『鋼の薔薇と漆黒の戦聖女』




海平線の先まで澄み切った蒼天にも関わらず、風がざわめく。海がざわめく。

白亜の船、その舳先に立つ白と金の貴婦人ソシエは敏感にソレを感じ取った。

 「ふむ、一体何が起きているのかねぇ」

彼女のその独言はすぐさま少女水兵の異常発見の報告によって応えられた。

 

空は海鳥が集い舞い、海は海豚が海面に頭を上げて歌う。

その中心にいるのは・・・海面に漂う黒髪に黒衣の女性。

海豚に支えられ沈む事が無い彼女は、丸で神に捧げられた巫女みたく・・・

 「・・・って、遭難者救助!!

見惚けるも暫し、ソシエの怒号に女水兵達はあわただしく動出す。

黒の彼女を拾い息がある事を確認した時、海獣達の姿はなく風も海も穏やかに還っていた。

否、風ばかりは船へ速く陸へ帰れと言わんばかりに圧し流そうとしている。

 「この娘・・・自然に愛されている? ふっ、真逆・・・」

一度、二度目は偶然、三度目からは必然。 既に奇跡はなされている。

 

その日、『鋼の薔薇』は『漆黒の戦聖女』と出会った。

 

清潔に小奇麗な部屋、其処へ燦々と降注ぐ陽がベットに寝た彼女の目覚めを促す。

規則正しかった寝息が乱れ

 「ぅ・・・ぁぅ・・・」

もぞもぞと少しでも光を遮ろうと悶える腕は空を彷徨い、瞼の上に乗った処で落着いた。

それに安堵とばかりに彼女は溜息一つ再び寝入ろうとするが・・・

 「ぷっ・・・くくくくく」

 「・・・???」

湧いて出た気配の笑い声が触り落ち着けず、もう片手がアッチ行ケと言わんばかりに

空を彷徨うが、何も無い手ごたえに何で彷徨っているかを忘れて力がぬけ・・・

ぽにょん♪

 「くっくっくっくっくっくっ」

 「???」

落ちた手を支える柔らかなモノが再び生じる笑い声と共に震える。

彼女の手はソレが笑い声の源と鷲掴み。

もにゅ♪ もにゅもにゅっ♪

 「・・・女性同士とはいえ、人様の胸は弄ぶもんじゃないよ?」

 「???」

 「ふむ、寝惚けてるようだね・・・」

 「???」

ごちんっ

 「みぎゃっ!!?」

脳天撃つ拳骨に飛起きた彼女は飛び起き、ニョ〜〜と頭を抱える。

それは彼女がイイ歳した女性でありながら子供っぽく、心癒されるような滑稽な光景。

 「これでちゃんと目が覚めただろ?」

 「にゃにするぅ・・・」

 「いつまでも寝惚けてるからだ」

 「にゅぅ・・・」

それで漸く彼女は目の前の淑女ソシエに気付き見回し、疑問に疑問符。

 「私はソシエ=ローズ。先日、海で貴女を拾ったんだけどね・・・貴女の名は?」

 「名? 名・・・俺の、名・・・何?」

 「いや、何って・・・自分の名だろ」

本来なら記憶喪失と慌てる処だが、彼女が余りにもノンビリしているので

部屋を支配するのは静寂。

 「・・・ふぅ。 拾った時、貴女はフリーサイズとはいえ男物の軍服を着ていた。

結構な得物も持っていたしね・・・私の見立てではイイ処の出だね。実力も伴った」

 「はぁ・・・」

ソシエの話も、彼女には何処吹く風に丸で他人事。そして、存在自体が希薄。

 「一方で、大人の姿をしていながら生まれ落ちて数年しかたっていないような

肉体の若さって診断が出てたね。 丸で受肉した天使 ・・・否、聖霊かい?」

 「へぇ・・・」

一種のカマカケにソシエは彼女に殺気をぶつけてみるも、丸で手ごたえ無し。

椅子に座っていても一瞬で頭蓋を粉砕する勢いで放たれるソシエの拳。

それが彼女の顔に接するギリギリの処で止められた。

 「・・・慌てないのかい? コレで死ぬかもしれないよ?」

 「・・・当てる気ないものを?」

 「貴女はやっぱり只者じゃないようだね・・・」

 「そうなのか?」

首を傾げる彼女に、ノホホホン♪ノホホホン♪ビバノンノン♪とBGMが聞こえたのは

きっとソシエの気のせいだ。

 「以上を踏まえて何か思い出さないかい?」

 「・・・、イリア」

 「ソレが貴女の名かい?」

 「・・・如何だろう。 ・・・大事な人からの贈物?」

 「いや、私に聞かれても・・・ねぇ。

イリアって其の名は、最近流行の英雄譚の女傑だったりするんだけどね。

某国の失姫や或る国の女騎士達のハートを射止めた妾龍の字をもつ」

 「・・・・・・、何処のナンパ変態女ですか」

ソシエのソレに、彼女は大事な何かを侮辱されたっぽい感で否定的な呆れを見せる。

 「話に聞く処と貴女の黒装束の井出達からビンゴって感じなんだけど」

 「え〜〜〜」

ナンパ変態女扱いされる事が本気で嫌なのか、露骨に顔が歪む彼女。

 「まぁ、何にしても名前が無いってことは不便だからね

貴女の事はイリアって呼ばせてもらうよ、イリア。・・・ふむ、シックリくるね」

 「・・・・・・」

 「それと、記憶が戻るまで私の家にいるといいよ」

 「いや、俺にはしなければならないことが・・・」

 「何か思い出したのかい?」

 「・・・・・・」

彼女 改めイリアの沈黙は否定。何〜も思い出していない。

 「じゃ、決定だね♪」

何処か嬉しそうなソシエに、イリアの頭が残念無念でカクンと落ちた。

 

 

 

元々鍛えられてあっただけに直ぐ動けるようになったイリアは

ただ泊まらせてもらうのは申し訳ないと働く事を申し出た。

イリアが身を包むのは、フリフリな飾りが一切なく肩から豊かな胸元まで剥き出しに

スカートのサイドに入ったスリットから覗く生脚も麗しい中華的な紺のメイド服。

高身にスレンダーでも出ている処はシッカリ出ているイリアには良く似合う。

そのイリアの前に立つのは、スーツ姿の有翼人の美女。

 「私は、ソシエ様に御仕えする執事にしてメイド長のウィンクです。

私が貴女の指導をする事になりました。厳しくするので、そのつもりで」

 「は〜〜い、ウィンク様v」

 「・・・・・・#」

暢気なイリアに、冷静なはずのウィンクが剣気を帯びた。

正直、ウィンクはイリアが気に喰わない。

イリアを助けた際の状況や記憶喪失なのは心得ているが、不審者である事には違いない。

主たるソシエが気に入ったとはいえ、そんな彼女を用心するのはウィンクの務め。

それを分ってなお気にもしない彼女は、放つ気配も含めて完全に相反している。

・・・決して黒の色が被っている性ではない と思う。

 

 「・・・では先ず料理の下拵えをして下さい。この全ての玉葱の微塵切りです」

 「はいはい♪」

 「ハイは一回っ!!

 「は〜〜い♪」

 「・・・・・・##」

・・・・・・・・・・

 「玉葱の微塵切り、完了しましたv」

 「早っ!!?」

 「でも、こんなに沢山の玉葱如何するんですか?

賄いにするにしても、狗系の獣人って葱食べると御腹壊すでしょう」

 「っ!!! そ、それはそれでカレーにでもするので問題ありませんっ!!!」

 

 「これらのシルクの下着を洗濯してください」

 「は〜〜い♪ えっと絹は・・・優しく揉洗で陰干しだったかな・・・」

 「っ!!? い、いいでしょう・・・この位は常識ですから」

 

 「窓拭き」

 「は〜〜い♪ ガラス窓って水跡が付きやすくって厄介なんだよね♪

ポイントは、硬く絞ったヤツで拭いてから乾拭きで仕上げってな」

 「ちッ・・・完璧です」

 

 「庭木の剪定」

 「は〜〜いv 〜♪ 〜〜♪ 〜〜〜♪ 〜♪ 〜〜♪」

 「くっ・・・巧い(汗」

 「むしろ、大好きですb」

 

っと、イリアはウィンクの嫁いびり?をアッサリ見事全てクリアーしてしまった。

最も、ウィンクがイリアに家事の深いところまでさせなかった事もある。

それにしてもイリアが直ぐに泣出すように厳しいモノをさせたのだが・・・

性に合うのか、丸で水を得た魚のようにこないしていく。

初心者のメイドより余程 本職として食べていけるだけの手並みで。

 「それで、次のお仕事は何をすればい〜んですか?

 「次は・・・次は・・・」

唯でさえメイドがシッカリ仕事をしているので、早々に仕事などあるわけがない。

目を血走らせ仕事を探すウィンクに、イリアの御蔭で楽できたメイド達が

巻込マレテハタマラナイと露骨に目を逸らす始末である。

 「ふふふ・・・いいでしょう。認めます。

イリアさん、貴女は十二分にメイドとしての基礎能力は備わっていると」

 「・・・別にメイドになるつもりはないんですが。世話になってるだけも何なだけで」

 「だまらっしゃいっ!!! 一流のメイドたるもの、戦闘力もなければなりません!!

そ〜〜れから?

 「ん〜〜で、手合わせしろとおっしゃいますか・・・

俺は気楽に出来るならドンナ仕事でもするのに」

 「ふふふ・・・一切手加減無用ですよ。 頑張って下さい・・・死なないように」

訓練用の棍を手に溜息漏らすイリアに対するのは、やる気満々な 寧ろ殺る気な女執事。

 「・・・ああ、何で俺は・・・こんな処に来てしまったのだろう(ホロリ」

驚異的な突跳で可也の距離を居合いに近接へと持ってきたウィンクは

踏込みの勢いをそのままに一撃必殺で棍を横凪ぐも、受止ず易々と流すイリアに

次に繰り出されるのは連撃の突き。それをイリアは反撃もせず、踊るように避ける。

 「逃げてばかりでは、勝てませんよ」

 「そんなこと言われても、俺、戦う気ないし・・・」

 「それは、妾龍と謳われる者の余裕ですかっ!!?」

 「だから何で俺とソレを一緒にするかなぁ・・・」

熾烈を増すウィンクの突撃にイリアは等々避けから棍をバトンみたく回し防御へ。

御互い全く無駄無い動きは、正しく予定調和そのものの感で観客のメイド達は息も忘れる。

 「しらばっくれてもっ!!!」

 「だからぁっ!!!」

 「っ!!?」

終に温厚?なイリアもキレたか身体を強化で攻勢に薙ぎの連撃。

絶妙に防御可能な・・・防御しか出来ないソレにウィンクの手は痺れ

バキンッ!!!

 「「っ!!?」」

砕ける棍。ウィンクのは真中で真二つに、イリアのは棍そのものが。

イリアは徒手空拳に構えるが、両者の実力が拮抗している以上

半分になったとはいえ棍があるウィンクの方が遥かに有利。

 「ふっ・・・くっくっくっくっ。形勢逆転ですね」

 「・・・・・・」

否、得物がなくなった分、余裕が無くなり本気で殺合に・・・と

ぱんぱんぱん♪

 「はいはい、それ以上は止めておきな。洒落じゃすまされなくなるよ♪」

 「くっ・・・」

 「・・・ふぅ」

御大ソシエの優雅な登場に、面々は悲喜交々であった・・・

 

イリア、其の存在は女性のみの屋敷に女性が加わっただけにも関らず一種特異であった。

全てを知るソシエとウィンクこそ言わないが、状況からしてイリアは妾龍と想像に易い。

戦聖女。 色男以上のハンサム・レディ。

周囲とは一線を引きながら、優らかな物腰で助人として当然のように仕事をこなす。

御蔭でメイド達も余裕が出来てホクホク。これで溶け込むなという方が無理であろう。

しかも、控室にて

 「・・・z・・・z・・・z・・・」

 「〜〜〜♪ イリアお姉さまぁんv」

寝るのが趣味楽しみと壁を背にス〜〜ピヨピヨピヨと寝息を立てるその姿は

寝息が聞こえなければ某壁画の聖女みたく、聞こえたらソレでギャップに萌え癒される。

先日屋根から落下したところを受止めてもらった猫少女メイド マヤなんぞ

最早脇目も気にせず腰に抱きつきゴロゴロゴロゴロとベタ甘えている始末である。

 「・・・ん・・・・・・」

 「あっ・・・フニャ〜ンv」

しかも、イリアは眠りが浅くなったか夢現で起動し躊躇なく撫でり撫でりと

愛玩猫に可愛がり、周囲に羨ましがらせて臍をかませるほど。

 「・・・・・んで、如何した?」

 「あっ・・・ごめんなさい、イリアお姉さまに甘えたかっただけなんですぅ(//////▽」

 「うん・・・じゃあ、耳掃除してあげよう」

 「へ?」

 「はい、ちゃんと横になって」

そ、それは、垂涎の膝枕。そして、その手には綿棒&香油

一寸解した綿を香油で湿らせ、マヤの猫耳にスポっと

クリュクリュクリュクリュ

 「あっ・・・はふぅ・・・みゃぁ〜〜〜」

丸で脳ミソを直に優しく愛撫されるような感触に猫少女、恍惚

 「ん〜〜、ちゃんと耳掃除しないと・・・良し、これで綺麗になった。次〜♪」

 「はへ?」

瞬間、イリアの手でクルっと回転させられたマヤの視界は、黒い布で塞がれた。

つまり、その向こうはイリアの御腹が無防備にあるわけで・・・

つまり、マヤ自身ではなくイリアが顔を埋めさせたわけで・・・

・・・これはもう、求婚と思うしかっ!!!

 「お、おねーたまぁっ!!!」

 「はいはい、危ないから動かない♪動かない♪」

 「・・・ああ、もう、おねーたま無しに生きていけない・・・(パタリ」

 「終わったよん♪ マヤ? ・・・寝ちゃったか」

違います。興奮の余り気絶しまスタ。

当然ソレは休憩中の周囲のメイド達もみているわけで、マヤ嬢の反応を見ていれば

イリアのテクが如何なるものか想像に易く思わず物欲しげな顔で見てしまうわけで

 「・・・君も耳掃除しようか?」

 「は、はいぃっ!!?」

 「・・・・・・(オイデオイデオイデ」

 「ああ、そんなっ・・・そんな笑顔で誘われたら・・・体が勝手に!!?」

脇にどけたマヤ嬢の代りに其のメイド嬢が膝枕に。そして新たなる犠牲者が・・・

 「「イリア・・・噂に違わす、恐ろしい娘っ!!!」」

『妾龍』,『漆黒の戦聖女』に加えて新たに

『陽溜の癒微笑』『耳掻き職人』の称号をゲットした瞬間であった。

早々にして数日でイリアはメイド達に認められ、幼いメイドからは

慕われるようになったが、それも仕方がないことだと言える。

純粋な好意に、求めれば何者も関係なく甘えさせてくれる。

其処には同類同情は一切なく母が子にそうであるように、ただ無償の愛。

 

 

 

 「イリア、ちょっと面貸しな」

 「は〜〜い、ソ・シ・エ・さ・ま?

 「・・・う〜ん、貴女に傅かれると気味が悪いね」

 「はっはっはっ、それほどでも♪」

 「褒めてない。褒めてないよ。全然、褒めてないから」

周囲が息を飲むような気配も一転、コケる上に腰砕けに力が抜けてしまう。

イリア、良くも悪くも洒落の分る女である。

ソシエとイリア、そしてウィンクは悠然明媚な街角を歩いていた。

衣装こそ、貴婦人のソシエに執事のウィンクでイリアは中華メイド姿だが

雰囲気は如何見積もっても従者はただ一人、ウィンクのみであった。

 「・・・イリア、この街を如何思う?」

 「如何も何も、イビツかな。

ソレを否定し隠して綺麗に見せようとしているだけだから、影は汚れ腐ってる」

 「正解」

 「その点、ソシエさんの処は美しくみせるようにしているだけじゃなく

実用美と機能美が追及されていて・・・寧ろソチラが本命で、好感がもてるかな。

こんなコメントでOK?」

 「上等上等」

 「・・・俺に何を求めてるんだ? ただ散歩をしにきたんじゃないんだろ。

マジな用件は如何様で、奥様?」

 「当然、オデカケと言えばショッピングさ」

 「???」

ニヤソと悪企笑むソシエとウィンクに、一寸退くイリアであった。

それは正に、小型獰猛肉食魚に襲われる肉切れみたく

満員密室で痴漢に襲われる美女みたく

 「あ〜〜いや〜〜お〜〜か〜〜さ〜〜れ〜〜るぅ〜〜

やめろぅ、Shoカーッ、ぶぅっとばすぞぉぅっ!!!

ひああああぁああぁぁあぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・」

その店舗に入り、ソシエが其処の御髭がダンディなくせにオカマな店主と

二言三言話し合った後、オカマ店主の手号令にイリアに群がる店員達は

アっという間にイリアから下着を含めて衣を引剥き、詳細に採寸していった。

全部女性店員に関わらず、何気に撫回し突起を引張り指挿入に中弄ったりして楽しみつつ

赤子みたいな瑞々しい肌だの理想的な乳房だの安産型でも引締まってカッコイイお尻だの

褒め称えても説得力がないんだかアリすぎるんだか・・・

 「うぅ、もうオヨメに行けない・・・元々行く気もないけどさ(ホロリ」

 「まぁ・・・それだけ、いい素材だって事だよ」

 「そもそも、俺をこんな所に連れてきて・・・遊んでるだけだろっ!!!」

 「もちろん、ゲフンゲフン・・・。

本音はさて置き、いい素材は磨かないとね。磨く必要もないらしいけど・・・」

 「今、もちろんって言ったぁっ!!?」

イリア、被虐のイジラレキャラ確定。

ヨヨヨと弄ばれた身体に衣を身につけていくイリアを他所に、

ソシエとオカマ店主、おまけにウィンクと店員達は

イリア総コーディネートに盛上がるのだった。

 「俺、放置かよ・・・」

接客係の店員がお茶を入れてくれたのが唯一の・・・救い?

 

 

社交場、それは貴族が交流を持つ建前は置いておいて一方で

クサレ貴族が謀略を巡らし一時の狂悦を貪る伏魔殿以上の伏魔殿である。

今夜、其処が支配された。

豪煌の貴婦人『鋼の薔薇』ソシエ=ローズ

無駄なく鍛えられ要所に乗った脂にメリハリが肉々欲的な熟女の肢体を包むのは

真紅のチューブトップでサイドのスリットが激しく、豊な胸の先や臍の形までも分り

下着を着けられない程の極薄ドレス。金銀のショールも相俟って過激に色艶で上品。

情欲掻立てる女としてだけでなく『力』を持つ彼女を羨望し、滅びた男は数知れず。

彼らにとって禍を齎す『鬼門』であると同時に、願いを適えうる『聖杯』。

魅せるのみならず、迂闊に触れれば代償は秤しきれず、正しく『鋼の薔薇』。

その彼女に付添われるのは、絹糸の如き黒髪の乙女。

理想的な黄金率を誇り赤子のような瑞々しい肌を包むのは、透けるほど薄い黒いドレス。

寧ろ布キレなソレは首吊りで、背中は多少髪に隠されてもお尻の割目が見えるほど

丸々剥出しの上に、前は横乳激しく胸元から臍ところか下腹部のギリギリまで

見せる上に横の両スリットで鋭く鋭角で膝上までしかない裾丈は麗しい脚を長く見せる。

その上、身体に縛上げるかのように絡付く細い銀鎖は凹凸を強調して恰も囚うが如く、

ゆったりと四肢に絡む羽衣は彼女の動作を優雅に魅せて恰も天女の如く。

闇と光のコントラスト、ドレスを含めて身につけている全てが彼女を彩るアクセサリー。

透けるような白い肌に唇の紫のラメのルージュや付爪が妖しく艶かに映える。

一見、『鋼の薔薇』と『漆黒の天女』は親娘のように見えるが

金で派手に鋭く活発なソシエに対し、黒でアンニュイに安穏な彼女は

如何見積もっても似ておらず血の繋がりはない。

 「・・・(うわぁ、見られてる! メッチャ見られてる!

男女関係なく見られてる!! むしろ、視姦されてる〜〜〜)」

 「・・・(その程度、イイ女の有名税だよ。何なら見繕って抱かせてやりな)」

 「・・・(趣味じゃない!!)」

 「・・・(別に男だけに限ってるわけじゃないよ〜〜)」

 「・・・(そもそも情欲に耽る性質じゃないから)」

 「・・・(う〜〜ん、美味しそうな身体して勿体無い)」

等と、微笑を浮かべた裏ではソシエに本音ブッチャケトークをしている彼女はイリア。

そう、先日イリアが引ん剥かれたのはこの為であった。

普通貴族となればお抱えの仕立屋を屋敷へ呼ぶなりしてドレスを作るのだが

其処はソシエくおりてぃ。

呼ぶよりも直接出向き、迅速かつベストな総コーディネートをイリアに成したのだ。

エステの必要もなく、元々の器量にメイクは必要最小限・・・と現在に至る。

兎も角、未だ見たことがない美女の登場に社交場は盛上がった。

その容姿に加えてソシエが連れて来た者である。ソシエがその正体をはぐらかしても

並みの者であるはずがないと色と権に変った眼の色を巧みに誤魔化した連中が集る集る。

 「ワタクシ、踊れませんの。ごめんあそばせ♪」

と、イリアが誤魔化し壁の華に徹しようと丸で獲物を捕らえた蜘蛛みたく逃してなるかと

腰抱きにお尻掴み股に脚割り込ませて硬くなったシロモノを彼女の下腹部にぶつける始末。

 「礼がなってない方は趣味じゃありませんわv」

スルリとすり抜けても次が同様に露出している肌のみならず衣の下にまで手を入れ

撫で回すありさまに虫唾が走ろうと駄々こねて暴れるわけにもいかない。

欲に狂った怪物の情念が犯す。侵す。冒す。

艶肌を嘗回し、柔肉を貪り、指一本の先までしゃぶり、脳髄を揺さぶる。

清水穢す泥のように、触手そのままに、振り払う手にも絡み付く。

 

追い縋る亡者達から逃げに逃げ回り、自ずと人気のないほうへ。

テラスで漸く一人になった安堵に、イリアは柵の上に上身乗せ凭れる。

扇情的にお尻突き出す格好だが、当人は其処まで気が回らない。

 「ヲェ・・・気持ちわる・・・」

人の劣情に蝕まれ朦朧とする意識では、記憶を失ってなお誇る能力も

寝起きと指して変らず・・・いや、バカになっていても意志がある分

高熱に魘されているようなモノであった。とにかく、少しでも休もうと

「おやおや御嬢さん、もう酔われたんですか? 宴はこれからですよ」

 「っ!!?」

イリアが声に気付いた時には、その男は爽やかに劣情秘めた顔で既に横にいた。

その男は、別に並かソレに気が生えた程度でしかない。欲ばかりは怪物だが。

ただ、それだけ低迷にイリアの能力が低下しているだけで。

「こんな外では何ですから部屋へ・・・」

 「うるひゃっ!!?」

呂律が回らぬ口に自身が驚いている事を露とも知らず、下種な勘違いに男はニヤニヤと

「ふふふ、過激な御嬢さんだ・・・」

 「っ!!!」

イリアが全快なら心臓を止められそうな殺気を向けた処で

今の状態では子猫が威嚇する程度でしかなく、寧ろ劣情の炎に蒸留燃料を注ぐだけ。

膝から力が抜けたイリアは柵を支えに立つだけで精一杯、逃げる事も適わず

 「はぐっ・・・っ・・・くはっ・・・」

行き成り股を掴上げ容赦なくネチネチと指を立てる男に、

彼女の艶口から漏れる苦悶の吐息。

「そのような美しい体に派手な形をされていながら慣れていないとは」

 「き・・・きさ、まあ゛あ゛あ゛っ!!!」

彼女の膝はガクガクと振るえ力が抜けても女陰を嬲る指に腰を落とす事も適わず。

柵を乗越え前に落ちようにも、幸い中の不幸にタワワな乳房が引掛り柔肉が軋む。

「ほらほら、こんなにも蜜が・・・」

 「ぐぅ・・・うぐぅ・・・うぐぅぅ」

彼女の後ろに回りこんだ男は、布をたくし上げて彼女の双珠な尻を剥き出しに

女陰のみならず尻穴にも指を入れて片手の指全てを駆使して嬲上げつつ

自分の幹に真珠入りに赤黒く勃起しモノを出し挿入した。

容赦なく、一気に、ゾブリと蜜散らして。

 「ひぐっ!!!???」

「こんなにも締め付けるなんて・・・気持ちいいんですか? イイんですね!」

 「がっ、がっっ、がぁっっ」

衝撃に仰反った彼女を、男は圧掛かり柵に押付け乳房鷲掴みに突上げていく。

男のハードなまでの腰振りには童貞の如く彼女の味に夢中で全く慈悲はない。

ただ、男は己の性欲を満たすだけ。彼女を苦しめるだけ。

それでも男の腰はラストスパート?に向けてより激しく動き・・・

「ほらっ! ほらほら、イきますよっ!! 受け取りなさい、僕の種をっ!!!

・・・アクノタネヲウケトレッ!!!・・・」

 「っ!!!!???」

瞬間グッと腰を圧付ける男に、彼女のサンダル履で紫の付爪も麗しい爪先が浮き

凍りつく空間。

その中でドキュドキュとくぐもった音と共に脈動する させられる彼女の下腹部・・・

・・・・・・・・・

「ふふふふ、まだまだ終わりませんよ・・・」

 「・・・・・・」

男は一回の射精では衰えぬモノで貫いたまま今度は彼女を仰向けに衣から零れた

ピンクな色がソソる勃起した乳首が天突くタワワな白い乳房に齧りつき腰を振る。

彼女の意識が既になく、紫のルージュが塗られた艶唇に白く泡を吹いていても。

 

 「・・・全く、無様なものです」

舞降りる黒い翼。その腕が意識無い漆黒の天女を抱きかかえる前で

男は正しく無様にも充血した目で腰を振っていた。 虚空相手に。

言うなら、マヌケなまでのパントマイム。ただ、その抱いている造形はリアルだが。

そして二度精液が空に放出され、一度目で穢した所を更に穢す。

 「初歩の幻術でいつまでも戯んでいなさい・・・」

そう、最初っから男の相手はイリアではなく男が見ている理想の幻。

抜かず体位を変えて三回目に突入した男に、撤収とばかりに

ウィンクは体調不良に意識を失ったままのイリアを抱えて飛去るのだった。

 

 

基本的にイリアという女性はよく眠る。その存在云々を抜きにしても趣味と

寧ろ愛していると言っていいほどによく眠る。その上、低血圧な寝坊スケでもある。

それでも、ソシエの世話になってからは定時にシッカリ眼を覚ましていたが

そのかわりと毎日のように昼寝を愛し、御子様のように夜も寝るのが早かった・・・

 「ふみゅ・・・」

自然に目覚めた分、今回は駄々こそこねないものの寝惚けているイリアは

幼児そのもので上半身こそ起こしているものの頭を左右に振っていたり。

両手に触れる柔らかな物体。

 「・・・あにゃ?」

それは猫メイドのマヤ嬢と別の幼いメイド。

イリアは何も考えずとも当然のように彼女達の頭をナデリナデリ

 「・・・・・・にゃふふふふv」

 「・・・・・・くぅ〜〜んv」

寝たまま人には見せられないニヤケ顔を浮かべてイリアの腰に抱きつく少女二人。

ナデリナデリ

 「・・・・・・にゃふふふふv」

 「・・・・・・くぅ〜〜んv」

ナデリナデリ

 「・・・・・・にゃふふふふv」

 「・・・・・・くぅ〜〜んv」

ナデリナデリ

 「・・・・・・にゃふふふふv」

 「・・・・・・くぅ〜〜んv」

・・・・・・・・・

 「「はっ!!?」」

少女達は漸く誰に頭を撫でていてもらっている事に気付き、飛び起き

 「「・・・イリアお姉さま?」」

 「うん?」

相変わらずノホホホン♪ノホホホン♪ビバノンノン♪とBGMが聞こえるイリアの

顔や寝巻き代わりのシャツの上から身体に異常がないかを確かめ

普段と変らず健全な様子に二人の目尻に溜まる涙。

 「「イリアお姉さまああああぁっ!!!」」

ヒシッと抱きつき頭押付けイリアの乳振るわせる少女二人を、

それでもイリアは優しくあやすのであった・・・・・・

 「・・・モテモテだねぇ」

 「・・・そうなのか?」

 「朴念仁・・・ツクヅク罪作りな女だよ、貴女は」

 「???」

などと、ドアの隙間から頭覗かせてヤリトリするソシエとイリアに

少女二人は主にとんでもない処をみられたと慌てたり。

 

テーブル、ソシエとイリアが着く。ソシエの後にウィンクが立っているのはデフォ。

それは兎も角、香気昇る琥珀の液体へ優雅に口をつけて沈黙を支配する事暫し。

話を切出したのは当然、この場を持たせた女主人。

 「・・・先ずは、謝らせてもらうよ。

正直、貴女があんなにも影響されるとは思わなかった」

 「本当に貴女が受肉した霊類で記憶喪失だったという事です。

そうでなければ、欲念など十二分に防げるはずですから・・・」

 「うん?」

ソシエとウィンクの言わんとしている事が理解できず首を傾げるしかないイリア。

それに一寸だけ萌えたのは二人だけの秘密だ。

 「・・・つまりだね、昨晩社交界に顔出したのを覚えてるかい?」

 「あ〜〜うん、行ったな。直ぐに気分が悪くなって何がなんだか覚えてないけど」

 「その時にイリア様は其処の欲念に耐えられず気を失われたのです。

その可能性を考えて、直ぐに私が保護し事なきを得ましたが・・・」

 「へ〜〜、それはありがとうv」

 「あっ、いえ・・・」

客人として接するのなら特に気にも触らないらしく丁寧に説明するウィンクに

ホニャっと人好な微笑みを返すイリア。流石の女執事もタジタジ?

元々彼女は従者より他を従える主のオーラを放ちながら自身がそれを好まないのだ。

 「それで、これからが本題なんだけど・・・私はイリア、貴女を囮にした」

 「・・・・・・」

真面目なソシエにイリアも穏やかな聖女の感から一転モノノフに顔が引締まる。

 「事の始まりは、貴女を拾った頃だ。奇怪な事件が起き始めた。

貴族が使用人や子息子女もしくは親を惨殺したりするものなんだがね・・・

それ自体はよくある御家騒動。問題は、その頻度。立続けに起ると流石に」

 「俺が其の禍を呼寄せた?」

 「そうかもしれないし・・・そうじゃないかもしれない。

私の見解は、貴女が原因を如何にかするために此処へ来て記憶喪失になったって処」

 「・・・・・・、さっぱり」

 「・・・そうかい」

如何とも言いがたいイリアとソシエに、場に流れる沈黙。

 「・・・害虫が自滅するのも放置できないなんて、世の中ままならないもんだ」

 「全く・・・」

落ちぶれていようとなんであろうと貴族が少しずつなら兎も角、多くが一気に

潰れるとなれば如何であれ其の遺産領地を巡り騒動が起り余計な血が流れるのは

否めない。ソシエが気を揉みイリアが口にしたのは、正しくソレであった。

 

 

 

イリアの正確なスタンスは、『客人』である。 しかし、当人の性分により

助人をするため其の腕に関わらずどの部署もといローテーションに組込めず

文字通り助人ととして未熟な若いメイドの手伝いなんかをしていたりした。

差詰め、ウィンクが『恐怖の女教師』ならイリアは『おねーちゃん』である。

そして、今日は今日とてイリアは船上の人となった。

潮風が香る。

 「海・・・これが海」

 「・・・・・・」

白亜の船に、海豚達が歓喜で併走する。

 「これが海〜〜♪」

 「・・・なして行き成りミュージカル調?」

鴎達も海豚達に競り合うかのようの空を翔る。

 「うっっっみ〜〜〜〜v」

見麗しく舳先に足掛け船が海駆ける感動を現す女性が一人。

その指揮に、海豚達が跳ね鴎達が空を舞ったりとツッコミ処満載である。

 「・・・それで、何か船仕事で出来そうな事はあったかい?」

 「さっぱりb」

 「いや、威張る事じゃないし。流石の完璧淑女も海は生娘って事か」

 「うぅ、だって私、港の女ですもの・・・(ヨヨヨヨヨ」

 「・・・なして芸風?」

晴天でも風は強く船は激しく揺れる。

女水兵達の中で二人だけ常な姿。その二人が最も平然としているのはいかがなものかと。

イリアは、毎度中華メイドな姿で帆網を猿の如く昇り見張台で鴎と戯れたり

持前の運動能力で慣れた女水兵真っ青な曲芸移動をするが、

縄の縛り方を知らないので結局使い物にならなかったり。

 

女三人集まれば姦しいというが、

律が執れているはずのソシエ邸もまた例に誤らずそうであった。

何気に好かれるイリアは、人が集まり当人が黙ってもそうであった。

否、微笑を浮かべて聞いてばかりな色男役なだけにより盛り上がる。

何気に誰なりとが懐に抱かれて抱き枕扱いにされて・・・

 「それで、イリアお姉さまは如何ような方が好みなんですが?」

どの話がいったい如何なってそうなったかは兎も角、

周囲のメイドたちが目を爛々と輝かせてイリアに注目した。

 「俺の好み? ・・・う〜〜ん、可愛い子v」

悪ふざけに眼を細めたイヤ〜〜ンな笑みで抱いている子に囁く様な回答に、

そうだと分っていても真っ赤に染まる犠牲者?。

そして周囲はユリよネコよラブ臭がぁ〜〜と盛り上がる。

 「あ〜〜、でも女の子同士で乳繰り合う趣味はないから」

 「「「「え〜〜〜〜」」」」

 「・・・何で、其処で残念そうな声を上げるんだよ(汗。

まぁ、可愛い子っていうのは芯を持って頑張っている子って意味な。

男女関係ないけど、純なオトコノコに迫られたら抵抗出来ないだろうな〜〜。

出来れば、純なオトコノコをカッコ良く育てられたらなお良しb」

きゃ〜〜、本物のショタよ〜〜。逆光ゲンジ計画よ〜〜。と更に盛り上がる面々に

何か不味い事言ったカナ? とイリアは首を傾げるのだった。

気質か彼女の周囲はアットホームな甘える事が無条件に許される気楽な空気になる。

だがそれは、その存在によって無残にも打ち砕かれてしまった。

 「イリア、ちょっと顔を貸しなさい」

 「は〜〜い、ソシエ様v」

突然やって来た顰めっ面な女主人に、水を打ったかのような静寂に包まれる部屋。

心配げなメイド達に見送られつつ、それでもイリアは平然と付いていくのだった。

・・・・・・・・・・

ヌチャヌチャと粘体が滑った音が狭い個室に響く。

着の身着のまま中華メイドを壁に押付けて嬲るのは女主人。

接吻に舌が口腔内を弄り歯茎を舐め舌を絡め取り唾液を啜り流込んで飲ませ・・・

その一方で、肌蹴た衣の隙間から乳房を弄り、下着の上から女陰をカリカリと掻く。

ソシエの凶行に、イリアは最初こそ驚いたものの全くと呆れて無抵抗にされるがまま。

顔を離すソシエに、二人の唇を繋ぐのは光返す唾液の糸。

 「ふふふ・・・、どうだいキスの味は」

 「酸欠で頭がクラクラする・・・肺の空気まで吸い出すし」

 「それがクセになるんだよ。直に気持ちよくなる・・・気持ちよくしてあげるよ」

 「淫蕩に耽る趣味はないんだけどなぁ」

 「ほら、コッチへお尻を向けな」

 「はいはい・・・」

イリアはソシエの指示にやる気なく扉に肘着きお尻を突出す。

スリットから覗く腰の横紐、ピンと解かれる結目にハラリと下着が落ちた。

ヌルリと中へ潜込む指は同性だけに的確に敏感な処を刺激する。

 「・・・う〜〜ん、全然濡れないね」

 「だから、淫蕩に、耽る、趣味は、ないんだって・・・」

 「まぁ、濡れてないなら濡れてない也に摩擦が強くって良く感じるんだけどね」

 「感じる、から。汁が。出て、汁が、ない、方が、良く、感じるって

・・・矛盾、してね?」

・・・・・・・・・・

 「ふふふ、良く喋る。ひょっとして癖になりそうとか」

 「それ、以前に、先の、間は、何? 誤魔化して、ね?」

 「・・・・・・、逆らう娘にはオシオキしないと、ねっ」

ゾブリとイリアの胎腔まで穿つ肉塊にウグゥと漏れる苦悶の吐息。

 「ケハッ・・・くぅ・・・ハァ・・・ハァ・・・

・・・行き成り、ヘンなモノ、入れるなよ」

 「ヘンなモノじゃないわよ〜〜♪ こ れ は、イリアを愛する為の特性擬似男根。

私と淫核と膣に神経が繋がってるから・・・こうしてるだけでもゾクゾクしちゃうv」

 「耳元で、ささやくなよ・・・変態っぽい」

 「変態でいいわ。こうしてイリアの温もり感じられるんだもの・・・

ほら分る? 幹の触手がイリアの膣壁を舐めてるのが・・・ハァ、美味しv」

 「うくぅ・・・、気持ちわるっ。 うっ・・・ん・・・・くぅ〜〜ハァ・・・」

 「ほらぁ、そんな嫌そうな溜息なんかついちゃダメじゃなぁいv」

 「・・・実際っ、嫌・・・、なんだけどっ、ねっ・・・」

 「私は全然イイわ。

・・・動いてないのに、・・・気持ち良過ぎて、・・・イリアの子宮まで犯しちゃう!!

瞬間、ビクンと跳ねるイリアの肢体。腰が戦慄き膝がガクガクと震えて力が抜ける。

しかし、腰を下ろす事は後から抱擁するソシエが扉とのサンドイッチで許さない。

息も絶え絶えに這々体であっても。

 「あらぁ、イリアちゃん、もうギブアップ♪」

 「・・・出来れば、最初っから、ギブアップしたかった」

ソシエが腰を振れば、それに引きずられてイリアも腰を振らされてしまう。

ソシエが腰を引けば、ナカで引っ張られてイリアも腰を引張られる。

便座へ腰を下ろしたソシエに、二人陣羽織のように腰をくっつけたまま

ソシエの腰の上にイリアも腰を下ろされ

 「かっ・・・はっ!!!」

突き上げに内臓が直に衝撃をうけ仰け反り、空をまった髪が顔を隠し

僅かでも空気を貪ろうと喘ぐ唇は素にも関わらず艶やに濡れて輝く。

 「あん、イイ声なんだから可愛いく啼いて欲しいものだね」

 「・・・そういう、柄じゃ、ない。さっさと、済ませろ、よ・・・」

 「それはイリヤちゃん次第・・・頑張ってね♪」

つまり、イリアが動け、と。ソシエ、正に鬼畜!正に外道!!

 「くっ、・・・さっさとっ、・・・いけっ、・・・このっ」

 「ああっ・・・いいわ・・・もっとワタシのモノをシゴキ上げて・・・」

 「童貞じゃっ・・・、あるまいしっ・・・、人任せにっ・・・、するなっ・・・」

 「あら、コレの筆下ろしはイリアちゃんがしてるのよ」

 「ぐぅっ・・・」

イリアは必死に左右の壁に手を着き己の尻をソシエの腰に叩きつける。

その間もソシエはイリアの乳房をパン生地みたく揉み倒してくれる。

と、

 「うっ・・・イくぅっ!!!」

 「かはぁっ!!?」

乳房を鷲掴み肺の空気を圧出す強い抱擁にイリアの体がソシエの上に落ちる。

突然の突上げでモノに圧迫される内臓。

そして、隙間なくモノが占める胎内から脈動が響くも一瞬

ドグッ・・・ドグッ・・・タバッ

 「おふぅ♪」

 「〜〜〜〜〜〜」

雄の歓喜に震えるソシエに合わせてイリアの股奥 胎壁を精尿が撃ち穢す。

身体が強張り四肢のが震える。

 「はぁ・・・もう出しちゃったv」

 「・・・・・・ハァ・・・ハァ。 ・・・、童貞かよ」

 「うふふふふ、気持ちよかったかい?」

 「・・・最悪。 ・・・心臓破裂しそうだし、・・・おなか、タポタポだし」

 「ふふふふ・・・」

漸く終わったと安堵に脱力したイリアの首筋にソシエが齧り付く。

確実に痕が残り見えるだろうが、イリアには窘める気力もなくされるがまま

一寸した戯れでしかないにも関わらず体力ゲージは0に最早人形が如く。

ソシエは喜々とそのイリアの乳房を弄び太股を撫で回す事しばし

腹の中の存在感にイリアの身体がピクンと反応した。

 「・・・また立ってきちゃった♪」

 「はぁ〜〜・・・もう、好きにやってくれ。

自慰人形でも、精液タンク扱いでも何でもいいから。

俺にソウいう愉悦に浸る事を求めるな・・・・・・」

 「ん〜〜ツレナイ返事だねぇ。ますます色に染めたくなるよ♪」

 「染まらない染まらない。 勘弁してくれよ、せにょり〜〜た。

母娘揃って愛に飢えるが故に肉を求めるなんて洒落にもならね〜〜」

 「っ!!? あ、貴女・・・記憶が戻ったのかい?」

 「???」

 「いや、だって今母娘って・・・」

 「・・・んな事いった? ソシエの娘さんって?」

 「言ったよ。 セシル=ローズって一寸した有名人なんだけどね・・・」

 「あ〜〜、今名前聞いてパッキンケダモノのイメージが・・・」

 「・・・・・・・」

 「・・・てか、真面目な話をしつつ人の身体を弄ぶのはやめないんだな」

 「もちろん♪ 背徳感にもうビンビンだよ♪

ほら、お臍を裏から突上げてるのがわかるだろぅ?

 「ホント、勘弁してくれ、せにょり〜〜た・・・」

・・・その後イリアが抜か何発出されたかは定かではない。

ただ、肌を艶々にしたソシエが出ていった後の個室で

便座に座り尽きて身動きできないイリアをメイドが目撃してしまったとかなんとか。

結局、イリアのソシエに対しても平等に友人というスタンスは変らず

それでも娘が娘だけに母も一方的に激しい恋慕を『注いで』くれちゃったり・・・・

 

 

まぁ、ソシエに気に入られていようが情婦以上に性人形にされるようになろうが

イリアのソシエに対する態度もメイド達皆に対する態度も変る事無く

・・・寧ろ、身体を許し好き勝手させながら全く靡いていないイリアの方が悪女?

兎も角、イリアは相変わらず幼いメイド達にも慕われ続けているわけで

今日も今日とて市場へ買物に来たのは其々メイドの衣装の上にコートを纏った姿の

イリアと、最もなついている猫娘マヤ嬢。

手を繋いで路を歩く様は丸で母娘か姉妹のように仲睦まじく・・・しかし

 「イリアお姉さまは私の事が嫌いなんですねっ!!!」

 「いや、別に嫌いじゃないよ」

 「じゃあ、・・・私の身体をもらって下さい?

 「それは出来ない」

 「うぅ、やっぱり私の事、嫌いなんですね・・・」

 「両極端なやっちゃな(汗」

そもそも、イリアが自分はマッタリが好みでソシエの愛情表現が過激過ぎて困ると

愚痴ってしまった事が始まりなのだが、マヤは強い愛情=過激ということらしい。

朱交われば赤くなる。最初は大人しく甘えていた娘も今や間違った方向で積極的に。

歩みを止めて痴話喧嘩?状態で二人に、周囲は期待に胸はずませギャラリー化。

 「じゃあ、じゃあ、何でもいいから私が嫌いでない事、少しでも証明してください」

 「証明? 証明って言われてもなぁ・・・じゃ、こんなので」

 「え?」

イリアは周囲の眼も関係なくマヤを自分のコートで包み込み、二人の身長差を

マヤの顎に指添え上向かせ、そして触れ合う二人の唇・・・・・・

沈黙が一帯を支配した。

深接吻ではないが、唇で唇をなぞり食むソレは返って上テクな感。

 「ん・・・、マヤの唇ちょっと荒れてるな。野菜もシッカリ食べなきゃダメだぞv」

 「みゃぁ・・・v」

いっちゃた猫少女に、イリアはその腕を組んで道を行く。

その後には致死まで糖分吐き過ぎのシカバネの山だけが残るのであった。

 

 

漆黒の戦聖女 妾龍イリア、その存在はハンサムレディであるだけではなく

ミステリアスであるからこそ類稀なヒットの英雄譚になったわけである。

その正体が謎であれば、滅ぼした敵もまた謎・・・故に人は彼女に憧れる。

話は変るが、街にはメイドに手を出す不埒者はいない。

それは、最もメイドを有しているソシエの威光があるからである。

逆をいえば、遠くから来た者にすれば関係なく、更にメイドでも個人を狙うならば

威光など恐るるに足らないわけである。

ソシエ邸のメイド客人イリア、彼女は色々な意味で狙われていた。

当屋敷のみならず周囲のメイド達からは姉妹の契りを結んでもらおうと。

先の社交界でその艶姿に心奪われた男や女達は自分のモノにしようと。

当のソシエですら、肉体を弄びこそすれモノには出来ていない・・・

イリア、正しく彼女は天女であると同時に妖女。

そして、よりにもよって最も心惑わされているのが、其のイリアに気をかけられている

猫娘マヤ嬢であるとは何たる皮肉だろうか。心弱き故に護ろうとしてが故に。

傍目では相思相愛と言わしめ砂糖の山を築かせ糖欠の死者を続出させるほど。

しかし・・・

ソシエ邸屋敷から然程離れていない丘、立てた膝を抱く三角座りの少女マヤが一人。

それは見事なまでのイジケ虫であった。彼女の悩みなんぞ当人以外知りようがない。

 「ぐすん・・・イリアお姉さま・・・」

「・・・・ふむ、悩みかね御嬢さん」

突然かけられた声に、マヤがビクッと振り返った其処にいたのは上品な老紳士。

その雰囲気にマヤは安堵に警戒を解くが、異常に気付いていない。

唯でさえ感覚の鋭い猫人が、未だペーペーとはいえ訓練を受けているのに

考え事をしていたとはいえ、たかが素人の接近を許すはずがないと言う事を。

そして未熟故に、その人畜無害な無邪気の微笑の向こうが邪気そのものである事を。

ソシエや今のイリアでも、邂逅一番ブッ飛ばし確定なほど。

兎も角、マヤはその老紳士の目論見通りにアッサリと乗ってしまった。

喧々駄句駄句と、少なくとも初対面の者に対して話していい事ではない

或る意味ノロケそのものと取れる内容を少女が実に幸せそうに話す。

 「・・・私、お姉さまに好かれていないのでしょうか」

「老身から言わせてもらえれば、人が如何思うかではなく

自分が如何思うかではないのか?」

 「え???」

「つまり、御嬢さんが如何だけ彼女を愛しているかが問題であると」

 「!!!」

正にブレイクスルーだとマヤは悟った。

しかし、ソレは今まで適当な相鎚で巧みに誘導された結果の思考に過ぎない。

「ソレほど彼女を愛しているのなら、彼女が他の誰も見なくすればいい」

 「そうですね!!」

「彼女が他の誰も見れなくすればいい」

 「そうですね」

「君だけを見るようにすればいい。なに、方法など幾らでもある」

 「そうですね・・・」

「たとえば・・・そう、たとえば、極端な話彼女の四肢をもいでしまうとか」

 「そうですね・・・」

「究極の愛情表現は、其の相手を食べてしまう事だそうだよ」

 「そうですね・・・」

「御嬢さんが愛しの彼女を如何するにしても、先ずしなければならないことは・・・」

 「・・・・・・」

其処にはすでに愛くるしい猫少女はいなかった。

あるのは、言われるがままに動く哀れな生き人形。

 

ソシエ邸では夜になってメイドの一人マヤがいない事が発覚した。

彼女には家出できるだけの度胸もなく、裏社会に手を回しても関しての話は全くなく・・・

全くない手がかりにソシエ邸の面子は捜査を撤収した。・・・唯一、イリアを残して。

麗しい中華メイドの姿に集る無頼者を捌き夜の街を巡ったイリアの辿り着いた先は

全くの人気がない倉庫区。全く情報が集らなかったからこそのこの場所。

・・・要は、家出の子供を探すのと同じ要領なだけ。

全く人気がない場所だからこそ、気配を消して一つ一つ丹念に探していく。

それは正しく狩人。 いくつも倉庫をツブしていった先に其処があった。

 「見つけたぜ、子猫ちゃん」

 「・・・いりあおねーさま」

薄暗い倉庫、イリアの方へ向いた猫少女は病的な微笑を浮かべた。

 「まぁ何つーか・・・帰ろう? 皆にも迷惑かけてるし、俺も一緒に謝るから」

 「・・・いや。わたしはおねーさまとだけいっしょにいたい」

 「聞き分けのない子は嫌いだなぁv」

 「!!?」

にこやかな微笑のまま歩を進めるイリアに、猫少女の虚ろな表情に走る動揺。

その隙に捕らえた堅牢な抱擁は優しくも抵抗を一切許さない。

猫少女は暫くジタバタあがくも、抗え切れず恐る恐る抱擁し返す。

 「・・・所詮俺は異邦人。きっと此処に留まることは出来ない。

でも、な、いつか別れる定めにあっても俺とマヤは姉妹だ。

少なくもとも俺はそう思ってる。 それじゃあ、不満か?」

 「・・・・・・」

問いかけに、満足の意をもって猫少女は腕に力を入れた。

 「帰ろうか。・・・仮初だけど、我が家に」

 「にゃぁ・・・」

既にソレは哀れな生き人形ではなかった。ただ姉をしたう猫少女。

何故其処にいるのか如何しようとしていたかのど既に忘却の彼方に

満面の笑みで本当の姉妹みたく手を繋ぎ帰ろうと

 「おねーさまっ!!」

 「っ!!?」

一回り小さい身体に突き飛ばされたイリアの視界の中、閃光が猫少女を穿った。

瞬後、血飛沫ながら空舞う小さな肢体をカっ攫ってイリアは物陰へ諸々姿を隠す。

そして、普段の飄々とした姿勢など微塵もなくうろたえつつも手は的確に

マヤの貫通した胸の傷の応急手当を行う。

 「ああっ、クソッ、畜生っ!畜生っ!!畜生っ!!!」

 「・・・いりあおねーさま?」

 「ああっしゃべるんじゃない。動くな。死ぬぞ。 頼むから・・・死ぬな」

言葉と共に血に濡れるマヤの唇にイリアは更にうろたえる。最悪の事態を思い涙を浮かべ。

マヤを助けるためには姿見えぬ暗殺者に姿を曝さなければならない。そうすれば・・・

異常を察し救援を待つのも手だが、今は少しでも時間が勿体無い。

 「ごめんなさい・・・私のせいなんです・・・」

 「気にするな。企んだヤツが一番悪い」

 「私・・・私・・・おねーさまに出会えて・・・幸せ・・・」

イリアの懐の中、力抜ける小さな肢体。それでも穏やかな顔だけが幸い。

だが、残された者にとっては何の救いにもなりはしない。

 

フラッシュバック。

 

冷たくなっていく少女の身体。 最早二度と開かない眼。 言葉を紡がぬ唇。

 

護ると決めた。

 

なのに、ささやかな幸せすら彼女の両手に納まらない。

 

自分のせいで。 ただ、自分に巻き込まれたせいで。

 

ソレが主から承った仕事は極めて簡単であった。

たった一人の不確定要素の排除。餌で釣って暗殺するだけ。

無防備に見せた背を狙った一撃はターゲットを穿つはずだった。

しかし、猫人たる餌の感覚も伊達ではなく餌が代りになってしまった。

どちらにしても、即死ならずとも餌は長くはもたないだろう。

ターゲットにも最早油断はない。実力行使は実に無駄であるが、それも仕方無い、と

 「          」

声無き悲鳴 咆哮に空気が、空間が震える。

風が吼え、炎が猛り、地が憤る。

ソレは感知した。怪物の存在を。

しかし其も一瞬の出来事で嵐の前の静けさに、ソレは自身のエラーだと結論。

気付けばソレの視界の中にターゲットが無防備に身を曝していた。

完全に無防備で、ただ突っ立っているだけ。

しかし、それはツワモノが得る万能の構えでもある。

今度こそ必殺とソレから放たれた魔弾は、ターゲットを穿ち

 「っ!!?」

得なかった。瞬間、揺らいだターゲット イリアの揮う腕が撃砕き。

衣が弾けとび、白い肌が露となる。その肌が先から黒曜石の如き美しさの鱗が生え、

甲を装着したかのような狂暴な龍のものへ変化した。

その腕のみならず四肢の全てが衣弾き裂きつつ同様に変化。

黒い絹糸の如き髪は長く伸び首後で寄り集まると鱗が覆い龍尾の如く。

そして、前を見据えるイリアは無表情ながら眼は金色の龍眼に爛々と輝く。

ソレは、イリアをターゲットではなく脅威と認識。

対個にしては大げさすぎるほどの魔弾が撃ち込まれるが・・・

 「っ!!?」

 「・・・ふん、其の程度か」

特に防御を行っていないにも関わらずソレの力では彼女に傷付ける事無く

当たった先から砕け霧散していく。ならばとソレは刃振り被り強襲をかけるが

パキン

 「っ!!?」

 「・・・ふぅ、もういい。邪魔だ」

受止める龍腕に微塵と粉砕された欠片、その向こう金色の龍眼がソレを見る目は

丸で路端の石コロ程度をみるもので・・・

 

建物振るわせる轟音に、ソシエ邸は騒然となった。

ソシエを筆頭に迎撃に出たメイドたちが見たモノは、ボロ布を纏った漆黒の龍女。

そして、彼女が姫抱くのは血に染まった猫少女・・・

 「この子を頼む。」

 「貴女・・・イリア、かい?」

 「ソシエ、迷惑かけたな。此処を出て行くから装備を返してくれ」

 「・・・其の前に全ての事情を話してもらおうか。

巻き込まれたコチラとしては、聞く権利があると思うんだけどねぇ」

ソシエの指揮にメイド達が得物を片付ける前で、イリアの四肢が龍のモノから人に戻る。

その瞳も、憔悴に傷ついた人のものであった。

時間の如何に関わらず態々用意された茶の席に、貴婦人に身を整えたソシエと

元の漆黒の軍服を纏い腰のベルトには短剣を備えた妾龍イリアが着いた。

カップから湯気が立ち上るがドチラとも飲む気配はない。

 「・・・それで?」

 「・・・事の始まりは、某都市で奇怪な事件が起こった。

娼婦数人が突然自害したんだよ。子を暴行し我に返ってとか、

自分が変だと自覚したとか・・・状況こそ違いはあったが。

要は、己の中で蠢く悪意に耐えられなかったんだろう・・・

調査の結果、一人の男がその原因だと分ったが既に逃亡済み。

都市を実験場にしようとしたが失敗して諦めたんだろうな」

 「・・・それで、その男がこの町へ来た、と?」

 「ああ、この町で起きた事と根っこは同じだ。人に悪意を植付けるってな。

・・・ソシエには悪いが、アレは俺の獲物だ。

俺には自害した都市の女たちの怨嗟を、慟哭を、憤怒を叶える義務がある」

 「・・・妾龍、貴女にそれが出来るのかい?」

 「前は周囲へ被害を出さないよう追い詰めた結果、諸共乗っていた船を爆破された。

ヤツが裏でこそこそ行動するくせに手段を選ばぬほど一般常識がない似非紳士と

分った以上、如何様にでも対策は打てる。 一騎当千、師団並個兵ってな」

 「いいだろう。因みに、仇の場所は分ってるのかい?」

 「乗っていた船を爆破された時、改造されたっぽい鯨みたいなモノをみた。

此処での拠点はアレだろうな。御人形さんまで持っていたくらいだし・・・。

海豚に尋ねれば何処に潜ってるか教えてくれるだろうさ」

 「・・・・・・・・・・・・。

何にしても『師団』を運ぶ脚はいるだろう? 私にも露払いをする権利はある」

 「・・・そうだな。 ・・・屑を始末するのに金をかけるのも勿体無いが」

会議に放置され冷めた紅茶を二人して呷りメイドが直に熱い御代りを入れるが、

聖女の如く陽溜の癒微笑でアリガトウと言っていたイリアも

今は戦人に鋭い目付きを若干優しくワルイナと礼を言う。

それはそれでカッコウイイという意見もあるが・・・

 

 

翌朝、海豚達を先導に海原を走る五隻の戦闘船があった。

艦隊の先を行く旗船の舳先に立つのは鋼の薔薇ソシエと漆黒の戦聖女イリア。

頷くイリアにソシエの指揮で船はその点を中心に円陣を組んで走り始める。

更に船から投下された爆雷をイリアの指示で海豚達が其の点へ運び

勢いそのままに円陣の外へ離脱した。そして

ドゴンっ!!!

船のマストよりも高く立つ水柱。

 「さ〜〜て、狩りの開始だ」

船では射出機に巨大な銛がセットされていた。

そして旗船では既に龍人化したイリアが槍の如き巨大な銛を手に構えていた。

しかも、『雷撃襲(ライトニングブレイカー)』の過剰付加で自体が発光する始末。

その目の前で円陣の中心の海面が盛上がり・・・

鯨が姿を見せるが如く海上に現れる船より一回り大きい鋼と肉の塊。

 「rock'n'roll !!!

海面と並んで横に走る雷がその塊の上部を抉り弾し、それを合図に

逃げられぬよう船から打ち込まれる銛 銛 銛。

そして旗船と似非鯨に打ち込まれた銛を繋ぐ鎖の上を龍人イリアが駆ける。

別の鎖の上を併走する白い影、鋼の薔薇ソシエ。

 「・・・何のつもりだ?」

 「私も露払いする権利はあるっていっただろう?

いく所まで行ったら特等席で見物させてもらうさ。貴女のその姿も鑑賞したいしねv」

 「好き者め・・・隙にするがいいさ」

似非鯨まで距離を詰めた二人は、ソシエは細剣抜き放ち、イリアは拳振り被り

 「「破っ!!!」」

ソシエが×に切目入れた鋼板がイリアの打撃で向こう側にひん曲がり

二人は其処へ飛び込んでいった・・・・・・

 

其の中は丸で船内のようで・・・事実、鯨を元に改造し死霊魔術で潜水艦である。

元々潜水艦という概念が無い以上、内装は大型船舶に準じたものとなる。

と言っても、潜水艦なのでメインブリッジの場所など分りようがない。

 「・・・う〜〜む、ナマモノの中だから微妙に気配がわからん!!

 「それは威張ることじゃないよ」

 「手当たり次第ぶっ壊していくか♪」

 「それもそうだね♪」

ドッカン♪ バッコン♪

建材が壊れぶっ飛び更なる破壊を生む。

下手すれば一緒に沈没するというのに二人にはその恐れは一切無い。

何か、武装した戦闘ニンギョウが出てきたが二人に適うはずもなく省略に

微妙に手加減されて無力化に隅で山と積まれてある。

そして、幾度と今度吹っ飛んだ建材は其の空間へ繋がる通路の脇へ突き刺さった。

狙い済ましたかのように目的の似非紳士の側へ。

「・・・・・・」

 「おやおや、やっと出てきやがったか、似非紳士がよっ!!!」

 「さて、お手並み拝見といこうか・・・」

「さ、最近の淑女は礼儀がなっていないようだ。

・・・フム、龍女に生命力溢れる熟女。実験体に申し分ない」

少しでも己の優位を保とうと似非紳士は余裕を見せる。が、所詮、虚勢。

 「御託は寝て言え。貴様は臥龍の逆鱗に触れるに収まらず怒りに触れた。

貴様には一哉の弁解の余地はない! 俺が裁く!!!

貴様を蹂躙する! 破滅させる!! 抹殺する!!!

真龍騎ライ=デステェイヤーの名の元に、妾龍イリアがっ!!!

さて、小便は済ませたか?神様にお祈りは終わったか?

部屋の隅でガタガタ震えながら命乞いをする準備はOK?」

「ま、まてっ、私を殺しても」

ドゴッ

とイリアのアッパーに似非紳士の身体が浮く。

 「・・・先ずは、希望都市へ来る前に行った悪事の分。そして」

オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ

オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ

オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ

猛ラッシュに似非紳士が踊り肉塊へと変っていく。

 「これが、希望都市で自ら己の命をたった誇り高き女達の分。そして」

「えぶしっ!!?」

デコピンで中返り。

 「一応、此処の貴族達の分。それから・・・」

見事足で着地させられた元似非紳士の視界に納まるのは、腰溜めに拳構えたイリア

「しょ・・・しょりゃぁ・・・」そ・・・それは・・・

 「これは・・・俺の妹を巻き込んだ分。 遠慮なく行って来い、大・霊・界」

「ぽぎゃ!!?」

龍破一閃

イリアの放った拳は、元似非紳士を弾丸へと変えて壁を粉砕し・・・

 「うしっ♪」

ゴチン♪

 「うしっ♪ じゃないよ。 これ、もう致命的じゃないか。沈むよ」

 「ソシエだって喜んで破壊した癖に・・・」

 「・・・・・・。よしっ、めぼしいモノだけでも回収して撤収するよ!!」

 「・・・・・・。余り目ぼしいモノはないだろけどな。コロコロ位置変えてたから」

そして、それはイリアの止めで完全に海の藻屑へと変わるのだった・・・

 

 

 

清潔に小奇麗な部屋、其処へ燦々と降注ぐ陽がベットに寝た彼女の目覚めを促す。

規則正しかった寝息が乱れ

 「・・・ふにゃ」

 「目がさめたようだね、子猫ちゃん」

 「フミ・・・、・・・・・・、・・・っ!!? ソシエしゃっ!!?」

 「あ〜〜、コラコラ。先ずは、落ち着きな」

主の存在に、寝起きからオッカナびっくり飛び起きた彼女 猫少女マヤは

噛んだ舌に涙目を浮かべて主ソシエの窘めるままに頷くしかない。

 「数日前マヤは重傷を負ってイリアに連れて帰ってきた。

アレの頼みだから、何故自分で帰ってこなかった、傷を負ったかは聞かない」

 「・・・・・・」

 「それで・・・イリアは既に此処にはいない」

 「え・・・」

 「記憶が戻って、帰るべき処へ帰った・・・ただ、それだけさ」

 「そ、それは当然ですよね・・・」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

マヤは小さな身体を更に小さく丸め俯き悲しみを堪える。

恰も捨てられて寒さ震える子猫のように。

 「・・・それで、まだ話は終わっていないんだけどね」

 「・・・え?」

 「イリアからマヤだけにプレゼントだよ」

ソシエがマヤへ直接手渡すのは、丸で黒曜石のような美しい欠片数枚。

 「これは?」

 「妾龍の鱗さ」

 「・・・は?」

ソシエの答えにマヤは思わず目が点。

妾龍ということは、即ちイリアがやはりそうだった事であり

だからといって、人が鱗を落とすなどコレ如何ほど?

 「いらないのなら私がもらうよ?

 「あああっ、い、いります!! 私、いります!!

 「ふう・・・残念」

妾龍の鱗はソシエの手からマヤの手の中へ。掌にあっても確かな硬質に存在した。

 「イリアお姉さま・・・・・・」

 「私は、泣くなとは言わない。

・・・でも、満更泣く必要もないと思うんだけどね。

まぁ、一人でジックリ考えな」

 「はい・・・」

哀しくないはずがない。しかし、哀しいだけでもない。

一時とはいえ姉妹の絆は確かにあったのだから。掌に確かにあるのだから・・・

姉妹が再び巡り合えたかは定かではない。ただ、絆を失う事がなかったのは確かである。

 

 

<<<おまけ>>>

 「記憶を失った貴女もよかったけど、

今の凛々しい貴女も抱いて見たいねぇ・・・(じゅるい」

 「んな事、まっぴら御免だ!!! 全く、記憶を無くした俺はなんちゅうことを〜〜」

 「フフフフフ、イヤよイヤよもスキのうち♪」

 「いやっ、もう二度と抱かれる気はねーから!!!

うう、腹のスカスカを思い出すだけでも嫌悪感が・・・」

 「フフフのフのフ♪ そうやって悶える貴女に私ぁ萌え萌えだよv」

 「っ!!?」

 「ほらぁ・・・また・・・可愛がって・・・やるからさぁ・・・」

 「服を脱ぐな!! にじりよるな!!!! 手をワキャワキャさせるなっ!!!!!

 「そうやって怯える貴女に更に萌え萌えだよv」

 「チヌを生やすなっ!!!!!! ・・・って、チヌ、また生やしてるぅ!!!???

 「フフフ、当然v 貴女を逃がすわけにはいかないからね♪

此処で快楽漬けに・・・その為に態々この娘達にも着けさせたんだよ♪」

 「「「「「はぁ〜〜イ♪ イ・リ・ア、お姉様♪」」」」」

 「ゴプッ!!? ふ、ふたなり、部隊かよっ!!!」

 「っと、いうわけだから・・・」

 「「「「「私たちの筆卸、オ・ネ・ガ・イ・しま〜〜す(/////▽」」」」」

 「いやじゃ〜〜!!! もう、そんなこと出来るか〜〜!!!

 「うっぬっ? 素早い!!?」

 「そんなにヤリたきゃ、ヤリたい者同士でやってくれ!!!

ははは、あ〜〜ばよ、とっつぁ〜〜ん♪」

 「「「「「ああん、イリアお姉〜〜さまぁ」」」」」

 「くっ・・・逃がしてなるものか!! 貴女達、イリアを捕まえるよ!!!!

 「「「「「はいっ!!!!」」」」」

こうして、妾龍の伝説に新たなるページが刻まれるのであった。

・・・・・・どっと御祓い? くわばらくわばら

 

 

 

・・・・・・某所、禍々しいまでに瘴気満ちた研究室

「おや? 死んでしまったか・・・。

・・・全く仮にも私の分身なのだから、もう少し手際よく出来ないものか」

似非紳士が愚痴る。スーツ姿で手術をしながら。

「しかし、ソシエ=ローズを手駒に出来なかったのは痛い・・・

・・・妾龍イリア、一目で看破するとは・・・中々に興味深い素材だ・・・」

されるのは一人の少女。麻酔をかけられず直に脳を弄られてコワた顔は液垂流しに無残。

「だからといって、あの都市も鬼門、あの町も鬼門・・・全く持って度がし難い!!!」

ぐちゃ

似非紳士の激情と共に何かが潰れる音で、既にコワれていた少女は息を止める。

「おっと、手に力が入りすぎてしまったか・・・

・・・脳の一部が潰れてくらいで死ぬなど、なんて軟弱な。

大してデータも取れはしない・・・次はもう少し持ってくれればいいが」

そして、哀れな少女に何の感慨も持つ事無く似非紳士は闇へ消えていった。

手術台に残された少女の遺骸。それも、自動的に真中で割れた手術台の下へ落ち

ドボンとエキタイの中へ堕ちていく・・・特殊な波長で残らず溶けていく・・・

そのエキタイの入ったタンクから更に伸びていくパイプには様々なシリンダーが。

中身は、怪物やヒトガタが一から培養されているものもあれば

内臓等を剥き出しにされてもなお生かされ苦悶する知性を有する者達の姿までもあった。

同様の犠牲者を糧として供給され、強引に命を繋がれて・・・・・・

・・・其処は惨酷なオモチャ箱。

狂気の実験室。

其処に救いの光明は・・・ない。

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