ACT?  「新隊員登場」


貿易都市ルザリア
王都ハイデルベルクへの中継点として有名な都市だ。
また独自の交易ルートなんかもあって北西に広がるフィン草原都市郡からの
物品まで並べてあるってなもんだ
だからここは物やら人やら溢れている
なんてったって貿易都市ってなだけで周辺の難民とかも辿りついてくるみたいだからな

そんな状態なら犯罪も急増するはずなのだがそこを抑え取り仕切るのが
若い女騎士タイムを団長としたルザリア騎士団・・っというわけだ
女性が一組織をまとめるってこと自体反感を持つ者は多いんだけど
タイムはルザリアがまだ今ほど発展していなかった時から
ここの騎士団として参加していたこともあり
あいつが団長に昇格したことを反対するのは騎士団はおろか住民も全くいなかった
事実、それからの治安はさらに向上しているからそもそもの反対する理由がない
まぁ、かかあ天下で肩身の狭いおっさんが
男尊女卑を振りかざしているのをたまに見るくらいだが・・、正直見苦しい

そんな中でも問題はある
騎士団の面々と事件の数が合わないんだ。もちろん数が多いのは事件の方・・
そうした時に俺がおこぼれ頂戴ってな感じで
手を貸すのだがそれは本来は騎士だけで解決しなければならない問題・・
だからタイムもそれが結構悩みの種になっている。
俺が餓え死んでもいいのかっての・・
まぁ、王国認定の正騎士なんてものはアカデミー云々やら従騎士制度やらで
そう簡単にはなれないのだから急増員はできないんだけどな


まぁ、それは置いといて今日も俺、ルザリアのアイドル、
クロムウェル様は騎士団屋敷へと足を運ぶ
騎士連中達からは殺意の目で見られるけれども一応は顔パスです♪
だって〜、こいつらが太刀打ちできない事件を俺が仕方なく片付けてやってあげてるんだぜ?
そうそう物も言えまい・・

まっ、そんなこんなで団長室へ。
重苦しい扉の向こうに赤毛の美しいスーツ姿のタイムが・・
いつものように書類の束を綺麗にまとめて処理している
「また邪魔しにきたのか?クロムウェル・・」
「邪魔だなんてつれないな〜、タイム」
「忙しいんだ・・構ってやれんぞ・・」
ぶっきらぼうなタイムさん・・、
まぁ人員不足で部下の書類の処理まで手伝っているってんだから仕方ないけどな
「まぁ、ほんとに邪魔することはしないよ。
だって〜、それは夜のお楽しみでしょ♪」

グサッ!

「・・タイムさん、羽ペンを人に向けて投げるのは御法度じゃないの・・」
眉間に刺さってます・・、っうか深く刺さったら死んでるぞ
「お前向けの法律なんぞない・・。全く・・」
別のペンを取りだしせっせと事務に勤めるタイム、忙しいのは本当だな
「大変そうだな〜」
「いつもの事だ。最近はまたテント郡の住民が増えているからな。
それもセイレーズ老に頼んでまとめてもらっているのだが・・
どんな人間がきたか確認はしておかないと犯罪に繋がる」
「そうだな、テント郡に余所から来た強盗グループなんかいたら厄介だもんなぁ・・。
っうかあのじいさんに頼まないとおっつかないのか?」
「一応はスクイード君の担当だがあまりに量が多いのでな。
シトゥラにも頼んでも間に合わないくらいだ」
おいおい・・、じいさんもシトゥラも一応は関係者じゃないものな・・
「深刻だなぁ」
「そんな中でもお前達は景気がいいようだな。
エネ親子が住宅地区に家を買って暮らすことになったそうじゃないか?」
「ぜ〜んぶフィート負担だ。その分どれだけの女が泣いた事か・・」
俺がなぐさめようとしても逆効果で刺されるからあえて放置、
まぁそれでも捨てられた女はフィートが忘れられないんだってよ・・異常だぜ・・
「・・そうか、そういえば受けつけのサリーも最近欠勤が続いているな・・」

「「・・・・・・」」

「・・・深いこと、考えない方がいいか」
「そうだな・・」
ともあれ、俺の指定席にもなっているソファに寝転び仕事をしているタイムを見つめる
邪魔はしてないよ〜♪

コンコン

おっ、どこぞの騎士が報告でもしにきたか?
お堅い騎士様のお仕事を凝視してあげましょうかぁ・・

「スクイードです、失礼します」

おおっ、ヘタレ騎士スクイードか・・。これは面白い
今入ってきた黒髪の青年はスクイード、
タイム直属の部下で一応この騎士団での地位も高いのだが・・阻害されている♪
まぁ、哀れな人間さ
「タイム団長、団長宛てにゆうび・・・」
「よう♪相変わらず働いてるな♪」
スクイード君、俺のほうを見て固まってますよ・・
「ぬっ・・、だ・・団長、郵便が届いてます」
おおっ、あえて無視するか、成長したな〜・・
「ありがとう、すまないな。今度の休みはなんとか取れるようにする」
休み?こいつでも休みたがるんだな・・
「スクイード、休みなんかしてシトゥラとおでかけか?」
「うるさい、変態。シトゥラの提案で修行の旅に出ようと思ったんだ
・・仕事が忙しいからそうもいかなかったが・・な。
でも団長いいんですか?」
「いくら騎士でも休みなしで働き詰めならば体を壊す・・。」
流石は団長、部下の健康にまできちんと目を配っているな〜
そう考えたら俺の上司だったクラークさんって結構いい加減だったかも・・
「ありがとうございます、それで、この郵便は・・」
「ん・・、ローエンハイツ騎士団団長フロスティ殿から・・か」

「えっ?フロスさんから?タイム、あの人の繋がりがあるのか?」

「いやっ、年1度の総団長会議で顔を合わせた程度だが・・・、
・・・・・・・・、これは!?」
手紙を見てタイムが驚く・・、何書いたんだ?フロスさん
「・・内容は・・、どうなんですか?」
「スクイード君、休みの件、確定だ。一月ほど休んでくれ。フフフ・・」
「おいおい、そんなに休んでも大丈夫なのか〜?」
「詳しくは機密事項では言えないが隊員の補充ができる。それも中々優秀な者がな」
「優秀・・ですか・・」
おおっ、スクイードがカチンときている!
「まぁ、フロス団長の評価だ。
ともあれ私は返信を書く、スクイード君は休みの手続きをしてくれ。
シトゥラと水いらずに修行するといい」
「わかりました・・では、失礼します」
しぶしぶ・・だな。結構気になっているしあの様子じゃ訓練にも身が入らないだろうな
「しっかしフロスさんからか・・。団長職にも板がついてきたようだな〜」
「私より優秀だろう・・、さぁ、お前も帰ってくれ。気が散る・・」
「へいへい、じゃあ夜にまたくるぜ・・」
「えっ・・?」
「なんだよ、いいのか?」
「あ・・、いえ・・何時になるかわからないから・・終わったらこっちから行く・・ね」
プライベートな話になると女になるな〜、まぁそれだけ騎士仕事ってのは辛いわけだ
ともあれ、今晩の飯はタイムの手料理で決定だな♪





それより数日後、何事もなく穏やかに〜過ごした
フィートはエネちゃんの家に泊まる毎日・・、
まぁ中古物件で色々と不備があるから一緒に暮らしてそれを改善するんだってよ。
全く本命には尽くしているな〜
まぁ、おかげでこのボロ宿で俺とタイムとは愛を咲かせていられる・・
おっと、こうしたことは余り言っちゃいけないな♪
まぁそんな訳で今日も静かに家でおネンネ・・
金はあるんだけど外出たらすぐなくなっちまうからな
屋敷も最近は超多忙なんだってよ。
まぁスクイードが休暇することが結構大きい・・っうかどちらかといえば
シトゥラが手伝ってくれなくなることのほうが大きいか・・
あいつ騎士達に人気あるからな〜
俺が行ったところで殺されるだろうから家で大人しくしてるべ・・
夜になればタイムの自由時間になるだろうし・・

ガッチャァァァン!!

うおっ!いきなり窓ガラスが!!
フィート狙いの狼藉か!!
・・っうか割ったの、結構大きな漬物石だ・・。弄ばれた女にゃ無理だな

「やっほ〜!おに〜さ〜ん!」
・・こ・・この声・・
「お〜い!窓割れているから聞こえているでしょ〜?」
間違いねぇ・・妹のカチュアだ・・

「カチュア!!窓割って弁償するつもりあるのか!」

窓から覗いて見れば向かいの廃屋の屋根に
金髪をなんか色々と結んだ代わった格好の女性・・カチュアがいた。
よくわからん髪型なんだよな〜、
なんだか一杯髪をオサゲにしてそれを括ったり右側だけ垂らしたりと・・
激しいダンスでも踊ってそうだ・・
そしてその隣には・・

「ど・・どうも・・」
最初に会った時よりも長くなった赤髪の青年・・
「キース!お前ら、どしたんだ!?」
「用事があったから来たの、入っていい?」
「ああっ・・っうかだったら窓割らずにちゃんと向こうからこいよ!!」
「・・えっ、こっちが玄関じゃないの?」
・・だめだ、こいつ・・



ともあれ、割れたガラスを片付けて我が愚妹カチューシャ=ヴァーゲンシュタインと
ローエンハイツ騎士団の有望株キース=ラクレインを部屋に招いた
以前俺が実家に帰った時にこの二人は出合い〜・・今どんな関係なんだろ?
まぁそれなりにお似合いなんだがな

「でっ、どうしたんだ?二人してルザリアに観光か?」
「その前にドリンクないの?」
「剥ぐぞ、てめえ・・」
「冗談よ♪別に観光じゃないわ、引越ししたのよ」
・・・はぁ?
「引越しっうかお前の場合は駆け落ちか家出だろ?」
「ああっ、家はもうさよならして前までキースの部屋で世話になっていたわよ♪」
「・・そっか。じゃあベイト達も寂しがってるだろうな」
「ちゃんと文通はしているわよ。だから今はカチューシャ=ラクレインよ」
「・・カチュア・・」
・・、そういうのって男から言うもんだろ・・
「籍入れたのか?キース?」
「いえっ!まだです!」
「っという事は勝手に名乗っているわけかい・・。
でっ、家出て二人でどうしたんだ?」
なんだか脱線しまくりだしな・・。
俺としては早くガラス屋に行って修理を依頼したいんだけど。
「実は明日からルザリア騎士団への転属が決まりましてそれで来ました」
「へぇ・・、あっ、この間のフロスさんの手紙はそのことを伝えていたんだな・・
しっかしよく了解したな〜、ローエンハイツは水があっていたんじゃないのか?」
「フロス団長のお言葉で余所の組織で力を試せと・・。
自分の力に自信がついたなら戻ってくるよう言われました」
「なるほど〜、でも自信がつくまでって大変だぜ?
まぁここならローエンハイツばりに忙しいから力試すにはちょうどいいか」
「はい、それでこれから騎士団に出頭しようと思っていたのですが
先にカチュアがクロムウェルさんの家に寄って行きたい・・っと」
「ふぅん・・、カチュア、俺に何か用なのかよ・・?」
「まっ、出来の悪い兄の姿を確認しようと・・・・・・ってそんなに睨まないでよ〜」
「・・けっ、じゃあこれから屋敷に行くのか。
俺も暇だし一緒に行ってやろうか?」
「・・いいんですか?」
「団長のタイムとは顔なじみだからな。その方が砕けていいだろ?」
顔なじみ・・っというかアレなんだけどな・・、まぁ表立って言うのも恥ずかしいし・・
「じゃあ私も行く〜♪」
「やかましい、お前は騎士でも何でもないただのケダモノだろうが!」
「ち〜が〜う〜わ〜よ〜!!一応は従騎士になったんだから!」
・・お前が?従騎士だぁ!?
フロスさん、脅されたか・・?
「じゃあお前もルザリア勤務か?」
「そっ!キースったら抜けているんだから私がサポートしてあげるのよ」
「抜けているのもお前だしサポートされるのもお前だ」
「るせぇ!馬鹿兄貴!」
「上等だ!愚妹!!」
・・少々お待ち下さい・・、っうかキース、全く止めようとしないね・・・




・・・・・・
・・・・・・・
「それで、兄妹ケンカした後で着任というわけか・・」
あ〜、タイムったら、怒るより呆れているわ
「まぁ、それだけ仲が良いということで・・」
「全く・・、ではっ、キース君にカチュア君、着任ご苦労。
今日はゆっくり休んで明日からがんばってくれ」
「はっ!」
「はい!(・・この人がお兄さんの彼女か〜、すっごい真面目っぽさそう〜)」
「・・・?何かな?カチュア君」
「い・・いえっ!何でも・・。ではっ、明日0900時より任務につきます!ではっ!」
ピチッと敬礼して二人は出ていく、
報告聞いていたらどうもあの二人同じ男性寮の部屋で暮らすんだってよ
・・まぁスクイードとシトゥラの前例があるからいいんだろうけど・・
男性寮で寝泊まりするのを希望するなんて変人だねぇ・・
ともあれ、新人二人の着任を確認してタイムも一息ついたのか書類を置いて俺の前のソファに座る
「あの子がお前の妹か・・」
「ああっ、うるさいのが来たな。・・大変だぜ?」
「お前の相手よりかは楽だろう?」
・・どうかな?筋肉質が豊富な男性騎士団寮だぜ?
・・筋肉フェチのあいつが問題行動を起こさない保障はない・・。
キースだけが頼りだな
「まっ、ともあれあいつ等にテント郡の見回りさせるんだろ?
明日あたり街の案内がてらに付き添ってやろうか?」
「そうしてくれると助かる。・・しかし・・、あの子が少し羨ましい・・」
「ああっ?あんなアバズレがか?」
「だって・・、クロの事昔から見てきているんでしょ?それに・・、わけ隔てなく話もできるだろうし・・」
「俺の昔か・・?見ないほうがいいって、グレてたんだし。
それに・・お前とは何も隠さずに接してるつもりだぜ?」
「クロ・・」
「タイム・・まだ休憩中だろ・・?」
う〜ん、ムラムラ・・
「で、も・・ここでは嫌・・」
「そうかぁ?その割には大人しいじゃないかぁ・・ええっ?
最近忙しいからた〜っぷり可愛がってやるよ(ニギニギ)」
「も・・もう・・」
ふっ、俺は場所を選ばない・・。それが漢の証・・、それこそが愛・・
イッツ ヴァーニング ラヴ

コンコン

「スクイードです、失礼します!」

!!!!!!!!!

「・・んっ、変態!何で床に転がっているんだ!?」
「ス、スクイード君!ちゃんと返事を待ってから入らないか!」
「だ、団長?あ・・すみません・・」
タイムもご立腹だな、っうか・・・・・やばかった〜!!!
鍵閉めておくべきだったな
「・・ふっ、どうやらお邪魔だったらしいな」
スクイードの後から入って来る膝くらいまで長い白髪の狐人・・シトゥラ
あいもからわず動きやすい布のドレスみたいな服装。民族衣装ってやつだな
山暮らしなのになんだか草原の遊牧民みたいだけど・・
因みにシトゥラは今、仮なんだけど騎士団に所属している、
まぁ宿主のスクイードを手伝うためと色んなモノを見学するためということだ。
確か・・『ルザリア騎士団特別任務顧問』だったっけな?
正直スクイードよりも人望が厚い・・強いし面倒見がいいからな
「??邪魔?」
「気付かなくていい!ともかくどうしたんだ?二人揃って私服で・・」
「ああっ、休暇だから職場を離れる前に声をかけようと思ってな」
「・・阻害されているから別にええやん」
「そんなことないって言っているだろ!あっ、団長。
では少々空けますのでよろしくお願いします」
「ああっ、まぁ無理しないようにな。シトゥラも色々と頼む」
「了解だ。そちらも留守中しっかりと営んでくれ」
・・獣人なだけにシトゥラはそっち系の話を普通にしてくる・・冗談の欠片もないから余計厄介だ・・
おかげでタイム、顔が赤くなっているぞ?
「それよりも、周りに挨拶したんなら新隊員が誰だかわかっただろ?」
「・・ああ、あいつがここに転属になるとは・・」
さすがに以前キースに負けただけにライバル意識はすごいもんだな
「これでタイムを除いての騎士団内ではシトゥラが一位、二位はキース、三位はカチュア・・だな」
「なっ、お前の妹も来ているのか!?」
「お〜、俺も意外だったがな。
ともあれ、きっちり修行して腕を上げないと阻害されるばかりじゃなくて存在すら無視されるぞ?」
「だから阻害されてない!いくぞ!シトゥラ!この旅で俺は進化するんだぁぁぁぁぁ!!!」
スクイード、らんなうぇい・・
「ふっ、気負い過ぎている気がするが・・。じゃあいってくる」
「ああっ、土産に茶でも頼む」
「ふっ・・」
少し口元を上げて部屋を出て行くシトゥラ、大人の女性だの〜・・

「・・やれやれ、お邪魔が入ったが・・再開と行きますか♪」
「・・もう。休憩は終わりよ。仕事だってたまっているんだから・・」
あら・・、・・くっ・・おのれスクイード!俺の楽しみを奪いやがって!!
お前なんか呪われちまえ!ばーか!!




翌日
未だにフィートはエネ宅でのお泊まりが続いておりまぁ一人寂しく一夜を明かしたわけだ
昨日言っていたようにキースとカチュアに街を案内するために
屋敷前の緑地公園のベンチにて寝転び中〜♪
屋敷の方角からは騎士達の叫び声が・・、任務につく前の合同の朝の訓練だろうな
・・っても俺がやっている朝練に比べたら準備体操にも満たないし時間的に遅い・・・・
まぁ、温室育ちにはそれでもキツイんだろうがね
・・おっと出てきた。
キースは騎士の地位を表す上での板金胸鎧と騎士団制服、濃い紺の軍服みたいな感じだ
これも王国騎士団内での評価で変わるらしい。・・他は見たことないけど
板金胸鎧ってもアレは戦闘用じゃないらしく見た目は立派だが中は結構空間があるらしくて軽い
もっとも実際ヤバイことがあると本物のしっかりとして物を着込むんだけどな
対しカチュアも同じように紺の軍服、こちらは補佐ということか従騎士なのか鎧は着てない
・・元々着ないんだろうけど
「お待たせしました」
「いいやっ、でも似合っているじゃないか?
向こうではずっと自前のレザーアーマーだったんだろ?」
「ええっ、見回り用のダミーアーマーですが・・気が引き締まります」
「ちょっとピリピリしている感じはするけど・・、
そん変わりお前は少しは緊張しろ、胸ボタン外すな、バカタレ」
「だってキュークツなんだもの〜!」
「騎士業務なんざそんなもんだ。じゃあ案内するぜ〜」
一通り軽く案内させる
まぁ俺も顔が広いほうだから周りにキース達を紹介すればすぐに打ち解けるだろう

ルザリアは大国ハイデルベルクでも西部に位置しており北西にはフィン草原都市郡
南西には運河を挟んで元軍事国家グラディウスがあり、色んな物が集中する
だからこの街には貿易目的に貴族が多く住んでいるってのが特徴だ
まぁそれは置いといて表通りを占めおり貿易品が盛んに並んでいる商業地区
これが街の中心に当たるわけだ。街の広場もここにあり大いににぎわっている
そして商業地区と隣接する様にあるのが
貿易品の検査云々したり貿易品をさらに加工したりする工業地区、ここも活気に満ちている。
そんで商業地区と工業地区の間に緑地公園と騎士団屋敷がある。
問題が起こるのはおもに商業地区だし
工業地区での貿易品の検査も騎士団の仕事だからな。
そして商業地区からは少し離れた立ち並ぶ住宅地区。
昼間は結構清閑としており空き巣に入らないように注意しなければならない。
その中でも裏通りに入ったところにあるのが俺の宿ってわけさね
後はどの地区からも離れているところにある貴族地区・・、どれだけ広いかわからん規模だ
基本的にはここは騎士団も立ち入りはタブー・・。
まぁタイムはそれでも目を光らせているし不正があれば裏で俺が動いて成敗している。

まっ、この地区は消滅したほうが世のためだ

そしてある意味一番厄介なのが街の外に並んでいるテント郡。
街の活気につられて余所の街や国から来ていたりした人や
難民が職をもらえずにたむろっている地帯・・
まぁ、前まではそれこそ無法地帯で血なまぐさいこともあったみたいだけど
最近はセイレーズのじいさんやスクイード達のがんばりもあって
とりあえずは落ちつきを取り戻している
それでも日々増えている難民達には気を配っておかないと
この平穏が崩れるので大変なのさ

・・総合しても騎士団のがんばりがなければすぐやばい事になるってことかな?
貿易で賑わう街なんてそんなもんさ
だからこそそれを仕切っているタイムは尊敬されているわけ、
人が不可能と思うような激務なんかをこなして始めてその人は尊敬される
親の七光りでえらそうぶっているボンボンとは格が違うってわけさ・・



「どうだ?あらかた周ったけど・・とりあえずの位置関係は掴めたか?」
一通り周った上でテント郡の中にある井戸に腰かけて休憩〜、道覚えるのもラクじゃない・・
「ええっ・・、どこも気を配らないと平穏が続かない・・。平和そうで大変な街ですね」
「まっ、そこらへんはローエンハイツも似たようなもんだろ?
あそこはテント郡はないが港や闘技場がある。その点はまた大変だろうしな・・」
「でも私達がこのテント郡の見まわり担当?なんだか・・ねぇ」
「他も似たようなもんさ、ここが一番大変だけどある意味一番やりやすいだろう」

「「???」」

「これから会う人間に手助けしれもらえるからさ、こっちだ」
最後にセイレーズのじいさんと顔を合わせておく、じいさん、もはやドンだし・・
今では一番大きなテントに住んでいる
まっ、威厳を表すもんでもあるんだが・・住んでいるのがじじい一人だから・・無駄が多い

「よ〜、じいさん。元気かぁ?」
中に入ってみると以前と変わらないベットと軽い家財道具。
それにテーブルが置かれて他のテント郡住民とチェスをしている・・
まぁ、もうすぐ死ぬとか言っておきながら元気なもんだぜ。これも名医クライブの力か?
まさにスーパードクターC・・
「おおっ、クロマティか。どうした?」
・・・、何回言っても俺の事をクロマティって言いやがる・・!
まるで誰かに吹きこまれたようだぜ・・
「ここの新しい担当が来たんでな。この二人だ。キース、こいつがセイレーズ。
ここいら一帯を仕切っている人間だ」
「ルザリア騎士団に配属されたキースです。ご協力お願いします」
「同じくカチュアです」
丁寧な敬礼・・。っうかカチュアまでできるとはな・・キースに仕込まれたか?
「ああっ、そうかしこまらんでもいい。
まぁ大変だろうががんばってくれ・・・こいつ等も騎士団には協力的だ」
チェスの相手をしているおっさんの肩を叩きながら笑う
・・これが昔は冷静沈着に闇夜を駆ける大盗賊だったんだとよ・・、信じる?
俺は信じられない
「へぇ、あっしらも協力させていただきやす」
チェス相手のおっさん・・、やっていることと言葉使いにギャップがあるな・・
「それよりもほれっ、スクイードとシトゥラのねぇちゃんは?新しい担当ということは・・」
「ああっ、左遷だ♪」
「ク・・クロムウェルさん!?」
まぁまぁ・・、後輩に仕事を譲るのも先輩の仕事だ
「まっ、有能か無能かはすぐにわかる・・。
とりあえずこれからはこいつらがメインになるだろうさ。
じゃっ、ここいらの詳しい状況を話してくれ。俺は帰るぞ?」
「あ・・ありがとうございます。・・セイレーズさん、お願いします」
一礼しながらセイレーズじいさんに話を聞く。
チェスおっさんもお邪魔というわけかすぐ出ていった・・な



それから俺はタイムに顔を合わせて軽く話した後に我が家に戻ることにした
まっ、忙しいから基本的には邪魔しないさ。事務を手伝うなんて論外だし・・。
やれやれ、もう夕暮れだな。
まっ、帰りは誰も待っていないからどこかで飯食っていくのも悪くはないな・・
あっ、前方12時方向に紫ラーメンみ〜つけた!

「じゃあ一旦僕は帰りますね」
「どうもお世話様で・・」
「フィート君もここで住めばいいのに・・」
「僕にも今のところ別に家があるからね、ともあれ、ようやく落ちつける空間が手に入ったんだ。
親子水入らずを堪能しないと・・ね♪」
「フィート君・・」
「じゃ、僕はこれで・・。またね」

・・・偽善者め!!
一緒に暮らすのが嫌なのは女遊びができないからに違いない!間違いない!
まっ、その姿を見られるのが嫌ってのもあるんだろうな・・
しかし、住宅地区の表通りの木造平屋か・・。
結構値がするだろうけど思いきったことやったもんだな・・。
ともあれ、二人でどっかで飯でも食うか

「よう、フィート君。愛の巣に泊まらなくていいのカイ?」
「せ・・先輩?どうしたんです?
この時間に先輩が外を歩くなんて統計的にはかなり低い確率なのに」
・・何のデータだ・・?
「野暮用だ。それよりもあれがエネちゃんの新しい家か・・。立派なもんだな」
「へへっ、そうでしょ♪まぁ色々と骨が折れたんですけどね」
「そりゃあな、金額も相当するだろうしお前持ちなんだろ?」
「・・それがですね〜。
実はあの家は『呪われていた』んですよ〜、それこそ家の物が急に落ちたりして
気味が悪かったらしくてその内前の住民が逃げだしたんですって。
まぁそこを僕が家に住む『悪霊』を退治して住める環境にしたってわけです♪」
呪われただの悪霊だの・・、要するに骨が折れたって事はその自作自演のためか・・
「・・お前、手段選ばないよな・・」
「そういう世界で生きてきましたからね〜、騙されるほうが悪いんですよ」
・・・超エリートの魔術師の言う台詞じゃねぇ・・
「まぁいいや。飯にしようぜ、こっちは街の案内で疲れた」
「???・・いいですよ。案内って・・何です?」
「お前は聞かないほうがいい・・。それとテント郡と騎士団寮にも近づかない方が良いな」
「???」
また感染するって騒いだらカチュア、絶対にブチ切れるだろう・・


それからフィートと二人で馴染みの飯屋によって晩飯・・
我が家に戻ってからは完全別行動だ
っと言ってもフィートはまたすぐ出ていったがな・・、女の事になると行動力がすんごい・・
俺もおこぼれもらいたいな〜・・

コンコン

「開いてるぜ、タイム」
仕事も早く済んだか、どうやら峠は超えたみたいだな

ガチャ

「お待たせ、クロ・・」
仕事後もスーツ姿なタイム、疲れているのが見ただけでもわかる
「お疲れ・・。大丈夫か?」
「明日は休暇だから大丈夫。ゆっくり休ませてもらうわ」
「ならその堅苦しい服もさっさととっぱらっちゃえ♪」
「・・気が早いわよ・・」
睨みながらも上着を脱ぎ、白いシャツの首元ボタンを一つ外す
「悪い・・、でっ、どんなもんだ?キースとカチュア」
「初日から容量良くやってくれたわ。見る限り剣の腕も良さそうね」
「まっ、ローエンハイツじゃキースはスクイードに勝っていたからな。
カチュアも実家の体術メイド共の英才教育で身体能力なんかピカ一だろう」
「カチュアのほうは貴方に似て騎士としての態度はまだまだだだけどね」
「そこは大目に見た方がいいぜ・・」
「わかっている。それと・・カチュアがクロの妹だって事、面々には伝えてないから・・」
「すぐわかるだろうけど、初対面から伝えるよりかはマシか・・」
「そうね、まぁ、成果はこれから確認するわ。・・あ〜、疲れた・・」
プライベートは女の子、伸びをしながらも床に座る俺の隣に寄り添ってくる・・
「お疲れさん、風呂でも焚こうか?」
「それもいいけど・・、もう・・我慢できない・・」

が・・我慢できんとな!?

「お・・おい・・今日は結構積極的じゃないか・・。満足させてやるよ・・って・・」
「・・くー・・」
我慢できないって・・、そんなに眠たかったのか・・・・
ったく、仕事に熱中してばかりいると体調壊すぞ?
「・・クロ・・」
「んっ?」
「クロ・・・ううん・・」
寝言か・・。ったくしょうがないな。
スーツは皺になっちゃいけないから脱がして寝かしてやるか
全く、こんな華奢な体で街の治安を守っているんだ・・大した奴だぜ
・・あいつらがタイムの負担を減らす存在になればいいんだがな・・
俺ももっとこいつの力にならないといけないな・・、事務は迷惑だろうけど

まっ少しは良い方に向かったってことは間違いない・・かな?
そう思いたい・・思わなければやってられねぇ・・
っうかカチュア!これ以上俺の評判落とすなよ!!

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