×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

スタンピート!!ACT? 「迷探偵クロ!」


「それでは、今回の健康診断の結果です」

ルザリア騎士団屋敷の団長室にて、この街一番の名医として有名なクライブが書類の束を団長であるタイムに渡す
いつもは白衣でだらしがない雰囲気が漂っているクライブだが今日はきっちりとした黒いスーツ姿
流石に団長であるタイムの前での公的な仕事、相応の服装でなくてはならない

「ご苦労、後で目を通すが・・目立った異常はないのかな?」

勤務モードなタイム、キリっと引き締まった表情は正しくこの街の護りを担っている者に相応しい風貌である
「ええっ、特に異常はありません。まぁ普通の職とは違い体調管理というものは大切ですからね」
「そうか・・」
クライブのさらっといた言い方にタイム安堵の息を漏らす
そこへ
「な〜〜に言ってんだよ!大の大人が体調を崩すなんて愚の骨頂ってやつだぜ!」
ソファに座り応対している二人と少し離れ、団長席でえらそうに座り欠伸をしているはクロムウェル
「クロムウェル・・うるさいぞ。皆はお前のようなケダモノ並の体力を持っているんじゃないんだ」
「まぁまぁ。ともあれ、現状が良くても激務が続けば人間、体を壊すものです。そこらの管理はきちんとしてくださいね」
「承知した。・・すまないな、こんな事を頼んで」
元々ハイデルベルク騎士団全体を通して騎士の健康診断などを行うことはしない。
厳しい訓練を超えた騎士というものに、体調を崩すことなど有り得ないというのが一般的な考えだ
そこは王直々に称号を貰っているほどの人物であるタイム
騎士といえども体調の管理として専門家に見てもらったほうがいいということを提言している
こうした動きは貿易都市であるルザリアとローエンハイツで行われている
通常の都市よりも過酷な任務に就く分サポートを充実させようとしているのだ
「いえいえ、ではっ、少し早めに終わりましたがこれにて失礼します」
一礼して出て行くクライブ、時間が余れどのんびりしてはいられない
・・彼を待っている患者は沢山いるのだ
「なるほど・・スクイードは異常なしか・・面白くない。股間にシコリがあり・・っと」
クライブに気をとられていたタイム、何時の間にかクロムウェルが診察結果を覗き見て
改ざんしようとしていたり
「クロォ!厳正な検査の結果なんだからいらっちゃだめでしょ!」
「・・ネタにならないじゃねぇかよ」
「だめなの、それに誤診があって評判悪くなるのはクライブのほうなのよ?」
「それはまずいな・・ちぇ、面白いと思ったんだがなぁ・・」
スクイードの診断結果を放り投げ大きく伸びをするクロムウェル・・
かなり退屈のご様子だ
「・・クロ、暇なの?」
「ああ・・、大きなヤマもないしフィートからの仕事の依頼もさっぱりだもんなぁ」
「じゃあ他の団員の訓練をしてあげればいいじゃないの」
「・・あのなぁ・・レベルが違いすぎて翌日出勤できなくなるぞ?」
一般人から見てみれば超人的な体力を持っているクロムウェル、体術指南ということでルザリア騎士団員の基本体力向上や
戦闘技術を教えているのだがついてこれるのは2,3人程度・・
それゆえ、クロムウェルも教え方に悩んでいたりもする
・・まぁ誰しも彼のようにはならないのだ。
それでも、ルザリア騎士団全員の憧れであるタイムを穢した(・・っと思い込んでいる)面々なだけに
全員クロムウェルが訓練を行う時にはかなりの数が参加しており鬼気迫る勢いで励んでいる
結果としてはかなり無茶な方法だが彼らの体力の向上は目的通りになっているようだ
「それもそうよねぇ・・まぁいいわ。それよりも私はこれから事務があるから・・」
「なんだよ、今日はシなくていいのか?」
「馬鹿、そう毎日できないわよ・・腰が痛くなっちゃうもの」
「腰痛の騎士団長となれば威厳台無しだものなぁ」
「笑い事じゃないわよ!仕事もたまっているんだから、セイレーズさんのお世話でもしてきて」
「やる事ないしなぁ・・そんじゃ行ってくるか」
苦笑いしながら退室するクロムウェル、口ではああ言っているものの実際は愛して欲しいと思っていることは
彼が一番知っているのだ

「さてぇ、セイレーズじいさんか・・俺は苦手だけどチェスの相手でもしてやるか」
団長室の前、大きく伸びをしながらそう呟くクロムウェル
かつては大盗賊として有名であったセイレーズだが老いてからは流石に動きまわることは控え
居城と化しているテント群でチェスにはまっている様子
当然とでも言うのかクロムウェルにとってはそうしたテーブルゲームは苦手だったりもしており
タイムの思惑としてはクロムウェルがボロクソに負けてセイレーズが喜んで欲しいと思っていたり・・
「ったく、セイレーズ爺さんが騎士団への協力者なら正規の騎士がいけっての」
無駄口を叩いているその時
ガバッ
不意に彼の視界が暗くなる・・
そして
「だ〜れだ♪」
甘えるような女性の声が・・・、しかし当のクロムウェルは完全に動揺している様子
「だ・・だれだ!?えっ!タイムか!?」
バカップルが良くする後ろ回りこみ目隠し・・、しかしそこは女にモテた試しがないクロムウェル
しかも唐突ということもありガラにもなく慌てふためいている
「っ!!?」
しかし目隠ししてきた女性のほうもなにやら驚いたようで彼の目を押さえる力を急に強めた
「あだだ・・タイム〜、いくらご無沙汰だからってこんなお誘いは〜」
完全にタイムと勘違いしているクロムウェル、まぁ彼に対してそんな行為をするのは彼女くらいしかいない
だが・・

バコバコバコバコバコバコバコバコ!

「うぎゃああああ!!」
急に身体に強烈な痛みが走ったかと思うとそのまま彼の意識はもぎ取られていった

・・・・・・・・・
・・・・・・

しばらくして
「ん・・おお・・ったたたた・・」
「クロォ・・どうしたの?」
「ほえ・・あれ・・俺は・・」
気がつけば団長室、ソファに寝かされ目の前には心配そうにタイムが見下ろしている
「団長室前で急に悲鳴がしたと思ったらクロが倒れていたのよ・・どうしたの?」
「ど・・どうしたもこうしたも・・お前がやったんじゃないのかよ?」
背中に激痛が走る中ゆっくりと起き上がるクロムウェル、服こそ破れていないが相当な衝撃が襲ったようで
まだジンジン痺れている
「私が・・?」
「ああっ、突然後ろから目隠しされて『だ〜れだ♪』って」
クロムウェルの説明にタイムの顔は途端に真っ赤になる
「そんなこと廊下でやるわけないじゃない!!」
「へ・・だって俺にそんな事するのってタイムぐらいしか・・」
「クロの・・馬鹿ぁ(パチコーン!)」
恥ずかしい疑惑を向けられたタイムの強烈な張り手にクロムウェルはまたしても気を失いかけた
「・・わ・・わかった・・、お前がやったことじゃない・・」
「・・もう・・」
プンスカしているタイム、実は心の内では一度やってみたかった行為だったりもしてるだけに
その疑いにはびっくりしている
「でもそれじゃ誰があんな真似を・・」
「騎士団関係者は勤務中だからそんなことありえないわ。でも部外者が入り込むのも・・」
「いやっ、何よりも俺を失神させるほどの一撃を放てるだけの奴なんてそうそういないぜ・・」
「ううん・・そうよねぇ・・」
「・・よし!こうなったら俺が犯人を突き止めてやる!!」
「ええっ?」
「これはルザリア騎士団に対する挑戦と見た!必ず犯人を突き止めてその挑戦が無謀だったということを思い知らせている!」
正しくはルザリア騎士団ではなくクロムウェル個人に対して・・なのだが
本人はすでに乗り気
「クロ・・」
「悪いな!セイレーズ爺さんとの戯れは延期だ!待ってろよ!犯人〜!」
勢い良く出て行くクロムウェル・・その後ろ姿にタイムは呆れ顔で見つめながら
「・・クロに抱きつけるのは・・私しかいないじゃない・・」
っとポツリとつぶやいた


「見た目は大人!頭脳は子供!その名も名探偵クロムウェル!」
颯爽とやってきたのはルザリア騎士団テント群担当課、どこぞの少年探偵の真似をした文句を言いながらポーズを決める
クロムウェル
・・盛り上がっているクロムウェルとは対象的に事務に勤めていた面々は呆然と・・
「・・何やってるの?お兄さん?」
「・・薬でもやったのか?」
「いつものことだろう」
阿呆を見つめる面々、しかしクロムウェルは一向に気にすることなく
「ふっ!スクイード=キャンベル!貴様を暴行罪容疑で逮捕する!神妙にしろ!」
「はぁ!?いきなり何を言い出すんだ!この変態!」
いきなり容疑を突きつけられて室長スクイード大激怒
「おだまらっしゃい!お前が俺に後ろから抱き付いてその後殴りつけたんだろうが!」
「・・スクイードさん・・そ、そんな趣味が・・」
自分は筋肉フェチなくせにスクイードの同性愛疑惑に引きに引くカチュア・・
「だぁ!誰がお前みたいな変態に抱きつくか!大体何を根拠にそんな事を!」
「・・・お前ならやりそうだから」

・・・シーン・・・

いい加減な答えに一同沈黙・・
「どうだ、この見事な推理!」
「・・お兄さん・・」
「あん?どうした?」
「帰れ」
「なぬ!?」
「どこが見事な推理だ!こじつけているだけだろうが!この変態!」
「な・・なんだよ!?」
「貴様はまったく!!(クドクドクドクドクドクドクドクドクド・・・)!!」
怒りのマシンガントーク・・
あまりの気迫にクロムウェルはなすすべもその場から逃げ出したのだった

次に彼が向かった先
それは・・
「・・・・・」
「・・・・・何よ?」
玄関の受付、静かに仕事をしている案内嬢であるサリーさんの顔を
クロムウェルはジトっと見つめている
「・・ううむ・・こんな性格最悪女の仕業とは思えんのだが・・」
「はぁ?ついには頭いかれたの?」
すでにブチキレ寸前なサリーさん。彼女がこの街で一番嫌いなのがクロムウェルだったりする
仕事中ということでなんとかこられているがいつもならすでに臨戦態勢に入っているはずだ
「・・まぁせっかくだ。容疑はしぼっていくのが名探偵の定石・・」
「だから何なの!?」
「おい、孤独な受付モドキ!」
「・・・・(プルプル)」
「さっき俺に抱きついてこなかったか?」

・・・プッチン・・・

その時、何かが切れた。


・・・・・

「ったく、気が短いなぁ・・、サリーさんも・・」
嵐が去った後、クロムウェルは騎士団屋敷前の公園で胡坐をかいて座っていた
怒れる独身女性サリーさんの強烈ビンタはタイムにも匹敵しており、大きく腫上がっている
「しかし・・、普通の女性騎士なんてあの時間帯に団長室前をうろつくはずがない。・・・そもそもサリーさんも
ビンタは強烈だが俺の意識をもぎ取る乱撃を放てるほどじゃない。
・・ううむ・・・じゃあ・・・誰なんだ?」
ない頭を使った必死に考えるクロムウェル、しかし考えれば考えるほど頭の中がこんがらがって・・
「うおおおお!頭が痛い!」
知恵熱発生・・
そこへ
「先輩、何を頭を抱えているのですか?」
珍しく恋人であるエネと一緒ではないフィートがふらりふらりとやってきた
パッと見で暇なのがよくわかる
彼も相方であるクロムウェルが騎士団教官になってからは自分で仕事を探すようになりそれなりに懐は暖かい
それでなくてもたまにアンジェリカ主導による魔導訓練のゲストに呼ばれ臨時収入もある状況なのだ
「おおっ!相棒!俺の悩みを聞いてくれ!!」
「・・悩んでいるのはわかりますけど・・先輩に浮気なんて無理ですよ?」
「・・・・・・、そんな悩み、したくもねぇ・・
実は(カクカクシカジカ)なんだよ!」
割愛説明、クロムウェル主観での説明ゆえ実際起こったことより少し違うのだが
それでもフィートは腕を組んで悩み出す
「・・先輩を後ろから殴りつけて気を失わせる・・しかも、頭部ではなく上部な背中中心ですか・・」
「・・どう思う?」
「正直、ルザリア騎士団の皆さんではとうてい無理な芸当じゃないですか?」
「だろうなぁ・・」
「先輩、体硬いんですから魔法でも使わないかぎり・・・魔法?」
ハッとフィートが思いつく
「・・・魔法でか?でもいきなり発動して俺を襲うことができるなんて・・なぁ」
「いますよ、一人・・」
「・・?」
「風の塊を数十個連続で発動できる、魔導教官がいるじゃないですか」
顎をさすりながらフィートが屋敷の講義室の方を見ながらつぶやく
「・・・まさか・・アンジェリカが!?」
「そうとしか考えられません。風魔法は衝撃が強いですからね、彼女の『疾風』なら先輩でも持ちこたえられません」
「・・だ・・だけどよ!あのアンジェリカが『だ〜れだ♪』だぜ!?」
精一杯再現して女声を出すクロムウェル・・一応その時の状況はかもし出せているが・・
「確かに・・アンジェリカさんは基本は冷静沈着ですからねぇ・・ともかく、本人に聞いてみましょう!」
面白い事を見つけたということでフィートが颯爽と屋敷に足を進める
しかし
「フィート!待った!」
「・・?どうしたんです?」
「・・・正面からは勘弁してくれ・・」
「???」
「門番が・・いるんだよ・・」
怒れる女性には流石の彼もお手上げらしかった・・


結局、正面玄関に入る事を断念しクロムウェルとフィートは
屋敷側面から一気に講義室の窓へ。
風魔法を得意とするフィートならば造作もないことで開いている窓から一気に中に侵入した
そこには
「・・・、突然窓から入ってきて何をしているのかしら?」
講義の真っ最中・・、特別講義なのか数人の騎士が広い講義室の前の席に座り黒板に書かれている
難しい魔導公式を見つめている
そしてその講師アンジェリカは偶然クロムウェル達の前に・・
魔女を連想させる黒い法衣と鍔広帽がいかにも魔法使いを思わせる。
「・・あ〜・・・いや〜・・あれだ!あれなんだよ!?なぁフィート!」
「そ・・そうです!あれなんですよ〜!」
よもや講義していると思わなかったお馬鹿二人、理由になっていない理由をわめいている
対しアンジェリカさんは冷静そのもの
「あれ・・って何かしら?」
「あ〜!いや、ここで講義をしているのを聞いてな!せっかくだからフィートを交えて更なる向上に協力しようとおもったんだ!!」
「そ、そうです!サービスしますよぉ(ゴマスリゴマスリ)」
「残念だけど結構よ。今回の講習は魔導回路発動速度を上げる物だから、試す対象はいなくてもいいの」
シレっとアンジェリカさん
いつもと変わらないクレバーさを見せている
「「さいですか・・」」
「用が済んだら出て行ってもらえる?結構大切な講習なのよ」
「わ・・わかった!すぐ出て行く!フィート!」
「は・・はい!お暇します・・!」
こそこそ壁沿いを走り講義室を出て行く二人・・
しかし
「あっ、アンジェリカ!一つだけ!」
「・・・・・、何?」
「・・小一時間ほど前、団長室前にこなかったか?」
「・・・行ってないわ」
眉間に皺を寄せるアンジェリカ・・
「そ、そっか!悪かったな!そんじゃ!」
急いで出て行くクロムウェル、フィートもそれに続いて講義室を後にし、
普段から静かな講義室は再び静寂に包まれていった
・・・・
「・・怪しい・・」
講義室を出て颯爽と3Fに上がり倉庫の一室に逃げ込んだクロムウェルとフィートだったが
フィートがしきりに腕を組み思い悩んでいる
「・・怪しいって?」
名探偵クロムウェルはどこへやら、すでにフィートに頼っているクロムウェル・・
「アンジェリカさん・・やっぱり怪しいですね」
「怪しいって、本人否定してるぜ?」
「先輩・・犯人が素直に『私がやりました』って言うのは動かぬ証拠を突きつけた時ぐらいです」
「そ・・そうかぁ・・」
「・・でも、先輩。目隠しされていたとは言えその女性の声、アンジェリカさんのものだとか気付かなかったのですか?
勘はいいのに・・」
フィートの中ではすでに犯人はアンジェリカの路線で固定しているご様子
「あのなぁ・・あのアンジェリカが猫なで声で『だ〜れだ♪』っていうわけないだろう?」
「それはそうですが・・さっきの先輩の質問にわずかですがアンジェリカさんは動揺しました」
「そりゃ・・・俺が変な質問をしたから?」
「あの冷静なアンジェリカさんなら多少変な質問しても眉一つ動かしませんよ
・・これは、何かありますねぇ・・・」
「アンジェリカが・・ねぇ・・」
クロムウェルにしてみれば彼女がそんな事をするとはどうしても思えないようだ
「ともあれ、確認は必要です・・先輩、彼女の今日の勤務時間をチェックしてください
僕も色々と用意をしておきましょう」
「ま・・まじかよ・・」
フィートの真剣な表情に流石のクロムウェルも圧され、疑惑を持ちながらも行動を開始するのだった


数時間後、アンジェリカはまだ日が明るい内に今日の仕事を終え
屋敷を後にした
魔導講義以外にも協力しようともなればどこでも活躍できるのだがアンジェリカに頼ってばかりでは
騎士が育たないというタイムの配慮でこんな時間での帰宅となっている
ゆっくりと表通りを歩くアンジェリカ、流石にルザリア三大美女の一角を担っているだけに
一帯の男の視線を集めに集めている
・・まぁ、大抵は大きめな胸とミニなスカートから覗かせるスラっと白い足に集中しているのだが・・
その視線に対し彼女は全く気にも留めない様子で露店の商品等をチラっと見ながら足を進めている
そして・・その後方では・・
「・・(ふふふ・・男どもの視線が集中することで逆に俺の存在に気付かれずにすみよるわ)」
サングラスとマスク姿の不審人物クロムウェル
フィートの変装セットの彼の身のこなしのおかげもあっては今のところはうまい具合に尾行できている
風魔法により身を隠すこともフィートにはできるのだが魔導反応には常人に比べはるかに鋭い魔導師である
アンジェリカには逆効果になるということでストレートに見失うギリギリな距離での尾行となった
「・・(しかし、仕事が終わったわりには宿に戻るわけでもないな・・)」
表通りから別の通りへと変わり向かっている方向は住宅地区
・・しかし、彼女が住んでいるボロ宿とは全然違う方向なのだ
「・・(・・・・、アンジェリカが騎士団連中の他に交友はないはず・・講義の教材でも買う気か?)」
次第に人通りが少なくなっていく中慎重さを増しながらアンジェリカの後をつけるクロムウェル
アンジェリカも勘がいいのかたまに後ろを振り返ってきており
それに対しクロムウェルはゴキブリばりの素早さで遮蔽物に身を隠す
・・気配を消すのは正しくプロでありアンジェリカと言えども振り返っただけでそこにクロムウェルが隠れているとは
到底判断できないようだ
しばらくそんな攻防が続く中、アンジェリカがたどり着いたのは・・
「・・!(ここは・・クライブの診療所!?・・病気か?)」
あっちこっち飛びまわっているだけに拠点はあまり流行っているとはいえない名医クライブの診療所
その前でアンジェリカは少し立ち止まり周囲を警戒している
「・・・・(あの警戒のしよう・・もしや・・イケナイ病気とか!?)」
勝手に妄想しだすクロムウェル
・・しかし・・
「・・(待てよ、あいつは遊ぶ女じゃない。最近で肌を許した奴って言えば・・俺?)」
一度だけ逆夜這いにあったクロムウェル、その時は彼女の中に精を出さなかったが・・
「(ま・・まま・・まさか!俺が気付かないうちにちょっと出て・・妊娠!?)」
最悪のシナリオが彼の中で構築されていく
即ち
突然のアンジェリカからの懐妊報告→タイム激怒→クロ死亡→タイムVSアンジェリカ→ルザリア崩壊
・・・彼の額に冷や汗がとめどなくあふれ出した
そんなクロムウェルの妄想など露知らず、診療所前でジッと立っていたアンジェリカの前に中からクライブが出てきた
こちらは午前中にタイムに診断表を渡した時のままのスーツ姿
そして軽く会釈をしながら二人はまたゆっくりと歩き出したのだ
「・・(まさか・・診療所では言いにくい話か!?ま・・まずい!)」
もはやアンジェリカにかけられたのは暴行疑惑ではなく妊娠疑惑
クロムウェルは生きた心地がしない状態で二人の後をカサカサと尾行し続けるのであった

・・・

必死の尾行のかいあって二人には気付かれずに尾行を成功させたクロムウェル
二人が到着したのは住宅地区の中にある小さな茶屋
クロムウェルでさえ知らないほんと小さな店で通りに面してのオープンテラスなこじゃれた店であった
「・・(隠れ家的茶屋・・・やばい話をするには抜いている・・)」
クライブとアンジェリカが席に座るとともにクロムウェルも近くの植木と同化しながら耳をひそめた

「おつかれさまです、短時間とはいえ人にモノを教えるのは大変でしょう」
「そうでもないわよ、流石に規律を重んじる騎士だけあって・・アルマティとは大違いね」
「はははっ、そうですか。まぁ体調にはお気をつけて・・団長にもお願いをしていますので」
「・・おせっかいねぇ」

和やかに会話しだす二人
それにクロムウェルは首をかしげだす
「・・(な・・なんだ・・妊娠の話じゃないし・・この雰囲気・・これじゃまるで・・)」
恋人ではないか・・っと
何よりもアンジェリカが他人の前でこれほど表情豊かにしゃべるのは珍しいのだ
クロムウェルの推理が確信につながった時

「それではこの間の試作品のデータなんですが投薬をしたマウスにαパターンが出ていますね」
「なるほど・・、その度合いは?」
「まだまだ微量です。ですが突然死というものは今のところありません。元々薬草成分から作られたものですからね」
「劇薬ではないにせよ、きちんとした効果が実証されないかぎり人には使えないものね」
「ですねぇ・・。時間経過を見つつマウスの変化に注目したいですね」
「βパターンが出ないように気をつけて、私も文献で医薬につながるような物を探してみるわ」

なにやらよくわからんお薬の話
実験をしていることはわかるのだがクロムウェルの脳ではすでに処理不可能
「・・(なんだよ・・、結局はクライブの薬を作る協力をしているだけか)」
がっくりと肩を落としながらその場を立ち去るクロムウェル、クライブとアンジェリカはそれに気付かず
お互いの弁論に拍車がかかっていたようだった

・・・・・・・
・・・・・・

それ以降、名探偵はどこへやら
一番怪しいアンジェリカのダブル疑惑が晴れたと同時にすでにやる気も欠片もなくなり
自分の居場所にもなっている騎士団団長室へ

ガチャ

すでに日が沈みかけているものの、主であるタイムは事務をしていたらしく
処理した書類が山となっている
「・・おかえりなさい、どうだったの?」
「ぜ〜んぜんわかんねぇ!結局変な疑惑ばっかでてきたからもういいや!」
どかっとソファにもたれこむクロムウェル
普段見せない疲労感が漂っている・・やはり彼にとっては頭脳労働のほうが疲労を蓄積しやすいらしい
「そう・・残念ね」
「フィートの勘もあてにならねぇなぁ・・」
悪態を言うクロムウェル、そこへ
フッ
後ろから目隠しをされる・・
「だ〜れだ♪」
優しいタイムの声・・茶化しているのはわかっているが今の彼にはどこか心地よい
「・・タイム♪」
「正解、さっわからないことをいつまでも悩んでいないでいつものクロに戻って」
「・・へいへい、ならばいつもの野獣に戻りますか!」
「へ・・あ・・・まだ仕事が残って・・・あぁん!」
名探偵、性欲に勝てず
結局は全てを忘れ愛しい女性の胸に甘えるのであった

一方

「クライブ〜♪」
住宅地区のボロ宿にあるアンジェリカの部屋では異様な光景が・・
普段の彼女からは想像もできない甘い声でクライブの腕を組んでいるのだ
「あ・・アンジェリカさん・・」
「二人っきりの時は・・アンジェリカって言って♪」
耳元で甘く囁くアンジェリカ、そのデレデレぶりにはクライブも圧され気味
「アンジェリカ・・別に僕達の中が皆に知られても問題ないと思うんだけど・・」
「ダメ、私の本当を見せるのは・・貴方だけよ・・」
「は・・ははは・・」
クールな魔女はどこへやら、今では主人に甘える仔猫そのもの
「でも、今日は危なかったわ・・クライブったら黒いスーツ着るんだから・・間違ってクロムウェルに抱きついちゃったじゃない」
「え・・あ・・でも・・クロムウェルさんと僕とじゃ髪の色が・・」
「ちょっと・・舞い上がっちゃった・・。クロムウェルには悪いことをしたわね
何やら必死で犯人探していたみたい」
「・・・ばれたくはないわりには、積極的だね」
「その方がスリルがあるでしょ」
二コリと笑いクライブに抱きつくアンジェリカ
結局は、この二人の愛については誰も気付くことなくその日は暮れていった


top