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「老人とアサシン」


王都ハイデルベルク

そこは大国の中心都市であり諸国と比べても巨大な規模を誇っている

故にそこを観光目的に訪れる者は多く、日々観光客で賑わっている

しかし人が集まれば哀しいかな、犯罪というものは必ず発生する

それ故に王都にはハイデルベルク騎士団の本部が置かれ相当数の騎士が王都の平和を守るべき働いている

また不審人物などの調査などは騎士団内に設置された情報部が担当、

フットワークの軽さからして影から支えているのだ

 

普通に訪れれば多少は騒動があれども賑やかな大都市、

しかしその影では騎士達が日々戦い続けているのであった

 

────

 

「うわぁ・・先生、すごいですねぇ!」

 

「・・ふむ、流石じゃのぉ・・。ここまで馬鹿でかいのはカムイでもあるまい」

 

午前の日の下、王都の大通りで周囲に簡単する一組の男女

一見すると親子連れにしか見えないのだがそれ以上に視線を集めるはその風貌。

女性はまだ幼さが残った童顔で黒髪を軽い髪飾りで止め茜色の羽織を着ており

化粧気はないものの健全な可愛らしさを見せている

男性は老人、だがその体は鍛え抜かれており意外にしっかりとしている。

着ている物は軽い藍色の着流しに薄茶色の中羽織、

頭は綺麗に禿げ上がってこそいるが顔つきはしっかりとしており

只者ではない雰囲気を醸し出している

 

一目でここらの土地の者ではない事がわかる・・、その風貌は東国カムイ独特な物。

質素ながらにしてゆったりとした着心地は非常に快適であり

東国旅行の際に試着してファンになる者も多いとか。

そしてかく言う二人は東国の田舎に住む変わり夫婦

アイゼン流剣術の現継承者である老剣士アイゼンとその使用人にして妻であるサクラである

隠居暮らしをしているアイゼンがわざわざ大国ハイデルベルクまで来たのには訳がある

 

つまりは、観光旅行。

 

大陸で住まう弟子のクラークやクローディアの様子にサクラが大陸の事に興味を抱いたのがきっかけで

遠出をするのもいいだろうと思い立って王都観光へと出掛けたのだ

無論、争いに行くのではないがために刃物は持っておらず荷物の必要最小限。

観光などはあまり行わない東国の人間だが旅の心得は持っており必要最小限の物しか携帯しないのである

「先生は大陸に出向くのは初めてですか!?」

「わしはカムイの地が一番落ち着くからな、

わざわざ舟に乗って出るつもりもなかったし若い頃は国交が結ばれておらなんだからなぁ」

「そうなんですかぁ・・」

「まぁ異文化を目にするのも悪くはないか。多少・・騒がしくはあるがの」

顎をさすりながら周囲を見る、

都市はこれから賑わいを見せるのだがすでに結構な人通りが出来上がっている

そしてそのほとんどが珍しき東国の旅人に視線を向けているのだが二人は至って気にせず

「でも、すごいですね・・。クローディアさん達もこんなところに住んでいるのでしょうか?」

「いやいや、全てがこのように栄えてはいるまい。あの夫婦には田舎の方が似合っておるわ」

「・・えっ、クローディアさん、ご結婚されたのですか!?」

「正式にはしておらんがほぼ夫婦じゃよ。そうじゃな・・ここを回ったら冷やかしに行こうか?」

「えー?先生、それは悪趣味ですよぉ」

「ははは、まっ、そう頻繁に成長を確認するのも過保護じゃな。

しばらくは乳くらせておこうかの・・。・・んっ?」

のんびりと通りを歩くアイゼンだがふと目つきが鋭くなり大通りから細い通路に入っていく男を見つめる

「・・先生、どうしました?」

「サクラ、ちとここで待っていなさい。

そうじゃの、あそこに露店がある・・この金で買って食べていなさい」

「は、はい・・」

アイゼンは懐からガマ口を取り出して換金した銅貨をサクラに渡した

突然のアイゼンの変わり様にサクラは呆然としながらもこうした時には

その命令に従うよう教えられているため言われるまま通りのクレープ屋にて

生まれて初めて見る菓子を頼むのであった

 

・・・・・・・・・

 

「・・へ・・へへ・・誰も気付いていねぇな」

 

細い路地に入って息をつく男、見た目はどこにでもいる中年男性だが息が切れており妙ににやけている

人通りの多い通りから少し外れた路地、

しかしそこは非常に閑散としており行き交う人は全くいない

都市部に行けばどこにでもある犯罪の温床地帯、

こんなところで笑う者は少なくともまともとはいえない

そこに・・

 

「そこの若いの、何をにやけておる?」

 

後ろから軽く声を掛ける老人・・アイゼン

いつもと同じ穏やかな口調だがそれが返って男を驚かせた

「な、なんだてめぇは!?」

「通りすがりの爺じゃ、見ればわかろう?」

「へっ、爺か・・。てめぇには関係ねぇよ、死にたくなければさっさと消えな!」

「・・ほうほう、これは聞き方が悪かったかな。

では若いの、何故そんなに血の臭いをまき散らしておるのかな?」

小馬鹿にした笑みを浮かべ堂々と言ってのける、それに対し男の顔色は途端に変化した

「自身が怪我を負っているのなればそんなに軽快には動き回れまい。

懐の小刀で何かしでかしたと言ったところかの」

「・・てめぇ・・」

「旅行という事で多少の面倒事は無視するつもりだったのだが、

主はちと殺伐としたものを帯びていたからの・・

案の定、見逃すと世のためにはならんようじゃ」

「爺!!」

殺気を剥きだしに懐より短剣を取り出しアイゼンに向かって駆け出す男

綺麗とは言えない短剣の刃は血がこびりついており切れ味が良いとは到底思えない

しかしそれでも凶器は凶器、刺されば深傷は免れない

「・・ふぅん・・」

襲いかかる男に軽く息をつきその様子を見つめるアイゼン・・

次の瞬間

「ぐえぇ!!」

男の体は見事に回転し地面に叩きつけられいた、

凄まじい衝撃に男は白目を剥きそのまま気を失っている

「どこにでも馬鹿はいるものじゃが・・これはちと幼稚過ぎるのぉ」

気絶した男を見下しながら彼が持っていたはずの血が付いた短剣を手に持つ

「・・両刃か、大陸の剣という物は扱いにくそうじゃな・・。

まぁいいわ、警備人に付きだしてやろうかの」

そう言うとアイゼンは気絶した男を抱え上げそのまま悠々と通りへと戻るのであった

 

 

 

────

 

 

アイゼンにしてみればその騒動は軽い気まぐれ程度のつもりだった

ただ通りを歩き不審な人物がいるのでそれを懲らしめただけであり

後はそれを突きだして観光を続けるつもりであった

しかし、不敗を誇る歴戦の大剣士であれども想定外の事は起こるものである

 

「・・ねぇ、先生。これってどういう事ですか?」

 

「む・・う・・。予想外と言う事じゃな」

 

二人がいるのはハイデルベルク城の客室、

豪勢な調度品が並べられる中で椅子という物に腰を掛けている

地べたに座る習慣の国で生きる二人なだけに椅子という物はかなり珍しいものでありまた厄介なもので

サクラもアイゼンも椅子の上に正座やあぐらをして豪華絢爛な客室に居心地の悪さを感じている

アイゼンが騎士団に突きだした男は現在第一級殺人の容疑で指名手配されている連続殺人魔であり

その日も犯行を重ねて騎士団では厳戒態勢で行方を追っていたようであり

それを捕らえたアイゼンに対し大層感激をして城に招いたのだ

軽く男を突きだした後に悠々と観光を続けるつもりが

一転堅苦しい場所に招かれて感謝の割には余り嬉しくない展開となっている

「やれやれ、あれが連続殺人を行う狂人とはのぉ・・人が集まるところ、危険人物も集まるという事か」

そうとは言えども野放しにはできなく貧乏くじを引いたと諦めて顎をさすった

その時

 

コンコン

 

「失礼します、この度はグレイダー第一級殺人容疑者の確保をして頂きありがとうございます」

一礼して入ってくるは碧髪のポニーテールをしたスーツ姿の女性、

若いが身なりはきちんとしており礼儀正しい。

スーツの胸元には金色の勲章が付けられており

こちらの文化がわからずともただの女性ではない事はアイゼンにもわかった

「いやいや、さして大した事はしれおらぬよ。礼に呼ばれるまでもなかったのじゃがな」

「いえっ、私達ハイデルベルク騎士団情報部でも手を焼いていた人物です。

被害がこれ以上拡大しない内に食い止められたのはこれ以上ない幸いです」

「情報部・・とな?」

「はい、失礼・・申し遅れましたが

私はハイデルベルク騎士団情報部で長をしておりますフレイア=クレイトスと申します。

情報部とは諜報等を主に扱う組織です。東国では珍しいですか?」

「忍の任務じゃな・・。しかし、お主は東国の事を知っているのか?」

こちらではまだまだカムイの文化は珍しい、

故にフレイアがその事に詳しいのにアイゼンはいささか驚いた

「ええっ、父が東国に関わった事がありますのでその文化や技術などは触った程度ですが・・」

「・・ほぉ、それはそれは・・・。父の教えをきちんと覚えているとは真に結構

その若さで長を務めるだけの事はあろう」

「ありがとうございます。それで、殺人犯確保の協力として金一封、貴方様にお渡ししたいかと・・」

「これこれ、わしはそんなに大層な事をしてはおらぬ。そこまでの気遣いは無用じゃ」

「感謝の気持ちですよ」

ニコリと笑うフレイア、それにどうしたものかと困惑顔のアイゼン

元より質素な暮らしが染みついているがために予想外の収入はありがたいのだがそれでも迷惑であったりする

 

っとは言え、感謝をして差し出したモノを無下に断るのも忍びない・・

どうしたものかと腕組みアイゼンだがそこに再び静かにノック音が・・

 

「失礼、隊長・・あの容疑者が持っていた刃物が今朝方見つかった女性の変死体の傷口と一致しました。

後、グレイダーは他にも女性を監禁していると供述しております」

 

一礼して入ってくるはニヒルさを感じさせる青年騎士、

着こなしの良いジャケット姿だがこざっぱりしていて清楚感が漂う

「ありがとう、シグ。ではその女性の保護を急いでください」

冷静に応対するフレイア、地の時の対応とはまるで違うのだがそこは彼女もプロ、

客を招いていてそのような態度はできない

「了解しました。では・・そのように手配します」

静かに応えるシグ、その隣にふっと音もなく女性が姿を見せる

それは鷲のように鋭い目をした美しい黒髪の女性・・

冷たさを感じさせる絶世の美女でありシグとお揃いのジャケットを着用している

「・・・シグ。確保に行こうか?」

「ヒサメ、急を要すとは言え来客中だ。客人に挨拶をするぐらいは礼儀だぞ」

「・・・わかった・・、っ!!?」

アイゼンに向かい礼をしようとした女性ヒサメだがその瞬間彼女の体が落雷に遭ったかのように震えた

対しアイゼンはジッとヒサメの方を見つめている

「・・ヒサメ・・?お主、もしや・・」

「ひ、人違いだ!失礼する!」

まるで逃げるように姿を消すヒサメ、普段ではあり得ない反応にフレイアもシグも驚きを隠せない

「・・・・ふむ・・」

それに対しアイゼンが消えた女性の事について考えを巡らせている

「アイゼンさん、私の部下と・・御面識があるのでしょうか?」

「・・いや、まぁ・・本人が違うと言っておるのでは違うのであろう」

「・・はぁ、シグ。何をしているですか?早く女性の確保を・・」

「・・わかりました、では・・失礼・・」

腑に落ちない様子のシグ、

それでも態度を崩さず一礼をして客室を後にするのであった

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

ハイデルベルク城外壁、急な斜面が並ぶその屋根の中、構造上平たくなっている処が何カ所かある

その中の一つに、ヒサメと一人の老人が深刻そうな顔をして対峙した

空は雲一つない快晴、

すがすがしい風が城壁を舐めるのだがそれを感じる余裕もない様子でヒサメが静かに口を開ける

 

「間違いありません、・・抜刀様です」

「・・そうか・・。奴はわしを探しにきたのか?」

ヒサメの報告に老人は目を細める、彼はヒサメの保護者にして情報部に所属している自称老忍ハリー。

自由気ままに情報部に協力しておりヒサメという優秀な人物を招いた男でもある

「いえ、そこまでは・・。ただ、殺人者を確保したとの事で騎士団より招かれた模様です」

「・・・・・・、変わらないの。どこに行っても騒動に首を突っ込み、また巻き込まれる。

故にかなりの出不精であったのだが・・な」

「・・・・」

無言のヒサメ、だがその様子はいつもの人形のような彼女ではなく明らかな困惑色を浮かべている

「ヒサメや、野獣並の勘の良さを持つ奴の事じゃ。

その場ではおそらくははぐらかそうがお前の事には気づいているはず

・・しばらくは姿を隠せ。わしもここを動かぬ」

「御意」

「じゃが・・あいつの事じゃからな。忍が隠れそうなところなぞ容易にかぎつけてきよる

・・そうじゃな、シグの元で外出をせずに潜んでいよ、それが一番じゃ」

「御館様、それでよろしいのですか?」

上の命令は絶対、それにも関わらずヒサメはそう聞き返す、

本人としても見つかりたくないという気持ちがあるようだ

「裏をかくのじゃよ。あやつはそういう男じゃ」

「・・御意」

そう言いヒサメは音もなく姿を消した・・

ただ一人残ったハリーは深く目を閉じため息を漏らす

「いつかは来るものと思っていたが・・な」

何とも言えない呟き、しかしそれに応えるモノはそこには誰もいなかった

 

 

───────

 

しばらくして、

ハイデルベルク城には監禁されていた女性を救出したシグが無事帰還し報告を済ませる

その頃にはアイゼンはすでに城を去っていた。

気が進まなかったのだがフレイアより金一封を受け取り顎をさすりながら

サクラの手を取って王都の賑わいの中へと消えていったという

事件が無事解決したという事なのだがシグは釈然としない様子・・

それもそのはず、突如姿を消したヒサメがまだ戻ってきていないのだ

フレイアやアリーなどに聞いても当然わかろうはずもなく・・

彼もそこで探し回るほど過保護でもなく日が昇りきった時点でその日の任務は終了、

軽く食材を買い回ってから帰宅する事となった

 

情報部の人間が動くのは基本的に夜、

シグやヒサメ等優秀な人物は夜勤が多くその日もシグは昨夜より任務についていたのだ

 

「・・・、気にならないと言えば嘘になるか・・」

 

昼下がりの王都、食材が入った紙袋を担ぎながら思わずぼやいてしまう

気になるのはヒサメの事、今まであれほどまでの慌てた彼女を見たことがない

それだけに普通ではない事はシグにもわかるのだが事情がわからない以上どうする事もできない

故に彼にできる事は今日の夕食を多少奮発する事ぐらい

どうしたものかと悩みながらシグは自宅へと到着した

 

彼の家は城よりほど近い一軒家、スカウトされただけに収入が良い分

中々に良い物件を手に入れる事ができた。

現在シグはヒサメとほぼ同棲に近い生活をしておりそれなりに充実した毎日を送っている

その事でよく周囲から茶化されるのだが本人は軽く流しつつもヒサメに夢中になっていたりする

ニヒルを気取ってもヒサメまっしぐらなところは隠せようもないらしい

「・・・むっ?」

彼が自宅に到着してすぐ、テーブルに食材を置いたところで違和感を覚える

室内の隅に見慣れない木箱が置かれている、

そしてそこから息を殺して潜んでいる気配が・・

「・・・・」

隠れているにしては気配が出過ぎている、

その事に対しシグは目を細めその木箱の蓋をゆっくりとずらした

そこには・・・

 

「・・・・」

 

「・・何をしているんだ?ヒサメ」

 

フル装備のヒサメ

マスクで口元を隠しているのだが様子がおかしい。

必死に落ち着こうとしているのか体が小刻みに震え見上げてシグを見つめる目は

普段の無感情さとはほど遠く明らかに怯えている、

それは普段の無感情な女アサシンの姿からはほど遠くまるで震える子猫が如く・・

「・・・・・シグ・・どうしよう・・?」

酷く困惑している様子のヒサメなのだが、それがシグの心拍数を上げる。

男は惚れた女の意外な一面に心を打たれるものである、

しかし状況からして鼻の下を伸ばしている時ではなく・・

「どうすると言われても俺には状況が良く飲み込めない。朝何故逃げ出したのかもな」

「・・・・・・・・・・」

「・・ふぅ、とりあえず何を恐れているのかは知らないが俺がいる。大丈夫だから出てこい」

「・・・できない」

「できない?何故だ?」

「命令だから」

「命令・・っとなるとあの人か・・。

ではそのままでいいからそうしている理由を教えてくれ」

「・・・・・、あの御方に、見つからないため」

箱に入りながら説明するヒサメだがやはり様子がおかしく頻りに周囲を警戒している

「あの御方・・・、ふむ・・思い浮かぶはあの殺人狂を捕らえた老人ぐらいだがそれか?」

「・・・(コク)」

「知り合いか?」

「・・・(コク)」

「俺にはさほど警戒しなければならない人物には思えないのだがな」

「・・あの御方は・・怖い・・」

思い出したように震えるヒサメ、

普段と違った反応にシグの心内ではドキューンとクリティカルヒット

「そ、そうか。安心しろ・・ここにいる限り俺が追っ払ってやる」

「だめ・・シグが危険・・」

「?俺が負けるとでも?」

「・・・(コク)」

「ヒサメ、そんな男がお前に何の用があるのだ?」

「──言えない」

「俺でもか?」

「・・・ごめん・・」

しゅんと落ち込む様子のヒサメ、これはいよいよ一大事とばかりにシグは腕を組んだ

「・・もしや、命を狙われているとかか?」

ヒサメは元暗殺者、決して綺麗な身ではなく過去様々な暗殺をこなしてきた

それだけに恨みに持つ者をいても何ら不思議ではない

「・・・・・、それに近い」

「・・そうか・・」

重く返事をするシグなのだがその目つきが少し鋭くなる

彼の中で何かが目覚めた

そこに

 

コンコン

 

『失礼、此方はシグ=カーマイン殿のお宅か?』

 

静かにノックをして声をかけるは老人の声、

それにヒサメの体は再び落雷に遭ったかのように震え出す

「・・あの老人か。ヒサメ、ここで大人しくしていろ・・どうやら情報部で俺の家を聞いたらしいな」

ゆっくりと立ち上がるシグ、だがその手をヒサメが握り止める

「駄目・・シグ・・」

力強く握る手、しかし体は震えておりその目には怯えがはっきりと見える

「安心しろ、お前は俺が守る」

そんなヒサメの頭を軽く撫でシグはゆっくりと立ち上がった

そしてそのまま闘志をむき出しに玄関へと向かい扉をゆっくりと開ける

 

「お待たせした。確かにここは私の家だが・・」

 

目の前にいるは予想通り、午前中に会ったあの老人・・即ちアイゼン。

その時と違いサクラの姿は見えない

「おう、すまぬな。少し聞きたい事があるのじゃが・・よろしいか?」

「ヒサメの事・・か?」

「・・ほう、左様じゃ」

「ならば言う事はない、この場で叩き伏せる!」

そう言いシグは一気に拳を突き出す!

流石に面食らったアイゼンだがその拳が当たる前より俊敏に飛び退く

「これこれ、何か勘違いをしておらぬか?」

「問答無用、ヒサメは俺が守る!」

そう言い全力で追撃を掛け鋭く蹴りを放つ、だがそれも空振りに終わる

それでもアイゼンは反撃をしようとはせずどうしたものかと首を軽く叩いた

「ふむ・・、まぁ状況が飲み込めないが街中で殺伐とした事を長引かせるのもいかぬか。

仕方あるまい。望まぬがお相手しよう」

そう言い軽く構えシグと対峙するアイゼン、

剣術使いとは言えども徒手空拳に心得を持つは常識

戦いは武器に頼るものではなく自身の力で切り開くもの、

故にアイゼンは剣術も同等に体術も鍛えられており軽く拳を出し構えただけで圧倒的な威圧感を相手に与える

「・・相当の手練れを見受ける、が・・ここは退けん!」

「良い気迫じゃ。無益な手合わせなのが惜しまれるな」

勢い良く突っ込むシグ、

牽制とばかり拳を出すもその瞬間にその体は綺麗に宙を舞い地面に叩きつけられる

だがそれでも怯まないシグ、

起き上がりと同時に足払いを仕掛けるがそれも間合いを見切ったアイゼンには届かず・・

「シッ!」

それはシグもわかっており足払いで相手を避けさせ間髪入れずに跳ね起きそのまま肘鉄を放つ

「フッ!」

鋭い一撃、だがそれにアイゼンは呼吸を合わせ肘鉄を避けながらその背を軽く叩く。

瞬間まるで人形が倒れるかのようにガクンとシグの体が地に埋もれた

「くっ、力を流しているのか!」

「左様、着眼点は中々に優秀じゃの。

だが・・経験はまだまだ未熟、剛の拳だけでは戦を制する事はできんぞ?」

「だが・・、男には退けぬ時がある!!」

「ふむ、ほんに良い気迫じゃ。

血が騒いでしまうがこれ以上はお主が危険、次で決めさせてもらうぞ?」

「ならば次で倒す!うおおおお!!」

愛する女のために全力で拳を振るう!

今までにない鋭い突き・・、

だがそれが届くよりも先にアイゼンの拳がシグの鳩尾に深く突き刺さり

彼はうなり声を上げてそのまま気を失うのであった

 

「気迫の篭もった良い一撃、だが冷静さを失った技では届かぬ境地もある。

お主本来のスタイルで挑まなかっただけ冷静さを保っていたつもりではあったのであろうが・・な」

 

気を失う戦士に経緯を払いそのまま寝かしつける、

周囲には何事かと人集りができていたのだが

アイゼンはそんな事を気にする事無くシグの家へと足を踏み入れるのであった

 

「・・さて・・、ヒサメ、いるのじゃろ?隠れていないで姿を見せたらどうじゃ?」

 

室内を軽く見渡し軽く声をかける、するとあの木箱がビクっと震えた

その程度で自分の居場所を晒すのは暗殺者としては失格、それにアイゼンは苦笑した

「・・・・」

「そんなに怯えずとも良い。シグか・・あの男が勘違いをしておったぞ?

その様子ではそれも仕方あるまいか」

「・・・・」

「加勢しないところを見えると腰でも抜けたかえ?」

「・・・・」

黙り込むヒサメだが木箱か微かに揺れた、それにアイゼンは少し目を細めながらを

必要以上に近寄ろうとはせず会話を続ける

「・・・ふむ、まぁよいわ。

お主が騎士団とやらに協力して諜報活動に参加している事は聞いた。

表の社会に身を置く事ができた事はわしとしても祝福したいぐらいじゃ。

しかし、お主の事だ。自分一人で、それを成せた訳でもあるまい?」

「・・・・」

「ふぅ・・そういうところは相も変わらずじゃな。よいか?

わしは何もあの男を連れ戻そうとしているのではない、奴も奴の考えがある

・・今更わしがどうこう言うものでもない

しかし、伝えなければならぬ事もあるのじゃ」

「・・・・」

「今回観光旅行としてこの地に赴いたがお主と顔を合わしたのも何かの導き、

あ奴の居場所を教えてはくれぬかの?」

「・・・・」

「頼む、この通りじゃ」

木箱に向かい深く頭を下げる・・それとともに部屋を包んでいた空気が少し変化した

「・・・・・城の・・屋上に・・」

中から聞こえるヒサメの声、怯えが抜けていないようだがそれでもきちんと応えた

「・・ヒサメ・・」

「私も参ります・・」

「・・承知した、だがその前に気絶しているシグの介抱をするがよい。

さほど手荒な真似はしてはおらぬがな」

静かに笑いながらアイゼンはゆっくりとシグの家を立ち去る

それよりしばらくして、木箱よりヒサメは静かに出て気絶しているシグの介抱を行うのであった

 

────

 

時は流れ、日は傾き出す・・

そろそろ夕刻になろうかという時間だが城の屋外ではそんなに変化は起こるはずもない

その中、屋根にあぐらをかき静かに瞑想をしているハリー

着ている物こそ普通のシニアモノなのだが放つ気配は只者ではない事を感じさせる

彼は昼過ぎからずっと同じ姿勢で瞑想にくれていた、

普段はそんな習慣はないのにそれを続けるのはやはりアイゼンが王都に来ているためか・・

このままいつまでもそれを続けるかと思ったその時・・

 

「・・・・、やはり、かぎつけられたか」

 

目を閉じながら静かにそう言うハリー、

あぐらをかく彼の後ろにはいつの間にか音もなくアイゼンが静かに立っていた

「成り行きよ。わしがわざわざそのような真似をする訳がなかろう?

ハリー=マクドウェル・・否、リュウビよ」

「久しい名じゃ・・だが、捨てた名で呼ばれるのはいい気はせんぞ。アイゼン・・」

「お主が捨てようとも昔の繋がりを持つ者からすればお主はリュウビじゃよ。

第二の人生・・この異国の地で生きているのか」

「──左様、ヒサメから聞いたのか?」

「まぁな・・、事情はシグとヒサメから聞いた。だが、それを責めるつもりもない」

「・・ふぅ、そうか」

軽いため息、そしてゆっくりと振り向きかつての戦友と顔を合わせる・・

だが意外な事にアイゼンの後方、そこにはヒサメとシグが静かにこちらを見ていたのだ

「・・まぁ、同行してもらった。

ヒサメについては主と自身の身を隠すという任務の失敗報告と言ったところかの。

シグについては巻き込まれた分知る権利もあろうものだからな」

ハリー、否リュウビが疑問に思った事をアイゼンが軽く説明してやる・・

シグ達からも何か言い足そうだが二人の会話を邪魔してはいけないととりあえずは静観を続けているようだ

「・・・なるほどな。まぁ・・それもよかろう、しかし・・老けたなぁ、アイゼンよ」

「お互い様じゃ、たわけが・・。

それよりも会うのはこれが最後かもしれぬ、言うべき事を済ませるぞ?」

「あぁ、じゃがさほど変化もあるまい。あの国は平穏を手に入れたのじゃからな」

「やれやれ、少々呆けたか?・・まぁよいわ、まず・・ゼンキが逝った」

「っ!!!なんと!そ、それは真か!?」

軽く言うアイゼンに対しリュウビは先ほどとは違い驚愕した様子

彼にしてみればありえない事のようであった

「冗談で言う事か?」

「む・・う、そうか・・しかし・・あの男を破るとは・・まさか、お主・・」

「たわけ、そんなわけなかろう。

確かに奴はわしを好敵手として見ておったがの・・。病が原因じゃ」

「・・・そうか、剛に生きた漢も病には勝てなんだか・・」

「そうでもない。奴は病に倒れ辺境の村で世話になっておった・・そこへ盗賊が攻めてきての・・

奴は人生の最後にして初めて他人のために剣を振るい散っていったそうだ。

受け取れ、奴の遺髪が入ったお守りじゃ」

そう言い懐よりアイゼンは藍色のお守りを取り出しリュウビに投げ渡した

「・・かたじけない。大事にさせてもらおう」

風がやや強い屋上なのだがリュウビは事もなくそれを受け取り大事そうに手を合わせた

「当然じゃ。

そして、この遺髪を持ってきてくれた武人が大陸に戻る時に

イザナギがお前の事を見かけたらすぐに知らせて欲しいとその武人に頼んでおった・・」

「・・イザナギ様が・・」

「お主が姿を消して以来、文句一つ言わずにカムイをまとめ上げてきたあ奴が初めて漏らした言葉じゃ・・

何だかんだあっても待っているのじゃよ・・」

「・・・・・・」

何とも言えない顔つきで口を閉ざす・・それにアイゼンは彼を小馬鹿にしたように軽くため息をついてみせた

「・・やれやれ、埒があかんの。

お主の事情などわしは知らぬ・・だが文の一つぐらいは送ってやれ。

仮にも契りを結んだ仲じゃろうが」

「・・承知した、いずれ・・送ろう」

「そうじゃ、それでよい。

自責を念にかられるのもわかるがヒサメのような者もいる。余り自分を責めても解決はせんぞ」

「──よもや、お主から説教を受けるとはな。まぁ・・よいわ」

静かに笑うリュウビ、そしてゆっくりと手を伸ばしアイゼンと堅く握手をした

「わしもお主も、相応に歳を取っても馬鹿な訳じゃよ」

「相違ないわ・・ふふふ・・」

双方握った手に力を込める、それだけで空白の時間が埋まっていく

戦友というものはそんなものなのだ

 

「失礼、話に区切りがついたところで少し説明をしていただきたい。私としては事情が飲み込めないのでな」

 

その中でシグが二人に声をかける、彼にしてみれば何が何だかわかろうはずもない

「・・おおっ、そうであったな。すまぬすまぬ・・まぁわしはこの男の戦友じゃよ・・。

こやつの本当の名はリュウビ、かつて東国で名を馳せた忍じゃ。

そこらはヒサメの事情からしてわかるじゃろう?」

「それは知っている。リュウビという名は初めて聞いたがな」

「それもそのはず。奴はその名を捨てて今の生活を行っていたからの・・

まぁ、東国でその名を知らしめた者だと覚えておくとよい。もっとも、他言無用だろうがな」

「承知している、過去をほじくり返すのは趣味じゃない。

私が一番聞きたいのは何故ヒサメが怯えていたかだ」

「・・・・・」

目つきが鋭くなるシグに対し隣に立つヒサメは無表情のままピクリとも動かない

「ほう・・なるほどな、惚れた女が震えているのならば気に掛けぬ訳にもいかぬか?」

途端に深刻そうな顔が崩れるアイゼン、

それにシグは妙な肩すかしを食らったような気分になる

「・・否定はしない、教えてはくれないか?」

「ふっアイゼン・・わしが説明しよう・・まぁ単純な事だ。

ヒサメが昔・・まだやっと任務をこなせるようになった頃

ヒサメがいた小隊が敵部隊の大軍に囲まれた事があったのじゃ。

生還は絶望的・・そこに助けに入ったのがアイゼンだったのじゃよ」

懐かしい笑みを浮かべ説明をするリュウビなのだがシグはまだ納得していない様子・・

「・・?合点が行きにくいな。助けに入った男に何故恐怖を覚える?」

「少々暴れ過ぎたと言えばいいかな・・。

一見するとただの爺じゃがこやつに勝てる者なんぞ人の身ではまずいまい。

こ奴は押し寄せる敵部隊の全てを情け無用に切り捨てたのじゃ、

その姿はまさに剣の鬼と言ったところか・・

余りの凄惨さに感情を捨てたはずのヒサメが恐怖を覚えたのじゃよ・・

以後その恐怖が抜けないようになったのじゃ」

「・・そうだったのか・・、すまない、早合点をして襲いかかったようだ」

「何、気にしてはおらぬよ。・・お主ならばヒサメを任せても良さそうじゃの。

見たところまんざらでもなさそうじゃな?リュウビよ?」

そう言い嫌な笑みを浮かべるアイゼン、

昼間シグを叩き伏せた男と同じとは思えないぐらいその笑みは無邪気でありリュウビもため息を漏らす

「お主という男は・・そう言うところはち〜っとも変わらんの。

弟子の苦労が偲ばれるわ」

「何を言う、生きる術を教えてやったんじゃ。乳繰りあう事を笑わせくれても文句はあるまいて」

「・・まったくに、ツクヨが激怒したのを思い出すわい。

・・まぁ、元よりそのつもりでヒサメをシグの元へと預けておるのじゃ。

わしはこれ以上は口を挟むつもりもないんでな」

「なるほどな。ヒサメや・・、シグの事をどう思う?」

「・・・・・・、大切だと・・思います・・」

「ヒサメ・・」

「ふふっ、不器用ながらも素直じゃな。

流石・・わしに怯えながらもシグに加勢しようとしていただけの事はある。

昼のあの時、木箱の中で得物を握り迷っていたのであろう?」

「っ・・はい・・」

見透かされた事に一瞬驚きを浮かべるヒサメだが素直に応えた

「ヒサメ・・そうだったのか?」

「もっとも、我が身を晒し主に危機が及ぶのを防ぐか、

愛する男の危機を救うかで迷い動けなんだようじゃがな。

だが、大した成長じゃ」

「・・・・」

「まっ、わしも顔を知っている女じゃ。シグ・・こやつを頼むぞ?

何せ役目のために自我を捨てた女故な、お主が女の悦びというモノを教えてやるがよい」

「なっ!?」

「ははは・・、冷静そうで意外に動じるようじゃな・・人狼よ。

さて、ではわしはそろそろ暇しよう。

リュウビ・・お主がどう生きようがもはやわしがどうこう言う資格もない・・達者でな」

そう言いアイゼンは身をひり返し絶壁を思わせる城壁に身を乗り出す

「・・アイゼン」

「なんじゃ?」

「イザナギ様には文を送ろう・・だが、それ以外に・・いずれ再び杯を交わそうぞ」

そう言いながら静かに友を見送るリュウビ、彼の中で何かが吹っ切れたかのようだ

「・・ふっ、ならばツクヨの奴も誘うとするか。では・・失礼するぞ」

それに対し静かに笑い、老剣士の体はふわりと宙に浮いてそのまま落下していった

 

「・・あの老人、俺の正体に気付いていた・・?」

 

呆然とアイゼンの姿を確認するシグ、

かなりの高さを飛び降りたはずなのだが異国の出で立ちをした老人は

何事もなかったかのように城門から立ち去っていく

「そういう男じゃ。バケモノじみた勘の良さを持っていてな・・その分に恐ろしい。

古今無双の大剣士ともてはやされただけの事はある」

「・・ハリー」

「しょうもない事に巻き込んですまなんだな。もう大丈夫じゃ・・少し、一人にさせてくれんかの?」

「承知した。ヒサメ・・行こう」

「うん・・御館様・・」

「案ずるな、懐かしい顔を見たから昔の事を思い出したくなっただけじゃよ。・・・さ、もうお行き」

「・・はい」

ゆっくりとうなずきヒサメはシグとともに瞬時に姿を消す、

シグにしても何か声をかけようか迷っていたようだが

所詮は自分が入れる話ではないと無言で一礼してその場を後にしたのだ

 

「・・ふっ、過去は捨てると決めたはずがどうにもこみ上げてきよる・・。

これこそ正に不屈なものか・・」

 

やや自嘲的な笑いを浮かべ、かつて「不屈」と呼ばれた老忍は沈みゆく夕日をただただ見つめ続けるのであった

 

 

そしてその夜、シグ邸では騒動が終わりつつも彼の用意した夕食を終え一息ついた

ヒサメが隠れていた木箱は帰宅と同時に撤去、元々どこかから拾ってきたものらしい

「シグ」

「ん・・?どうした?」

食後に淹れた薄めの珈琲を飲みながらヒサメがぽつりと呟く

「すまない・・抜刀様と戦っているのに・・加勢に入られなかった・・」

「・・・ああっ、その事か。

ヒサメの言う通りだったな、・・あの御仁は俺なんかが勝てる相手ではなかった。

お前が加勢してもおそらくは結果は同じだろう。流石は君に恐怖を蘇らせただけの人物だ」

「・・・すまない」

「だから気にするな。君がそう思ってくれるだけで満足だ」

「・・・シグ・・」

少し嬉しそうな瞳でシグを見つめる、

飾り気のない色気・・それにシグの心拍数は一段階上がる

「ま、まぁなんだ。今度俺が危険な目に遭う事があるなら・・その時は守ってくれ」

「・・任せろ」

「ヒサメ」

「・・うん?」

「俺は・・君に何か与えているだろうか?あの御仁が君に恐怖という名の感情を蘇らせたように・・」

「・・うん、沢山・・」

「そうか、それはよかった」

そう言い珈琲を飲み干す。

心に温かいモノが満ちてきて結局その夜、シグはほとばしる若さをヒサメにぶつけ、

ヒサメも自分なりに彼を受け入れ蕩けるような快楽に身をゆだねたとさ

 

 

・・因みに・・

 

「先生〜、結局どこに行っていたんですかぁ?」

 

王都の宿の一室、観光と言いながらも途中でサクラは宿に戻されたのでやや不機嫌気味に言う

「いや、何・・すまなんだ。珍しい男がおってな、ちと顔を合わせていたのじゃよ」

「先生のお知り合いでしたか・・」

「うむ、異国の地で出会うとは思わなかったがの・・いやはや、世界は広いようで狭いモノよ」

「でもクローディアさんだってこの国にいるのでしょう?それだったら不思議ではありませんよ?」

「・・ま、それもそうさな。さても見よ、サクラよ。

夜でも灯りが消えぬ・・この都市には寝静まる事を知らぬようじゃ」

「本当ですねぇ。楽しそうですけど・・」

「むっ、なんじゃ?夜店でも見て回るか?」

「いえ、もう夜なので休みます」

興味があるようだがそれでもそこに出向くつもりはない様子のサクラ

東国の人間は夜が早いものなのだ

「ははは・・結局わしら東国の人間にはここの暮らしというものは馴染まぬものじゃな」

「そうですね、もっと自然味があるところのほうが落ち着くものですね」

「そうさな。では・・明日辺りにここを発つとするか・・、

予想外の収入があった事じゃもう少し田舎の方でブラブラするのも良かろう」

「はい!とりあえずはクローディアさんの処ですか?」

「それが一番じゃな。あの二人の事じゃ・・わしらが馴染むような地で住んでいようさ。

なんせクラークは良く騒動に巻き込まれクローディアは騒音を嫌うからな」

「ここは何だか騒がしいですしね」

「そうじゃのぉ〜、じゃが・・良いところだ。久々に暖かい気分にさせてくれた」

「・・・???」

「なんでもない、さて・・ではそろそろ寝るとするか」

「あい♪・・あ、先生。散々一人にさせたから今夜はお願いしますね?」

途端に艶っぽい声で老人を誘惑するサクラ・・幼さすら感じさせる女性ながらもその仕草は

男を魅了する妖しさを早くも身につけている

「おうおう、年寄りを苛めるな。まぁ・・そう言われたらお相手しなければいけぬなぁ」

そう言い火を消して寝床を共にする変わり者の夫婦、

親と孫ほどの年齢差ながらもその行為に対する熱は普通の夫婦がするのと全く同じであったそうな・・


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