「新団員就任式」


その日、ルザリア騎士団屋敷団長室は妙な緊張感に包まれていた

っと言っても普通に考えたら騎士団の長が働く場所なんだからそれで当然なんだけど・・

まぁ俺という異分子がいる分余所の団長室に比べて賑わいがあるのは間違いない

かく言う俺、クロムウェルはこの街の人気者♪

一歩街に出れば黄色い声の阿鼻叫喚・・・っと言いたいところだけど実際は・・ね

いつまで経ってもこの都市の女どもは見る目がない、こんないい男が歩いているんだから

すっ飛んできてもおかしくないんだけど・・

──まっ、本当に寄ってこられたらそれはそれで困るんだけどな・・・

好いた女は一人だけ、それが男と女のルールだ・・例外はあるけど

でも体はより多くの子孫を残そうとそのルールから逸脱した欲求を命令する

・・ここらが辛いところなのよ・・

っと脱線したな・・。そんで〜、何で緊張感に包まれているかと言えば今日ルザリア騎士団に新しい団員が補充される事になったから

それによりいつもに比べて正装な状態で待機しているってわけだ

「・・クロムウェル・・、本当にここにいるのか?」

困惑顔なのは俺の女、タイム。若くしてルザリア騎士団を束ねる才女にして俺に甘える可愛い奴

今は他に人がいるから団長モードで話しかけてくるのだが俺達は今ここにいる場所で体を重ねる仲なのだ

「まぁ、知らない奴でもないんだからいいじゃん。邪魔はしないよ」

「・・そうか」

軽くため息をつき渋々了承する・・

今日はいつもの地味なスーツ姿ではない、

儀礼用と思われる濃碧の軍服スーツにハイデルベルク騎士団の胸章とルザリア騎士団専用の胸章がつけられている

スーツの袖にも同じような物で止めておりいつもと違ってやや派手・・。白い手袋までつけているし

でもやはり一番の違いはやはり隠している右目を開放しているところかな・・

頬の部分に傷跡があってそれを隠しているタイムだがそれを他人に見せることも苦ではなくなったようだ

最も・・普段は隠してるんだけどな・・、まぁその方がこいつらしい

そんな訳で軽い髪止めで垂らした前髪を横に反らし止めているタイム・・凛々しさで満ちあふれた若い女騎士団長がそこにいる

ハイデルベルク騎士団に所属する女騎士が憧れてやまないのも頷けるな

「・・しかし、騎士学校卒業して田舎都市の騎士団所属・・そしてルザリア騎士団所属か・・異例の速さだな」

タイムの隣で顎をさすって難しい顔をするは、僕らの阻害騎士スクイード!

周囲から嫉妬や憎悪の眼差しで見つめられたら他に勝る奴なし・・っという漢だ

その原因はルザリア三大美人と称されるほどの美貌を持つ女性三人の内の一人シトゥラと同棲状態にある事が大きい

性欲旺盛、絶世の美女、おまけに気だては良くて強いという白狐族の女戦士シトゥラを家に囲い込んで

夜の生活も共にしているんだ・・そりゃ嫉妬される。

おまけに求婚までして現在はそれに承諾を得られるように訓練中の身

・・っとは言えどもシトゥラに子を産んでもらうためには白狐族に認められなければならず、

連中の中でもシトゥラに孕んで欲しい方々がたくさんいらっしゃるのでさぁ大変・・

一族の男戦士みんなしばき倒すぐらいの覚悟がなければ無理だと言うことで不可能に近い壁に取り組んでいる

ミッション・イムポシブルですな・・

「適応能力と学習能力は秀でていた感じだったからなぁ。まぁお前にとっては世話のかからない分楽じゃないか?」

「そうはいかない、世話がかからないと言えども世話をしないわけにはいかない」

クソまじめに堪えるスクイード、こちらは鎧装備・・キチッとマントまでしている・・

因みに俺は普段着・・それに対してタイムは苦い顔をしているのだが・・俺、この服ぐらいしか着ないし・・

「しかし、優秀な人材が増える事は嬉しい事だ・・ニクス君だったか・・約束通りだな」

静かに微笑むタイム・・その通り・・今回のここに補充されるのはルザリアに家を持つ貴族の娘・・ニクス

以前騎士見習いとして学校に入る前に憧れのルザリア騎士団屋敷を回ってみたいって俺に言ってきた事があるんだ

それでやることがなかった俺は彼女を案内、タイムやスクイードにも合わせて激励したって訳・・

彼女が本当にルザリア騎士団に就任する事に決まった時は俺もタイムも驚いた物だ

なんせこの業界、自分が思うような部署に回れる事なんて滅多にないからなぁ・・

「それも憧れのスクイードが室長のテント群担当とはなぁ・・きっと舞い上がったろうに・・」

ニクスはちょっと変わっているらしく体の65、7%が阻害成分でできているスクイードを尊敬しているのだ

まぁ・・誰にでも一つぐらい変わったところはあるもんさ

「自分の希望部署に配属できるんだ、やる気もあるだろうが・・貴族出身でテント群・・少し心配だな」

「そうか?ルザリアに住んでいてその騎士団に入りたいって言っている時点でテント群の事は腹決めているんじゃねぇか?

俺はそれよりもテント群室内の雰囲気の方が心配だなぁ・・」

「・・雰囲気?どういう事だ?」

「おいおいタイムさん、わかるだろう?今のところテント群担当課はスクイード&シトゥラ、キース&カチュアって具合にうまくわかれている・・

そこにニクスが入るんだ・・一人身なニクスにゃ少々居づらいんじゃないかい?」

「ば、馬鹿な!僕達は仕事でいるんだ!プライベートな関係なんぞ職務に影響なんか出るはずがない!」

「そうかぁ・・?その割にゃ巡回とかほとんどカップル同士だぜぇ・・?これは偶然なのかなぁ・・」

「ぐ・・そ・・れは・・」

「何、仕事中でも惚れた奴と一緒にいた方がいいってのはきっとタイム団長殿も同じ気持ちだろうさ・・まぁ、くれぐれもニクスを阻害してくれるなよ」

ニヤリとからかうのだが何気にタイムが赤面・・図星だもん・・

対しスクイードもお顔真っ赤、こちらはタイムがそうなったのとは違う意味で・・だな

「馬鹿な話をしていないで大人しくしておけ、つまらん事をしていると追い出すぞ」

不機嫌そうに言うタイムさん・・やれやれ、後でご機嫌伺いますか♪

かく言う今日も朝からお盛ん♪何というか・・タイムって朝の方が燃えるのかな・・?かなり悦んでくれてた

「・・・クロムウェル、下品な眼差しを私に向けるな」

っと、俺の視線に気づいたか・・こわいこわい♪

まぁ視線で俺が何を考えていたのかは丸わかりなんだろう、少し恥ずかしそうだ・・

 

・・・・・・

 

しばらく雑談をしていたら受付のサリーさんの案内でニクスが到着した

途端に空気がピシッと緊張して俺もスクイードの隣に整列、こういう堅いのは苦手なんだが・・まぁ暇だからたまにはな・・

団長室にキビキビと入ってきたニクスは俺が案内した頃の彼女よりも明らかに成長していた

肩に軽く掛かる程度のスラッとした金髪はそのまま、支給された騎士団制服を身にまとい敬礼するその姿はまさしく女騎士

全く・・俺の妹とは比べものにならないくらい凛々しいな・・

前あった時はもっと・・こぅ・・お嬢さんって感じがしていたんだけど・・流石に騎士団学校の教育に甘さが抜けたのだろう

 

「就任ご苦労・・ニクス=フライム。本日よりルザリア騎士団で奮闘してもらう」

 

「はい!」

 

キレの良い返事・・内心は喜びに満ちているのだろうが表に出そうとはしない・・まっ、当然か

それにしても相変わらず「清楚」って言葉がよく似合うな

よくよく考えて見たら俺の周りの金髪女でまともなのって・・いないし・・

代表格セシルだろ?そんでもってカチュア、ここの受付のサリーさんなんかもそうだ

ようやくルザリアにも清楚金髪女子が増えた事は喜ばしい・・こりゃ黒化しないように要注意だな

「では・・翌日よりテント群担当部署にて尽力して欲しい・・君の働きに期待する」

「はい!団長の期待に応えられるように粉骨砕身の覚悟で臨む所存です!」

・・ううん、懸命だなぁ・・

「テント群は難民貧民の生活向上をつとめる仕事が多い、多少きつい事もあるかと思うががんばってくれ」

「スクイード室長!よろしくお願いします!!」

これだよ・・金髪外見清楚女子はこの対応じゃないと・・

「・・・・・・、クロムウェル教官」

サリーもセシルも猫かぶりしているんだからなぁ・・だからパツキンケダモノだなんて不名誉な名前がつけられたんだっての・・

まぁサリーさんは捨てられ猫か♪

「コホン──・・ク・ロ・ム・ウ・ェ・ル教官!」

「うぇ?お・・おう、どうしたんだ?タイム団長」

「ニクス君に挨拶を・・(ジー)」

な、何を睨んでいるんだよ・・タイム・・

「え・・あ〜・・そうだな。堅いのはスクイードまででいいだろう?・・おかえり、ニクス」

「はい!ただいま戻りました!クロムウェルさん!」

満面の笑みを浮かべ大げさに頭を下げるニクス、とっさに普段のペースに戻す・・やりおるわ

「まぁわからない事とか相談事があるなら俺かアンジェリカさんに言うと良い。できる限りのサポートはしてやるよ」

「は、はい!でも極力お世話にならなくてもいいようにがんばってみます!」

しっかりしているなぁ・・、これが貴族の娘だって未だに信じられない

「・・では、行こうか。屋敷内部の説明は以前やったようだから明日から働くために身の回りの事を説明する」

「お願いします!」

キビキビ一礼して責任者なスクイードの後に続いていきニクスは団長室を後にした

・・それで残されたのは俺と何故か俺をジロっと見ているタイム・・

 

「・・あの・・どしたんだ?お前・・」

 

「クロ・・ニクスに変な目で見ていた・・(ジー)」

 

おいおいおい

「仕事中に嫉妬しなさんな・・凛々しい団長像に皹が入るぜ?」

「・・むー・・(じとー)」

おいおいおいおい

「全く、俺がニクスに手を出すと思っているのかぁ・・?」

「じゃあ何であんな眼差しをニクスに向けていたの・・?私にもしてくれなかったのに・・」

う・・、厳粛な服装のまま拗ねる姿・・って結構ドキっとくる・・

「俺はただ俺の身の回りにようやくまともな金髪女が来たと思ってニクスが黒くならないように気をつけようと思っただけだよ」

「まともな・・金髪?」

「・・ほら、セシルとかカチュアとかサリーさんとか・・」

その一言でタイムは腕を軽く組みながら、ああっと納得したようだ

っていうかタイム視線でもサリーさんは異常なんですね

「まともな人材が来たことは嬉しいことだなぁ・・タイム」

「そうね・・骨のありそうな子が来てくれたのは喜ばしい事ね」

「・・まっ、そういうことだ。そういうわけで・・俺の浮気を疑ったイケナイタイムにはオシオキが必要だべ〜!」

「え・・きゃ!」

隙を突きタイムを抱きしめる・・胸の柔らかさと胸章のごつごつした感覚が伝わってきたが

何よりもタイムが赤面した感覚が伝わってきたのが良い!

「クロ・・」

いつもと違う雰囲気で拗ねられたから興奮しちまったぜ・・。こりゃ・・鎮めてくれないとなぁ」

抱きしめながらタイムの尻を撫でる・・、とんでもなく柔らかいこの感触・・いいねぇ・・

おまけにタイムの髪の匂いに否応なしに体が反応してきた

「だ・・めよ、この服・・大事な物なんだか・・ら・・──んっ!」

っと言いながらも喘ぎ声を抑えているのが良くわかる、軽く撫でられただけで感じるなんてほんと・・イヤらしいなぁ・・

「皺になったらダメ?」

「当たり前よ・・、今日みたいな日に使うんだから」

ふぅん・・、あっ、そだ・・

「タイム、ここでヤる時ってタイムは全裸になった事ないよな?」

「えっ!?な・・何を言い出すの!ダメよ!絶対ダメ!そんなの恥ずかしい!」

「タイム〜♪」

「いや!だからダメだって!ちょっと・・クロぉ!!」

男と女の仲ではイヤという言葉はイヤではない・・っと言うことで密室(ドア)空間(ロック)形成(オン)

逃げ場の失ったタイムを羽交い締めしてその唇を奪いねっとりと愛する!

 

「ん・・むぅ・・ん・・・ん・・」

 

猛獣捕獲にセオリーがあるようにタイムさんを大人しくするにはまず優しくキスを交わす事・・

──試験に出ます、今の先制攻撃は確実に頭に入れておきましょう

っとは言えども今回は流石に嫌なのかまだ抵抗はしてる・・まぁそれも時間の問題だ

「ん・・あ・・クロ・・ダメ・・」

「なんで?」

「なんでって・・わかるでしょう?こ・・ここは職場なのよ?そこで裸になるなんて・・」

「愛に場所は関係ない・・覚悟しろ」

「クロ!・・・んんっ!?」

問答無用!舌を入れてタイムの口内の愛す!目を固く閉じ拒絶するかのようだがそれでも舌を絡ませてくる

心は拒絶しても体は素直なのさ──

そして本題突入、唇を合わせながらもタイムの儀礼用の服装を脱がしていく

元々は軽いフォーマルスーツを飾り立てた感じだ、脱がすのは容易い

「んん・・んぁ・・──ん・・」

頬を染めながらも唾液交換に夢中なタイム、舌が絡まり卑猥な音が奏でられる中俺はタイムの上着を脱がせシャツに突入・・

荒い息使いの中ボタンを一つ一つ外していく

──もはやタイムに抵抗の色はなく質素な白い下着が見えた

流石は仕事中、派手なのはご遠慮しているわけですね

「──んっ・・クロ・・だめ・・」

潤んだ目で俺に訴えてくる・・それはすでに騎士団長のモノではない・・が・・

「冒険しようぜ♪」

「・・しようぜ──じゃない!」

頬を膨らませて俺の頬をつねるタイム、羞恥心をどうしようもなくもてあましているようですね

「じゃあなんだよ、ここまでやっておあずけにするのか?」

「そ・・れは・・でも、全裸は・・恥ずかしい・・」

「大丈夫だよ、俺が見るだけだ。他の誰にも見せさせない──ってか見たら殺す」

そのための密室です

「・・もう、・・変態」

ジト目で俺を睨むもその仕草さえ愛らしい

「この通りだ、脱いでくれ♪」

「──馬鹿、後ろ向いて・・」

腹を決めたのか顔を真っ赤にしながら俺にそう言う

・・ふふふっ、嫌だなんだ言っても結局は・・

「あいよ♪ってか俺が脱がしても良かったんだけど・・」

「馬鹿、正装の扱いも知らないのに・・もう・・恥ずかしい・・」

ぶつぶつ文句を言いながらも後ろからファサっと服が落ちる音がする

・・この音に欲情しない男はいないでしょうね、ほんと

「──・・いいわよ、こっち向いて」

「あいよ・・って・・おお・・・」

思わず見とれてしまう・・

そこには一糸まとわぬ絶世の美女が股間と胸を手で隠して立っていた、

顔は真っ赤で『なんでこんな事しなくちゃいけないのよ』って書いている

厳粛な職場にこの格好はイヤン過ぎて鼻血が出そうですね

──あっ、着ていたものはソファにかけてら。やっぱ大切なモノらしい

「・・どう?満足?」

不機嫌そうに言うのだが不思議とトゲはない

「ああっ、大満足──って・・あれ・・?」

「・・どうしたの?」

「タイム、太ももに透明な筋が垂れている♪」

ぬらっと光る筋──それは紛れもなく・・

「えっ!?あ・・やだ!」

これには顔を真っ赤にして内股になるタイムさん、それを好機と見た!

一気に接近してタイムを抱きしめる!

「ん〜、いいなぁ・・明るい内にタイムの裸を拝めるのって」

「──馬鹿」

腕の中から聞こえる抗議の声、しかしそれは蚊の鳴くようなほど小さく嫌がっているという主張にはなっていない

「そんじゃ、ひと味変わった交わりを堪能しよう、そうしよう♪」

「あ・・ば・・か!優しくしないと怒るわよ!?」

もちろん、乱暴な真似はしない。

軽く御姫様抱っこをして団長用の机の上にちょこんと座らせた

「──うん、綺麗だ」

「変態・・」

全裸のまま机の上に座るタイム、睨むように文句を言うのだがすでに力はなくせわしなく股間をすりあわしている

・・ふふふ・・なんだかんだ言ってもこの状態に興奮しているようだ

「お馬鹿な要望に応えてくれたお礼に今日はタイムは感じるだけでいいよ、俺がねっちょり愛してやる」

「──、一杯イかせてくれないと承知しないんだから」

強がって笑うもやはり恥ずかしいらしく体は硬直している

そんなタイムの閉じきった股を軽く広げて花びらを拝見♪

真っ昼間に自分の職場で全裸の状態で男に股を広げるタイムは短く悲鳴を上げたが後は抵抗はない

むしろ見られる事に悦びすら感じているのかヌラヌラとソコが濡れていた

「いつ見ても綺麗だよな・・」

「──!!」

素直な感想だが体をビクッと震わせている、相当恥ずかしいらしく体が震えているのが股を抑えている手から伝わってきた

・・それにしても濃厚なタイムの匂い、何もしていないのに愛液が溢れてきている

「・・見られているだけで感じている?」

「・・・・、馬鹿・・知らない」

臍曲げちゃって♪・・じゃあ、ご機嫌治しますか〜

 

「──んんっ!・・あっ!やっ、舌・・すごい・・!」

 

そっと舌で舐めただけで魅惑の体はビクッと震える、反応もそこそこに俺は舌でタイムの綺麗な花びらを丹念に愛撫していく

 

「・・・っ・・あっ・・や・・・・あ・・・ん」

 

面白いぐらいに反応してくれる・・まぁ、この体は男の悦びを良く知っている

性に関して極端に弱くなっているから反応もいい

「・・・んっ・・・んっ・・・んっ!」

面白いぐらい感じてくれている、でも声を出さないのはそれはここが職場だから♪

抑えるところは抑える、周りに気づかれる訳にはいかないって本人談だけど・・

実際のところモロバレな気がする

それでも抗議をしないのはタイムの激務を理解しているから、だからこそ不謹慎でも欲求を満たして欲しいというわけで──

「ん──んんぁ!!!そこは・・あぁん!」

でも肉芽を攻められたらあっけなく我慢できなくなったり♪

皮をめくりソッと触れるように舐めて甘く噛む

 

「んんんんっっ!!!」

 

ビクッと軽く震える美しい股体、軽く絶頂を迎えたようだ

「ん・・ふぅ、気持ちいいか?」

「うん・・、何だか・・すごい・・いつもより感じて・・」

「みたいだな・・もうここ、トロトロだぜ?」

そう言う濡れに濡れたタイムのソコを指でなぞる、途端にタイムは甘く蕩けるような声で喘ぎその感覚に酔いしてた

「私って・・淫乱なのかな・・?こんな事して・・感じちゃって・・」

呼吸を整えながらも軽く自虐る、まぁ普通じゃないと思ってしまう状態だろうが・・

「男の愛撫に感じない方が異常だ。俺の指や舌で感じてくれたんだろう?それでいいじゃん」

「・・そうね、でも、クロだから・・恥ずかしいけどこんな事しているのよ?」

「感謝してますよ、タイムさん」

「──馬鹿♪」

クスリと笑い俺に唇を合わせる、まるで自分の愛液を舐め取るかのように激しく舌を絡ませその後に穏やかに微笑んだ

「じゃ・・挿れていいか?」

「うん♪・・あっ、でも私もしなくていいの?」

・・ああ、口淫か

「無理しているんだろう?これ以上は俺が悪いよ」

「・・ふふっ、もう、そんなところは優しいんだから。・・きて・・クロ・・」

そう言うと机に寝ころび頬を染めながら自分で足を大きく広げ、自分で自分の秘部を広げ俺を招く

凛々しき団長の姿からはあまりにもかけ離れた淫らな姿、しかし火照った体、甘い息、男を求める花びら、その全てが狂おしいまでに綺麗

当然俺の肉棒はガっチガチ、いつもある口淫がない分目の前で誘惑するタイムの姿だけでも射精しちゃいそう♪

「・・ああっ、じゃあ・・いくぜ?」

怒髪天を衝くが如くの凶器をタイムのソコに添える、それだけで先端から暖かくも体を揺さぶる快感の片鱗が伝わってくる

こうなったら我慢できない、理性なぞ意味をなさない!

 

「──んんっ!・・・ああっ!あぁ・・っん♪」

 

抵抗なくズルズルとタイムの膣に収める肉棒、耐え難い快感を体に流しながら根元まで入りきった

挿入の快感でタイムはまたイったらしく目が蕩けている

「あ──ん、ふふっ・・今朝もシたのにイっちゃった」

「ああっ、俺もすぐに出そうだ」

「うん♪・・クロのみるく、一杯注いで・・」

辛抱たまらん!

「っあ!あん!あん!・・強い・・!クロォ!」

野生丸出しにタイムを攻める、攻める!

肉棒が暴れる度に結合部からは淫らな液体が溢れ飛び散る

「あっ、あっ、あっ・・激しくて!・・いい!いいよぉ!」

目を堅く閉じ体を揺らしながら喘ぐルザリア騎士団長、もはや何も考えられない、

肉欲と快感、それが体を支配し俺を迎え入れてくれる

おまけに衝かれながらもイキ続けているようでいつもの交わりよりも数段感じているのがわかる

・・服を着るのと着ないのでここまで違うとは・・

「・・気持ちいいか?」

「うん!いい!すごく・・いいの!っ!クロは・・!?」

「ああっ、タイムの媚肉が俺のに絡みついて・・すごい・・」

「嬉しい・・!クロ・・私を感じて・・もっと・・一杯愛して!」

感情をむき出しにして俺を感じるタイム・・男冥利に尽きる

ってかすごい締め付けて俺ももう・・持たないか・・!

「スパートかけるぞ!」

「っあああ!あん!すごい・・!すごいの!こわれちゃうぅ!」

俺の首の後ろに手を回しキスをむさぼり出す

パンパンと肉がぶつかる度にタイムの姿は艶やかさを増して綺麗になっていき俺は喘ぐその姿から目が離せなくなった

「いや!だ・・めぇ!もう・・もうぅ!」

「俺もだ・・!タイム・・!」

「クロぉ!くるの・・きちゃう・・・あ・・・っっっ!」

ビクッと体を震わせる膣内にすごい圧力がかかったと同時に俺のモノが爆ぜた

 

「んんんんあああああああぁぁぁ・・!」

 

抱きつきながら絶頂、精液が膣内を駆け子宮まで到達していくのがよくわかる

「・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・」

息を切らせながら俺を見つめるタイム、目には涙を浮かべ顔は真っ赤

だが穏やかに微笑みで俺を見つめそれに応えるように唇を合わす

未だに射精は止まらずに彼女の膣内を白く染めながらようやく一息つけた

「・・・すごかった・・今日の・・」

「ああっ、俺もびっくりだ」

「・・ふふふ・・クロ・・」

「ん・・?」

「馬鹿♪」

悪戯な笑みを浮かべ再び俺の唇を奪う、そう言われてはどうしようもない。

だがその満足げな笑みに俺の心も満たされ再び濃密に舌を絡めちょっと意地悪な悪戯は幕を閉じた

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

翌日、ニクスの初仕事と言うことで見学がてらスクイード達に密着する事にした

因みに昨日のあの情事であの儀礼用の服は皺一つついてないのでご安心を♪・・って誰も心配してないか・・

あれだけ燃えたのは久々だ、・・うん、これからは羞恥プレイの時代か!

恥ずかしい世界を開拓しようぜ!!・・って本人に言えば殺されるよな・・絶対・・

 

「おはよう、クロ」

 

いつもながらの朝の訓練を終わらすと朝食を用意してタイムが微笑んで待っていた

今日は非番で俺が訓練に行く前はまだ熟睡していたけど訓練中に目を醒ます習慣になっている

白いブラウスに紺色のズボン、それに純白〜なエプロンを着けて台所から朝食を運ぶ

・・まさしく新妻って感じだよな・・

最近じゃ地べたで食うのも何だって事で二人用のテーブルセットまで置いてそこで食っている

・・俺達は家具関係は疎いんでそこらのコーディネートはクラークさんがやってくれた・・ってか破格で造ってくれた

出来は言うまでもない・・本当にあの人の本職がわからなくなってしまうもんだ

でも・・恋人のために生活が変わるのも悪くないものだよなぁ・・

「ああっ、ただいま・・タイム」

「・・?どうしたの?入り口で突っ立って」

「・・あ〜、なんか・・新婚生活みたいだなって思ってさ」

「───!」

途端に顔を真っ赤にして照れるタイム・・これがハイデルベルク騎士団で指折りの女騎士の姿だと誰が思おうか!

ってかこんなに素顔を見せるのは俺だけだからわかるはずもないか

「ははっ、まぁ頂こうぜ?今日はシなくてよかったのか?」

「馬鹿、昨日さんざんやったでしょう?す、すごく恥ずかしかったのよ・・あれ・・」

ああっ、団長室で全裸な・・

恨めしそうに睨んじゃって・・

「やっぱ違うものか?」

「当たり前じゃない!今度屋敷内を全裸で走ってみなさい・・私の恥ずかしさがわかるわ」

「・・いあ・・また違う恥ずかしさになると思うしたぶんサリーさんに八つ裂きにされるから・・

でも、恥ずかしがった割には・・随分敏感(グサ)・・すみません・・」

「ふん!」

先の丸まったフォークが眉間に刺さる・・、タイムさん、投剣使いとしてもやっていけるんじゃないですか・・?

「まぁ、頂こうぜ。タイムの手料理にも慣れてきたなぁ」

本日もトーストと干し肉を焼いた物、後ハードボイルドな茹で卵とサラダ。

一般的な朝飯だけどなんだろう・・どこかの店で食うよりも数十倍うまいんだな・・これが・・

「このぐらいの自炊、当然でしょう?クロは外食に頼りすぎなの」

サラダをパクつきながら文句を言うタイム、こいつも貴族出身だから礼儀作法はきちんとしている・・

なんか行儀悪かったら怒りそうだし・・

「自炊はできるけどなぁ・・一人暮らしの奴なんてそんなもんじゃないか?」

「ダメよ?ちゃんと食べていないと・・」

「わかっているよ、口に入れるもんはきちんと・・だろう?」

巷で人気の占い師もそんな事言っていたな・・『ちゃんと飯食わないと地獄に堕ちるよ!あんた!』って・・

まぁそれは同感だな・・体を作り動かす元なんだから・・

でも実際食生活ってのは乱れやすいもんなんだよ、作ってくれる人がいないと・・

そんなこんなで二人の朝食は終わり〜、食後に俺は珈琲をタイムはハーブティーを飲みながら今日の予定を確認し出す

「クロは・・ニクスの様子を見に行くの?」

「ああっ、そうだな・・。厳密に言えばスクイードの慌てる姿の鑑賞か」

一人で張り切って一人で失敗していそうなのは明白だ・・

・・ってか見ても嬉しくないか、こりゃテキトウだな、テキトウ・・

「そんなに手間がかかるような子じゃないと思うんだけどね」

軽く笑いハーブティを飲むタイム、スラっと伸びた赤髪と穏やかな瞳が落ち着いた女の魅力を醸し出している

本当・・ルザリア三大美人とか言っているけどやっぱりタイムが一番だな・・

「あ・・ああ、まぁ特にやることもないしな。タイムはどうする?」

「え・・私?どうしようかしら・・」

唇に指を押し当てて悩み出す・・、そうだよなぁ・・普段は激務の疲れから非番の日にはゆっくり休むと言うか寝てばかりだし・・

考えてみたら元々仕事と俺以外に興味ある物って少ないような・・

「せっかくだ、街をブラブラしてみたらどうだ?」

「え・・?」

「仕事で走り回る事もあるけど仕事以外だとまた違って見えてくるものだろう?軽く散歩のつもりで歩き回ったら良い暇つぶしになるんじゃないか?」

「・・そうね、そういう余裕も必要ね・・。じゃあ軽く歩き回るわ、皆によろしくね」

「あぁ、まぁ仕事の邪魔しちゃ悪いし俺も長くはいないよ」

基本的に手伝いはしないしね・・

「わかった、そんじゃ・・後片付けして行きましょう♪」

「ああ・・今日も良い天気だしなぁ」

そう言い食器を持って洗い場に運ぶ・・俺の生活もかなり充実したものになったもんだぜ・・

 

・・・・・・・・・・・

 

軽く食器を洗った後二人で部屋を出て大通りに出たところでタイムと分かれた

財布ぐらいしか持っておらずのびのびと歩くタイムの後ろ姿は実に健康的、血なまぐさい仕事に就いているとは思えないな

まぁタイムは顔が知れている・・手を出す馬鹿もいないだろうしあれでも戦闘能力は高い

俺には適わないだろうが騎士団正規の剣術を使わせたらルザリア一だろう

・・美人で有能なのさ

そんな訳で俺もブラブラしながらいつものルザリア騎士団屋敷へと足を運んだ

道中寄り道するのが俺流・・一応ルザリア騎士団の教官やっているんだけど連中に教える事は正直ない

だからやっている事は難儀な事件の対応って事でそんなのもそうそうあるはずもないので気ままにやっている

それだけだと正規の騎士連中から文句言われそうなんだけど俺が出動して解決する事件はとても正規の連中には荷が重い緊迫したのが多い

・・つまりは、黙認

まぁ俺は表の騎士団じゃなくて裏の騎士団って訳だ。ルザリアの犯罪率の低さは裏の騎士団のおかげ

正規の騎士じゃないシトゥラ、俺・・善意の協力者なフィートは表向きの約束事に縛られずに動く分抑止力となっているんだ

俺とフィートの悪名はルザリアに知れ渡っているしシトゥラを怒らせたら怖い事なんて誰だってわかる。

ってか皆が思うそれ以上だ・・

だから結局のところ俺もルザリア騎士団に必要な人材なのさ

 

───

 

軽く散歩しつつも騎士団屋敷に到着・・、まだ朝なので通りが混雑していない分すぐに到着できた

受付には誰もおらず屋敷は静まりかえっている・・まぁ、後30分もしたら出勤してくるだろうさ

さて・・タイムがいない以上余り屋敷内をぶらつくのもおもしろくはないのでさっさとテント群担当課に入るとしますか・・

テント群担当課は会議室を改造して作られたここじゃ新しい部署、ルザリア郊外に広がるテント群の住民の世話をするのが目的で

こうした試みはハイデルベルク騎士団の中でも珍しい

まぁ、偉そうぶった連中が貧民に手を差し伸べるとも思えないからな。

普通ならば厄介な面倒部署と思われるもんだがこれが以外に大切、

テント群の人間ってのはルザリアで色んな職の手伝いなんかもしているので独自の情報網を持っている

・・これが事件などが起きた時に役に立つんだ。

つまりは騎士団からはテント群住民に対し炊き出しや仕事の斡旋などの生活向上策を提供し

テント群住民は騎士団に対し裏の情報やその収集などをお返しするってわけだ

難民の中でも人生色々、あそこの連中は何気に曲者が多くそうした物事に慣れているからちょっとした諜報機関になっているんだな

 

「ん・・クロムウェルか。どうした・・?」

 

「よぉ、今日から新人が来るから見学にきたんだよ・・ってか珍しいな・・お前が夜勤だなんて・・」

 

室内で紅茶を飲みながら一息ついているのは白い狐人シトゥラ

俺と同じような立場ながらもほとんど騎士としてルザリア騎士団に手を貸している変わり者

出るとこ出てひっこめるところはしっかりの非常に魅力的な体つきと膝にかかるぐらいまで伸びた白い髪が特徴的の美女で

その癖に性に非常にオープンな困ったおねーさん。

「スクイードも遠慮しているからな・・。私一人だけ楽するわけにもいかん」

「・・でっ、一人で夜勤か。通常は二人一組なんじゃないのか?」

「通常ならな。ここは人員が少ない分一人で担当するのも珍しい事ではない」

・・そりゃ4人だものな・・

ってか一人で一夜仕事かぁ・・、嫌だな・・

「がんばるなぁ、まぁ今日から一人追加されるから少しは楽になるんじゃないか?」

「あぁ・・昨日顔合わせしたが中々優秀そうだな」

「だな、これでシトゥラも少しはゆっくりできるんじゃないのか?」

「そうもいかん。スクイードに手を貸さないとな・・」

なるほどなぁ・・、シトゥラとスクイードは俺のせいでかな〜り複雑な関係になっている

一応は恋仲の3歩手前ってところなんだろうけど・・

「何気に良い雰囲気じゃん」

シトゥラの方もまんざらでもない様子、まぁスクイードも悪い奴じゃない・・少々暑苦しいんだろうが

こいつに取っての感じ方も違うんだろな

「あぁ・・そうだな・・。それにそろそろ子が欲しくて子宮が疼くんだ・・

里の人間との交わりをスクイードが嫌っている以上彼に孕ませてもらうしかないのだが・・」

「あー・・里の方が大騒ぎなんだろう?」

「スクイードが挑戦してくるのを心待ちにしているようだ」

・・ふっ、一度足を踏み入れたら二度と帰ってこれなさそうですね・・

「まぁ・・がんばれ、俺の入れ知恵でこうなったんだけど・・」

「ふふふっ、クロムウェルには感謝しているさ・・スクイードには里の男にはない物を持っている。

それに──」

「それに?」

「下界のように一人の男に付き添い生きるのも悪くない」

「・・ははは」

あいつが聞いたら卒倒しそうだな、ってかそれはそれでお似合いなカップルなのかも

っと、そうこうしていたらこちらに近づいてくる気配が二つ・・って事は・・

 

「おはようございます」「おはよ〜♪」

 

扉を開け姿を見せるはキースとカチュア、同じように制服を着ているのだがカチュアの方が幾分だらしなく見えるのはご愛敬

気が向いたらあれこれ髪型を変えるのがこいつなんだが最近はポニテで落ち着いたらしい

「よう、おはよ」「おはよう」

こちらも負けじと軽く挨拶・・するとカチュアが目を丸くして驚いてる

「お兄さん・・どしたの?今日団長休みじゃなかった?」

「ああっ、朝も一緒だった。今頃あいつ街でウィンドショッピングでもしてるだろ」

「タイムが・・か。ふふ・・一緒にいなくていいのか?」

シトゥラさん・・嫌な笑み浮かべちゃって・・

「たまには一人でのびのびするのもいいだろう?あいつも休日をもっと有意義に使うべきだ!」

「ふぅん・・お兄さんにしてはまともな意見ね」

「当たり前だ、俺もいつまでもガキみたいな付き合いしてられんからな」

付き合いって言うか何というか・・、俺とタイムの仲だ・・恋人以上夫婦未満って処かな・・

結婚は〜・・ははは・・まだ早いな。あいつにはまだまだがんばってもらわないといけないし

「・・それで、クロムウェルさんは何をしに・・」

「ニクスの様子見かな?それでちと早かったからシトゥラとダベっていたわけ」

真面目なキース、これでもアルの奴に喧嘩ふっかけたってんだから地はかなり熱血なんだろう

無理矢理押さえ込んでいるってところが要所要所で見られた・・

だけど最近はそうでもないか・・カチュアが良いガス抜きになってんだろう

「なるほど・・でも様子を見てどうなるものでも・・」

「はははは──・・まぁ暇つぶしさ」

でもニクスの戦力を見る必要もあるだろう・・テント群で重大事件発生した場合の対処もある

──・・まっ、あそこはセイレーズじいさんが仕切っている分滅多なことないだろうけど

 

「おはよう・・っと、僕が最後か」

 

そうこうしている内にスクイード到着、顔つきが変わった・・っうか緊張してないか・・?

「・・なるほど、ニクスが着任すると言うことで緊張して寝不足ってわけか?」

「うるさいぞ、変態。この仕事は命が掛かっている処もある・・新人に気をかけるのは当然だ」

まっ、そりゃそうだ・・

でもそういうのは一応は騎士団の学校で学ぶもんらしい、ってか若手に聞くんだけど学校で一度死ぬらしい

規律だのなんだのでしごかれるわけですな・・俺は死んでも行かんぞ

「まぁ暇なんだよ、ニクスについてまわるからそのつもりで♪」

「・・勝手にしろ。ああっ、それとシトゥラ、お勤めお疲れ様。ベットは整えてあるからゆっくり休むと良いよ」

「んっ、わかった。ではそろそろ切り上げて一眠りしよう・・夜通しで動くというのも中々疲れるものだな」

そういうと軽く体を伸ばして身の回りの物を整理しつつシトゥラ退室、私物ってもんがほとんどないから行動も速いもんだな・・

それにしても・・

「・・すっかりお似合いカップルよのぉ・・スクイード室長殿ぉ♪」

わざわざ夜勤明けのシトゥラのためにベットメイキングですか・・暑苦しいこいつがそんな気配りをするたぁ驚きだ

「うるさい、仕事を手伝ってもらっている以上気を配るのは当然の配慮だ」

「そうとは言えども俺としてはシトゥラを孕ませずに欲求不満に陥れそうな罪悪感から行っているようにも見える」

「へ〜ん〜た〜い〜!」

・・ふふふ・・殺気は一人前だな

おっと・・

「怒るのもそのくらいにしておきな、来たぜ?」

元気良く駆け込んでくる足音、そして勢い良く扉が開かれた

「おはようございます!・・って・・もう皆さんお揃いですか」

全員そろっている事に驚くはきっちりと制服を着込んだニクス、昨日の式に比べたら口調も少しは和らいでいる

因みに始業時間までまだある、ニクスが遅い訳じゃないんだよ

「おはよう、ニクス君。君の席は・・って変態!そこはニクス君の席だ!とっとと失せろ!」

「っと、いけねぇ。いつもの癖で空席に座っていた・・悪いな、ニクス」

「いえっ・・あの・・クロムウェルさんもテント群担当なのですか?」

「ん?いあ、違うよ、俺は見学♪」

「は・・はぁ・・」

「こいつの破天荒ぶりはルザリアに住んでいた君ならわかるだろう?」

「え・・ええ、お父様からは道で見かけても絶対目を合わすなと言われていましたが──」

ふふふふ・・貴族連中には嫌われ者だもん、僕♪

「流石はお兄さん、室長には負けるけど阻害要素あるんじゃないの?」

「うるせい!俺はスクイードみたいに世の中全てから嫌われてないやい!」

「───」

腕が震えてますね・・スーやん・・

「いえ、私はクロムウェルさんも尊敬してます!あの・・お父様はああは言ってますけど実際凶悪犯罪が起こったら真っ先に解決していますし・・・」

「ありがとよ・・ニクス・・」

不足の事態も軽く流しよった・・大物になるな

「・・っと、下らない事で時間を費やした。これより今日一日の業務を開始するぞ」

スクイードのその声に一瞬で室内の空気が変わる

まぁ、切り替えが大切なのさ

・・・・・・・・・・・

 

そんな訳でニクスの仕事初日が幕を開けた。まずは全体での訓練なのだが

今日はタイムは非番、シトゥラもさっき帰ったためにいささか色がない

それでもやる事はやらないといけないので工業地区の室長が代表として全員に渇を入れて訓練開始

騎士団に所属している割には俺はこれには参加はしない

・・こういう事こそ先陣切ってやれってのは正論だが俺のメニューだと大抵グロッキーになっちゃうの♪

正直なところ〜、育ちがよろしくないもので極端な訓練メニューしかした事がないのが災いだ

 

 

──姉御、あんた・・俺だったから公社にいられたんだぜ──

 

 

ってかあのメニューは並大抵の奴にやったら本当に死ぬ、結局アルも最後まで参っていたようだし・・

 

 

 

「さて・・、皆さんパートナーで張り切ってますな・・っと」

 

 

これも日課、ペアになって体を動かすのだが相手ってのは大筋決まっている

部署事でローテーションをしているらしく見知った顔でやり合っているってわけだ

そういうテント群もまぁおなじみなカチュアVSキース。

忍の術と蹴り技を扱うカチュアと正当派な突撃剣術のキース、スタイルは全然違うんだけどこれが中々良い相手になっている

あっ、因みに全員ダミー装備だから骨は折れても死にはしない。折れたら折れたで回復魔法の訓練にもなるって事で結構荒っぽい事してます

 

 

「ひゅっ!今日も鋭いわね!キース!」

 

 

「口を動かす余裕があるなら反撃したらどうだ!」

 

 

ブロードソード型のダミーソードを両手に持ち切り込むキース、訓練故に戦闘用(アタック)強化(アシスト)魔法(スペル)の類は使わないのだがそれでも十二分に速い

切り込みやらせたらキースは騎士団の五本の指に入るのは間違いないだろうな

「いいわよぉ!はっ倒してやる!」

対しカチュアも負けてはいない。こいつは足技専門・・ってかうちの変人メイドから学んだモノ

その足はまるで刃の如し・・っと呼ばれた汎用人型決戦格闘メイドことアイヴォリーの弟子である故に足の立ち回りなどには優れる

さらには相手の攻撃を裁くために手甲なんぞもつけて応戦している。

それでもキースの押せ押せな攻撃には基本的には防戦、キースの初手の一撃をカチュアはステップで軽く間合いを外しそれを悟られ

一気に踏み込みをかけて追撃、豪快な一撃を身をかがめてやり過ごしそこから手っ甲で剣の鍔を叩き間髪入れずに回し蹴り!

リーチがありしなやかに相手を襲う一撃、剣に比べたら威力が不足しているのは明らかだな確実に相手に当てられる距離にある

キースはそれをまともに受けながらも構わず反撃をする

これだ、アイヴォリーの蹴術は単発なのは少ない・・

おまけに怒濤の連撃が大好物な同僚もいるためにこちらも連撃を主体としているんだ

と言っても足だけで高速で繋げるのは至極難しい、

だから拳よりも威力が高い分それを調節して相手をひるませながら的確に蹴りを繋げれる間合いを計っていかなければならない

──正直カチュアには無理?

ただ足振りゃいいってもんでもないしなぁ

「おい、変態」

・・んっ?なんだ・・スクイードとニクスが俺を呼んでら・・

スクイードがパートナー不在だから相手をしていたんだが・・

「どした?」

「ああっ、ニクス君がお前と訓練したいそうだ・・とりあえず怪我をしないように暖めておいた・・すまないがいいか?」

「お、お願いします!」

おずおずと一礼するニクス・・ふぅん、俺を指名するたぁよほどだなぁ

「いいぜ、まぁ俺から攻撃するのはお前が決定的な隙を見せた時のみって事で」

「あ・・いえ、打ち込んできてもらっても全然平気なのですが──」

「ニクスが平気でも俺は平気じゃない。女に手を挙げるつもりはないからな・・、ほれっ、打ち込んでこい」

かる〜く構えながらニクスの戦闘能力を解析

得物は女性らしくレイピア(ダミー)正式なスタイルじゃなくて刃を太くしてそれだけでも戦闘を可能とした一般的なレイピアだ

細い剣ってのは当然折れやすい、極力負担を軽くするためにも本来レイピアってのはソードブレイカーなど相手の攻撃を受ける短剣とセットなんだってよ

しかしその技術ってのがなかなか難しい。二刀流なのはもちろんの事、片手で捌き片手で突く訳だ

それ故に高い技術力を養うよりも簡単に軽量剣として扱ったらいいってな訳で一般的なレイピアが登場した。

ロングソード級としては最軽量、扱いやすさならば群を抜いている・・しかし刃を太くしてもレイピアはレイピア

耐久性の低さを補うには至っておらずこれ一本だとよほどの腕じゃないと戦場は駆け抜けられないんだそうな

「よろしくお願いします!」

ゆっくり構える・・流石に流石・・道場剣術を良く表す綺麗な構えでレイピアの切っ先を俺に向ける

ふぅん─・・実戦を禄に経験していない割にはこりゃそこそこいけるか・・

「どんときなさい〜」

「・・はい!」

気合い一番!速攻で踏み込み綺麗に突きを放つ!

「っと、悪くないな」

初心者にしては迷いがなく速い・・がそれでも十分過ぎるほど避ける時間がある

「ふっ!せい!やぁ!」

真面目な剣だ、無駄にダベらず避けた俺の動作を確認してそれに合わせ刺突を繰り出す

かと思えば足を狙い斬り払ってくる・・

全てセオリー通りだが高いレベルで習得をしているようだ

しかし・・訓練だけで実戦に通用するかと言えばそうでもない。現に速いが捻りのない攻撃は俺に掠りもしない

まぁ・・俺に当てようとする事自体今のニクスにゃ無謀なんだけどな

「ええい!」

スクイードとは違い大振りの一撃を嫌うらしく大きく踏み込んだ一撃は思い切れていない

「ほい、そこ!」

突きは拳だろうが刃だろうが「突く」事には変わらない

今までこいつの動きをみてきた中でタイミングを合わし大きく出たところで踏み込む!

これぞ肉弾戦で要注意の(デス)()(ラップ)カウンターだ

ギリギリで回避し無防備のままの額めがけ俺は手をかざし・・

 

ビシ!

 

「はぅ!!」

軽くデコピン・・、モロに額に入ったニクスはうずくまっちゃった

・・撃たれ強くはない・・っと───当然か

「悪くはないが良くもない・・まぁ新参者としては上出来な部類かな」

「いたぁぁぁ・・、デコピンでこんなに痛いなんて・・」

「急所っちゃ急所なんだ、デコピンで気絶させる事だってできるぜ?」

「──流石はスタンピートと呼ばれるだけありますね!」

・・本人了承してませんけどね

勝手に名付けて勝手に怯えるなっての

「すごいです!で・・どうでしょうか・・?」

「う〜ん、基本的な技能としては完璧かな?でも戦いってのは経験がモノを言う世界だ・・、後は実戦あるのみだな」

「な、なるほど・・」

「因みに・・大振りの一撃を放とうとするならもっと思い切った方がいい。中途半端にとどまると余計に失敗する」

「あ・・わかっちゃいましたか・・。どうも思い切って踏み込めなくて・・」

「安心しろ♪そこに一撃必殺思考の一発屋がいる♪問題あると思うなら相談してみるといい」

その名はスクイード、ハルバートで踏み込み突きをする奇天烈スタイルだな

「なるほど!室長は一発屋なんですね!」

「・・変態、ニクス君に変な事を教えるな・・」

その無謀な攻めに偽りはねぇだろうが・・

「まぁいい。どんどん打ち込んできなさい」

 

「お願いします!」

 

キッと気合いを込めて再び突進・・ふふふ・・久々に活きの良い玩具が手に入ったわ!

 

────

 

しばらくして・・

訓練は無事終了、結局は最後までニクスの相手をしたんだが途中からは隙を見つけても攻めはしなかった

仕事はこれからだしなぁ・・

「やっぱりクロムウェルさんはすごいです・・」

自席でへこたれるニクス、まともに当たった事はなかったからな

本人も一発でも当てたかったんだろう・・まぁ、やらせないが♪

「お兄さん、だめねぇ・・こういうのは相手のやる気を上げさせるためにわざとやられるものよ?」

「うるせー、それじゃ訓練にならんだろうが。最初から訓練する相手として格が違うのはわかっているんだからこれでいいんだよ」

「そ、そうです!自分の未熟を改めて認識しました!」

──真面目ですねぇ・・

・・清楚な金髪に乾杯だぜ・・

「しかし、ニクスの剣は少々軽いのでは・・?」

何気に観察していたキース君、意外に思いやりがあるもんさね

「女性騎士なら珍しくもないさ、それに刺突となれば力はさほど要らない・・まぁここらはタイムにでも相談すればいい。

っうか自分のスタイルってのがまだ見つかっていないんじゃないか?」

「え・・あ・・一応基本的なレイピアを得意としていますが槍や弓もそこそこ自信が・・・」

・・才女だ

「確かに、どの武器でもそつなくこなしていると報告は上がっている。絵に描いたようなバランス型だとな」

「ふぅん〜、じゃあスクイードよりも優秀じゃん♪」

「うるさい!・・ともかく、クロムウェル相手に気絶しないのは流石だ。実戦投入しても問題はないだろう」

「ありがとうございます!室長!」

「・・よし、それでは訓練はこれまでだ。僕達は書類処理をしなければならない・・変態、悪いがテント群の案内を任せていいか?」

書類処理よりもそっちのほうが大切だからな・・まぁそれもいいか

「いいぜ、ってもここの住人にゃわかりやすいと思うけどな〜・・そんじゃニクス、3分後に屋敷前に来なさい。時間厳守で」

「はい!」

敬礼して勢いよく立ち去るニクスさん、初々しいもんだぜ・・

「・・お兄さんが初めて教官っぽい事を言ったわ・・」

「・・うむ・・」

・・キース夫妻・・

「貴様ら俺のそんな目で・・ったく、そんじゃスクイード、俺は案内してくるから頃合い見計らってちゃんとお前らが面倒みろよ?」

「わかっている、お前に任せきりにするつもりは毛頭ない」

どうだか・・

まぁ物静かな室内でカリカリ字を書いているのを見ているのも暇だし・・ちょうどいいか



・・・・・・・・

 

そんな訳でニクスと合流してテント群まで移動、

朝のルザリアはこれから活気が出てくるところで通りの人も徐々に増えてきている

ニクスにとっちゃ懐かしい町並みなんだろうが流石に勤務時間中、しかも騎士制服着用故に顔をほころぶ事もできない様子だ

そうこう言いながらもテント群に到着〜

ニクスの第一声は目を丸くしながら「綺麗になりましたね・・」だった

そりゃそうだ、昔は乱雑していたものだが騎士団の指導──っていうか協力だな。まぁ手を貸して今では区画分けされている

その状況はさながら草原遊牧民の集落、もしくは従軍中のキャンプみたいになっている

こうまでなると新顔以外は全員騎士には好意的、俺も知り合いが多く軽く声をかけてニクスを紹介した

貴族連中に抵抗があるんだがこいつの人柄だ、すぐにうち解けられた

そうこうしている内に目的地到着、それはテント群の中での一区画の角地にある小さなテント

他のと区別がつかないんだがここにゃボスが住んでいるんだ

 

「よぉ、セイレーズじいさん。生きてるか?」

 

かる〜く中に入る・・ベットと軽く生活雑貨しかない室内はヨボっとした爺さんと一組の男女が・・

取り込み中だったか・・

「おおっ、クロマティか。久しいな」

ニヤリと笑う爺さん、ことセイレーズ・・昔は一世風靡した名義賊だが引退して今はここで暮らしている

かつては難病で余命宣告されていたんだがこの都市一番の名医クライブより難なく完治

・・宣告した奴、ほんまにヤブやね

 

──でも、何故にいつまでも俺の事をクロマティと言うんだろうか──

 

「取り込み中か、出直そうか?」

見慣れない男女・・ってか親子だな。

テント群には似つかわしくない質素ながらも品が良い老人、対し美しい銀髪にスーツを着込んだ男装の麗人

パッと見ただけで貴族だってわかるな・・すごいオーラだ

「ああっ、いやお気遣いなく・・。ほぅ・・君があの有名なクロムウェル=ハット君か。高名は聞いているよ」

ニヤリと笑う貴族老人、まぁ俺の噂なんて禄でもないのばかりだけどこの爺さんは敵意は持っていないようだ

「ん?あら・・ニクスじゃない、こんなところでどうしたの?」

「え・・あっ!お姉様!」

・・ん〜、良く飲み込めないんだがとりあえずニクスと仏頂面だった銀髪女とは知り合いらしい

「え〜っと状況が飲み込めない。とりあえず一から説明してくれ」

「おおっ、そうだな・・わしもさっぱりだ♪」

笑顔で言うな・・爺さん・・

 

・・・・・・・

 

でっ、軽く自己紹介が終わったところで状況が飲み込めた、セイレーズ爺さんに会いにきていたのはウィロウって爺さんとその娘レウナ

その名前は俺も知っている、言わずとしてた名探偵にして以前巻き込まれた仮面武闘会の主催者。

いや・・まぁ、セイレーズファンだって言うベイト達が無茶しないように変装して観戦した事があるんだよ・・

運良くあの3人が対戦しなくて済んだんだけど・・もしカードが悪かったら死闘は必死だったからな

なんだかんだで仲良くやっているヴァーゲンシュタインメイド小隊だけど血の気の多さは未だ健在

最強だった・・らしい俺のお袋が死去して一位の座が空いているんだ、仕事の合間に試合でもし始めかねない

・・まぁ、それはいい。

そんでもってニクスとレウナは貴族仲間、何でもニクスのフライム家とウィロウ家ってのは結構親交があるんだとよ

だからお勉強や剣技も一緒に学んでたって事だ。名探偵からのご指導だ、ニクスの能力の高さも頷けるな

 

「ふむ、優秀な人材がきたものだ。テント群の発展に期待が持てそうじゃな」

 

「まぁこれ以上良くなったらそれはそれで妙な感じになりそうだけどなぁ・・。とにかく宜しくやってくれよ」

 

「お、お願いします!」

ニクスもセイレーズの高名を知っているらしく正体を聞いた途端に緊張しだした。

大盗賊がこんなところで余生送っていたなんて思わないだろうしなぁ・・

「それよりもニクス、念願のルザリア勤務おめでとう。大変でしょうけどがんばりなさいね」

にこりと笑うレウナ、性格悪そうな空気全開だけどニクスには優しいらしいな

「はい、お姉様♪」

・・お姉様・・ねぇ・・、女同士だとどうしてもイケナイ関係を思い浮かべてしまう僕は病気なのでしょうか?

「・・で、天下の問題児が何の見返りもなくニクスに協力しているわけ・・信じられないわね」

俺の顔をみてブスっとしているレウナさん──、うん、第一印象は文句なしに悪い

「ウィロウが知っていたらあんたも知っていて当然か」

「えぇ、命令違反はお手の物、一応は騎士団に所属しているけどその行動は騎士団の範囲を大きく逸脱している危険人物

・・これで結果が出ていなかったら首刎ねられていたはずよ?」

「残念ながら結果を残せる自信があるからこそ動いているんだ」

「あぁら、大した自信ね?」

「そりゃね、表が動けない事を裏がする──変か?っうかお前もそんなもんだろう?正規の騎士じゃないんだし」

レウナ=ウィロウはハイデルベルク騎士団に協力して難解事件の解決に当たっている。

そういう点では俺と同じかな

まぁ俺は現行犯をしばき倒す、レウナは隠れている犯人をあぶりだすって感じか

「・・貴方と一緒にされると何だか不愉快ね」

「そりゃ、結構。俺も何かあんたを好きになれない」

・・ってなんだろう?性格きつそうだけど美人だ、こうしたタイプは苦手ってわけでもないんだが・・

 

「ふぅむ、面白い事になってきたの・・ウィロウ」

 

「ふっ、若者は良い。その血の気の多さが新しい時代を切り開く」

 

・・あんたら体育会系だったのかい?

「──ふん、貴方のような下品な男に嫌われても嬉しいぐらいよ?」

「───」

な〜んだろ、こいつどっかで見たことあるような・・

「ん?何とか言いなさいよ?何も言い返せないの?」

「・・そうか!どっかで会った事あるかと思ったらセシルと同類な感じがするんだ!」

「セシル・・おおっ、ロカルノの恋人か。ふむ、そう言われてみれば・・」

まじまじと見つめるセイレーズに対しレウナは表情を変化させる、うん、これは爆発を予兆してるな

 

 

「私とあの男の恋人が似ている!?冗談じゃないわよ!!!」

 

 

・・こいつ本当に探偵か?やたらと短気だぞ・・

ああっ、そういやこいつ武闘会の決勝でロカルノに情けなく負けたんだっけ・・だからあいつの事が嫌いなのか・・

「いいや、似ている・・。その短気なところといいやたらと長い髪といい・・」

「──何よ?」

「・・セシルの2Pカラーみたいだな」

 

────ピキッ────

 

「・・・なんですって・・?」

目元を隠しニヤリと笑うレウナ、ふっ・・隊長、自分はどうやら地雷(トラップ)を踏んだようです・・

「まぁ、その、なんだ・・キニスルナ♪」

「ふふふ・・ふふふふふふふふふふふふふふ──」

湯水の如くわき上がる殺意、その所業、まさに格闘士(グラップラー)・・

先生、この人本当に探偵業なのですか・・?

「ウィロウ先生、貴方様のお力でこの者のお怒りを鎮めてくだされ」

「娘は血の気が多くてな・・紳士淑女のたしなみを教えているのだがこうまでなると私では不可能だな、セイレーズは?」

「・・年寄りに無茶をさせるでない」

 

やれやれ、ここが俺の死に場所か

 

 

 

バチィィィィン!!!

 

 

ため息をつくとともに猛烈な快音が炸裂、僕の頬は凄まじい衝撃を受けて吹き飛ばされた

──あんた・・探偵よりも用心棒でいいんじゃないですか──

 

 

・・・・・・・

 

 

「いつつつ・・あのレウナ(2Pカラー)、タイムのよりもキツイ一発かましてくれて・・」

 

 

「あ・・はははは・・」

 

 

その後ニクスの援護であの怒れる探偵さんは静まりになられました、得物あったら殺されていたね・・

まぁそんな訳で年寄り二人いる中被害を広げる訳にもいかないので軽く戦域離脱

目的は果たせたので敗走ではありません、隊長

「そんなにロカルノの女と一緒に見られるのが嫌なんだな・・」

「あの一件以来お姉様はロカルノさんに対抗心を燃やしていますからね」

・・んっ?

「ニクスはロカルノの事を知っているのか?」

──通称『仮面の貴公子』

ハイデルベルク有数の冒険者チーム『ユトレヒト隊』の頭脳で容姿端麗、冷静沈着、あげくに天才肌と恵まれた奴だ

何でもこなして華麗に決める、それを当然のようにやってのける男・・

しかし神は完全なるヒトを作らない・・奴にも欠点はある

一つは異常な仮面愛好癖、以前セシルから酔ったついでに聞いた話だと自分の好きな仮面をつけて生活する事もあり能面つけて過ごす事もあるらしい

変な面つけたまま街に出ようとするからそこらは女性陣で羽交い締めして阻止するんだとよ・・想像できないな・・

もう一つは言わずもかな・・『女の趣味の悪さ』である

性格が絶望的なセシルに対し何故か甘い・・いや、相応の躾はしているのだが捨てないところが解せない、全く解せない

「ええっ、お姉様から聞いてますけど・・、どうやら想像とは違う人のようですね」

・・おいおい、憎さから変な事吹きかけたのか?

レウナって・・裏属性の人間か!!

「・・まっ、いいや。話題を変えよう・・困った事があったらさっきのセイレーズじいさんに頼むと良い。

現場でのもめ事なら鶴の一声で解決してくれる」

本人は望んでいなさそうだけど実質テント群の支配者状態だ。

余所から流れて勝手に住み着いている奴はここに住む全員が騎士団への出頭を強く勧めるんだとさ

そうなると捨ててはおけないルザリア騎士団が名前などを記録して迷惑にならないように生活スペースを提供、

無用なトラブルを起こすと罰金支払わせたりしている

もちろん記録時に裏がないか調べるのもお仕事、そこで妙な前科がある奴はお断りしているってわけだ

「わかりました・・ここが・・私の戦場ですね」

「あぁ、そうだ。だが昔に比べたら動きやすくなった・・タイムが団長になってから整理に乗りだしてここにいる連中はみんな騎士団には好意的だ。

だから仕事は専ら余所から来た難民貧民・・もしくは犯罪者などの処理だな」

「なるほど・・・大変そうですね」

「一人でやればな、まぁスクイード達もいるしここの連中も力になってくれる。十分やれるさ」

「クロムウェルさん・・ありがとうございます!」

うむっ、良い眼差しじゃ

「まぁがんばんな・・、そうだ、ニクスは寮生活か?」

「え、ええ・・家からは騎士になる事を言った際に半分勘当状態なので・・えへへ・・」

えへへって・・結構ハードな体験してるんだな。

──そういやタイムも騎士になる事で勘当同然の扱い受けたらしいし・・裕福な家の娘が女性騎士になるってのは色々と覚悟がいるみたいだな

「ふぅん・・じゃあルザリア戻ったばっかりで飯の用意もできていないだろう?仕事終わったらうちに来いよ?」

「へ──・・ええっ!!?クロムウェルさんの家にですか!?

えっそれって・・ひょっとして・・食後に私が食べられるって言うオヤクソクのパターンですか!!?」

お〜い、ニクス、めくるめく妄想の世界に入るな〜

ってか最近の若い奴は想像力豊かだな

「安心しろ、タイムも一緒だ。・・っうかタイムが作るんだからさ・・・」

「え・・えええええ!?タ・・タイム団長の手料理をデスカ!!?いいんですか!?私なんかが頂いていいんですか!?」

・・そんな驚かんでも・・

まぁ女騎士の間じゃタイムは神格化してきているみたいだからな・・

「飯ぐらいどうってことないだろう?俺から話つけておいてやるからよ」

「は・・はい!ありがとうございますぅ!!!」

──感涙してますよ・・、まぁ良いことをして悪い気はしないな

「よし、俺の家はわかるだろう?まぁ初日から残業はないだろうから用意はしておくよ」

 

 

『あっ、いたいた!お兄さ〜ん!』

 

っと、我が愚かなる妹が手を振ってこっちにきた・・・

時間的にはちょうどいい頃合いだったか

「ようカチュア、ちょうど良いタイミングだ。セイレーズ爺さんのところに紹介は済ませたから、後はお前達で何とかしてくれや」

「当たり前よ。ここからは機密区域に入る業務なんだから・・っていうかお兄さんが巡回コースなんて知らないでしょうし」

当たり前だ・・俺は騎士団所属であって所属じゃないんだからな

「ってな訳でニクス、後はこの出来の悪い筋肉フェチに教えてもらえ」

「・・は・・はぁ」

「殺すわよ?──まぁいいわ。それよりもニクス、大丈夫?穢れてない?」

「え!?あ・・大丈夫です♪・・あは・・あはは・・」

どこでどう穢れるのか疑問だが言い合っていたら貴重なニクスの仕事時間を削るだけだ・・あえて無視・・

「よし、そんじゃ俺はもう帰るぞ〜?」

「あ〜、はいはい。どうぞご勝手に」

・・ちっ、我が妹ながら何でこんなに性格が悪いのやら・・

ってかほんと・・金髪女って変なのばかりだからなぁ・・嫌でもニクスに期待がかかってしまう・・

──まっ、いいや。この調子だと活躍してくれそうだし〜、俺は俺でのんびりしますか。

・・・・・・・・・・・・・

 

テント群を抜けてルザリアの表通り・・時は昼時、交易隊や露店が広がり賑わいを見せている

この通りだけでも手に入らない物はないだろうなぁ・・。怪しげな宝石まで売っているし

 

 

『あら、クロ・・どうしたの?』

 

 

ん・・この声は・・

「タイムか、おっ、買い物していたのか」

出かけたままのボーイッシュなタイムの姿、俺がここにいるのに驚いている様子だ

軽く紙袋を下げているところ何か気に入った物があったようだ

うんうん、オンナノコしていて何だか俺も嬉しい

「え・・ええ、それよりもどうしたの?ニクスの様子を見るんじゃなかったの?」

「一日中見るわけでもないさ、それは俺じゃなくてスクイード達の仕事だからな。まぁ軽く案内してカチュアに渡したよ」

「ふぅん、がんばっていた?」

「ああっ、一生懸命だったよ」

「うん、ならよかった♪」

ニコリと笑うタイム、その爽やかな笑みに思わずドキっとしてしまうのは俺だけではないはず

騎士団長と言う役柄こんな笑顔を見る機会なんて滅多にないんだからなぁ・・

「それよりも何買ったんだ?やっぱり備品?」

「休日にわざわざ買わないわよ。その・・ちょっとアンジェリカさんと会って・・ランジェリーショップに・・ね」

照れくさそうに笑うのだがアンジェリカさんと・・

 

 

 

「・・──勝負下着?」

「────(コク)」

 

 

グッド!

 

 

赤面で頷いちゃって♪

しかもアンジェリカさんが関わったのなら・・

 

 

「───過激?」

「────(コク)」

 

 

グッド!!!

 

ふっ、思わず勝ったら相手の魂を奪うギャンブラーのように喜んでしまった・・

こいつは楽しみだな・・ってか天敵っぽさそうで意外に仲いいんだよな、アンジェリカとタイムって

まっ、俺が留守なところで色々ヤッちゃっているみたいだし・・

この間なんかも姉御の墓参りから還ってきたらルザリア3美人で俺のベットで、しかも全裸で寝ていた事すらあったものな・・

あの時は驚いた、アンジェリカ立案でルザリア3美人の憂さ晴らし淫行をしていたらしく相当過激に燃え上がったらしい

おかげで俺の頭のスイッチが入ってその後まとめて面倒みたんですが──

・・極楽浄土ってああいうの言うんですか?神様?

「そりゃ楽しみだ♪とりあえず荷物持つよ」

「あっ、見たらダメよ!?予めクロが知っていたら意味がないもの」

「わ〜ってるって、わざわざ楽しみ半減させないさ。・・でっ、どするんだ?」

「ん〜、もう一通り見た感じかしら。女一人で買い物するのに時間は掛からないわよ」

苦笑いなタイムさん、まぁ・・ダラダラ買い物するタイプじゃないもんな、絶対・・

「そっか。じゃあ飯食ってもうちょいブラブラするか?」

「そうね・・、じゃあブラブラしましょう♪」

「ああっ──あっ、そだ。タイム、今晩ニクスが家に来るから」

 

 

──ピシ!!──

 

・・な、なんだ!?

空間が裂ける音がしたぞ!!?

 

「・・クロ・・どういう事・・それ・・?」

 

う・・おお、タイムの背中にどす黒く燃ゆる炎が・・、これは・・『全て()()灰燼()還す(ジェ)嫉妬()()()

「待て待て待て待て!これには訳がある」

「───返答次第では表門に首を吊すわよ?」

わおっ♪ダークタイムさんそりゃお子さんの心に傷をつけちゃいますぜ♪

・・・ってか目がマジだな・・、恐怖政治でも始める気か・・

「ニクスは寮生活って事らしいけどまだ引っ越したばかりだからさ、飯の用意まで手が回らんだろうから家にこないかって」

「・・・・、ご実家はここにあるんじゃないの?」

「ところがどっこい、裕福な家の娘が女騎士になる時の定石が如く勘当状態だってさ」

「──あっ」

その一言にタイムの顔色が変わった、同類だもんねぇ

「まぁそう言うこと、疚しい事じゃないってわかってくれたら助かる・・流石に吊されたくない」

っと言ってもただ吊されるだけじゃないだろうからな・・自分で言っていて怖いよ、ほんと・・

「───・・ふぅ、しょうがないわね。いいわよ、ニクスの分も用意してあげる」

あきらめたように軽く笑いながら応える、まぁ公私混同だがここらは大目に見てくれたようだ

「ありがとよ、その代わり今度埋め合わせするから・・」

「別にいいわよ・・あっ、じゃあ今晩の食材はクロ持ちね♪奮発しましょうか♪」

「・・・え゛・・おい、俺の手持ちと照らし合わせて買えよ?」

「聞こえない〜♪さっ、行きましょう?」

満面の笑みを浮かべ表通りを歩くタイム・・その笑みに俺の心は温まるが財布は・・さ・・いふが・・

 

 

・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・、結局・・今月の財政はかなり厳しい物となりました・・

半分はニクス激励のため、半分は二人の時間を潰した罰と言うことで大変高価なフルーツやらを買っちゃって

俺の財布にダイレクトアタック!

泣けるぐらい手持ちが寂しくなった・・

まぁそれでもタイムの機嫌が元に戻ったのでよしとしよう、うん、損得で考えちゃいけないんだよ

そんな訳で犠牲も大きかったが午後からはのんびりと街でデートと洒落込んだ

露店で昼飯を食って、食品通りで晩飯の材料買って、軽く露店を見歩く

それだけでも幸せな気分になれる、いいなぁ・・こういうの・・

重ね重ね財布は寂しいけど──・・

そんな訳で日が傾き出した頃に俺の部屋に到着、そこから料理を開始する。

元々は宿屋なこのボロ屋には相応の小さな台所が設置されている、上がり口開けたらデ〜ンと一室、左手に手洗い、その隣に細い台所となっている

隣のフィートの部屋はその逆、部屋奥の右に手洗いと台所となっており台所同士が細い壁でつながっているんだ

因みに風呂場はない。一軒家じゃない宿なんだから当然・・でもタイムと暮らしているんだからそれも必要なのかもな・・

まぁ近場に風呂屋があるんだけど

それは置いておいて早速台所で作業開始、調理器具は一通り揃っている

・・俺は普段は余りやらないんだけど自炊は嫌いじゃない、

・・できないと思っている奴多いと思うけど傭兵家業やっていたんだからできて当然です。

故に軽くタイムの手伝いがてらに一緒に台所に立つ事もあるんだ・・まぁ流石に二人行き来するには狭いんだけど・・

今夜のメニューは新鮮な二枚貝のスープパスタとグリーンサラダ、後はフルーツ盛り合わせとタイムさん得意のレシピ

手早く貯蔵庫から食材を取り出して下ごしらえを開始する

・・貯蔵庫はどんなお家庭にも必要な物、・・まぁ簡単に言えば鉄製の宝箱みたいなもんか

それに溶けにくく長持ちをする氷を入れて食材の保冷をする

特殊な氷は魔術師のお手製であいつらの研究費用を稼ぐ一番てっとり早い商売となっている

だから氷屋なんてのはどこの都市でも売っているんじゃないかな?

・・まぁ、地方にはないだろうけど・・。因みにこいつを食用にする奴はいません、生活必需品なのでかき氷になんてやると親に殴り殺されるのであしからずに

・・・かき氷用の氷販売って意外に少ないんだよなぁ・・

 

「クロはサラダの盛り合わせをしておいて・・後フルーツも」

「あいよ、じゃパスタの方は任せるぜ。砂抜きは終わっていると思うから」

あのジャリっとした感覚が嫌なんだよなぁ・・。それが嫌で砂抜き用の魔法を開発した酔狂な魔術師もいるそうだ・・

「うん、ふふふ・・こうして二人で台所に立つのって何だか楽しいわね」

「あ〜、そうだな。まぁ俺はそこまで役に立たないんだけど」

「上手下手じゃないわよ、一緒なのがいいの。ふふふ・・♪」

そうして鼻歌を歌いながらパスタを茹でるタイム、こうして見ると家庭的だな・・仕事とは正反対に・・

「そういうもんかね、立つ以上はそれなりの料理をしたいところだけど・・」

「ふふふっ、じゃあ日頃ゴロゴロしている時間を使ってお料理教室に通ったら?」

「ははは・・俺のイメージがガタ落ちだな」

「そうね♪」

ほがらかな雰囲気、食材の香り、タイムの笑顔

何でもないような事が幸せだったと思います・・

まったまにはこういうのも悪くはないな

 

・・・・・・・・・・・・

 

飯の準備が終わった頃にはすでに日が沈んでいた。

小さなテーブルには2人前の食事セット・・3人前じゃないのはテーブルが2人用だから♪

仕方がないので俺の分はベットの上に並べられた

・・うん、立派な料理もシーツの上だと華がないね♪

自分で言い出した事だから文句を言えずため息をついていると・・

 

──コンコン

 

控えめのノック音、がちがちに緊張しているのがそれで丸わかりだ

『あの、ニクス=フライムです』

まるで団長室に入るかのような声・・まぁその団長がいるんだけど・・

「開いているぜ、入ってきな」

声をかけるとゆっくりと扉が開いた、そこにいるとこわばった顔のニクスさん

仕事が終わって軽い白シャツとデニムのズボン姿・・ん〜、貴族娘っぽくなく機動的だな

「は、はい・・、失礼します」

固まってますね・・

「いらっしゃい、ニクス。お勤めご苦労様」

ガチガチなニクスにタイムは静かに微笑み労をねぎらう

団長室で見た鋭くも凛々しい女性とは違いそこにいるのは穏やかな淑女、その変化にニクスもどう対応していいかわからないようだ

「だ・・団長こそ!おつかれさまです!」

「おいおい、タイムは非番だぞ?」

「ですが!私の分も作っていただいて、その・・」

「ふふふっ、一人前増えたところで変わらないわよ。それよりもプライベートだから団長じゃなくて名前の方でいいわよ?」

「・・・タイム様?」

「堅い堅い・・」

ってかそれだと危ない聞こえるって

「じゃあ、タイムさん・・ありがとうございます」

「はい、ではいただきましょう?クロ・・シーツに染みをつけたら吊すから」

 

──どこに?

 

「・・お行儀良く頂きます・・。ニクス、そこに座りなさい。

今日のメニューは『二枚貝のピリ辛スープパスタ、季節のお野菜のグリーンサラダ、お高い南国フルーツ盛り合わせ』の3品だ」

香辛料の具合もばっちり、赤み掛かったスープに黒く大きめの二枚貝がゴロゴロしたパスタ、香りが良いし味も抜群。

グリーンサラダは俺担当で手でちぎり盛りつけた、野性味があるわけじゃない、野菜はこうした方が金気が付かなくていいんだ

ドレッシングはオリーブオイルにレモン、胡椒をパパッとって感じ、これだけでも美味

フルーツは言わずもかな・・3品の中で一番高くついた・・。

ブランド品らしいが・・星形の怪しい物からパインナップルっていかつい外見の物まで日頃食べない物ばかり

・・ここで俺の財布に打撃を与えようとしたタイムの意図が感じられますね

「美味しそうですね♪これ・・タイムさんが・・?」

「ええっ、そうよ。一応家事もできるの・・さぁ、冷めない内に頂きましょう」

「それじゃ・・」

 

「「「いただきます」」」

 

綺麗にハモりながら食事開始♪

・・うん、流石はタイムのパスタ・・良い味出しているな

この時期はこういう辛い物が美味く感じる

「家庭の味って奴だな・・うまいうまい♪」

「・・もう、お世辞を言っても何も出ないわよ?」

「いえ、とても美味しいです♪流石はタイムさん・・完璧ですね・・」

「ニクスまで・・まぁ、そう言われて悪い気はしないわね」

微笑みながら上品にパスタを口に運ぶタイム、普段見せない表情だな

・・まぁこうしたシチュエーションも珍しいだろうし・・

「あ・・あの、こうした事って失礼なのかもしれないですが・・質問してもいいですか?」

「・・?私に応えられるなら何なりとどうぞ」

「──あの、タイムさんとクロムウェルさんって同棲して・・いるんですよね?やっぱり」

羨望の眼差しで俺達を見つめるニクス、いや、そう改めて言われても・・

「ふふふ・・さぁ、どうかしらね・・クロ?」

「う〜ん、半同棲ってところか?タイムの仕事忙しいから屋敷の自室で暮らす事もあるんだよ。

ここで暮らすのは翌日が非番の時がもっぱらかな」

・・後は『我慢できない時』これはニクスには言えないな♪

「へぇ・・大変なんですねぇ」

「自分で選んだ道だから苦にはならないわ。支えてくれる人も多いし・・ね」

サラダをパクつきながら微笑むタイム、後輩が目の前だと大人の女に見えてくるなぁ

まぁ二人っきり時がデレデレしまくりなだけですか

「素敵ですね・・私もタイムさんみたいになりたいです!」

「がんばれば私なんてすぐに追い越せるわよ」

「そ、そんな・・私なんて・・!」

憧れの団長に褒められて照れに照れている・・

・・っと、この星形の果物シャリシャリしていて中々美味いな

・・蛙が食ったら喜びそうな味だ

「迷うことがあるなら相談しなさい、貴方の身の上だと大変でしょう?」

「あ・・わかりますか?」

「ふふふっ、私もね・・家を追い出されたような者なの」

「・・ええっ!?タイムさんがですか!?」

「そうよ、中途半端に裕福な家だったからね・・父は家の繁栄のために私に政略結婚させようとばかり考えていたわ。

そんな娘が騎士になりたい──って言ったんだから、揉めるはずよね」

苦笑するタイム・・こいつが自分の家の話をする事は滅多にない

同じ境遇のニクスに自分の姿を重ねているんだろう

「そうだったんですか・・私と同じですね」

「そうよ、帰る場所を捨てたような状態だもの・・悩みの解消も大変よ?だから・・周りに頼りなさい。

抱え込んだらダメ、私みたいに嫌な女になっちゃうから」

自分みたいに・・ってのは過去の自分に向けての自嘲

セシルという優秀な人物に対する嫉妬、周りからの重圧、それらによるストレスをうまく発散にできなかったタイムは相当キツイ性格だった

まぁ俺が喧嘩しながら解消したもんかな。

才能があるがばかりに付き合いが薄かったタイムにつっかかってばかりの俺、それがちょうどよかったのだろう

「そんな!タイムさんは素敵な女性ですよ!」

「ありがとう、そう言ってもらえると嬉しいわ」

屈託のない笑顔、それにニクスは何故か頬を赤く染める

・・本当に何故か・・だな。いけないフラグが立たないことを切に願うよ

前にアンジェリカさんから聞いたんだがタイムは同性から愛されるフェロモンみたいなのを出しているらしい

・・実証はされていないんだが〜、頷けるような経験は多々ある。

女性騎士が目の色変えて憧れているんだし・・

 

「まっ、がんばっていれば壁にぶちあたるものさ。とにかくがむしゃらでがんばればなんとかなるってもんか」

 

「はい!ありがとうございます♪私も早くクロムウェルさんみたいに心の支えになる人を探します!」

「はははは・・俺みたいなのは希少動物だぞぉ?」

「そうねぇ、こんなにスケベで・・暖かい人はそうはいないわ」

男は皆オオカミですからな!

そんなこんなでなごやかな空気の中食事は穏やかに進んでいった

 

 

・・・・・・

 

 

しばらくして、無事に食事終了〜

みんな綺麗に平らげて至極満足の状態に・・

相も変わらず他愛のない会話をしていたのだがニクスが気を遣っているのかもう帰るようだ

 

 

 

「どうも、ごちそうさまです。とても美味しかったです♪」

 

 

満面の笑みのニクス、最初の緊張はどこへやら・・食事に招かれて心底よかったようだ

「お粗末様、夜道に気をつけなさい?騎士が襲われて不覚を取ったら笑い話にもならないわよ?」

「─っと不覚経験者は語る♪(ゴス♪)・・すみません」

モーションなしで、しかも奴の後ろにいるのに正確に顔面に裏拳をかますとは・・!

成長したな・・タイム・・

「あははは・・では、気をつけて帰宅します。その・・がんばってくださいね♪」

「ん・・ああっ、辛い事は辛いけどね。これも勤め、ニクスもがんばりなさい」

「え・・?あ・・そうじゃなくて・・」

「・・??」

「・・ニクス、余りオマセな台詞は言わないこった♪こいつは恋愛上手じゃないんだからな」

「はい、わかりました♪では・・ごゆっくり?」

「・・っ!」

ようやく気づいたか・・顔が真っ赤になったよ

余裕ぶった女性も弱点をつかれると脆いものなのさな

「わかってないやん、ほら・・ここからは大人の時間だ。お子様は帰りなさい♪」

「は〜い、では、おやすみなさい」

一礼をして夜の住宅地区に消えていくニクス、上機嫌だと悪戯な発言をしたがるらしいな

・・うん、金髪女に完全清楚はいない・・か

「もう、最後の最後で変なことを・・・」

「変な意味で言っているんじゃないだろうよ、あいつなりに気を遣ったんだろう?」

「・・不器用ね」

苦笑いなタイム、元よりニクスが茶化すなんて事をしないとわかっているからな

茶化すなんてのは悪女、アンジェリカさんの専売特許だ

「お前もな」

「ふふふっ・・馬鹿♪二人きりじゃなかったけど楽しかったわ・・たまにはこういうのも悪くないかも」

「・・だな?まぁベットで飯を食うのは気を遣うから今回限りにしておきたいんだけど・・」

「そうね・・いっそのこともっとちゃんとした家に住まない?」

「・・え・・あ〜、お金が貯まったら・・で、どう?」

「・・いいわ、待ってる♪」

そう言うと静かに唇を合わせてくるタイム、なにげな動作だがかなり魅力的なものだ

吐息一つで体が反応してしまうってもんだ

「さぁ、後片付けして風呂に行こうぜ?それとも・・入らずに突入する?」

「だ〜め、今日は・・ここまで。さっきまでニクスがいたのよ?恥ずかしいじゃない・・」

・・団長室とはまた違うんですね・・

「了解、じゃあたまには清らかに一日を終えますか」

「そうそう・・たまには・・ね?」

ほほえましく手を取り部屋に戻る。

頼りになりそうな人員補充が行われたからかタイムが上機嫌なのは俺にもとても嬉しく感じられた・・


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