「友の遺産を継ぐ者」


オーディスさんから郵便、届いた♪
「・・・・・・捨てるか」
 「ダメです、それは!!!」
「呪モノかもよ? なんせ、あの、棺桶で寝てる耄碌タヌキじじぃだからなぁ」
同刻、王国ヴィガルド守護騎士団駐屯地 騎士団長執務室
「誰が玉切れ隠居耄碌ボケタヌキじじぃかっ!! じじぃではないぞっ!!! 
これでもまだまだ、ささやかな野望を果たすまでは 現・役っ(クワッ!!」
「・・・ど、如何なされたんですか、オーディス様?」
「ぬ・・・いや、何処かで非情に気になる悪口を言われたような気が・・・」
「獅子と称えられるオーディス様に、タヌキじじぃ等
悪口をいうような不届き者などおりますまい」
「・・・、否、確実に一人いる。あの放蕩助平あふォめがっ!!!」
同刻、希望都市シウォング 屋敷執務室
「バカはともかく、あふォって言うなっ!!!」
 「あ、え?」
「あ〜〜、いや、直接俺を狙ってアホと言われた気がしたから・・・」
 「それはきっと・・・気のせいですよ。 ところで、内容は何なんですか?」
「ああ、え〜〜っと・・・・・・武芸書が見つかったから送るってさ」
 「武芸書? それはまた・・・何故」
「それの本来の持主が俺のチームメイトでな、その得物が俺の処にあるからさ。
まぁ、正しくは其の得物は俺が壊してしまって新たに鍛直し、ルナにやったんだけど」
 「それは・・・それで、如何なさるんですか?」
「剣あっての、人あっての技。ならば唯一知る俺が伝承させるしかないだろ」
 「でもコレは・・・『漢文』なのですが、大丈夫ですか?」
「・・・・・・多分。 如何しても分からない処だけ頼む(汗」

「ところで、オーディス様のささやかな野望というのをお聞きしてもよろしいですか?」
「うむ、それは・・・」
「それは? (ゴクリ」
「それは・・・、フェフとのにゃんにゃんの果てに
あれの胎に我等が子を孕ませる事だぁっ(クワッ!!!」
「・・・・・・(汗」
「・・・・・・、中年オヤジのウイットに富んだ、ささやかな冗談だ。」
「・・・(フェフ様とイチャついて子を儲けたいというのは本気ですね。
でも、そう言った事を堂々とノタまえる最近のコワれてきたオーディス様、
何故か以前以上に一漢として尊敬出来てしまいます・・・)」


「・・・、へぇ、あの技って『不斬散気の太刀』っていうのか。
・・・、突き,斬撃系は俺でも如何にかなるっぽいけど
抜刀技系はお手上げだな。これはプロに普通のヤツを教わらせますか・・・」
 「・・・何で普通に読むことができるのですか?」
「ああ? 元々向うの系統の人間だったんじゃないの、俺が」
 「いえ、それ以前に古式なので今の人でも安々とは・・・」
「何でも出来る機用貧乏な俺って、ツ・ミ♪」
 「・・・って、それよりも仕事して下さいっ!!!」
「終ったよん♪」
 「ええっ、そんな・・・、本当に・・・(汗」
「ショック受けるのも結構だけど、ついでにルナも呼んで来て」
 「・・・・・・」
呼ばれきた銀狼少女は何時もと違う雰囲気に叱られると思ったのか犬耳が伏せている。
目の前には、神妙な面持ちの主に机上にはデンと置かれた古い本。
見たこともないので、それにイタズラした覚えなど毛頭ない。ないのだが・・・
 「わぅ、ごめんな さい」
「? 何で謝る」
 「わぅ? ちがう」
「少なくとも怒るために呼んだわけじゃないよ。」
 「〜〜〜(安堵」
「考えようによっちゃ、もっと性質が悪いかもしれないからな」
 「っ!!?」
「これは・・・俺が友から預かった、ルナが受け継ぐべき武が記された本。
追々これをルナに教えていくにあたって、俺は先ず最終奥義を教えたい」
 「・・・・・・」
「最終奥義というだけあって、体術,剣技の先にある唯一絶対 心の技。
本来なら本当に最後に習得する・・・これを習得せずとも刀聖と呼ばれる位の代物。
俺は過去に一度くらって暫し行動不可能になり、俺が必死で放った一撃でレイハを
助ける事が出来た。だから、これを習得するための儀を一番最初に受けてもらいたい。
この技でもって俺に斬られる事で」
 「っ!!?」
「技の名は『不斬散気の太刀』。 刃でもって肉体を傷つけず気を断ち斬る。
正直・・・今の俺でも、この剣技を確実に成功させる自信はない。 それでも
ルナが望むなら、俺は斬る。望まないのなら、コレ抜きで以外の技を教えよう。
明日、詳細な時間は・・・自ずとわかるだろう」
立ち尽くすのみの少女を一人残し、ライは執務室を去った。
ルナが居間へ行ってみると、至って平然な皆々。しかし其の日は以降何故か優しく
・・・それがルナ自身、何時もと違って神妙だったからとは当人は気付きもしない。
因みにルナがゴハン御代り数回は当然なのに、この日は御代り無しだったりする。

深夜・・・
「・・・破邪銀,癒軽鉄,獄魔鉛,竜骸銅の構成・・・な技で・・・の効果
・・・なる? ・・・あ、いや・・・確かに確実だけど・・・材料だけ
・・・教育がてら造らせたい小僧がいるんで」
「さて、と。 刀の設計図と発注書も造らないとな・・・」

そして翌日の朝、珍しく皆々揃って休日なのかのように日常生活のみで時が流れ・・・
居間ではルナが言われなければ行わない大太刀の手入れをやっていたりした。
「あの・・・ルナ」
 「わう?」何?
「風邪でもひいて熱でもあるんですか?」
 「・・・・・・」
それは はぁ、何言ってるの? と極めて冷たい目付き。
「そうですよね。バカは風邪引かないといいますし・・・」
ディ、言い切って己の失言に気付き脱兎。いつもなら即追付かれ襲われるのだが
・・・いつまでたってもこない衝撃に、ディが居間を覗き込んでみると
そこには発言を意もせずに大太刀を磨くルナが・・・
「・・・本当に、風邪?」
ディが思わず漏らした言葉に聞こえたかのように反応したルナは厳かに
大太刀を翳し眺めると満足げに鞘に収め、緋眼にも関らず無駄ない武士の動きで
ディまで近づくと、大太刀を突き出す
 「ディ、預かれ」
「え?」
 「預かれ」
「あ、はい」
呆気にとられながら受け取るディに満足し、ルナは場を去るのだった。

少女一人向かった先は、いつもの訓練の広場と異なる森奥の広場。
奇しくも出来上がった場所で、神儀のような事を行うには最適な場所だろう。
そこで立ち腕組んで待つのは、神龍騎公ライ。ラフな作務衣の格好は散歩中の者。
しかし、場の雰囲気を合さり放たれる気は正に神事を行う者そのもの。
「・・・、いいのか?」
 「剣の英霊、いつも私を喜んで助けてくれる。でも、嘆いている。私の未熟さに。」
「・・・・・・」
 「使うなら、応える。これ、当然。 よろしくおねがいします、ライ。師匠」
「・・・、無理して喋らなくていいぞ。
あっ、因みに今精霊憑依は厳禁ね。じゃないと祓ってしまうからな」
 「わん♪」
「・・・さて、これから俺が放つ『不斬散気の太刀』は最後。
構える必要はない。力は余分だ。
克目しろっ!! 目で見るだけではなく六覚含め全て、心でも感じ取れっ!!」
 「わんっ!!」
ルナに対し、ライが解き放ち腰溜めに構えるのは神殺しの片刃破壊剣『神狼牙』。
瞬間、ライの瞳がギンと金色の龍眼へ変化。
身体から放たれた金色の闘気が伝って『神狼牙』を完全に覆い尽し己から光を放つ。
「・・・真龍騎公ライ=デステェイヤー、参る。 ― 不斬散気の太刀 ― 」
腰溜めから頭上へ振るわれた剣先は、更に勢いを得て振下され袈裟掛けにルナを斬る。
肩から入った刃はその肉と骨,内臓を割いて腰から完全に抜けきった。
正に、一瞬で。
正に両断して。
つっ立ったままのルナ、その前で剣を振り下ろしたままの体勢のライ。
暫し二人の時が止り、再び流れ出した時にライは解除に『神狼牙』へ布を巻き収める。
それでようやく、ルナは己の身体が切れてないか時間差で切れないかを
ペタペタ触って確かめ、安堵にライへ飛びつこうと
 「わぅ?」
そのままライの腹に頭からポフッと突っ込み、ズルズルと地に崩れ落ちていく。
完全に地に伏してしまう前に辛うじてライに支えられるが、それでも己で立てない。
「体力を根後削ぎ持っていってしまったからな。それに多分経絡も切ってしまった。
当分は動けまい。今はゆっくり休め。 再び立つ日のためにな」
 「わぅ〜〜〜」は〜〜〜い
ライに姫抱きにされたルナは弱々も微笑み応える。 それは確信故。
今は一つ間違えば容易に死に瀕する状態にいようとも、不形でも掴んだものに。
無傷でも瀕死なルナに屋敷は一時騒然となったが、
それでも皆が知る必要のない事情故に直ぐに納まった。 
もっともシエルは、珍しく激怒し自身の希望で居間のソファでねるルナを介護しつつ
ルナを死の危険に至らしめたライには背を向けて尻尾で床を叩いて暫くの間近づくなと
威嚇したとか。


件の儀式から多少なり自分で動けるようになるまで一週間以上
そこからリハビリも含め元の動きを取り戻すまで計約1月掛り
 「ワンッワンッッワンッッッ!!!」
「ひええええぇぇえぇぇぇぇぇ」
室内にも関らず全力疾走で散らかさずに少年を逃がさず捕らえず追いかける銀狼の動きは
正しく一皮向けた様。
それを眺めるライは至極満悦に、丸で愛玩野獣が獲物を弄ぶのを見ているようである。
ともあれ獲物のイキが冗談抜きでなくなり始めたので、ライはルナを呼び寄せ。
 「ワン? (ピカー」なぁに? (→人変化
「ちょっと、御使い行ってもらえるか?」
 「わん」はーい
「プラハのリュートの処へ得物を受け取に。その後にクラークの処へチョット挨拶がてら。
・・・・・・、当然クラークの処には、あの、セシルがいるわけなのだが」
 「・・・(焦々々々」
一転ルナは銀狼変化に敵前々逃亡を決行するが、そんなことライは当のお見通しで
尻尾をシッカリ握られては幾らルナが全力で駆けようとしてもカリカリ床を掻くのみ。
「まぁ、落ち着け」
 「ライ、私を裏切ったのね(シナ」(人状態、精霊憑依)
「変なモノまで憑依させてまで抗議する前に、人の話を最後まで聞こうや」
 「くぅーん」 はい・・・
「まぁ、クラークの処へ顔を出せば、当然セシルが襲ってくるだろう。
しかし、正にソレこそ渡りに船。正当防衛と称して新技の試斬りにしてしまえ。
アレなら失敗してもマァ〜〜〜ったく心は痛まんっ! 寧ろ、まじコロセ。
都市国家シウォング国王 真龍騎公ライ=デステェイヤーの名において許すっ!!」
 「わんっ!! セシル、コロス(ハァハァハァ」
・・・きっと銀狼少女の病的なまでに周囲を引かせる狂笑は、自身が恐怖に
トチ狂っているからだろう。それは以上に余りにも過酷な試練で涙をさそうのだった。

プラハ郊外、その場所へ燐光が堕ち閃光と共に具現化降臨する銀狼少女。
先日の狂笑とは打って変わり、早々から意志消沈で泣きそうな顔のまま
小荷物と大太刀を携え向かった先は、「HOLY ORDERS」の看板を掲げる店。
ドアを開け鳴る呼鈴と共に応える店子の女性
 「いらっしゃいませ♪ あ、ルナ、久しぶり」
 「わん♪ シャン、ひさしぶり」
手を取り合って再会を喜ぶ二人。その騒がしさに店主たる犬少年鍛冶士も顔を出す。
「ルナ、いらっしゃい。 ・・・、ディ君は?」
 「わう、ルナ一人」
「そう・・・」
明らかに落胆な色を見せるリュートに、ルナは目で折檻していいかとシャンに尋ね
この程度なら許して上げてね と嗜められちゃったり・・・
 「そうそう、依頼の品は出来てるからちょっと待っててね」
そそくさと奥へ引込むリュートに、シャンとルナは「最優先で仕事した」とか「ありがと」
など他愛無い話で暫しの時を紛らわし
「お待たせ」
と、リュートが余り待たせず持ってきたのは二振り。それについて簡単な説明がなされる。
・禍断の逆刃刀「霊鬼・癒刃」
破邪銀鋼,癒軽鉄鋼,獄魔鉛鋼,竜骸銅鋼で鍛えられたダマスカス鋼の逆刃刀。
戦狂鬼の大太刀の脇差としてデザインされている為、それでも十分太刀の部類に入る。
戦狂鬼の大太刀が解放と撃破を司るなら、この霊刀は封印と  を司るとも言える
・訓練用大太刀「獣皇鬼モドキ・無刃」
デザイン,サイズ,重さが戦狂鬼の大太刀と同じで、刃を丸く潰し造られた大太刀。
訓練用と名うってあるが、戦狂鬼の大太刀と撃合う事を前提に鍛られているので
元と比べれば見劣りするものの、十二分に得物としても用いる事が出来る。
 「??? わう?」
「・・・こんな事もあろうかと、得物の仕様書はコチラに用意しましたのでライさんへ」
ヤッパリ折檻していいかとルナは目でシャンに尋ね、ん〜〜と悩ませるのだった。
「そう言えば、禍断の逆刃刀はルナにへとあつらえたそうなんですが・・・」
 「わう?」 そうなの?
ならばとルナは禍断の逆刃刀を手に取り、刃を抜き放ってしまった。
と、途端にその小柄でも怪力を秘める身体が力が抜け床に伏せてしまう。
 「わ、わうぅぅ???」な、何なの???
「やっぱり。この刀、刃を抜き放つ者の力を封じてしまうんです。シャンですら。
僕は大丈夫なんですけどね。 思うに・・・認めうる力を有するか、
この特性を理解していない限り、まともに扱えないのではないのでしょうか。」
 「・・・(がっくし」
リュートに禍断の逆刃刀を奪われ解放されたルナは、折角の得物がまだ己の手に余ると察し
意気消沈。 ともあれ、夜は問題なく「HOLY ORDERS」へ泊まれる事となったのだが
「・・・やっぱり、行くんですか?」
 「思いなおしたほうが・・・」
 「ルナ、行く。これ、ライとの約束。(あはははは」
ユトレヒト屋敷へ向かうに辺りコワれ気味の笑みを浮かべるルナ。
店を出る足取りは極めて重く・・・それでも健脚ゆえに早々に到着してしまった。
一報が届いていたのか、態々出迎えてくれるのはクラーク&クローディアと見物のキルケ。
「いらっしゃい、ルナ。 話はライから一通り聞いてるから早速始めようか」
 「わん、おねがいします。 ・・・何を?」
 「一般的な抜刀術ですよ」
 「わぅ・・・」へぇ・・・
時間も勿体無いと早速に特設訓練場へ向いながら
「ライが奥義クラスですら見極められるのに出来ないって事だし、其処辺りは
俺の十八番だからな。俺とクローディアがやって見せた後でルナもしてみればいい。
差し当たって得物は・・・大太刀はサイズ的に抜刀術には不向きだ。
後はその刀だけど・・・へぇ、逆刃刀、不殺の活人刀か」
 「これ、力、封印。クラーク、大丈夫?」
「んん? ああ、出来そうだな」
 「くぅ〜〜ん」そりゃないぜ orz
「「「???」」」
ルナの落胆の意味などわかろうはずもない。
ともあれ訓練場へ到着に立て用意されていたのは藁巻竹が数本。
それに水を染み込ませれば人と変わらない強度な試し斬的となる。
「先ずは俺から・・・」
クラークがタンと軽く踏み出す一歩、それに力が篭った瞬間走る閃光。そのままチンッと
いつ抜き放ったか分からず収められた刀に藁巻竹が袈裟斬りで上半分がポロッと落下。
 「わうぅぅぅ(チパチパチパ」おおおお(チパチパチパ
同様に、クローディアにも抜刀術の試斬りが行われ拍手喝采だったのはいうまでもない。
結局、ルナの太刀筋から空振りなら問題ないとクラークの得物を拝借することに。
ルナは数回揮って侍な二人から指導を受け、急遽藁巻竹試斬りも大成功に
普通の抜刀術ならマスターしたとのお墨付きをもらうのだった。


深夜
「HOLY ORDERS」の前で侍さながらに腰に太刀,手に大太刀を持って椅子に座す人影一つ。
それに闇より現れる者、金色の獣(ケダモノ)が己の気配も隠さず
 「あら、ルナたん。 イイ覚悟ねん♪」
言われ、身震いに逆立つ全身の毛。それでも気力振り絞り
 「たん を付けるな、品性御下劣ケダモノ未満め」
 「あ〜〜ら、言ってくれるわね。教育して、あ・げ・る♪」
 「忌まわしい記憶と共に今日こそ葬るっ!!!」
 「一人で私に勝とうだなんて、身の程しらずねぇ(ケケケケッ」
そして、精霊憑依で紫眼の銀狼の侍少女と本来なら美しく凛々しい容姿でありながら
人外の動き故に恐ろしいまでにおぞましい金髪変獣との戦いが始った。

ルナは、過去数度の対決により金髪変獣セシルの魔氷技のタイミングを悟り
防ぐ事は可能となった。 しかし、それは距離がある場合が殆どであり、
純接近戦の剣の撃合いのみでも殆ど剛の剣しか使えないルナにとって
剛の剣でありながら本質がケダモノであるセシルは良い相性とは言いがたい。
セシルが魔氷技を用いず、剣・体術のみ(萌補正付)で攻めるのは余裕の現われだろう。
寧ろ、獲物の心を完膚無きまでに叩き潰すための布石といった処か。
なんせ手数が多い上に、本来ならルナの方が腕力があるにも関らず萌補正でそれも匹敵。
刃の撃合いの果てに
キンッ
 「くっ・・・」
 「ふっ、コレでチェックメイトね・・・(ニヤリ」
離れた家屋の壁にまで突き刺さる程に大太刀を弾き飛ばされたルナに
勝利の狂喜を秘め剣を突き付けるセシル。後は魔氷技でルナの動きを縛るのみ が
弾っ!!!
と、突如爆発立つセシルの横顔に頭が爆煙に包まれる。
「やったっ!!!」
それは、この妖魔(?)襲来を察していたリュートも離れた屋根でシャン警護の元に待機し
セシルが勝利を確信した瞬間に見せるであろう隙を狙って魔槍銃で狙撃したのだ。
その片目には夜間遠距離仕様状態の魔導眼帯まで装着して。
 「今度こそ仕留めたの?」
「ちょっと待って、今倒れ始め・・・」
ぐらついた足元が突然地を踏みしめ、晴れ始めた煙に煌く光。
それは、セシルの顔面半分を覆う氷面の眼。それが確実に闇に紛れる二人を捕らえ
「撤た」
 「きゃぁ!!?」
瞬間二人は氷鎖に捕縛され、一瞬で体熱を生存可能下限まで下げられてしまった。

 「フ、フン♪ あれだけの殺気を放ちながらバレてないとでも思ったのかしら♪
因みに、ルナたんがお腰に差してるソレが使いこなせない張子の虎なのは既知よん」
 「・・・・・・」
それを知る者に、態々セシルに知らせるような者はいない。
しかし、コレのことだから何処で聞き耳を立てていてもおかしくない。
昼間、不信なまでに全く気配を感じなかったのだから・・・
だからこそ、手は一つしか残されていない。
知られてしまった情報、知られていない技、そして必殺の居合い。
 「あ〜〜ら、それで抜刀術でもするつもり? 私は別にいいわよん
抜いちゃって生板の上の鯛になるがいいわ。万が一使えても別に防げし♪」
 「・・・、シウォング極星騎士団が一、銀狼闘姫シフォルナ。 不斬散気の太刀、参る」
瞬間ルナによって揮われた抜刀の禍断刃は、氷雪の魔剣『氷狼刹』ごとその肉体を上斬に
両断っ!!!
その鋭さに、セシルは己が斬られたと悟らず
 「ふっ、こけおど・・・し?」
手ごたえを確信して見下ろしながら刃納めるルナが、セシルの反転する視界に入る。
 「・・・肉体を傷つけず、気を断った。当分は動けまい。」
 「・・・なによ。 なによっ。 なによおおおおおおおっ
ルナたん程度が私を見下ろすなんてええええええっ(ゴゴゴゴゴゴ」
グワッシ
 「っ!!!??」
 「ふふふふふ、逃がさない・・・だってルナたんは私の獲物なんですものおおおおお」
 「きゃんッきゃんッッきゃんッッッきゃんッッッッ」
サクッサクッッサクッッッサクッッッッ
 「あっ、はふっ、はぁんっ、ひぁぁぁっ」
刃を突き刺される毎に発される奇声に、ルナが錯乱を起こして
掴まれた足首が解放されるまでよりセシルを滅多刺ししたのはいうまでもない。
翌日、全く無傷でも道端に転がり悶え痙攣する物体に住民誰もその正体が分からず
ユトレヒト隊にソレの撤去の依頼が来て早々に始末されたのは別の話である。

因みに、魔氷を溶かされても行動不可能にされていたリュート&シャンも
ルナの手によって身体活性化され、無事事無きを得た。
禍断の逆刃刀『霊鬼・癒刃』で放たれた『不斬散気の太刀』の真価、それは
斬った者を封じるだけではなく、肉体を浄化、活性化し、治癒させる事にもある。

こうして、銀狼の侍少女は月女神と呼ばれるに値する一歩を踏み出し
パッキンケダモノと呼ばれる鬼畜は始末された。しかし第二第三のパッキンケダモノが
今回倒されたパッキンケダモノが復活しないとは言い切れないノダ!!!
・・・あれ?


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