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「子連れ聖魔」



そこは正しく樹海。地は苔が生い茂っており古ぼけた木々が延々と続いている
目印となるような物はほとんどなく入ったら二度と出てこれないような雰囲気がそこには
ある。
ただその地点にはやや大きめの川がありそれに沿っていけば樹海を抜けれそうだ

そんな中、木々の間を高速で走りぬける影が二つ。
苔の茂ってかなり足場が悪いのだが全く気にすることなく地を駆け・・

バキ!

影が重なったと思うと衝撃音が伝わり一方が吹き飛んだ
「・・うむっ、中々の踏み込み・・流石は我が娘だ」
一人は黒いザンバラ髪をした青年、黒く赤い瞳が特徴で黒い軍用コートのような服装をしている
「・・うう・・、ま・・まだまだ!もう一手お願いします!」
吹き飛ばされたのは小柄な少女。同じく黒いおかっぱな頭に体型に合わせた革の鎧を着て
六角形の棍を持っている・・のだが尻餅をしやや情けない格好・・
顔つきは将来美女になる事が確定しているような整いようでロリ好きなおじさんなんかは
速攻で悪戯決定だろう
「今日はこれまでだ。鍛えすぎは返って結果に伝わらない」
「・・ち・・父上・・」
「ふふっ、それよりも夕食の支度にするぞ。」
「はい!」
そう言うと二人は川沿いに置かれた荷物から道具を取り出し支度に取り掛かった
青年の名はサブノック=エルモア、この地より離れたニース村に所属する自衛団員
そして聖魔として崇められている悪魔でもある
少女の名はラミア=エルモア。サブノックの娘で悪魔と人間の混血・・。


・・・・
「良く噛んで食べるのだぞ」
川辺で焚き火をし魚を焼いてやるサブノック、サバイバルな技術を娘に教えながら気遣ってやる
「はい、父上・・私は成長しているのでしょうか?」
ハフハフと魚を食べながらラミアは父の顔を覗き込む
「腕は上達している。母さんの教え方がいいのだろう」
「ですが・・」
「ふふふ、私を倒そうという気迫だけでいい。力というもの成長は目に見えぬものだからな」
「父上、勉強になります!私は父上のような立派な戦士になります!!」
「そうだ、それでこそ我が血を引き継ぐ娘!私としても嬉しいぞ!」
結局親馬鹿な悪魔・・、まぁそう言う気は胎教の時から表れていたのだが・・
「ですが・・、本当に村を開けて修行の旅に出てもよかったのでしょうか・・」
「何っ、アル殿一人いれば十分事は足りる・・。セリアも旅をせずにゆっくりしたほうがいいだろう」
ラミアを無事出産したセリアだが一児の母ともなり以前のような旅をするのも少し遠慮しているのだ
っと言ってもこのような野ざらしな状態での修行の旅に一応非戦闘員であるセリアを連れるのはどうかというものなのだが
そう言う間に川魚を綺麗に平らげ、食後の休憩に・・
「しかし・・、中々面白い代物もあったものだな」
道中ラミア用にと買ってやった六角棍を手にとりニヤリと笑う
丈夫な棍かと思いきや先端に刃を仕込み中心部にも鎖を仕込んでヌンチャクのような形態にもできる・・
「あの犬人の店主さん、すごい人ですね」
これと彼女の革の鎧は某小さな町にある鍛冶屋で購入したもので、かなりの繁盛振りだった。
しかしオーダーメイドな革の鎧も革製ということもあり優先してすぐ造ってくれたので
サブノック親子はこの犬人店主にかなり好感を持っていたり
「うむ、あの若さにして良い物を造る。繁盛するのも頷ける」
「父上は何か武器を持たないのですか?」
「ふむ・・、私に合う物もないからな。それに我が道を切り開くのに一番頼るべきは得物ではなくこの五体そのものだ」
「父上・・」
「覚えておけ、武器は手段だ。何も武器がなければ戦えぬことはない。」
「はい!」
「良い返事だ。だが・・タナトスは遅いな・・」
「町に買出しと言っても・・このように深い森の中で大丈夫なのでしょうか?」
「何、奴も諸国を渡り歩いてきた男だ。この程度の樹海如きに迷うこともなかろう」
そう言いながら二人の物とは違う道具の袋を見つめてサブノックが笑う
「ですが・・、こうも日が沈んでは今日はもうこないでしょうね」
「違いない・・むっ!?」
不意にサブノックが闇の森を睨む・・
「・・どうしました?」
「・・・人がいる・・一人・・、随分生命が弱っているな」
「タナトスさんではないのですか?」
「・・いやっ、奴ではない。野盗か魔物に襲われたか・・行くぞ、ラミア!」
「はい!」
弱き者を助けずにはいられない。それが正義の証ということで
正義馬鹿二人は荷物もそのままに気配を辿って走り出した


夜の樹海は当然灯りはない、空で悠々と照らしていえる月の灯りも木の葉に遮られ正しく全くの暗闇・・
そんな中足場の悪い樹海の道を進むのは灯りがあったとしても困難なのだがサブノックとラミアは難なく走っている
そして彼らが休んでいた川原の灯りが米粒ほどに見えたところに小さな廃墟があった
造りからして木こりの資材置き場として使用していたのだろうがもはや見る影もない
そしてその中から小さな灯りが見え、サブノックは一気に扉をつき開けた
「失礼!」
遠慮なく中に入り様子を見る・・
そこには白髪の老人が壁に持たれ湯を飲んでおりサブノックをジッと見つめている
「何用・・か」
老人は異国の服装・・、頬がこけており立派な髭も暗闇の中でみれば何やら不気味な物にも見える
「・・失礼、微弱な気配を感じたので何か危機があったと思い駆けました」
「危機・・か。ふっ、この闇の森の中でそれに気づくとは・・お主もなかなかのようだな・・ごほっ・・ごほっ!!」
咳ごむ老人、病に犯されているのがはっきりとわかり吹きさらしの廃墟内には薬の臭いが漂っている
「ご老人・・大丈夫ですか」
「気にするな・・肺を病んでいるだけだ」
「父上、このようなところでは帰って毒です。このおじいさんをどこかの町へ・・」
心配するラミア、正義道まっしぐらだがまだ経験がないのでこのような事態ではどうしてもオロオロしてしまう
「心配無用だ。所詮は不死の病・・それに我にはやらねばならぬ事がある。」
「・・・、よろしければその事を教えて頂けませぬか?」
「ヌシも物好きな・・、人里離れ死にかけた爺の話なぞ・・得はせぬぞ」
「いえ・・これも何かの縁。それに・・ご老人はかなりの腕の剣士と見受けました」
老人の隣には白い布で包まれた巨大な棒のような物が置かれておりそれを見たサブノックが察し聞いてみた
元々彼は遠慮などしなくズバズバと物を言うタイプなのだ
「ふっ、奇妙なものよ。このような場所・・いや、このような場所だからこそ武士と出会うことができるか
よかろう」
軽くため息をつき老人は静かに、ゆっくりと語りだした


老人の名はゼンキ
東国カムイの剣豪にして諸国を旅している身だという。
剣の道を追い求め嫁も取らずに生涯を過ごしてきたが病に倒れもはや長くはない命らしい
そんな体を押してまだやらねばならないことは・・

「・・樹海を抜けた町に巣くう盗賊どもを始末する・・そういうわけですな」
「・・ああ、昔ならば問答無用にたたき伏せたのだが・・こうもなれば一人づつが精一杯だ・・故にここに隠れ機会を伺っているのじゃよ」
「おじいさん・・、そこまでして町の人のためにがんばるのですね・・」
ゼンキの話にラミアは身を乗り出して聞きいっている
「・・ふっ、あの民には世話になった。こんなどこの馬の骨ともわからぬ爺を迎えてくれたのだからな。
故に・・この命の炎が掻き消えるまで、剣を振るう・・それだけだ」
「御仁は・・まさに真の戦士です」
その心意気にサブノックも心を打たれたようだ
「よせ・・さぁ、爺の話はここまでだ。後はゆっくりしてさせてくれ・・ごほ・・ごほっ・・」
「いや、その行い・・小生らにも手伝わせて頂きたい」
「・・ヌシらが?」
「左様、小生の連れもどうやらその町に向かったようです。己が死に場所をわきまえることは真も武士、
しかしその民のためならば御仁はまだ死んではなりませぬ」
「・・・ふっ、変わった漢よ。得はせんぞ・・」
「損得ではありません!正義のためです!!」
「・・ふふっ、面白い連中だ」
熱い二人に圧倒されながらも老剣士は二人の言う通りにした・・


・・・・・・・・・

翌日
樹海を抜けた先にある小さな町の宿にて一人の青年があくびをしながら出てきた
町はあまり活気があるとはいえず人々も何かにおびえるように足早に去っている
「朝だと言うのに・・、何か妙な状態だな」
青年は緋色のボサボサ髪、着ている物は質素な町人風だが紅い宝玉がついた杖を持っており普通の旅人ではないことはわかる
おまけに食料の入った袋を肩に背負っているところが彼の不審人物さをかもし出している
「昨日のうちに合流したかったけど・・闇の樹海を彷徨うのは御免だしな。まっ、ラミアちゃんにお菓子も買ってやったから大丈夫か・・」
苦笑いをしながら歩き出す青年、樹海を目指し進むのだがそれを待ち受けるように
数人のごろつきが待ち構えていた
「・・・・、なんだ?おたくら?」
「へへへ・・ここは通行料がいるんだよ・・」
道を塞いでいるごろつきの一人、背が小さく見るからに狡猾そうな小男がねちっこい口調で言う
「通行料?・・こんな町中で関所か?」
「そういうことだ。金貨五枚でいいぜ・・さっさと出しな」
「おいおいおい、この町は普通の町だぜ?地図で見る限り境目な位置でもないし第一通行料にしちゃ高すぎだ」
呆れる青年、対しゴロツキ達は腰に下げた得物を抜き出す
「グダグダうるせぇんだよ!さっさと出せ!」
「・・、まっ、元々話が通じる連中じゃないか。喧嘩の売り方も強引だしなぁ」
「ああん?何ぼそぼそ言ってやがんだ!命乞いかぁ!?」
小ばかにする小男、つられるように後ろのゴロツキもあざ笑い出すが・・青年は至って冷静に
「命乞い・・?馬鹿言うなよ、それはお前らがするんだぜ?」
「・・はぁ?てめぇみたいなひ弱に何ができるんだよ?」
「・・知りたいか?」
ニヤリと笑うとともに地に浮かぶは深紅の魔方陣、複雑な紋様から光が走り青年の宝玉に集まりだす
「・・な・・何を・・」
「いくぜ!ガーネットブラスタァァァァ!!!」
そう叫び気合十分に杖を振りかざす!

閃!

紅い宝玉から光が走ったかと思うと後はそれっきり、ゴロツキ達は閃光に目をつぶったが別に外傷はなく・・
「な・・・なんだ!こけおどしか!もったいぶった仕掛けしやがって!!」
完全にビビリきっていたのだが何ともないので急に強くなる小男、
しかし
「・・覚悟しやが・・・れ・・?」
襲い掛かろうとするも自分の持っていたロングソードの刃がすっぽりとなくなっているのに唖然とする
それも根元がドロドロに溶けているのだ。他の面々も動揺ですでに固まっている
「覚悟?こいつを受ける覚悟が必要なのはお前らだぜ♪
まぁ・・脳みそ干からびて死んじまうまで一瞬だろうからな〜、痛みがあるのかどうかわかんないけどな」
「ひ・・ひいいい!!」
只者ではないと察知した途端脱兎の如く逃げるゴロツキ達、対し青年はそれを追おうともせず欠伸一つに頭を掻く
「ふ・・、悪はみっともなく敗走するものよ・・。っても何で因縁かけられているのか・・」
周りに聞いてみようにも目も合わせてくれないので青年は少し困り・・
「・・、このまま師匠と合流するのもいいけど・・何やらありそうだし、情報収集と行くか」
そう言うと青年は踵を返し再び町中へと戻っていった
しかし・・それを追うように数人の人影がついて行き、町人は彼を哀れむように見つめるだけだった
・・・・・
彼が訪れたのは一軒の酒屋、
通常そうした店の本格的な開店は夜であり朝ともなればむしろ住民のふれあいの場となっていることが多い、
それゆえ情報が手に入ると彼は思い入ったのだが・・
(・・あ・・この町、相当やばいんじゃないか・・?)
入店とともに店の空気を察知、正しくゴロツキなお店、朝だというのも空気は汚く篭っており刃物を出して研いでいる人もいたり
店のマスターと思われる人物も目の下にクマを浮かべながらも退室できないのかカウンターに立っている
「店主、珈琲でもくれよ」
「は・・はぁ、ちょっと・・待ってくれ・・」
そう言いつつも目は「あんた早く逃げたほうがいい」っと言う感じ・・、それを感じながらも青年はニコリと笑いカウンターに座った
「なぁ・・、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ」
「な・・何か?」
珈琲を入れ、背を向けているマスターに遠慮なく声をかけて、マスターはおっかなびっくりに応える
「さっき外で変なゴロツキに絡まれたんだよ、この町って何かおかしくないか?」

・・ギロ!!・・・

その言葉に後ろでたむろっていたゴロツキさんが一斉に睨み出す
もうマスター、生きた心地もせず急いで青年に耳打ちを・・
「・・ボソボソ(あんた、早く逃げたほうがいい。この町にタチの悪い連中が居座っているんだ、自衛団にもどうしようもならなかったくらいだ。
揉め事を起こすとロクな事がないぞ)」
驚くほどの早口でそう伝えるマスター、しかし青年にとっては聞きたい情報の半分以上を聞き出せたので
「・・そうか、わかったよ。じゃあ珈琲はキャンセルで」
そう言い席を立ちそそくさと店を後にした。

しかし

「・・よう、俺達の家族に手を出したんだってなぁ」
店を出ればすでに十数人ぐらいのゴロツキが・・、おまけに今では酒場からも数人出てきて完全に囲まれる
「手を出す・・?仕掛けてきたのはそっちだぜ?」
少々厄介と察知したのか手荷物を地に置き戦闘体勢に入る青年
「へっ、威勢だけはいいな・・だがこれだけの人数にそんなヤワな体で戦えるかぁ?」
ニヤニヤ笑うゴロツキさん達、彼らは群れることが誇れる事と勘違いしているためにこうした事も全く平気
故に小物にも満たない下の下なのだが・・
「・・うう〜ん、まぁそれなりに」
「舐めやがって!!やっちまえ!!」
青年の挑発にゴロツキ達は一斉に剣を抜く!彼も軽く杖を握り対抗するのだが・・

バキ!!!

突如その間に割って入りゴロツキを吹き飛ばす影が・・
見ればそれは小柄な少女、革の鎧を着た可愛らしい戦士なのだが放つ闘気は正しく本物。
「タナトスさん!ご無事ですか!」
「ラミアちゃん、・・町まで来たんだ?」
少女ラミアに声をかける青年魔術師・・タナトス。助太刀に加わったことよりも彼女がここまできたこと自体に驚いている
「タナトスさんが遅いですから!」
「・・面目ない、では・・師匠も・・」
タナトスが話している途中に

”チェストォォォォォォォォ!!”

天を裂く咆哮、それとともに次々と敵を叩きのめす漢・・サブノック
その動きはまさに疾風、アッと言う間に親子はゴロツキ十数人を叩きのめし、残った連中は一目散の退散・・
「ふん・・、仲間を捨て我が身可愛さに背を向けるか・・」
逃げるゴロツキを軽く睨むサブノック、元々悪人面ゆえにそれだけでもかなり怖かったり
「師匠、態々迎えにきたのですか?」
「買出しの迎えに出るほど我らも暇ではない。・・・随分遅かったようだな」
「ええ・・、保存の利く物がなかなか売ってませんので結構探しまして。その内日が暮れて樹海に入るのは危険と町民に止められましてね」
「むぅ、まぁ普通の人間が入るにしては危険に思えるか。まぁよかろう」
「すみません・・あっ、ラミアちゃんには待たせた侘びにお菓子買っているから・・後で上げるよ」
食料袋から軽く取り出したのは保存の利く砂糖をまぶしたカンパンの袋詰め、それを見たラミアはパァっと顔をほころばせながらも・・
「タナトスさん・・私は修行の旅に出ているのですから・・お菓子なんて・・」
拒否しつつも視線はカンパンの袋に目が釘刺しなラミア・・それを見たサブノックは少し微笑みながら
「とは言え、肉体疲労時には甘い物は有効だ。休憩の時に食べたらいい」
「父上!」
優しく頭を撫でる父にラミアは思わずはしゃいだり・・
「・・でっ、どうして町まで来たんですか?」
「うむっ、森でとある人と出会ってな」
伸びているゴロツキもそのままにサブノックはゼンキとのいきさつを話し始めた

・・・・・・
・・・・・・

「なるほど、病に犯された武芸者・・ですか。確かにこの町は少し危ないところがあるようですしね」
一通り話を聞き終えて腕を組むタナトス、その老人の事をしきりに感心している
当のゼンキは彼らと一緒では目立つということで別行動で動いているらしい
「そのようだな、情報を求めようにも全員怯えきっている。相当巨大な集団なのか・・」
「あるいは人では対抗しきれない怪奇がいるか・・ですね」
「ふふっ、流石だな。タナトス」
「俺は頭脳派ですからね・・。ではっ、俺達正義の使者が来たからには・・」
「うむっ、一人残らず叩き伏せる!ラミア!狩るぞ!」
「はい!父上!正義の裁きを与えて見せます!!」
気合十分な正義馬鹿親子、それにタナトスも・・
「こうなると情報は無用ですね、派手に暴れましょう!」
彼も結局はサブノックの連れのようでやる気満々。
一人でも殲滅できるほどの力量なのだが三人も揃ってしまい、今までゴロツキ達がやりたい放題やってきた分の
ツケとして今度は狩られる側となったようだ
一方
町で派手に暴れる正義衆に町を巣食っている悪党どもも黙っているわけにも行かず・・
「頭!表通りで変な三人組が暴れています!!」
ゴロツキの一人が町の豪邸にかけつけてきた、彼はタナトスと悶着を起こしたあの小男で自らは戦わないらしい
「うるせぇなぁ・・どうした?」
豪邸のロビーに欠伸をするむさ苦しい無精髭な中年、どう考えても今いる屋敷とは不釣合い。
しかもロビーにはバケツをひっくり返したかのように血がべっとり飛んでいる
それを見る限り略奪し自分の家にしたということがわかってしまう
「で・・ですから町に変な連中が突如現れて・・」
「変な・・だと?」
「ええっ!魔術師みたいな男が一人とガキが一人、後は変な野郎が一人です!」
「・・・、聞いた様子だと前から俺達を闇討ちしてる野郎とは違うな。ちっ・・自衛団をぶっ潰したまでは良いものを
次から次へと面倒だぜ・・」
床に唾を吐きながらうっと惜しそうに唸る男
「頭、とりあえず連中の始末をしてくれませんか!一人クソ生意気な野郎がいるんです!」
「まぁいいだろう・・あいつ用の餌が必要だからな」
ニヤリとほくそえむ頭と呼ばれている男・・
「流石!頭のあの化けトカゲがいれば連中なんか・・(ザク)・・・・あ・・・」
喜ぶ小男の体が真っ二つに切断され飛ばされた、見れば豪邸の扉から巨大な刃が生え小男の体ごと斬り払ったのだ

「・・・こちらに出向いて正解だった・・か」

ゆっくりと刃が引っ込んでいき扉が開かれる、そしてゆっくりと入ってくるは老剣士ゼンキ。
死に装束のような白い法衣を着て身長代はあろうかと思われる斬馬刀を担いでいる
「・・てめぇ・・」
「ふ・・、この町に巣食う外道の主と見受ける・・」
病に冒され死を待つ身とは思えないほどの足取りで屋敷内に足を運ぶ、
巨大な斬馬刀を肩に乗せているところ肩当てのような物をつけているようだ
「・・なるほど、てめぇが俺達を闇討ちしていたわけか・・」
「左様、外道相手とは言え姑息としか言い様がないが・・この体で行うことはこれくらいが精一杯なのでな」
そう言うとゼンキは斬馬刀を軽々と持ち上げ正眼の構えをとる
「上等だ。てめぇを始末してから町の連中も殺してやる!」

”貴様が出向く必要もない!”

頭の叫びを押しとどめるが如くの正義の咆哮、見ればゼンキの後ろに三人の戦士が・・。
「ゼンキ殿、町の輩は小生らが成敗致した!!」
「・・サブノック殿、ふっ、流石に早いな。だが・・こやつの相手は我がやる。ヌシらの手出しは・・」
「承知、しかと見届けます」
最初から見守る心つもりのサブノック、対しラミアはすぐに加勢をしだしそうなので肩を抑えてやり行動を静止するように諭した
「へっ、全滅か・・まぁいい。俺にはこいつがいるからな!(ピー!!)」
口笛を吹く男、それと同時に館の階段からベタベタと音がし成人男性3人分はある巨大なトカゲが降りてきた
緑色の毒々しい皮膚、牙は鋭く赤い舌がチロチロと覗いている
「魔獣使い・・か。盗賊には過ぎた技能だ」
トカゲを見ても表情一つ変えないサブノック、静かにそう言い静観している
「父上・・魔獣使いとは・・・?」
「獣を飼いならし自らの手足とする職の者だ。だが間違った扱いをすれば・・ああなる」
「あれは凶暴な人喰いトカゲですね、・・よく手なずけたもんだ。ご老人、いけますか?」

「手出し無用!ふふふ・・我が生涯最後の相手としては申し分ない。
それでこそこの刀を手に持った甲斐があったというものよ・・」
「こいつを甘く見ないことだな!やれ!」
「シャアアアアア!!」
主には従順のような奇声を上げながらトカゲは走りだした、それも巨体と硬い鱗を利用するが如くの体当たり
俊敏な動きで放たれるそれはかなりの物・・

キィン!!

「ぬ・・おお!・・ごほっ・・!」
それを斬馬刀で真っ向から受け止めるゼンキ、見事に受け切ったのだがその衝撃で咳ごみだす
そして剣士にしては決定的とも入れる隙を作ってしまった
「おじいさん!危ない!!」
思わずラミアが叫ぶ・・しかしゼンキはそれに対応できずに・・

ザシュ!

トカゲの鋭い爪がゼンキの胸を深く切り裂いた
「ぬぅ・・!ふっ・・我もヤキが回ったものよ・・」
膝を付き思わず唸る・・そこにトカゲが大きな口を開き丸呑みにしようと・・
「父上!助けなくては!」
「ならん・・手出しは無用と言ったはずだ」
「で・・でも!」
「見届けろ・・」
後ろでそう叫ぶ中、トカゲは勢い良く噛みつきだす・・
その瞬間

斬!!

下から上にすくい上げるすさまじい一刀が走った・・
それは正に一瞬の出来事で次の瞬間トカゲは真っ二つに切断された
「はぁ・・はぁ・・我が一刀に・・断てぬ物なし・・」
傷を片手で押さえ巨大な斬馬刀を片手で持ちトカゲを切断したのだ、普通の老人ならば考えられない所業に
サブノックも思わず目を細め・・

「・・お見事・・」

っと唸った
「て・・てめぇ!俺の相棒を!!」
自慢の相棒を瞬時に殺された頭、先ほどまでの余裕はもうない
「我が剣の業!それをすべて貴様に叩きつける!覚悟!!」
最後の力を振り絞り斬馬刀を振りかざす
その姿は正しく剣鬼、頭はその気迫に飲まれ動くこともできず・・

斬!

凄まじい一撃が頭に見舞われた、魂の篭った斬撃は血の一滴も残さず男を消滅させたのだ
「ふ・・ふふふ、我が最後の一振り・・満足の行くものだった」
振り下ろした刀が手から滑り落ちゼンキは前のめりに倒れる、しかし彼が倒れるより早くサブノックがそれを抱きかかえた
「・・お見事です、ゼンキ殿・・」
「・・礼を言う、ヌシらのおかげでこの爺、最後に満足ができた」
傷を抑えながら笑うゼンキ、致命傷のはずなのだが痛みなどは感じていないようだ
「おじいさん・・!」
「ふ・・ヌシは良い大人になるな。・・我のようにはなるなよ」
心配そうに見守るラミアの頬を撫でてやるゼンキ、その光景は正しく祖父が孫を撫でるような物・・
ラミアはすでに目からボロボロ涙を流している
「・・そうだ・・、サブノック殿・・ヌシに一つ頼みがしたい・・よいか?」
「なんなりと・・」
「ふっ、我が魂、そして我が剣を引き継いでもらいたい。我が剣は我流・・故にこの剣を引き継ぐ者もいなかったので・・な」
「・・小生でよければ・・よろこんで」
「・・助かる。我がゼンキ流は無双にして一刀の剣、ヌシが扱えばもはや敵なしよ・・ごほっ・・!!」
「もう・・しゃべりなさるな」
「・・いや、それと・・我が・・髪を・・カムイのアイゼンという・・剣士に届けてもらえぬか・・」
「承知した、必ず・・届けますので・・」
「助かる・・・、ふ・・ふふふ・・にしてもだ、
後を継いでくれる者がいるならば・・死と言うのも・・あながち悪い気がするものでは・・ない・・よう・・・だ・・・」
そう言い静かに目を閉じるゼンキ・・、すると彼の体が淡く光その光がサブノックの体を覆った
それは剣魂というべきものか、彼の心の中に老剣士の意志が流れ静かに消えていった
「ゼンキ殿・・逝かれたか・・」
「・・・・」
返事はすでにない、しかしサブノックの中には彼の記憶が静かに流れる
剣の道に歩むが故の孤独、高みを求める欲、そして血なまぐさい中で暖かく迎えてくれた町の人への感謝
一人の漢の一生を目の当たりにしサブノックは静かに手を合わせ彼の冥福を祈った



・・それよりすぐ、町を救う外道がいなくなった事をサブノックは町の人間に伝え、そしてゼンキの亡骸を彼らに託した
町民は彼の死に涙し丁重に弔うことを三人に伝えた・・
そして
「父上、このままカムイに向かうのですか?」
樹海と町を離れた街道・・ラミアはタナトスに肩車をしてもらいながらサブノックに聞く
「・・いやっ、一旦ニースに戻る、カムイに行くには船に乗らねばならぬ、かなりの日数がかかろう」
静かに答えるサブノック、肩にはゼンキの斬馬刀を担いでいる
「・・ですが師匠、その剣の扱いはわかるのですか?馬鹿でかいですし・・師匠って剣は使えないんじゃ・・」
「何っ、武人の魂が小生には宿っている。ゼンキ流と言うべきか・・彼の剣が小生にはわかる・・」
「意志を他人に伝え去る・・、そんな事が実際にできるとは思いませんでした。俺もまだまだか」
「ふっ、世の中わからぬことも多いものだ」
ニヤリと笑うサブノック、そう言いながらラミアの頭を撫でてやる
「久々のニースだ。セリアも待っているぞ」
「はい!早く会いたいです!」
「こうしたことだと歳相応ですね・・ですが団長、大丈夫でしょうか?」
団長であるアルの事を思い出すタナトス・・、心配というのは少し独特な問題であり
「ううむ、小生らがいなければマリー殿とレイブン殿が黙ってはいない・・」
「オマケにセリアさんの事ですから二人に協力している・・でしょうねぇ。帰ったらお二人さん妊娠発覚・・とか?」
「ありえ・・ぬだろうが、ドタバタしている事には間違いあるまい。
まぁ早めに帰ってしばらく休養してから・・カムイに渡ればよかろう」
「了解です、状態次第ではカムイに行く時は俺は残りますよ、団長に助け求められそうですし・・」
苦笑いのタナトス、その光景が容易に想像できてしまうのだ
「父上!それよりもその刀の名はあるのですか?」
大人な会話は全くわからないラミア、二人で話しているのが退屈ゆえに突如切り出した
「うむ、どうやら『悪滅』という名の斬馬刀のようだ。」
「『アクメツ』・・正しく正義の剣ですね!父上にぴったりです!」
「ふ・・そうか、それもそうだな」
微笑みながらも三人は旅路を行く。

・・因みに、話題に出た団長さんは・・・


「よし、報告書の作成はこれで終わりだ」
ニース村自衛団詰め所にて報告書の作成を終わらせた碧髪の青年・・アル
気弱そうだった頃とは違い今では一組織の代表として凛々しくなり治安を守る者として村民からの信頼も厚い
小さかった詰め所も改築されてかなりの規模になった、それでも机を置くスペースが少し増えただけなのだが
なかなか機能的な木造の館となった
「アル・・お疲れ様です」
そんな彼にお茶を入れてあげるは黒と銀が混ざった長髪の美女レイブン、彼の相棒にして今でも彼を支える女房役
っと言っても彼女は本当の女房にはなりたいのだが・・
「ああっ、ありがとう。でもレイブン・・髪が銀色に戻ってきたようだね・・」
「ええ・・これがどういう事か・・」
「君にでもわからないんだ」
「人化の先は私でもわかりませんよ、それでも・・貴方からは離れるつもりはありませんので」
熱っぽいレイブン、知的な女性が見せる潤んだ瞳は男にとっては真に魅力的なのだが彼にとってはすこし苦手なジャンルらしい
「・・あ・・・ああ、僕もそうだよ。でも・・サブノック達も遅いな」
「・・まぁ、タナトスも同行してますから行き過ぎた荒修行はしないと思いますが・・」
「でも、タナトス君まで同行させなくてもよかったんじゃないかな?サブノックとラミアちゃんだけのほうが・・」
「・・ふふっ、何故彼を同行させたかわかりませんか・・?」
悪戯な笑みを浮かべるレイブン、無表情だった彼女も今では随分と表情豊かになった
「わ・・わからないなぁ」

”それは、野暮だからよ♪”

不意に元気な女性の声、見れば部屋に頭にバンダナを巻いた黒髪の女性マリーが立っていた
「マリー、野暮・・って・・さ。仕事なんだし」
「アル、女二人がこんなに積極的になっているんだから応えなきゃ駄目よ!甲斐性なしって言われちゃうよ!?」
「ぼ・・僕は・・そういうのは苦手・・で・・」
「では・・私達がレクチャーしてあげますよ。マリーさん」
「はい♪」

・・ガチャ・・

部屋の入り口の鍵を閉めるマリー、さわやかな笑みを浮かべてはいるもののそれがやけに淫らに見えていたり
「・・あ・・・ああ・・(まずい!こうなったら・・密かに造っておいた避難路へ!)」
急いで逃げ出すアル、自分の席の後ろの壁にカラクリを仕込み外へと抜けられる仕掛けをしていたのだ
・・それも自家製で・・。
しかし

バァァァン!!

壁が回転して開くはずなのに作動せずにモロ激突・・
「・・な、なんで・・!?」
鼻から強打したアル、パニック状態に・・

”うふふ・・、アルさん♪女性のお誘いは断るもんじゃないですよ♪”

壁の向こうから聞こえてくる女性の声・・
「セ・・セリアさん!?塞いだんですか!!せっかくクラークさんに教わったのに・・」
”しっかりと補強しましたのでそっちは完全な密室です♪・・どうぞ、ごゆっくり・・”
笑いながらセリアの声が小さくなる・・、アル、ピンチ
「アル・・そんなに嫌なの・・?」
そんなアルにマリーが抱きつきながら言う
「いや、嫌じゃなくて・・あんまりそういうの・・慣れて・・いないからさ」
「じゃあ・・じっくりと慣らしますか・・」
レイブンも抱きつき正しく・・拘束状態・・
「レイブン・・元天使がこんな交わりをするのは・・」
「あらっ、私はもう人間ですよ。女性ならば男性を求めるのは当然です・・さぁ・・楽しみましょう」
「ぼ・・僕は・・・あ・・・ああああああ・・・」
アルの甲斐性なしの汚名は返上できる日は・・まだ遠そうだった


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