「薔薇と真龍の出会い」


聖礼都市ウィンヒル、美しい青海に面した小高い丘に豪邸が建ち並ぶ
観光地と見紛うばかりの光景に、明らかに気色の違う男の姿が一つ。
使い古されてあっても良く手入れがされえた革の戦闘用ジャケット姿に
布が巻かれた破壊剣と旅用ズタ袋を携え一邸一邸屋敷全体をじっくりと
見て もとい、鑑賞してはヘェ とか、ホゥ など呟く様は不審者以外
何者でもないのだが男自体を観察すればその手の業界関係者故に
建物鑑賞をしてると見えなくもない。 以前に、貴族の街故に人口も
少なく静寂が支配し通報する者もいないのだが・・・
ともあれ男が鑑賞しながら街をさまようこと暫し、たどり着いた先は
断崖絶壁な丘の上。引き返すわけでもなく、休憩とばかりに荷物を
置くと遥か遠くの波面を眺め・・・それに飽きたか今度は四這いで
断崖絶壁の淵間際から下を覗き込み、岩砕く白波に恐る恐る後退。
そして立ち上がると一案に遥か遠くに向けて
「うっっみ〜〜〜〜♪」
「・・・、あんた、一体何をやってるんだい?」
突如かけられた声に、男が飛びのき無様な格好のままで硬直し見れば
そこには簡素ながら上質の衣を纏った金髪の貴婦人。
「いや、海に来た感動を一言で表現を。・・・いつからみてた?」
「最初っから」
「・・・、認めたくないもんだな、若さ故のアヤマチというものは」
「若さというより、アンタ自身の性分故のアヤマチにみえるんだけどねぇ」
「こりゃ中々手厳しいツッコミで。
してマダム、私のような下賎な者に何用でしょう?」
おどける男の姿は元々礼儀作法を心得ているのか中々様になっている。
それこそ、場所が場所ならレディキラーと見紛うばかりに。
しかし、貴婦人はそれに全く釣られることはなく余裕の笑みで
「家の者に変質者が出たと聞いたから見物にきたのさ。
さて、今度はこちらの質問に答えてもらおうかい。アンタ、何者?」
「う〜〜ん、いうなら・・・愛の逃亡者?(ニヤリ」
「・・・・・・、それで本当の処は?」
「渾身のギャグをスルーですか・・・。仕事がイヤになったんで
逃亡中、で、捕まるまでの間は自主的休暇。 因みに追手は俺のコレ」
「アンタ、さりげなく女泣かせだね」
「お褒めに預かり、光栄。」
「いや、誉めてないから」
「・・・ではマダム、変質者がうろついているとは物騒なのでお宅まで
お送りしましょう・・・なんちゃって。その腕前なら警護の者は必要ないか」
「ほほぉ、あんたもソコソコできるようだね」
「そりゃ、まぁ。これでも一応周囲へ気を張っていたんでね。
その俺に気付かせることなく近づいたマダムは・・・ってわけ」
「へぇ、気を張ってたのかい。あれで・・・」
「うわぁ、さり気無くキツっ!! ・・・処で、俺と以前会った事はないか?」
「なんだい、今度はナンパかい?」
「全然違っ、マジな話!!! 俺、何処かでマダムに会った気がするんだけど
・・・覚えがなくってな」
「私もアンタに以前会った覚えはないねぇ。
アンタほど面白い男なら忘れるはずがないから間違い無いよ」
「それは・・・誉められているのか馬鹿にされているのか。 さてっ」
「おや、もう行くのかい?」
置いてあった荷物を手取る男に、貴婦人は僅かに何処か物悲しい気配。
「超優秀な追跡者が何処まで迫ってるかわからないから」
「何ならウチでかくまってやろうかい?」
「いや、遠慮しましょ。旦那さんと余計な揉め事起こしたくないんでね」
「私しゃトウの昔に未亡人だよ」
「そりゃ・・・でも、それなら尚のこと。
これでも俺は浮気しない紳士で通ってるんで」
「そりゃ、嘘だね。紳士って処が特に」
「くわぁ、きついなぁ〜〜。 じゃ、また縁があったら」
立ち去る男を見送る貴婦人は、ふと思い出し。
「アンタ、名前は? 私はソシエ、ソシエ=ローズ。
この辺りじゃ『鋼の薔薇』の名の海賊狩で通ってるよ!!」
一瞬、男の目が点になり即納得。
「俺はライ。都市シウォングの何でも屋の1長だ」
そして改め、男 ライは何処を目指すのか街並へと消えていった。
貴婦人『鋼の薔薇』に見送られながら・・・


その街並みの中、一人の兎人なメイドの歩く姿があった。
随分と前に出て行ったきり戻ってこない主を探しに出たのだが、
直ぐ後をつける気配に屋敷へ帰れず駆け早に逃げ・・・・・
気付けば全く人気のない路地裏に追込まれていた。
コレばっかりは相手の方が上手だったとしかいいようがないだろう。
追込まれた袋小路から逃げ出そうとしても、既に目の前には複数の人影。
「へっへっへ、こいつぁ上物じゃねえか。棚ぼただなぁ、おい」
「この服・・・奴のメイドか。 嬲り殺し決って〜〜い♪」
「んでもって、送り返して奴の悔しがる顔を鑑賞としゃれこむか?」
「てか、奴自身を狙うより部下狙った方が全然成功するんじゃねえの?」
和気藹々と物騒な事を話しながら距離を詰めていくナラズモノの男達に
兎のメイドは起死回生を狙って脇を駆け抜けようとするが、
それも男達の計算内に
 「くはっ!!?」
一蹴で壁へ叩きつけられ息が出来ない。
薄れ逝く意識の中で彼女が認識できたのは下種な笑みを浮かべる男達だった。
それでも、その身に起こるであろう事を考えれば幸運なのかもしれない。
「あ〜〜あ、ノしちまってやんの。泣き叫ぶのがいいのに・・・」
「眠姦も中々にオツなもんだぞ? 起きたときに悟って絶望染まるのが」
「マニアックだねぇ・・・」
極上の獲物を手に入れ、男達は意識のない兎のメイドを担ぎいこうとする
が、路地出口に立塞がる影
「・・・・・・」
「何だ手前っ!!!」
「まぁ・・・今は旅人、かな?」
「今俺たちゃゴキゲンなんだヨ。 黙って失せな、そしたら見逃してやるゼ」
「そりゃ如何も。っと言うてもいいんだけど見た以上コッチが見逃せないんでね」
「「「「「「っ!!?」」」」」」
一瞬、駆け抜ける影によって揮われた布包みの破壊剣は、一撃必殺で男達を地に伏す。
否、正しくは殺していない。各部骨を砕いたのみで命までは奪っていないから。
正し、以後の一生が半身不随な事を考えればコロしたことには違いないのが・・・
「命までは奪わないよ。ま〜〜、頑張んな。コレは俺がもらっていくから」
苦痛に抗議の声すら上げることすらままならす漏らす男達の悲鳴を背に
兎のメイドの救主である影 ライは彼女の身体を肩担ぎに持って行くのだった。

「・・・・・・さて、とんだ拾物しちまったな」
助けたまではいいものの、女性一人担いであるいていたら怪しいことこの上ない。
早く目が覚めてくれるならいいのだが、当たり処が悪かったのが無理に起こすのは×。
ならば先程知り合ったばかりの「ソシエ=ローズ」を頼れればいいのだが
その家を知らぬ以上、何処なりとの宅で聞かなければならないわけで
となると兎の娘さんを担いだままでは騒ぎになってしまう。
と、なると、何処かに置くにしても・・・
ライが結局路地裏から出るに出られず考えが堂々巡りしていると
「っ!!?」
瞬間、殺気に娘をダメージがないよう転がし捨て、顔を庇った破壊剣の腹の向う
には撃着いた拳。ライが頭を撃ち抜かれていたとしても、ダルマ落としの容量で
ライのみが吹っ飛んでいただろう勢いで。
そして、その拳の主は怒りに身を震わせる「ソシエ=ローズ」
 「私は情けないよ・・・・・・・
テメエをちょっとでも真っ当な漢だと思った私自身がっ!!!」
「っっ!!!??」
瞬後、繰り出される鋭蹴剛拳の連撃猛襲にライは防戦一方。
それは破壊剣を盾にしても衝撃は貫通し、ダメージを刻み込んでいく。
完全に殺る気だ。何を言っても命乞いの言訳としか取らないだろう。
ならば刃を向けて迫る死の運命に逆らうべき・・・だが、それは認めようなもの。
兎の娘を襲った と。  ならば耐え凌ぐしかない。彼女が気付くまで。

響く空気を裂く音と打撃音。
目を覚ました兎のメイドの視界に入ったのは、拳神の如き猛撃を繰出すソシエの背と
それを全て受け防ぐ破壊剣の腹。その向うには信念を貫く真摯な眼の男。
兎のメイドは一気に目が覚め、巡る思考の間にもソシエ激攻は男 ライを
壁へ追い詰め、その一撃に天へ撃上げられる破壊剣。
ソシエは正しく文字通り一撃必殺の拳で完全粉砕に狙うのは、そのライの顔。
 「違いますっ!! ソシエ様、その方は」
瞬間、ぴたっと硬直する空間。ライの額にソシエの拳が接した状態で。
そして、ソシエ様が如何イウコト?と兎のメイドに顔を向ける。
 「その方は違うんです。私を襲った方々と・・・」
 「如何いう事だい?」
とソシエが今度視線を向けた先には、鬼突きで額をグリグリとしてやるライ。
「その兎の嬢ちゃんが連れ去られそうになってる処を俺が見つけて保護した
さて如何しようかと堂々巡りしてる処を行き成り襲われ、結果はごらんの通り」
「なら、最初にそう言えばいいだろうに」
「言わせたか?」
「・・・、認めたくないもんだねぇ、若さ故のアヤマチというものは」
「・・・(若さ云々といえる年じゃねえだろっ!!」
「ん〜〜、何かいったかい?」
「これから言う処」
「なら選びな。それを口に出してこの場で果てるか、一生心に秘めるか」
「・・・、つーことは、その自覚があるわけだな」
「うぐっ・・・そ、それはともかく、全く抵抗しないなんて
ライは私に恩人殺しをさせる気だったのかい」
「あの状態で俺も手を出してたら、それこそ本当の殺合いになるって
なら、ソシエさんが気付くまで防戦するしかないだろ?」
「それで殺されかかっちゃザマないね。ギリギリ間に合ったから良かったものの」
「ああ、それなら大丈夫。 頭突きで受止めるつもりだったから。
これでも頭突きで怪物を倒した定評ある石頭なんでね。早々砕けはしない」
間違った事は言っていない。倒した怪物に更に色々着けなければならないが。
減らず口の若造めと苦笑するソシエに、御荷物が降りたとノビノビなライ
御二人御知り合いなんですかと疑問符顔の兎のメイド嬢。
「俺行くから、ソシエさん、この子の面倒ヨロシク」
「ああ、『ウサミミ』はウチの子だから、それは問題はないんだけどね」
がしっ、とライの腕をシッカリ掴むのはソシエの手
「・・・何デスカ、この手ハ」
「恩人に迷惑かけた上に、このまま帰したんじゃ私の名折れだよ」
「いや、寧ろ折れてください。キッパリ、サッパリ、スッキリ」
イヤ〜ンな笑みのソシエとウギャァ喰ワレルと悶えるライを見比べウサミミ嬢
「ソシエ様、この方を御存知なのですか?」
「ああ、この男が文字通り屋敷を鑑賞して歩いていた変質者のライさ」
「ああ、あの(ぽむ」
「ちょっとマテっ!! 単に屋敷を見物してただけで変質者とは聞捨てならないぞっ!!
てか、そんな変質者を素で泊めようと思うなっ!!! 自分で言って悲しいけど・・・」
「それは、大丈夫。変質者といえど私の目がねに適った漢だからね」
「かしこまりました、お客様一名ですね」
「兎の嬢ちゃんも主の狂行窘めろやっ!!」
今までの色男(?)ぶりは何処へやら足掻くライを、悪さをした小坊主否、寧ろ
狩った獲物を引きずっていく虎のようなソシエの後をクスクスと笑い着いて行く
ウサミミ嬢であったが、突如立ち止まり真剣な面持ちの二人に立ち止まざるえない。
「アレは、ライの超優秀な追跡者なのかね?」
「冗談。ウチのは俺にしか殺気をむけない。 まぁ、商売柄俺の客かもしれないが」
「商売云々になると私の御礼の可能性の方が高そうだけどね」
と、今までのオチャラケは何処へやら物を吹き飛ばしそうな闘気を発する二人に
観念したのか物影から姿を現す黒装束の者達。 陽下にも関わらずそれは暗殺者。
不幸というか幸いというか、裏通りであるため他に人の気配は全くない。
「・・・、一つ聞いていいか? ダーゲットはドチラ?」
しゃべらず暗殺者達が一斉に指差した先には・・・ソシエ。
無論、その後ろには誰もいないし、ソシエが指先から避けても追う。
念のため、ソシエがライの後ろに行って刺されたライが俺?と尋ねても
顔の前で手を振ってNOの意思表示。中々ノリのいい方々。
「・・・なら、俺と兎の嬢ちゃんは行ってもいいよな?」
その返事は、流石に御遊びは終わりと抜き放たれる刃。
「目撃者も消せとはナカナカに優秀な事で。・・・因みにソシエさん、
片刃の破壊剣と格闘戦用ガントレットがあるけとドチラが御得意?」
「私は、得物は選ばないよ。」
返事に暗殺者を警戒しつつライはズタ袋から龍の腕の如き格闘戦用ガントレットを
ソシエへ投げ渡し
「暗殺者の得物にゃ、皮膚接触でも致死の毒が塗られているっていうからな」
「・・・ありがたく借りとくよ。 さて、大掃除としゃれこもうかっ!!!」

暗殺者の闘い方というのは、極まるとヤラしい事この上ない。
何故なら、まともに打ち合う必要などこれっぽちもなく最終的には
標的さえ殺せばいいのだから。 自身のポリシーはさて置き。
だから一騎当千の二人でも苦戦は必至。 否、この二人だからこそ
未だ健在に生きているというべきだろう。
個対複で、攻められれば撃合わず即引き隙を攻めても深追いはしない。
そして、非戦闘員のミミウサ嬢は未だ前に立つ二人の後方で壁を背に
小動物みたく縮こまっていた。助けを呼びにいってもよさそうなものだが
この選択こそ正解。彼女が助けを呼びに動けば、即・・・
三人の命運も、蓄積する疲労に最早時間の問題。
「全く、ジリ貧だね。ウチの子達が気付いてくれるといいんだけど・・・」
「そーゆー希望的考えは止して自分達で如何にかするしかないだろう。
・・・・・・、やりたくはないが、使うか」
 「何だい、切札があるなら出し惜しみせずに使いなよ」
「出し惜しみしてこそ切札・・・以前に、人間相手に使うような代物じゃなくってな。
言うなら、・・・・・・台所蠅を始末するのに隕石召喚魔法を使うようなものだが
命が掛ってる時まで我儘は言わないさ。 ソシエさん、兎の嬢ちゃんを」
と、ライの言葉を打切って暗殺者を弾飛ばすのは巨大手裏剣。
 「今度は何だいっ!!?」
「・・・超優秀な追跡者が愛の逃亡者に追いついたって事」
 「それはつまり、今回の自主的休暇の旅もこれで終了かい?」
「・・・(orz」
それでも、戦場に飛び込んできた影に合わせてライも撃出し、
ソシエもまた遅れまいと駆除に討って出るのだった。
超優秀な追跡者は二人。
一人は黒髪のポニーテールでレオタードの上に戦闘用ジャケットと巻ミニスカート姿で
両手に短刀使いと思いきや、戦闘用ジャケットの中からクナイを出し撃つ忍タイプ。
もう一人は、黒髪のショートヘアで、革装甲ジャケット,パンツ姿の傭兵スタイルに
得物は両手に三鉤爪の手甲。その猫耳や尻尾は本物で、黒豹のような猫娘。
4人になった処で暗殺者の方がまだ倍以上人数はいるのだが、十分大技を使う隙が出来る。
刃の届かぬ処に逃げられても、ライは揮った破壊剣の真空刃で、ソシエは拳の真空刃で
撃墜するし、黒猫娘はその敏捷性で逃げること許さず追撃。忍娘は端よりクナイを撃つ。
だから正に瞬く間に暗殺者は地に伏す事に。
 「いやはや、たった二人増えただけでアッサリ片付いてしまうとはねぇ。
 ・・・・・・処で、ソレはやったのかい?」
とソシエが借物を返しつつ指差すのは地に転がる躯。
「生きてるよ。静かに生活するには大丈夫な程度には。
尋問してもどうせ喋らないだろうし、捨てて置こう」
ふむ、とライに同意を示すソシエ。一応生きているものが多い処をみると
ライの追跡者二人もまた不殺で暗殺者達を倒したのだろう。
ソシエが再び暗殺者達から視線を戻すと、ライは二人の娘に既に確保済み。
「それで、ライは捕まった以上これから如何するんだい?」
「ま〜〜、大人しく帰るしかないでしょ。今日はもう直日が暮れるから何処かに泊まって」
 「なら、尚のことうちに泊まるといい。面倒かけたカリも返せるしね」
「あ〜〜〜、いや、それは」
 「ライ、こちらの方は・・・」
とライの言葉を遮るのは、ライの片腕を確保 もとい腕をシッカリからませている忍嬢。
「・・・ちょっと知り合ったが縁で俺がゴタゴタに巻き込まれる事になった
『鋼の薔薇』こと『ソシエ=ローズ』。そして、そこのメイドさんの『ウサミミ』嬢。
んで、これが俺の超優秀な追跡者その1こと『レイハ』、その2の・・・シエル?」
と、見れば黒猫嬢シエルはライの隣におらず、その背に隠れておどおどと周囲を警戒中。
 「如何したのですか?」
 「近くにアレの気配を感じる。この距離なら見える範囲にいるはずなのに・・・」
「「「「???」」」」
周囲を見回して見た処で言うような脅威は無く、地には伏し微かに呻く暗殺者達程度。
 「何か良く分からないけど、場所を変えたほうが良さそうだね」
 「申し訳ありません、暫しお世話になります」
もはや主差し置き勝手に話を進めるレイハ嬢。 彼女の勤めは主の手を煩わせない事
だから、この程度の事は勝手に判断して決めてしまっても至って問題ないのだが。
招かれたのは、丘で最も大きな屋敷。巨大な門の先に宮殿並の規模を誇っていた。
そこへ通されるままに余り驚く事無く進む面々。
 「・・・余り驚かないね」
「まぁ、どんな家にすむかは個人の勝手たしな。」
 「この人は性分的に無駄なく質素な方がお好きですが・・・」
ライが住んでいる処は敷地は一山並にあっても屋敷自体は質実剛健に中規模なのだ。
その正体から考えれば、役としてのレイハは不満もあろう。個人的には好感なのだが。
兎も角、入った玄関のホールには趣味イイ調度品に全て獣娘なメイド達が整列する中
居間に通され、主の指示なくも接客にテキパキと茶を入れ茶菓子を差し出すメイド達。
因みレイハ嬢は『ソシエ=ローズ』の屋敷で厄介になることが決まった時点で
いつの間にか軽装女忍姿から旅の秘書さんな格好に早着替えしていた。
シエルはライに寄り添ったまま未だにオドオドと周囲をうかがい見えぬ影に怯える。
「ーで、如何よ?」
 「ライには分からないのか、あの気配が。いる・・・アレがいる
・・・直ぐ側にいるはずなのに、姿が見えないなんて(ガタガタブルブル」
「あ〜〜、よしよし(ナデナデ」
 「それで、その娘が怯える程のアレってのは何者だい?」
「アレ・・・アレと言ったら、もはやアレしかないんだろうな。
我等が永遠の害敵、金獅子の字の英雄だがその実態は『金色強姦魔(パッキンケダモノ)』
その名は、『セシル=ローズ』っ!!!  ・・・・・・、ローズ?」
 「・・・・・・、そりゃ、私の娘だよ」
「「「色々な意味で、納・得っ!! (ポムッ」」」
言わずもかな、趣味とか、そのバカ力とか、金髪含めた容姿とか・・・
 「納得されでもしょうがないだけどね(苦笑。
・・・処で、あの娘とは如何いう関係だい?(睨」
「ウチの獣娘等+αがアレに襲わ手篭めにされてな、だから俺の駆逐すべき害敵。
アレのチームメイトとは仲いいんだけどな、アレばっかりは煮ても焼いても・・・」
 「我が娘ながら人様に迷惑かけるだなんて何やってるのかねぇ(トホホホホ」
「まぁ、如何こう言っても仕方がないし・・・いずれは、反省するまで泣かすっ!!!」
 「ああ、もう好きにやっとくれ・・・(orz」
娘の仕出かした不祥事に、もはや頭を抱えるしかないソシエ=ローズさんであった。
一流で豪華な夕食でもてなされ・・・食後の一時、突然の客人に興味があるのか
面々にメイド達が集う。その殆どが獣娘ばっかりなだけに希望都市同様モテモテなのが
黒豹の如き黒猫娘のシエル。
「あ・・あの、あの・・シエル様?」
と先陣を切るのはウサミミ。昼間世話になっただけに他のメイドよりも話易い
「ん・・?」
「お姉様と言わせて下さい!!」
何故? いいのか?と困った表情で見るのは黒猫娘の主たるライ。
尋ねられても、ダメという理由もなく苦笑に肩を竦めて御随意にとしか答えようがない。
「・・・別に構わない。好きに呼べばいい」
「ああ!!お姉様〜!!!」
ヒシっと抱きつくウサミミ嬢に、シエルは一瞬びっくりしながらも
猫が子猫をあやすみたく頭ナデナデするのだった。
それを見たメイド嬢達が殺到し、凄いことになっちゃったりしているが・・・
「・・・なぁ、あの子・・・達って百合系なのか?」
「そういうのに慣れているだけだよ。シエルがもっと汚い言葉で罵ったら喜ぶさ」
「そっち系ナノカヨ!!? シエルはそんな風に育ててないし、寡黙猫だからなぁ。
あの娘達には残念だが・・・んや、寧ろオモチャにされそうな気がする・・・」
と、混乱傍目に談笑するライとソシエ。
混乱は最早人山状態に当の渦中たるシエルは其処から抜け出すと一目散にライの元へ。
然程衣服が乱れていないのは、ウサミミ嬢に抱き着かれ他のメイド達に襲い掛かられた
時点でウサミミ嬢を囮に抜け出そうとしていたからだろう。
だから今、もみくちゃにされているのは・・・
「・・・フゥ、ひどい目に合うところだった」
「まぁ・・・、ご苦労さん」
「ん・・・」
愛玩猫に甘えるシエルに、ソシエは何を思ったか
「・・・イイ娘だねぇ。ウチにこないかい?」
「やらん。」 「いやだ。」
「即答かい・・・」
ソシエの処のメイドの全てが何もウサミミ嬢ばかりとは限らない。
離れて様子をうかがっていた犬娘メイドのポチ嬢、意を決してライにベッタリなシエルに
「シエル様も胸が大きいですね・・」
「ん。 良く動きの邪魔になるし、重心にもなるから助かる。 困ったモノだ」
「えっ、肩凝られたりしないんですか!!?」
「そんなことはない。鍛えているから。 それでも、胸なんかほどほどが一番だ」
「ええっ、服のサイズなんかも胸に合わせないといけないのでいけませんよ。
羨ましがられますけど・・・・・」
「・・・(ジー――)」
「・・あ・・あの、レイハ様は何でさっきから無言でこっちを睨んでいるのですか?」
「ん、いつもの事。 気にするな。私は気にしていないし、気にしないようにしてる」
ベッタリだったシエルが同類を見つけたせいか次第に離れて談笑に。
「・・・(そりゃ、無い者の苦悩なんざ有る者には分らんさ。
有る者の苦労が無い者にわからないように・・・)」
「・・・(女の中に男が一人〜〜♪ んな話されてもサッパリわからん。
ダメだコリャ!!)」

乳を睨む一人ぽつんと残ったレイハを誘ったのは、ソシエの執事である
ウィンク嬢であった。似た職柄の者同士周囲に人がいては話せる事も話せないと
赴いた先はウィンク嬢の私室
「レイハ様・・・お茶のおかわりはいかがですか?」
「・・・いえ、もう結構です。」
「そうですか? では、何か御用があれば何なりと・・・」
「裏方が常ですから、こうして持成されると照れますね。」
「ならば尚のこと今宵は存分に御寛ぎください。
何ならこちらをどうぞ。・・我が館オリジナルの媚薬です」
「そんなに気を使って頂かなくても・・・しかし、これはイイものですね(キラリーン」
「おわかりになりますか(キラリーン」
「私は職柄、薬に耐性があるので自身に使うことはありませんが
身内に薬のエキスパートがいるので色々と・・・」
「では、このような道具など如何でしょう。」
「こ、これは、『Night Lover ver7.8』(爆」
「こ、これを御存知だとは・・・レイハ様、おやりにますね(キラリーン」
「・・・はい。コレも使って攻められることもありますので(照」
・・・エロ執事&エロ秘書さん? 何であれ友情を育めたっぽいのは良い事である、多分。

一人一室客室を与えられるという優遇の深夜。
「うふふ・・やっぱり、珍味な漢を味見もせずにこのまま返すのは勿体無い・・・」
寝巻きのガウン姿のソシエが抜き足差し足忍び足で迫るのはライがいる寝室。
相手は昼間の戦闘からして一騎当千のツワモノであり、しかも追手が美女×2という
ツワモノである。これを喰うわずして何を喰うっ!! 喰わねば女が廃るっ!!!
と、それでも気配を本職以上に消して部屋に滑り込むと、膨らみがあるベットへ・・・
が、しかし
 「???」
闇の中、近距離でみて初めてその膨らみが男一人分にしては若干大きい事が分かる。
もしや、と思い着布団を捲ると其処には
「・・・z・・・z・・・z・・・z」
 「・・・z・・・z・・・z・・・z」
 「・・・・・・(乙」
眩しいばかりに戦士身体のライが中央に、それを腕枕にして左右には
簡素な下着のみのシエル&レイハ。
二人掛りで攻められたのか、忍娘レイハは疲労困憊の色を見せて完全爆睡中。
そして、猫娘シエルは浅眠だったのか反応に片目開けるも直ぐに閉じて
サムイ、布団メクルナ と言わんばかりに猫耳をピっピっと振る。
こうなれば、失礼シマシタと退散する以外何が出来ようか。
ソシエ=ローズ、久しぶりに敗北の味を知る熟女の夜であった。
因みに、彼女のメイド達が彼女の八つ当たりで這々体になり翌朝は半数しか
姿を見せなかったのは別の話である。
さらに因みに、ライ達を見送りながら
 「今度バカ娘連れて謝罪参りしないといけないねぇ。場所は・・・聞けばわかるか」
と何やら一人納得していたのも、別の話である。

次回
『元祖金髪強姦悪魔、希望都市襲来っ!!?』
近日公開未予定。
「てか、来るなっ!!!」By 愛の逃亡者


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