「翼の英雄」


黄昏の空に一頭の竜が駆ける
それは、雄々しくも優雅であり正しく空の支配者に相応しい・・
黒く強固な鱗に銘刀の如く鋭い爪、知性を感じさせる静かな眼差しが遥か地平線を見ている
そしてその背にまたがる一人の騎士が・・
竜騎士特有の竜鱗を使った鎧を着ており手には長身のトライデントを持っている
兜はつけておらず長めの美しい銀髪が風になびき、
緋色の瞳は同じく竜と同じ視線の先を見つめる

「敵影無し、この状況で静かなものだ」
竜に騎乗している男が呟く
”もはや人もいない・・か。呆れるものだな”
突如男の頭にハスキーな言葉が響く・・、知性を感じさせる大人な声だ
「そう言うなよ、ヴァーハムート。人間って奴はそういうもんだからな。最も・・
竜にしてみれば愚かなようにしか見えない・・か」
”わかっていることを・・。まぁ我等、竜族も人も良き者もいれば悪しき者もいる・・。
主のような変わり者もな”
ヴァーハムートと呼ばれた声の主、騎乗している竜の口元が少し緩む
「変わり者か?まっ、人語を解する竜に認められること自体変わり者か」
”そうだな、主は身分、種族の違いを気にせずこうして我とも普通に話をする”
「それが異常か?竜騎士なんか結構いるぜ?」
”いつも言っているようにあれは人語も解せず欲にのみ従う下位飛竜族・・。知識を持ち
それを扱う我等高位飛竜族と一緒にされるのは不愉快だ”
「・・プライドあるな〜」
”それよりもいいのか?邪神が現れてもう一月、国内の2/3は壊滅的な被害を受けている
我等が偵察に出たのはいいがその間にも街でできることがあると思うが・・”
「復興は部下も総動員している、まぁ、一人の人間と一頭の竜だけでも刺し違える事ができるだろう。・・だが、
どうやら現れる様子はないな」
”神が現世に姿を現すにはそれなりの条件が必要、奴はその理を無視して現れたようだが
頻繁にできることでもないらしいな”
「条件・・、どんなもんだ?」
”満月の夜だ。月の光というものは魔性を持つ。それが大気バランスを崩し別界との壁を緩める・・、
まぁ、他にも色々とあるが主に話したところで理解もできまい”
「どうせ俺は戦うことしかできない馬鹿だよ。しかし、次の満月の夜が・・この国の最後か」
”そうなるだろうな、強引な降臨とは違い次は正攻法だ。以前のように突然消え去ることはないと考えたほうがいいだろう”
「・・・、そこまでわかっているんだったら早く教えろよ」
”確信が持てるまでそうそう口にはしない。この偵察で状況でようやくわかったことだ”
「思慮深いことで何よりだ。よしっ、戻ろう・・。結論がわかれば対策も立てられる」
”対策か、あるものだろうかな・・”
そう言うと竜はクルッと旋廻し高度を下げながら低空を駆けていった・・



竜が飛び降りたのは先ほどからかなり距離が離れた所にある城・・
っといっても外壁などはかなり崩れており、見下ろす形になってある城下街も未だに黒い煙が
立ち上っている
城の庭にヴァーハムートは着地し、男は軽く飛び降りた
「ご苦労様です、ダンケルク団長」
待っていたと思われる騎士数人が竜に乗っていた男・・ダンケルクに声をかける
「おおっ、お前等もご苦労。街の様子は?」
「それが・・」
「別に言葉を濁さなくても良い。おおよその状態なんか見ればわかるんだ」
「すみません、死者多数、騎士団員も手伝って郊外に積んでいます。街の復興作業も生き埋めになった人間を探す作業になってます」
「そうか・・、俺は姫に今後のことを話す。お前達は住民に炊き出しをしつつ
騎士達に酒を与えろ、・・しばらくは安全だ」
「安全・・ですか?」
「ヴァーハムートが断言したんだ、間違いはないさ」
「!!飛竜様がですか!わかりました!では労をねぎらわせるように手配します」
「頼む」
急いで走り出す騎士数人を尻目にダンケルクは崩れた壁から街を見渡す
「・・・・、これが栄を誇った街・・か」
”感傷に浸っている暇があるのか?”
「わかっているよ、お前も宮殿の方で休んでいてくれ」
ヴァーハムートに声をかけ、ダンケルクは静かに城内へと赴いた

城内では兵達がガレキを取り除いている最中だった
すでに夕飯時だが手を休めるものは一人としていない。ただダンケルクが通るのを気付くときちんと敬礼をする。
ダンケルクもそれに応えるように軽く敬礼をしながら一際豪華な扉に
入って行った

「ダンケルクです。偵察の任を終え参上しました」
そこは静寂に包まれた王の間、ダンケルクの声が響くなり一人の女性が走り出す
「ダ・・ダンケルク。よくぞ・・無事で・・」
長く美しい金髪に白いドレス、目鼻が整った美しい顔立ちで澄んだ蒼色の瞳。
幼さがまだ残っている女性だが目が赤くなっており平静さがなくなっている
「偵察だけです。何かあってもすぐ逃げますよ」
「・・、お父様もお母様も亡くなってしまい貴方まで失ってしまったら・・私・・・私・・」
「ご安心ください、ソフィア姫。俺はそう簡単にくたばりませんよ。
それよりも今や王や王妃が亡くなられた中、唯一生き残られた国の代表です。もっと毅然としていただかなければ・・」
「ダンケルク・・」
「御二方との別れは・・すみましたか?」
「ええ・・すみません。もう少ししっかりしないと・・」
(・・1度に母と父を失い、国の代表となるんだ・・無理もない・・)
ダンケルクの言葉に無理に強がるソフィアに哀れむような眼差しを見せるダンケルク

つい一月前、国に突如として現れた邪神により国は崩壊し、その余波で城の被害を受けた
崩壊した天井のガレキに巻きこまれて王と王妃は亡くなったのだ
しかし、そのことを内部の者は国民に伝えることはできず偶然外に出ていて無事だった姫に
代表として指揮をとってもらうことになったのだ

「・・姫、それでですね。偵察中にヴァーハムートがある確信に気付きました」
「飛竜様が・・・ですか?」
「ええっ、奴は次の満月の夜、再び降臨するとの事です。以前の襲撃時は強引な降臨故に
限界があって消滅したようですが次回はそれがない・・」
「それでは・・」
「次こそは、どちらかが滅するまで続くことになります」
その言葉に顔色を青くさせるソフィア
「で・・では、どうすれば・・・。次の満月までということはそんなに期間ありません!」
「・・・・、戦力を立てなおす事も、他国に亡命する手続きも間に合わないでしょう」
「ああっ・・ダンケルク・・・」
「・・、その時は姫は一時、どこかに身を潜めてください。俺とヴァーハムートで奴を討ちます
生き残った者とどこか静かな処へ・・」
「なりません!貴方まで失っては・・」
「俺の役目は主君たる貴方を守ること、そのためなら命も差し上げます」
「どうして・・、身分の違いを気にしない貴方がどうして私にだけ・・」
「俺は騎士、貴方は国の長。同じには・・なれません」
「・・例え、昔は兄妹のように慕っていても・・ですか」
その言葉にダンケルクは少しうつむく
「・・あのころはよかった。ですが今は今です。ともかく、今日はもう遅い。
今後の対策はまた明日話しましょう。俺はこれで」
「ダンケルク・・!」
ソフィアの言葉を振りきるようにダンケルクは王の間を逃げるように出ていった・・。
その後姿をソフィアはずっと見つめ続けていた


その夜
王の間の上にある自室にてソフィアは静かに寝転んでいる
部屋は所々煉瓦が落ちているがそうも言っていられない
彼女は豪勢なベットに寝巻きのまま寝転び小さな水晶玉を見つめている
水晶の中には小さな少年と少女が仲の良さそうに手を握っている・・
少年は綺麗な銀髪に緋色の瞳、少女は小奇麗なドレスに可愛いティアラを被っている
それは幼い頃のダンケルクとソフィアであり、映像を魔導により処理され水晶に擦り込んだ
「記憶球」と呼ばれるものだ
「ダンケルク・・。私が国の代表になっても・・、この気持ちは変わりはありません」
水晶の中の少年に静かに呟く
彼を愛している・・、例え彼が騎士でなくてもその気持ちには変わらないだろう
・・記憶球に映る楽しかった思い出を抱き締めうつらうつらしていたソフィアだったが・・

ガチャ・・

突如、自室の扉が開き何者かが入ってくる
「誰です・・」
「夜分失礼します」
それは一人の女騎士だ。疲れた表情で栗色の髪もすこし乱れている
「どうしたのです・・か?」
「ダンケルク・・団長から伝言を預かってます・・」
「ダンケルクから、ですか。どうぞこちらへ」
ソフィアの言葉に無言で頷く女騎士・・、しかし彼女に見えないようにそっと部屋の鍵をかける
足元もどこかおぼつかないが外の作業など経験したことのない姫にとっては
仕事での疲労がたまっているとしか思っていないようだ
「・・・・・」
やがて寝床のベットの前でしゃがみ顔をうつむかせる女騎士・・、
一国の代表の前だと当然の行為・・しかし肩が少し震えている・・
「礼など構いません。さ・・さあ早く」
急かすソフィア、ベットの上から女騎士を見下ろす
その時!

ガバッ!!

突如女騎士がソフィアに襲いかかりベットに押し倒す!
「!!」
押し倒されたソフィアの両腕はしっかりと押えられ身動きがとれない・・、それ以上に女騎士の顔を見て青ざめる
「・・・ダン・・・ケルク・・・団長・・ア・ウバァァァ!」
口の奥から青黒い触手が飛び出す!
「きゃ・・ンブッ!?ンンンンンンンン!!」
ソフィアが悲鳴をあげる前に触手の先端が口に侵入し大きく星型に開く。
さらに星型の中心から一周り小さい触手が伸び姫の喉を通って体内に侵入していった・・
女騎士の目は焦点が合わずビクビクと痙攣するのみだ。
「ンン!!ムンンンンン!!!!」
必死で振り解こうとするのだが抑えつけられており首を振ることしかできない。
しかしそれをしたことで口の触手が外れるはずもなく、触手の表面についている粘膜が雫となって顔にかかるだけだ。
そんな中でも身体の中に入った触手は奥に侵入し、突如として何かを吐き出した・・
「ンンン!」
何かの液体のようだがソフィアにはそれがわからず身体が焼けるような感覚に震えてしまう
さらに女騎士の姿をしたクリーチャーは行動は続ける

ゴポゴポ・・

頃合いを見計らっていたのか股間が突如盛り上がり口から出したものよりさらに太い
触手が現れる・・
秘部から飛び出たようで、それは女騎士が着ていた服を破り幾つも出てソフィアの身体を這い出す
「ンン・・・・ン・・・!」
何をされているのかまるでわからず目からは涙が止めど無く流れる・・
触手の動きは元から決められていたようで秘部から出た触手は自分が出てきたところと
同じ場所を探して彼女の下着の中に滑りこみ正確にソコへと辿りつく
「ンン!?ムウン!!」
自分の大切な部分に当たる触手にソフィアは硬直する・・
・・しかし、侵入を拒むものはなく・・・

ズブッ!! 

秘部に触手が一斉に突き刺さる!
「ンーーーーーーーーーーーーー!」
一際強い悲鳴を上げるソフィアだが、それが部屋の外まで届くことはなかった・・


姫の寝室で恐ろしいことが行われているその時・・
「・・・ふぅ、ソフィア様はこれから・・どうするつもりか」
騎士団長の肩書きは伊達でなく寝室もとりあえずは臨時に個別の部屋を用意され
その中でダンケルクは静かに呟く。

部屋の外ではやっと救助作業に区切りがついたのか何人かの足音が聞こえた。
兵士達はどうにかなると希望を抱いているのだが彼らとは違いダンケルクは真実を知っている
「・・どう転んでも、騎士団では邪神には勝てない・・な。姫・・・」
”思い悩んでいるようだな”
突如頭に響くヴァーハムートの声・・。姿こそ離れているが会話ができるようだ
「悩む?いざとなれば刺し違えるまでだ」
”我が言っていることはあの娘の事だ”
「・・・・、姫は生きていただく。これからも・・」
”そうではない、あの娘の気持ちだ。主とて好いているのだろう?”
「うるせぇ、俺は騎士だ。守るべき対象であり・・」
”そんな理屈で自分を納得させるつもりか?ならば主の死は確実だ。心が乱れている”
「・・人の心を勝手に覗くな・・」
低く殺気を込めてダンケルクは言う・・。
”ふんっ、我としては戦闘に支障がでなければどうでもいいんだがな。
どうやら死に場所は決まったようだ”
「随分嬉しそうだな?」
”長年生きていれば無様に死ぬのが恐くなる・・。
戦士として死ねるのであればそれだけで至福だ”
「・・すまんな」
”ふん。・・!!・・おい、その娘に異常が起こっているようだ”
突如ヴァーハムートが言った言葉にダンケルクは顔を引きづらせる
「なんだ・・と?ここは俺達の居城だぞ?異常なぞ・・」
”生命力が減っていっているのがここからでもわかる。ともあれ、原因を調べろ。我もそちらに向かおう!”
彼の言い方からしてかなりの切迫した状態なのがわかる。
ダンケルクは素直にそれに従い数秒で装備を整え部屋を出ていった・・



「!!姫!!失礼します!」
急いで階段を駆け上がり彼女の部屋の扉を叩く!
しかし返事はなく何かが動いている音がかすかに聞こえるくらいだ
「鍵がかかっている・・?ちっ、失礼します!」
嫌な予感を押えきれず扉を蹴破る・・

「ンン・・・ンンン・・・」

部屋に入ったダンケルクはその光景に思わず硬直してしまった
女騎士の身体から触手が生えてきてソフィアにそれをねじ込みグチャグチャにかき回して
いるのだ
彼女の顔からは絶望に満ちた表情で涙を流している
口も塞がれているが直も弱々しく唸っており、寝巻きは触手の液体で濡れきっている
「姫ぇ!!貴様!!」
我に帰りダンケルクは剣を抜き、問答無用に女騎士を後ろから突き刺す!!

グサッ!!!

女騎士だったモノは彼には全く注意しておらずまともに腹を貫通され、
痙攣したかと思うとぐったりと倒れた
触手もそれに合わせてソフィアの身体を解放し暴れまわったが見る見るうちに乾き出し、干物のようになって動かなくなった
「大丈夫か!ソフィア!」
思わず関係を忘れて叫ぶダンケルク
口と痛々しく腫れた秘部からは不気味な青い液体が垂れており、下腹部が異常に膨れ上がっている
「ダ・・うぇえええ!!」
ソフィアは彼の名を呼ぼうとしたが急に嗚咽感がこみ上げ床につっぷして食道を満たした液体を吐き出す・・
秘部から流れ出る液も加わって彼女の周りに青い水溜りができるぐらいだ・・
「これは・・一体・・」
”瘴液だ。それを大量に注がれたようだな”
「瘴液・・だと?なんだ、ヴァーハムート?」
”瘴気というものはお前も知っているだろう?心に混沌を呼び黒く染める物だ。
それを液体化したものが瘴液。体内に影響を及ぼす”
「及ぼす・・?注がれたソフィアはどうなるんだ!」
”落ちつけ。体内の組織が瘴気に犯され魔を受けやすくなる。
つまり、発情をして不浄な種子を宿しやすくなるわけだ。どんな低俗な魔物のモノでも・・な”
「・・・くっ、これも邪神のせいか・・」
”そうだろうな。だがこれで奴の行動が見えてきた。もう城に着く。少し待っていろ”
「待っていろって、お前!この状況でどうする気だ!」
”少しは落ちつけ。解決策があるから待っていろ”
そう言ったきりヴァーハムートの声が聞こえなくなる。
対しダンケルクはむざむざと主君の危険な思いをさせたことに歯軋りをする

「ダン・・ケルク・・」
「!?姫、大丈夫ですか!」
ようやく口が利ける状態になったソフィアを抱き起こす
「久しぶりに・・言ってくれましたね・・『ソフィア』って・・」
やつれきった目、口からは青い液体が垂れていたが口調はしっかりとしており何故か嬉しそう
「姫・・」
「貴方が・・助けてくれるって信じてました・・。」
「お身体は・・」
「わかりません。・・御腹が熱いです。それよりも、昔のように・・」
「・・・・」
彼女にとっては自分の今の身体よりも昔のように彼が接してくれる事のほうが大切のようだ
「お願い・・。ダンケルク・・」
「ソフィア・・、そこまでして俺の事を・・」
「・・・・」
再び自分の名前を呼んでくれたことにソフィアは少し微笑んだが静かに目を閉じた
ダンケルクは慌てて脈を取るがただ気を失っているとわかり少し安堵の息を漏らす・・
それと同時に庭のほうから風を切る音が響く・・どうやらヴァーハムートが到着したようだ

それよりダンケルクはとりあえずソフィアの服装を正したのち兵を呼んだ
死亡した女騎士の状態の確認、ソフィアの身の安全の確保を確認したのちに彼は庭へと
赴く
”ふん、こうまで城が崩れたのならば直接中まで入ったほうが早いか・・”
「復興の邪魔だ。それよりも姫の状態を治す方法はあるのか?」
”我の鱗を使え”
「ああっ?」
”竜・・いやむしろ龍だな。高位の存在の竜には特殊な力を宿している。
我の喉にある『逆鱗』と呼ばれる鱗もそれだ。砕いて飲めば不浄を払えるだろう”
「便利な身体だな」
”ふんっ、だからこそ愚かな人間がその価値のために竜に戦いを挑もうとする・・。全く愚かだ”
「ともあれ、その首のところにある変な鱗を飲ませれば大丈夫なんだな、よこせ」
”わかった。早く飲ませろ。瘴液があまり深くまで染みこむと手遅れになるぞ”
そう言うとヴァーハムートは大きな手で自分の逆鱗を取る・・。
人間で言うならば自分の顎鬚を引っ張って取るような感覚なのか。
ダンケルクはすかさず部下の一人に声をかけ、ヴァーハムートに言われた処方を伝える
自分が飛んでやりたかったが彼には他に確認することがある・・

「でっ、お前の憶測というものはなんだ?」
”邪神の行動・・。いや目的というべきか。あの娘の体内を黒く染めようとしたのはまぎれもなく
邪神の仕業だ・・液から同じ臭いがする”
「じゃあ邪神は姫の身体に自分の仔を宿そうとしているのか?」
”だろうな、以前の襲撃時。その身体を見て我も驚いた・・”
「ああっ、あのドロドロにただれた巨人・・。腐っているような感じがしたが・・」
この国を襲った神はこの二人(?)が言う通りの容姿であり青黒い巨人が全身の肉がただれ落ちかけてよつんばになったような姿なのだ。
”正確には仔ではなく自分の分身・・だな。自分の核の一部を撃ち込んで自分を育てるつもりだ
あの身体は限界を超えている。
この世界との相性が悪いのかあるいは向こう側では狩られる方なのか・・。
そこでこちらに住むことにし、こちらの環境に適した身体を得るために人間の腹を使う・・っということだ”
淡々と述べるヴァーハムート・・。彼にとっては下らないことらしい
「じゃあなんで姫なんだ?あの女騎士も取りこまれているようだったし・・」
”器の問題だ。あの娘は王族であり民の羨望の眼差しで見られている。
そうした者に宿すのが一番適しているのだ。人から見て神に近い存在となるのだからな”
「くそ・・、じゃあ邪神の狙いは姫一本か・・」
”そのための下準備は終わった・・。娘の身体を自分を宿すために変えたつもりだろう
・・まぁ我の力でそれも水の泡となったがな。
だが満月の夜は間違い無く娘に向かって迫ってくるだろう”
「ちっ・・・・」
”逃げる・・っという選択肢は無くなった。あの身体と人だ。
我の背に乗せるとしても華奢な娘などすぐに吹き飛んでしまう・・主が支えていようとな・・”
「・・・・・、覚悟を決める時・・か」
”やり残した事があるのならば済ませろ。時間はもうないのだぞ”
「・・・・・・」
ヴァーハムートの声にダンケルクは静かに頷きその場を去っていった



城内では先ほど逆鱗を渡した兵が階段を降りてきていた
ダンケルクと同じ銀髪だがどことなく頼りなさそうだ
「団長、指示通りにすればお姫様の状態は回復しました。身を清め今は落ちついています」
「そうか、ご苦労だな。」
「いえっ、それとあの女騎士だったモノは、我が軍の第12陸師騎団に所属していた女性だったことがわかりました。
彼女、この間の襲撃の時に行方不明だったようです。
・・それで、検死の結果、あの管がほとんどを食い荒らしており・・」
「それ以上言わなくてもいい。一応触手がまた生えて来たりしたら厄介だ。
丁重に火葬してやれ。それが終わったらお前達もゆっくり休め・・結論はでた」
「結論・・ですか?」
「そう、結論だ」
自分に言い聞かせるようなダンケルクの言葉に兵は首をかしげたが
すぐに作業に戻っていった・・・
それよりすぐ、ダンケルクはソフィアのいる部屋へと急いだ。
寝室は襲われた後、異臭が漂っているので別の客間へと移動したのだ

静かに扉を開けるとソフィアが背を向けて鏡台に座っていた
すでに身を清め、着ている物も新しいものへと着替えている
「姫、身体は大丈夫ですか?鱗を使用して元に戻ったと聞きましたが・・」
「ダンケルク・・・」
振りかえるソフィア・・、顔つやもよくなり、膨らんでいた下腹部も元に戻っている
しかし表情は暗く元気がなさそうだ
「姫・・・。」
「大丈夫です、身体の異常も不思議と治まりましたし・・その・・あの奇妙な液も全部・・」
顔を赤らめるソフィア・・。内容が内容だけにそれも仕方ない・・
「そ、そうですか・・。しかし姫の純血をむざむざと・・」
「それは構いません。たくさんの人が死んでしまっている中私一人がそのことで落ちこんでいられません」
「・・・」
「それよりもダンケルク。やはり・・、ソフィアとは言ってくれないのですね」
「・・・・・。それよりも話があります」
あえてその事に応えずダンケルクは話をはじめる
「姫の襲撃によりヴァーハムートと話し合った結果、邪神の目的は貴方に子宮を借りて生まれ変わることのようです」
「私の・・」
「そのためにあの青い液体を注入していたようです。ですので、次に現れた時は間違いなく姫に向かってくるかと・・」
「そう・・ですか。もはや今から逃げてもあの巨体が追いかけてくるならば・・」
「俺達もそう考えました。どこから現れるかわからない、さらには巨人相手には逃げきることはできないでしょう・・」
「・・・ならば、私もこの国と・・、貴方と運命を共にします」
深くゆっくりと言い放つソフィア、目には決意の灯火が・・
「なりません」
「どうして!?離れて絶望するならばせめて・・、せめて貴方と!」
「邪神は俺とヴァーハムートで退けます。貴方は安全なところまで逃げて事が終われば民を
率いて国を再建してください。・・身分の違いを気にすることのない豊かな国を・・」
「ダンケル・・ク」
「俺は、身分の違いというものが嫌いだった。例え貧民だろうと貴族だろうと変わりなく接してきたつもりだ。
だがやはり、国を治めるとなれば王という立場との区別をつける必要はあると
気付いた。・・だから、貴方ともあえて違う存在として接してきたのです」
「・・・・・」
はじめて知るダンケルクの苦悩、それを聞きソフィアは唖然とする
「貴方が造る国は・・差別のない国にしてください。
王と民がわけ隔てなく話せる・・そんな国に・・」
「嫌です。私は・・貴方の傍にいたい・・」
「姫、いや・・ソフィア、しっかりしろ。お前は俺が守る。だからお前は国を守れ・・」
「ダンケルク・・あっ・・」
昔の口調に戻ったダンケルク・・。ソフィアを抱き寄せ唇を重ねる。
二人は自然と目を閉じ、気持ちを確かめ合った・・
「・・・、今のうちに言っておく。お前が好きだ。ずっと・・ずっと前から・・」
「!!・・やっと・・やっと言って下さったのですね」
「すまない・・ずっと言えなかった・・」
「ダンケルク・・、私も貴方を愛してます。誰よりも・・何よりも・・」
「ありがとう、君は俺の命にかけて守って見せる。・・生きてくれ」
それは死を覚悟をした漢の言葉・・、ソフィアはその意味を察し無言で目に涙を浮かべる・・
「わかり・・ました・・。貴方が愛する国を守るため・・私は生きます」
「・・ソフィア・・」
「ダンケルク・・」
再び唇を合わせ、ベットに倒れる二人・・
もはや言葉は要らず、気持ちが二人を動かす
「貴方のぬくもりや声も・・、満月がかける頃にはなくなってしまうのですね・・。後少しで・・」
「違うよ、今この瞬間が永遠なんだ」
そう言いソフィアの服を脱がせる・・、白く綺麗な肌は少し高揚しており色気を放っている
「この胸も、この唇も全て貴方のものです・・。愛してください」
「・・・ああ・・」
決して大きくはないが綺麗な胸を優しく揉み出す
「あ・・・・っう・・はぁん・・・。すごく・・恥ずかしい・・です」
胸を揉まれるだけで艶のある声を出すソフィア
「綺麗だ、ソフィア」
そう言い、刺激を感じ固くなった乳首を吸い出す
「ああっ!うあ・・・あああ・・・・はぁ・・」
ダンケルクに吸われるだけで激しく悶えるソフィア・・。経験こそないが本能に従っているかのようだ
「ソフィア、下着越しにも濡れているのがわかるぜ?」
「や・・やぁ・・」
股間を指で擦られて悶える・・、触手により儚くも処女を奪われめちゃくちゃにされた秘部だが
今は腫れあがっておらず綺麗な形を保っているようだ
「ソフィア・・、そろそろ・・」
「はい・・私の中に・・貴方を入れてください・・」
自ら彼を受け入れるため下着を取る・・、そこにはすでに愛液が滴るほどに出ており
物欲しそうにヒクついている
「ああっ・・いくぞ・・」
「きて・・ダンケルク・・・」

ズン!

一気に挿入・・、ためらいも無くダンケルクのそれはソフィアの中に入っていった
「うううん・・!!!・・い・・・痛い・・」
「まだ・・慣れていなかったか・・?」
「ちゃんとした交わりはこれがはじめてです・・。ですが・・貴方ならば、耐えられます」
「ソフィア・・」
「ん・・慣れて・・きました・・。動いてください・・」
「ああ・・わかった・・」

ズンズン!

強靭な筋肉が繰り出す突きにソフィアは言葉にならない衝撃を受けダンケルクの首に腕を回す
「ああ!!うんっ!は・・激しい・・」
ダンケルクもそれに興奮しており速度を上げる

ズンズンズン!!!

「ああああっ!ダンケルク・・、私・・切ない・・です・・もっと・・・あん!」
「ソフィア・・出すぞ!」
「あうっ!!は・・はい!お願い・・します!!」
「ぬおおおおっ!」

ドプッ!!

彼にも聞こえるくらいの射精の音がしソフィアの体内にありったけの精を放つ・・
「ああああああっ!!」
射精の勢いによりソフィアは初めての絶頂を迎える。
二人は抱き締め合いながらしばし白い世界を漂っていた。

しばらくして
「ダンケルク・・、御腹が・・パンパンです・・」
ベットに共に横たわる二人・・、情事が終わってもソフィアはダンケルクから離れようともしない
「わ・・悪い。少し出しすぎたか・・」
「構いません。これで・・貴方の子を宿していれば嬉しいのに・・」

「ソフィア・・」
「次の満月まで・・今のままでいてくれますか?」
「お前が・・それを望むのなら・・んっ!?」
言い掛けたダンケルク、突如声を止める

”聞こえているか!!取り込み中悪いが事態が変わった!!”

頭の中にヴァーハムートの声が響く
「??どうしたのです?」
「ヴァーハムートからのテレパスだ。どうした!?事態が変わっただと!?」
”ああっ、向こうも必死のようだ。娘の肉体改造が失敗したのに気付きまた強引に降臨しようとしている!”
「なんだって!!!」
”すでに磁場が緩んでいる。もはや満月の夜まで持たない身体なのかもしれないな・・
ともあれ、準備をしろ!”
「わかった!すぐ行く!」
「どうしたのですか・・?」
「・・・邪神が現れるようだ」
「そ・・そんな・・、私達には短い時間すら共にいられないのですか・・」
「・・・、こればかりは・・。ともかく身支度を整えてくれ!俺は軍の連中を起こして護衛につける。」
そう言うとダンケルクは軍服を着だしソフィアの頬に口付けをして飛び出した


すでに夜は明けかけており、外は朝の霧が低く漂っている
しかし、鳥は囀りを忘れ人々は足早に移動をしている
生きている住民は城の門付近に集まって不安そうに騎士団を見ている。・・数はそうおらず
せいぜい200人いるかいないか・・
そんな住民を誘導する兵達。そしてそれを余所に騎士団は静かに整列している。
・・その先頭には完全武装した竜騎士ダンケルクの姿が・・
「・・なるほど、あの黒い円から出てくるわけだな・・」
遥か前方の空間が歪みブラックホールができている。そこからはこの世のものとは思えない
叫びがこだまし、朝の町を包んでいる
”この叫びからしても余裕がないようだな。その状態ならば勝機もあろう・・。良くて刺し違えだが”
「全く、流石は一匹竜。心強いな」
じっとブラックホールを見ながら言ってのけるヴァーハームートにダンケルクも苦笑いをする
「ダンケルク・・」
そんな中騎士達を割ってソフィアが歩いてくる。
覚悟を決めたようで威風堂々とした足つきで顔つきも一国の代表として相応しいものだ・・
「ソフィア姫。これからあの腐った巨人と刺し違えて見せます」
「・・・、頼みます。この国の民の命が貴方の双肩にかかっているのです・・、負けないで下さい」
「姫・・、御意に。それと・・」
「・・はい?」
「俺のことは忘れてください。そして、残った民を頼みます」
最後に突き放すダンケルク・・、ソフィアは一瞬目を見開いたが堪えるように平静を保つ・・
「わかりました・・。ではっ、私と残った民は国境付近まで移動します」
足早に馬車に乗りこみ出発の指示をだすソフィア。顔は綺麗なドレスの裾で隠している・・
「・・どうか・・達者で・・」
ダンケルクもこみ上げる感情を抑え裏門へ向かう馬車を見てやる
民もそれに続き移動を開始したようだ

「団長、ご命令を!我等騎士団、骨から肉が剥がれ落ちようとも戦い抜いてみせます!」
「邪神を打ち払いソフィア姫の治める国を治めるため!我等の命捧げます!!」
民衆が動き出す中、いよいよ騎士団も戦闘かと士気を高める
「・・お前等に命令を出す。これが最後の任務だと思え・・」
静かなダンケルクの声・・、それに騎士団はゴクリとツバを飲み鎮まる
「・・お前等の任務は姫と民衆の護衛だ。安全になるまで誰一人死なすな」
「団長!!邪神は・・」
これには騎士達も反発する!
「邪神相手は俺とヴァーハムートで十分だ!お前達は戦後処理を頼む」
「団長・・」
「さあ行け!!お前達の分まで俺が戦ってやる!!」
「・・わかりました。団長・・御武運を・・」
ダンケルクの言葉に騎士団員は静かに頷き、先行した民衆を追う・・

「お前ら!!!」

立ち去る騎士達に突如としてダンケルクは叫ぶ

「・・・・、ソフィアを頼むぞ!!」

そう言い敬礼をする・・。騎士団員もそれが意味することを察し涙を流しながら敬礼をした
”美しいものだな”
「お前らしくない。・・っうかいいのか?俺一人でも邪神を仕留める覚悟だぜ?」
”抜かせ、前にも言っただろう。我は戦士として死ねることが本望なのだ”
「・・お前、人間だったら確実に変人だろうな」
”ふん、さぁ・・登場だ”
ヴァーハームートの声と重なるようにブラックホールは大きさを広げる

ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

巨大な地響きとともにそこから現れるのはダンケルクの形容そのままの腐った巨人・・。
青黒い表面はさらに黒さを増しており腐った野菜のようだ
「ったく。あんな化け物にソフィアをやるかよ・・いくぜ!ヴァーハムート!」
”承知!!”
崩壊しかけて城壁より高く飛び立つ黒い飛竜・・、大きく翼を広げまっすぐに邪神へと向かって行った・・・


邪神と呼ばれる巨大な魔物は市街地に降臨し顔らしきものを移動させ目標を探している
ただれた肉は地を覆い目鼻口は黒くぽっかりと開いている
容姿は前回に比べて壮絶さを増しており正しく『奇塊』と言える・・
そしてそれに向かってまっすぐに飛来する黒飛竜
「一気にかますぞ!ヴァーハムート!」
”承知している!落とされないように必死につかまっていろ”
そう言いながら翼を大きく広げ、その中に4つの魔方陣が展開する・・
”推して・・・参る!”
そのまま左にローリングしながら発動!!

轟!!轟轟!!轟!!!

次々と発射される紅の魔弾・・、とんでもない早さで邪神へとぶつかり爆発を起こす!
「くっ・・。いつもながら豪快だな・・」
手綱をしっかりと握り振り落とされんとするダンケルク・・
自分の身体を回転させるのではなくそれに乗っているのだから天地が絶えず交代する
遠心力はかなりのものとなっている
”うおおおおおおおおおおお!!!”
そんなことは全くお構いなしに連続して紅の魔弾を放ち続けるヴァーハムート
並の魔術師ならばすでに魔力を使い果たし死に絶えるくらいの消費だがそこは超越した
存在、まだまだ元気そうだ・・


ドォンドォン・・

対し爆発の煙に包まれる邪神・・煙の中から得体のしれない肉片が飛び散っているところを
見ると無傷ではないらしい
「・・、流石は飛竜様だな」
ある程度出し尽くしたのか詠唱を止め様子を見るヴァーハムート・・
”それほど余裕でもない・・、相手は神、どのような力量かわかるものでも・・ぬ!?”
「なんだ!?」

ゴォォォォォォォ!!

煙の中から突如それを切り飛び出す無数の触手!
それは大地から天に上る雨の如く当たりを覆い尽くして昇天する・・
「回避だ!」
”これほどの広範囲・・避けれるか!”

ドス!ドスドス!!

襲いかかる無数の触手はどれも先端が鋭く尖っておりダンケルクとヴァーハムートを貫いている
「がはっ・・わき腹をえぐられた・・か」
”ふっ、主はまだ軽傷か。我は右翼と首をやられた・・、あまり長くは持たないな・・”
触手は正しく邪神から放たれた針の如く彼らを貫いたところでピタリと止まっている
邪神はそのままピクリとも動かない状態だ
しかし・・

グバァ・・

不意に邪神の身体が大きく開き中にある紅い塊が姿を見せる
それは不気味に光っている
”まずいぞ!このまま我等を消し飛ばす気だ!”
ヴァーハムートの叫び通りその塊は徐々に地響きとともに光を増す!
「ちっ・・、こうなれば!」
急いで身体に刺さる触手をトライデントで切り払う・・。
”核だ、あれさえ破壊すれば終わる・・”
「了解だ・・。ソフィア・・俺を支えてくれ・・」
”いくぞ!”
そう叫ぶとヴァーハムートは核に向かって突進をする!!
それに敏感に反応し核が赤く光ったと思うと・・

ゴォォォォォォォォォォォォォォォ!!!

核より一筋の巨光が発射される!
それは自身の触手を沿うようにまっすぐダンケルク達に向かって伸びる!
「きたぞ!なんとかしろ!」
”少々うるさいぞ!お前はあの核に槍を突き刺すことだけを考えろ!!”
テレパスで怒鳴るヴァーハムート・・
そして鋭い口に三重に立体魔方陣が展開し・・

”『極炎裂光波』!!”

口から放たれる真紅のドラゴンブレス・・!
それは邪神の巨光よりも小さいが勢いは同等で真っ向からぶつかる!

ゴゴゴゴゴゴゴ!!!

紅い光と白い光がぶつかる中、紅光は一気に巨光を裂いてさらに核へ向かって突き進む!
”今だ!一気に核まで進むぞ!”
「ああっ・・!これで・・終わりにする!!!」
真紅の光に沿い突進するヴァーハムート!
邪神も危機を感じたのか分散された巨光をかき消し、周りに突き出した触手をダンケルク達に向けて突き差し出す!

そして

ドォォォォン!!
強烈な衝撃とともにヴァーハムートのドラゴンブレスが核に直撃する!
紅い核はガラスにヒビが入るように黒い線が刻まれている
流石に効いたのか邪神は身体を鈍く動かして核を皮膚でしまおうとし始めた
「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

皮膚が閉じる前にヴァーハムートが飛びこみダンケルクが核に向かって渾身の一撃を放つ!!

キィィィィン!!!!

核にトライデントが突き刺さったまま静寂が流れる・・
もぐりこんだ入り口は皮膚で閉じられ核の赤い光だけがそこを照らす
「どうなった・・?もうこの核は破壊したようなもんだろ?」
”邪神の鼓動が小さくなっている・・・が・・・なんだ・・”

ゴゴゴゴゴ・・・

地響きが静寂の中強くなっていく
”!!自爆する気か!”
「なんだって!目的果たせなければ消滅させるっていうのか!!」
”これほどの身体ならば国一つまるごとかき消される・・”
「それじゃあ・・ソフィアは・・」
”諦めるな!我も全力で魔力を暴走させる!それで消滅の力を中和させる!”
「そんなことが可能なのか!」
”可能にさせるんだ!主も手伝え!!”
「お・・おう!!魔力を暴走させればいいんだな!」
ダンケルクも魔方陣を展開し、ヴァーハムートも魔力を解放させる!
身体の周りに紅い光が包まれ火花を散らしだす
その間にも地響きは強さを増しているのだが・・
「!!?やばい!」

シュッ!

突如壁から生えてきた触手の群!それはダンケルク達をまともに貫く!
ダンケルクとヴァーハムートの身体は無数の触手を撃ち込まれ、血が霧のように噴き出る
「あ・・ぐ・・」
”生きているか・・・?”
「聞こえているよ・・、後少しで逝くことに・・なりそうだが・・」
”一瞬で十分だ・・・。力を・・解放・・するぞ・・”
「ああっ、でっかい・・花火にしようぜ」
そう言い串刺しにされた体が真っ赤に燃え出す・・

「この国の民・・・に・・永久の栄あれ!!!うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

・・ヴァーハムートとダンケルクから眩い紅光が放たれそれは全てを包みこむ・・
光は国境沿いのソフィアにも確認でき、それが消えた時、街には何もなくなっていた




・・・1年後・・・
ダンケルクの死を覚悟した特攻により邪神は消え去った。残ったの大量のガレキだったが
ソフィアは元いた場所に国を作りなおすことを決意し、騎士団の活躍もあり短い期間で見事に
復興された。
そしては新たな国として国名をダンケルクと名付け彼の思いをかなえるため獣人、
その他の人種による差別を固く禁じ、騎士団を持たない平和国家としての骨格を築いた。
ソフィアは騎士団に所属していた銀髪の兵と婚約し、すぐその子を産む。
婚約の時期と出産の時期が合わなくその兵との面識もほとんどなかったがそのことに口を出す民は一人もいなかった

・・・・・

晩年、ソフィアは城前の公園に一体の竜騎士像を造りそこを自分の墓とした。
初代王妃となってからも肌身離さず持ち歩いていた『記憶球』を持ち静かに眠りについたのだ
竜騎士像には戦後復興により発見された竜の鱗が納められてある
その場所は邪神により崩壊する前、城の庭とした存在した所であり
かつて幼い二人が手をつないでいた場所であった・・


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