしねぇ・・前って・・いいです?」
「もちろん♪前がよくない女性っていないんじゃないかしらねぇ・・」
「うう〜、悩みますねぇ・・」
「まっ、そこらは貴方が決めなさい♪でも回復魔法が使えるなら応用すれば処女膜の再生もできた気がするわよぉ?」
ハーブティーを優雅に飲みながらアルシアさん
「へぇ〜、そうなんですか!それならヴァージンロードも歩けますね♪」
「・・今時、処女のままヴァージンロードを歩く花嫁もいないんじゃないかしらねぇ・・」
「気分ですよ♪そういうのは〜」
「まっ、二人の気持ちが結ばれていたらそれでいいんじゃないかしらねぇ・・」
「そうですね♪」
「さて、セシルは何かおかしかったし〜、新しいオクスリがあるんだけど〜、二人で試してみなぁい?」
「・・すごいですか?」
「もうすっごいわ♪」
「・・是非♪」
二コリと笑うキルケ、期待に胸を膨らませながら先生とともにイケナイ授業が始まった・・


一方

「・・・(クアァ・・)」
屋敷の天上にて気持ちよく伸びをするシエル
他の面々は使用しない彼女だけの特等席、それゆえ日の当たり具合は抜群で誰でも眠気が湧いてくる
・・まぁ、そのまま寝ようものなら落下してしまうかもしれないので
彼女以外は遠慮しているのだが・・
「隣、空いているか?」
何時の間にか彼女の隣に立つクラーク、いつものコートは脱いでおり軽いシャツとズボンのみの姿だ
「・・ん・・」
片目が少し開いたかと思うと尻尾を振りOkの意志を伝える
「サンキュ♪」
二コリと笑い軽く寝転ぶクラーク、それにシエルは目を閉じながらも意外そうに
「・・どうした?」
「・・んにゃ、天気がいいから昼寝でもしたくてな」
「ん・・ライ達と話しなくていいのか?」
「まぁ、あいつも色々忙しいみたいだしな。たまには静かにいたいわけさ」
いつも騒がしいユトレヒト隊館に比べてこの屋根の特等席は静寂そのもの
日差しに加え適度なそよ風も快い
「ん・・そうか」
「セシルの奴も来ているが・・悪さできない状況だから安心してくれや」
セシルの言葉にシエルは一瞬目を閉じたまま顔をしかめたがやがて元の状態に戻り
「別に良い・・来るなら返り討ちにするだけ」
「・・そっか・・」

・・・・

しばし静寂、シエルは心地よさそうにしておりクラークも同じく眠っているように感じるのだが・・
「・・何が言いたい?」
不意にシエルが言い出す、それにクラークは片目を開けて苦笑いをする
「やっぱばれた?」
「ん・・」
「・・まぁこんなことシエルに聞くのもなんだけど・・」
「・・・??」
「お前、初恋って何時ごろだ?」
「・・(ピク)」
耳がピョコっと動く・・様子は変わっていないがかすかに動揺のようなものが走ったようだ
「いやっ、俺の家に盲目の猫人の女の子が暮らすようになってな。セシルが世話しているんだが・・ベタベタなんだよ
初恋をするような歳になったらそれもやめささないと色々障害が出てくるかと思ってな」
「・・そんな心配する以前にあの女がその子を襲う心配をしたほうがいい」
「いんや、それが本当の妹のように接してるんだよ・・だから大丈夫」
「ふん・・」
知るか・・ってそっぽを向くシエル
やはりセシル大嫌いな様子・・
「・・私は、小さい頃からライを家族と思っていた・・好きとかそんな感情は・・ん・・わからない」
「ん〜、そうか。一般的な事は〜」
「わからない」
「やっぱり・・」
「ん・・まぁその子しだいだ。あの女が迷惑をかけるなら私が追っ払う・・」
「そっか・・そんじゃその時がきたら頼むぜ」
「任せろ」
軽く鼻息をつき寝相を変えるシエル
クラークも大きく伸びをして穏やかな日差しの中眠りについていった

・・・・

「さぁ、お茶が入りましたよ」
「・・ご苦労様です」
一方居間ではレイハ、クローディア、アミルの落ち着き系が揃って小さなお茶会
「頂きます〜、あっ、変わってますね・・」
一口飲んでアミルが驚く
「竜人の口に合うかどうかわかりませんが・・」
「いえっ、とても美味しいですよ」
ニコっと笑うアミル、彼女達が飲んでいるのはレイハオリジナルブレンド。
沈静作用があるものでレイハぐらいしか飲まない
それをアミルに勧めたのは・・
「アミルさんも苦労していますね・・」
大変そうな主に仕えているから・・
「わかります・・?」
「先ほどの騒動からして・・」
「メルフィ様はいつもあのような感じで・・、悪い性格ではないのですがどうも高位飛竜族であることに執着しているみたいなのです」
「族長の血を継いでいるのならばそうなるのも仕方ないことなのかもしれませんね」
同じくお茶を啜るクローディア
彼女はなんともなしに参加。キルケはアルシアと一緒にどこかに行き兄もふらっと消えてしまったので
やることもない様子だ
「純粋なのはよろしいことです。それに比べて・・ライは・・(ヨヨヨヨ・・)」
思わず初対面なのに感情がこみ上げてくるレイハさん
彼女の苦労も相当なものであったり・・
「・・苦労していらっしゃるようですね・・」
「ええっ、早く仕事が終わるほどのペースを持っているのに何故かギリギリのペースを取るんですよ・・」
「・・悪意がありませんか?」
「わかりません・・それに事ある毎に中断したり・それでも期限が守れているのは凄いのですが・・」

「・・大変ですね(ズズズズ・・)」

感心してお茶をすすっているクローディア、
だが二人からは何か羨望の眼差しが・・
「クローディアさんはいいですね、クラークさんって穏健なお方みたいですし・・」
「そうです、ライのように悪戯好きでもなさそうですし・・」
「え・・あ・・そんな事は・・」
「・・?クラークさんも何かメルフィ様のように厄介なところがあるのですか?」
本人聞いていたら激怒しそうなのだが実際その通りなので仕方ない
「兄上の・・厄介なところ・・」
「ライとクラークさんはどこか似ているところがあります。っとなればどこか変なところがあるはずです」
妙な方向に話が反れて焦るクローディア!
「え・・あ・・そうですね。ライさんがどのような悪戯好きなのかは知りませんが・・兄上もよく・・意地悪をしてきます」
「クラークさんが?そうなんですかぁ・・」
「実に興味深いですね・・どのような?」
「・・あ・・それは・・夜の・・事・・なのですが・・」
その一言にアミルは聞いてはまずいと思いレイハは是非とも聞きたいと目で訴え出す
「・・具体的に、どのような?(キラーン」
「レイハさん・・それは・・その、兄上が・・」
「兄上が?」
「あ・・う・・」
顔を真っ赤にして硬直するクローディア、
「クラークさんが・・・どうかしたのですか?」
「・・その、縄を使って・・身動きが取れないように・・」
掻き消えそうな小さな声で答えるクローディア、それでも答えているのは律儀というかなんというか・・
「・・なるほど、あの人もそのような趣味があったのですね(キラーン)」
「あっ!その・・兄上は冗談のつもりであって決して・・乱暴には・・」
赤くなった頬を手で押さえながら説明するクローディア
「縄・・?」
対しアミル、男性経験がない竜人には到底想像もできない分野らしい
「いえっ!なんでも・・ないです・・」
「・・幸せそうですね・・」
照れるクローディアにため息のレイハ。彼女にしてみればクラークのようなバカップル行為をライがしてくれるとは
思えずそれが少しうらやましかったり・・
まぁそういう風に接しられたら彼女もまず戸惑うことは間違いないのだが・・

・・・・

その本人ライはロカルノとアレス、リオと共に一部屋はある物置に・・
「う〜ん・・っと確かここらにあったんだけどなぁ・・」
ごそごそと箱を取り出し中身を確認するライ
「・・具体的にどのような仮面なのですか?」
アレスやリオも一緒に探している・・・のだが目星の物はないご様子
事の発端はライが傭兵時代にクスねた物品の中に珍しい仮面があったということなのでそれを
ロカルノに上げると言い出したのだ
「・・まぁ何とも言えない物だ。いつも言っているけどここはやばい呪いがかかっている物があるから
うかつに触るなよ」
「わかってますよ〜♪あっ、この銀のペンダント綺麗〜♪・・でもなんか黒いものがこびりついている・・」
「・・これは・・血だな・・」
リオが取り出した綺麗なペンダント、隅が確かに黒ずんでおりロカルノが血痕と断定
「・・団長、これは・・?」
「んっ?確か昔暴動によって皆殺しにされた貴族屋敷にあった物だった・・かな?
たぶん呪いかかっているぜ」
「・・なんでそんな物があるんですか!?」
「なんでだろ♪昔の事は忘れたさ・・おっ、あった!」
取り出したるは綺麗な木の箱・・
「ふむっ、いい素材をしている・・どのような物か・・」
珍しくロカルノも興奮気味である
「こんなもん・・(カパッ)」
軽く蓋を取り、その中に納められているのは・・・俗に言うところの「ひょっとこ」の御面
間抜けな目つきに浮き上がった唇が確かに何とも言えない
「「・・・・・」」
アレスとリオはこんなもん探すのに手伝わされていたのかと思わずため息をつく
・・が・・
「こ・・これは!!!」
ロカルノの様子が変だ・・
「ネタぐらいにはなるだろ♪」
「とんでもない・・なんと・・洗練されたフォルム・・素晴らしい・・実に興味深い・・」
「・・ボソボソ(前々から思っていたけど・・ロカルノさんって・・何か変だよね?)」
「・・ボソボソ(個人の趣味だ。悪く言うな・・)」
感激するロカルノに明らかに引いているアレスとリオであった
「そんなにすごいのか?」
「ああ・・私が所有している『万国仮面図鑑』にも載っていない・・これは・・一体・・?」
「・・ボソボソ(ねぇアレス君〜、ロカルノさんが変な本持っているみたいだよ〜)」
「・・ボソボソ(・・ぬ・・う・・フォローが・・できん・・・)」
「あ〜、東国の代物らしい。交易隊と酒を交わした時にもらったもんだ」
「そうか・・うむ・・こんなに良い物をもらっていいのか?」
「あ・・ああ・・使わないしな」
ここまでロカルノがのめりこむとは思えず流石のライも引いている・・
「恩に着る・・では・・」
目元を隠す仮面を外し何のためらいもなくひょっとこお面を装着するロカルノ
「むぅ・・視界は狭くなるが実にいい・・」
ひょっとこ貴族ここに誕生
「そうか・・それは、よかったなぁ・・」
「ああっ、少し鏡を見てくる」
そう言うとロカルノは立ち上がり部屋を出て行くのだが
「ロカルノさん!その格好のままで歩いたら・・」

「ああああぁぁぁ!!ロカルノォォォォォォォォォォ!!!」

リオの声を掻き消すように響くセシルの絶叫・・
「・・団長・・」
「ああ・・流石のケダモノも相方が変な御面をつけているのにはショックらしい・・」
「関わると危なさそうですねぇ・・」
「二人の問題だ。ソッとしておいてやろう」
散らかした物を片付けだす三人
外ではセシルの罵詈騒音が響き渡っていた・・

そして
「わう〜♪」
「おお〜♪」
庭の野原でゴロゴロ転がすルナとメルフィ・・
「服が汚れますよ〜・・」
それを苦笑しながら見つめるはディ少年
年齢はともかく背丈が似通っている三人なだけに仲良く遊んでいるように見える
これが一人一人が一騎当千の力を持っているとは誰も思わないだろう
「ディ、うるさい!」

ピカーっと変身した銀狼ルナはディの足に噛み付く
・・っと言えども本気噛みではなく甘噛み程度でディも全然痛そうじゃない
「はいはい・・」
「ぬぅ・・面白そうじゃな!妾も噛んでいいか!?」
「ワン!」遠慮なく噛んじまえ!
「・・はぁ、あの・・余り行儀悪くしないでくださいね。」
何も知らないディ少年、メルフィの事をただのわがまま少女かと思っている
「任せろ!では行くぞ!」

ピカッ!

「・・へっ?」
唖然とするディ、そこにいるのは先ほどまでの少女ではなく黒い鉄のような肉体を持つ飛竜・・
『あ〜ん♪』
頭に響くメルフィの声、しかしその上機嫌な声とは違い大きく開いた口は正しく一撃必殺な凶器
甘噛みだろうが致死レベル超えてます
「ちょ・・ちょっ・・ちょっと待ったぁぁぁぁぁ!!」

ガチン!!

咄嗟に飛びのいたディだったがつい今しがたそこにいた地点に飛竜の牙が合わさる
「死にます、絶対死にます!」
『加減はする。ルナ、大丈夫だな?』
「・・・(ニヤリ)ワン!」もちろん♪
「うそだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
一目散に逃げ出すディ・・
『おっ、おっかけっこか!妾に勝てると思うな!』
わざわざ飛ばずに地を走りながらディを追うメルフィ、追われるものからしたらかなり怖い
「メルフィさん!本当に危ないって!」
ズシンズシンっと地響きを鳴らしながら追ってくる飛竜にディは必死だ
本気で迎撃すれば撒くこともできるのだが如何せん相手は客人
それは本当の最終手段・・
後は飛行して空に逃げようとも考えたが・・そこらは相手の領域
途中で体勢が崩れたら非常に危険だ
『待て〜♪』
童心なメルフィさん、しかし子供ほど純粋で残虐なものはなく
加えて
「ワンワン!」待て〜♪
「ルナまでぇぇぇぇぇぇぇ!!」
能天気な脅威に流石のディも一目散に逃げる
魔法で妨害しようとする考えも思い浮かばず・・
「ガウ!」おら〜!
そこに銀狼ルナが地を這うようなタックル!

バク!

「う・・あああっ!」
足を取られさらには片足をガブリっと・・
全力疾走中のディが転倒するには十分な効果を発し見事ディ、転倒・・
『そこまでじゃ!優しくしゃぶってくれる!』
見事な連携に大口開けるメルフィ・・
自覚ないがラクに殺せます
「こ・・こうなったら!!」
眼前に迫り来る飛竜に魔法で対抗しようとしたその時!
『メルフィ様!!』

ピタッ・・

『おお・・アミル』
ディとの間に割って入る救世主アミル・・っと言っても同じく飛竜状態なのだが・・
『この人を殺す気ですか!?』
『遊んでいるだけじゃて』
『遊びで魔法を使いますか!まったく!飛竜状態でジャレたら人間には脅威なんですよ!?』
もろお怒りなアミルさん、その気迫にメルフィもたじろぐ・・
『・・ま・・まぁ悪かったな・』
『反省してください、族長に報告しますよ』
『わ・・妾が悪かった!だからばあちゃんに言うのは・・』
『ならばみっちり説教です!こっちに来てください!』
ピカッ
人形態になるアミルとメルフィ、アミルなんかは美しい顔が怒りに染まっている
「さぁ・・こっちです」
「うう・・」
連行されるメルフィ、完全に萎縮しており見た目相応な態度となっている
こうなるとアミルは強いことが以前から知っていたりするのだ
「・・クゥン」面白くない〜
それにルナは何故か不満そう・・
「いや、ルナ・・・死んでるって・・」
「ガウ!」根性!
「そんな精神論だけで切り抜けられる状況じゃないです」
屋敷よりだいぶ離れた地点で二人っきりになったディとルナ
とりあえずは危険はさったとディは安堵の息をもらすのだが・・

”・・ほう、ディ・・、あの小娘に遅れを取ったカ・・”

何時の間にかディの後ろで腕を組んでいるは師匠ルー
「・・あ・・いや、遅れというか遊びの延長ですよ」
「言い訳はそれだけカ?」
何故か超不機嫌なルー、言葉に冷たさが感じられる
「へ・・・言い訳って・・そうじゃなくて・・」
「コッチコイ、あんなトカゲに遅れを取るなど未熟もいいところ、私が鍛え直してヤル!」
「し・・師匠!?ちょ・・ちょっと・・」
明らかにヤバイ気配、必死で中止を願い出るが聞き入れてもらえず
「・・・ワウ〜」いってらっしゃ〜い
当然ながらルナの助け舟もない状況
「僕は何もやってなぁぁぁい!!」
ディ少年に幸を・・


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