「妾龍 来訪」


薄暗い部屋ベットに横たわる男の側
恰も召喚されるが如く舞い降りる燐光より現れるのは黒髪の女。
目鼻立ちがハッキリした顔に絹肌、御誉辞抜きでも美女の部類にはいるだろう。
対し、美女登場にも関らず平然と寝たままの男は誉辞でもハンサムとは言いがたい。
その情けない顔さえしていなければ・・・
「わ、態々言わなくても解るよな・・・(ゼぇゼぇ」
 「おう。 ・・・大丈夫か?」
文字通り以心伝心に、男の考えていること,容態など聞かなくとも女には解っていた。
それでも聞かずにはいられないほど男の様相は悲惨の一言。
実は単なる流行風邪で、数日寝ていれば問題なく治るのだが。
「だ、だめ、俺、もう死ぬかも・・・」
 「大げさな・・・まぁ、それで俺も元気なわけだからな(苦笑。
 じゃ、ご希望通りにチョックラ行ってきますわ。」
「おう・・・後、コレ持ってけ。小遣いだ。
・・・俺の小遣いでもあるから無駄遣いしないよう」
 「ヘイヘイ(ぱたぱた」
「そ、それと・・・俺の敵を・・・・・・頼む(パタ」
事切れた男に、流石の女も何かを堪えるかのように目を伏せ・・・後は立ち去るのみ。
後、部屋を支配するのは静寂のみ・・・と、事切れたはずの男は目をパッチリと開け
「・・・観客がいないと・・・つまらんなぁ・・・(寂」
・・・男、芸人さん?

町から随分離れた教会、その礼拝堂で一人の若い神父が雑用をする平凡な光景があった。
そこへ異物混入に扉を開けて入ってくるのはマント姿の・・・
「・・・ようこそ、教会へ。」
 「あっ、いや、俺は教会に用があって来たわけじゃなくって・・・」
思った光景との違いに戸惑う者に、神父の慣れたもので察し
「では、・・・ご依頼の方ですか?」
 「いや、依頼ってわけじゃ・・・という事は此処で正解なワケか。
 ・・・彼等に会いたいなら」
こればっかりは流石に神父も予想を裏切られ、マントを除けて曝した顔は
彼らに相通ずる意志の強さ モノノフを思わせる凛々しい美女。
 「いるかい? ユトレヒト隊の皆は」
ユトレヒト隊、独立愚連隊(誤)の冒険者グループである彼等は様々な活躍していた。
それ以前の経歴も冒険譚に謳われているだけあって、何処かの国が勧誘に来ても
おかしくなく・・・神父の案内で二人共々裏の屋敷へ。
其処で日常家事に携わる二人の娘、大人しげな金髪娘と着流しの黒髪娘は
気配に気付くと手を休め迎えに
 「お客さまですか?」
「はい、ご依頼ではないそうで御用件は直接この方から。私は務めがありますので・・・」
関して自分は邪魔になるであろうと、神父は三人を残してその場を去っていった。
二人の娘、キルケとクローディアは訪問者を見て違和感に一時思案。
それでも目の前の高身長にも関らず優しげな美女に、やはり見覚えはなく・・・
 「あの・・・以前何処かでお会いしましたか?」
 「んや、初対面。俺はイリア。 よろしく、キルケ、クローディア」
 「「!!?」」
当人達が覚えが無くそう言う以上やはり初対面のはずなのだが
それでも良く知った感であり・・・
 「クラーク・・・というより寧ろロカルノに用件があるんだけど」
 「今、三人は一寸用事で・・・直ぐ帰られると思います。 ・・・って」
その雰囲気,感に思わずポロリ。
初対面で身分を明かしていない以上、用心していたはずなのだが
 「そう? なら帰ってくるまで待たせてもいいかな?」
 「はい、どうぞ。 ・・・あっ」
そのつもりはなくとも良く知る相手に対するかのように思わず
二人とも知る相手に対しても礼儀正しいので、それでも問題なかったり・・・。
普通なら世間話などして適度に時間を潰すことも出来るのだが
二人は戸惑いにイリアを放置せざるえなく、遠巻きに見ては笑み返す事しばし
漸く帰って来た三人 クラーク,ロカルノそしてセシルに二人は跳びつくかのように
 「ロカルノさん、お客さまですっ!」
 「ロカルノにお客さんって、いつものじゃないの?」
「私に? その予定はないはずだが・・・」
 「それが初対面のはずなのですが、美人の方で・・・」
 「ナヌっ!!?」
それは聞き捨てならぬと飛び出すセシルに、わかっていても皆出遅れてしまい・・・
イリアの前、激走に急ブレーキで止り不倫かと問い詰める以上に思わずマジマジと
 「・・・・・・」
 「・・・・・・、何?」
 「・・・・・・、あんた誰?」
 「一応とはいえ初対面の相手に対し、失礼なやつめ」
 「あんたなんかに言われたかないわよっ!!?  って、やっぱり誰?」
皆が追いついた時には既に二人は対決に、あのセシルですら知っても知らぬ相手に戸惑う。
そして、クラーク,ロカルノも同様。 セシルを抑えロカルノが代表に
「私のお客との事だが・・・失礼だが私は君の名前を忘れたらしい。」
 「大丈夫、初対面だから。」
「??? それでも何処かで御会いした感じがあるのは何故だ・・・」
 「ああ、それは・・・自分の名はイリア。彼の命により特使として参った次第」
一転、マントを脱ぎ礼儀正しく。その姿は丸で軍人のような戦闘服と巻きスカート姿。
その手に携えるのは鞘に収められた破壊剣で、その主はこのイリアではなく・・・
戦士が己の得物を預ける以上、それは信用を置ける者であることの証明であり保障。
「なるほど、ライ、シウォング王 真龍騎公殿の遣いだったか・・・私は」
真龍騎公ライ、新進気鋭 希望都市国家シウォングの民より祭り上げられし主であり
クラーク隊も友と言えるだけの面識があった。 約一名は迷惑かけまくりだったが・・・
礼儀に従い、一応自己紹介をしようとするロカルノを手で征し
 「ああ、堅苦しいのは無で紹介も結構。ライからみな聞いてるんで。
 特使といっても、政治的な意図はなく単なる物見だから」
「・・・そうか。随分前の事なのに昨日会った感じだが・・・ライは元気か?」
 「ああっ、今流行風邪で死んでるから(パタパタ。 だから俺が来たわけで」
 「ケケケケ、イイ気味だナンチャッテ王め」
 「ちっ、元々気に食わないけど・・・やっぱり気に食わねーなっ」
 「オウ、上等だ。教育してやる」
バチバチと怨敵がごとく睨み合うイリアとセシル。
一触即発で埒があかないのでロカルノがセシル抑込みに、変わってクラークが話を
「初対面でも知り合いの感じがしたのは合点がいった。
けど、ライの屋敷で一度も会った事はないよな? 紹介されてもないし」
 「まぁ、その時は俺が動く必要があるとも思ってなかったし
俺自身、身内にすら正体を公に出来ないもので・・・」
「・・・イリア、何処かで聞いた事があると思えば、一度だけ世間に姿を現し
王国ヴィガルドの失姫を護って共に姿を暗ませた「妾龍」の字で呼ばれた女傑?
公式発表では共に死亡と・・・健在に国を捨てたとの噂もばら撒かれているが」
ロカルノやクラークの事である。今ある情報から大方の真実は見えているだろうが
それを態々口に出すほど野暮な性格でもない。「失姫」の正体をばらすほど・・・
 「ああ、そんな風にも呼ばれちゃってるな(苦笑」
その顔に浮かぶ苦笑は嘘偽り一切なく彼等に相通ずるものであり、信用に値した。
ただ一人を除いては。
 「・・・(このアマ、絶対泣かせちゃるっ! 
差しあたって・・・バカ殿の得物を隠して共々(邪笑」
賑わう話で放置に忘れ去られた事を幸いに、セシルはコソコソと隠れて床を這い
イリアが座る椅子に立てかけられた破壊剣「神狼牙」に切迫。
そしてそれを持ち去ろうと接触に、バランスを崩した鞘入りの剣はゆっくりセシルの背へ
 「あっ・・・ぐえっ!!!??」
カエルが踏み潰されたかのような声に一同の注目はそれに向く。
すなわち、剣に圧し潰され無様に這い蹲ったセシルへ。潰されるほど大きくないのに。
 「・・・・・・何やってるの?」
 「し、死ぬ・・・コレ、重っ」
・・・・・・・・・
 「まっ、セシルさんたら冗談ばっかり」
 「セシルさん、それは幾ら何でも・・・」
「中々オチャメが聞いてるぞ(チパチパ」
知ってか知らずか一瞬の間を置き、皆の顔に浮かぶ笑み。
そして、真相を知るイリアは
 「・・・・・・ふっ」
見下しに目あった瞬間、鼻で笑いやがったぁっ!!!
 「おっ・・・みゃえぁぁぁぁぁぁぁ!!!(ゴゴゴゴゴゴ」
それでも憤怒にメキメキと空気を震わせつつ立上るセシルに、イリアもちょっと驚き。
感じる重量は、当人50人分くらいのはずなのだから。
そういう意味では性格に難ありクサまくりにケダモノであっても、英雄という事。
ヤレヤレ仕方ないとばかりに剣をヒョイっと奪われ今度はセシル、バランスを崩し
 「ふぎゃっ!!?」
らしく無く、後転に猫を踏み潰したような声。
こればっかりは付き合いが長い面々も目が点に、
その前で俯き加減に顔を見せず立上った金髪美女(誤?)は黙したまま
場を去ってしまった。
 「・・・やりすぎたかな。 泣かした?」
「ま、まさか・・・それこそ鬼の霍乱。 まさか・・・な(汗」
ロカルノ、相方ながら 否、相方だからこそ酷い言い様である。
だが、そんな心配も杞憂に直ぐさま戻って来たセシルは完全武装に
 「決闘しろ(スチャ」
抜き身の剣を妾龍に突き付けた。 目がマジで。
 「おやおや、泣いて逃げたと思えば逆切れに逆恨みか?」
返事は一閃に、パラリと飛ぶ髪の小房。 
「セシル、良く知って迷惑かけなれた仲とはいえ失礼だ」
本気でマジである事に、流石に慌て止めるロカルノ。それを大丈夫とばかりに
 「どうせ何時かは決着をつけなければならない仲、丁度イイ。
・・・言っとくが俺はライ並に強いけど、ほど優しかねぇぞ」
 「上等だ。ケチャンケチャンに叩きのめして、二度ど減らず口を叩けなくしたる」
もはや其処にいるのは二人の美女ではなく戦士。 否、戦獣。
マジになった二人を止められるはずもなく、寧ろ止めても遺恨を残すことは確実なので
場所を一転に、屋敷近くの大広場を決闘場で二人の魔戦士が立ち向かう。
聖騎士セシルが持つのは氷雪の魔剣「氷狼刹」。
対し、戦騎龍妃イリアがもつのは神殺しの片刃破壊剣「神狼牙」
ではなく、腰から抜き放った短剣。片刃直刀を峰合わせに基には珠輝くもの。
それでは流石にハンデかと思ったのかセシル。
 「いいの? バカ殿の得物を使わなくても」
 「所詮アレは借物。女の身体で早々使いこなせるものじゃない。
 今の俺の得物はこっち。・・・女は見た目だけじゃないんだよ。見た目だけじゃ ね」
 「へぇ・・・それを言い訳にしないでね。」
蒼く輝く氷雪の魔剣に、空中に生まれるのは幾つものツララ。
瞬後、撃出しにイリアを掠って彼方へ。そして、その頬に走る一本の朱線。
 「・・・へぇ。」
 「泣きつくのは今のうち・・・」
口元まで流れてきた鮮血をペロリと、今度はイリアが短剣から光を放って
魔光の刃の破壊剣を片手に、もう片手の剣指でセシルを指す。 と
今度はセシルの頬にピッと一本の紅線が。しかし、その程度予想範囲内に動揺なく
氷雪の魔剣を地に突き立る。と、共に地中をビキビキと走る何か。
それも即一閃に印を斬ったイリアに、中心とした円上で停止でジュゥと音を立てるだけ。
 「舐めてるのか? 言ったろ、俺はライ並に強いって」
 「そうね、一つだけ先に謝っておいてあげる。貴女を舐めてた事を・・・」
 「・・・ついでに他のツケに対しても謝れ」
 「だーれがっ!」
 「だろうな。 だから力づくで謝らせたるっ!!」
 「やってみろっ!! 全部ヤリニゲだっ!!!」
そして、もはや完全本気に戦叫を上げてぶつかり合う美しき闘女神達。
氷の矢や光の矢が飛交い、剣が唸りをあげ鍔競り合う事態に何者も手出し無用。
観戦ですら流弾に素人では危険きわまりなく
 「お二方が此処までツワモノだとは・・・。兄上、このままでは」
「確かに、このままではドチラかが・・・。疲れ果てるのを待って皆で一気に抑えこむ」
「・・・ああ、それしかない。背に腹は変えられないからな」
 「うわっ、その前に、私たちの身の方が危険かも・・・」
「「「・・・確かに。」」」
三人とも得物と携えて適度に距離を取り続けてなければ初っ端から藻屑と化してるだろう。
二人ともそんな事を意識していなくても・・・それ故に・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
 「っ!!?」
 「・・・誰、隣にいるヤツは?」
 「誰って・・・手前、イリア!!?」
 「そういう手前はセシル!!?」
 「「このっ!!?」」
闇の中、支配するのは決闘に負傷した身体の激痛でノタウチ悶え喘ぐ娘達の声のみ。
・・・暫しお待ち下さい・・・
 「・・・結局、今回の勝負は引き分けか」
 「へんっ、そうしておいてやるわよっ!」
 「それはコッチの台詞だっ!!」
・・・双方激痛で・・・(省略)・・・暫しお待ち下さい・・・
 「・・・イリア、あんた中々やるわね」
 「セシル、貴女もな。後は性格に難さえなけりゃ・・・」
 「うっさいわねっ。処で、何で其処まで私の事目の敵にするのよ?」
 「妹、弟分犯されりゃ誰だって・・・」
 「可愛いモノを愛でただけじゃないっ」
 「愛でる事自体は悪いとは言わないけどね、手段が強引過ぎる。」
 「し、仕方が無いじゃないっ。可愛いんですもの。 つい・・・」
 「だ〜〜から、本能のみで生きるケダモノ呼ばわりされるんだ手前は。
 ちょっとは被害者やその身内の気持ちでも考えてみれ。 そうだな・・・
 ロカルノが男に犯されたりしたら、如何よ? 実際ありえないだろうけど
 事ある事にトラウマって怯える姿見てりゃ、嫌でも・・・」
 「そんなの。・・・そんなの・・・酷すぎるっ」
怒ってるのか、まさかに泣いてるのかカタカタと歯がなる音と共に震えるセシルの声。
 「な? ちょっとはライや俺の恨みっぷりも理解できるだろ?」
 「・・・でも、男に襲われるのと女に愛でられるのじゃ全然ちゃうわよ。
男に襲われるのと違って女に愛でられるのは、清いものだから」
 「・・・・・・手前は腐女子ですか(呆」
 「・・・・・・。帰ったらバカ殿に伝えといてくれる?」
 「何?」
 「その・・・あんたの家族に手、出しちゃって悪かったわね って。」
 「・・・それだけ?」
 「今後は気をわよっ!! 一応・・・」
 「一応、ね。 へいへい、伝えておきましょ。一応、セシルは反省したって。一応」
 「一応一応ってうるさいわねっ!!」
 「ふぅ、もう少し大人に理性的ならイイ奴なんだけどな・・・」
 「あらん、私は大人よぉ。 確かめてみるぅ?」
 「はいはい、芸風はおいといて、女と乳繰り合う趣味はないので遠慮させて頂きます」
 「・・・ちっ」
 「何故舌打ちするっ!!?」
 「ああ、気にしないで。 貴女、無垢っぽくて結構好みなだけだから・・・(クスっ」
 「うわああああっ!!!」
・・・双方激痛で・・・(省略)・・・暫しお待ち下さい・・・
 「処でイリア貴女、何者よ? バカ殿の姫とは・・・ちょっと違うみたいだしね。
 部下とか家来ってわけでも全然違うでしょ」
 「へぇ、意外に鋭い。 んで、何と思うよ?」
 「あ〜〜、う〜〜、兄妹(姉弟)?」
 「何で?」
 「貴女がバカ殿の話をするときの目って、兄妹のそれっぽいし」
 「ふむ、まぁ、半分ハズレでアタリかな。」
 「何よソレ? 双子?」
 「それも半分ハズレでアタリって事で。イイ女って秘密の一つ二つ持ってるものやん?」
 「なんじゃソリャ!!?」
 「まぁ・・・それで誤魔化されてくれい。・・・みたく肉体関係だけは絶対無いから」
 「・・・それはそれで面白いかもしれないわね。 禁断の愛に燃える王兄妹なんて」
 「・・・・・・」
 「無視なのかよっ!!!」
 「・・・・・・z・・・z」
 「寝てるのかよっ!!?  まったく、私も・・・」
拳(誤?)で語り合い二人は和解し、静寂が支配する部屋に響くのは二人の寝息のみ。
因みに勝負はというと、マジ本気の激闘の挙句に外野が手を出す間もなく
最後の最後まで全力に、得物カラぶって正面衝突に昏倒しちゃってたり。
いやはや、傍迷惑な二人である。


「さって、二人の様子は〜〜、っとぉ!!?」
着乱れ白浴衣にスレンダーでもムチムチな肢体を曝し唇半開きでスヤスヤ眠るイリアに
抱着き片乳鷲掴み、枕にして脚を絡め眠るシャツカットパンツ姿のセシル。
朝一に、日頃の鍛錬そっちのけで居間へイリアとセシルの様子を見に来た
クラークはその光景に硬直せざるえなく。 
てか、普通は眼福ものの光景なのだが素直に喜べない
以上に目の毒なのに動けないのは現実と理想の狭間に嵌ったせいなのだろうか?
「??? クラーク、如何した?」
と、やって来たロカルノも同様に、直視によって思考停止。
裏表含め相方の大抵の姿は見慣れていたはずであった。しかし、眠る闘女神は美しく
「・・・如何する?」
「如何するも・・・起こすしかないだろう」
「・・・俺には無理だ。 ロカルノ、頼む」
「ふっ、私がか? ・・・故人はいい事を言ったものだ」
「何?」
「触らぬ神に祟りなし」
「・・・この場合は寧ろ、泣く子と地頭には勝てぬ?」
マヌケに立ち尽くすのみの男二人、周囲の光景がフィードアウトして逝くのみであった。
やがて起きてきたキルケ,クローディアに回れ右に叱られるまでずっと。
そして朝食の卓、ラフな姿いつもの顔ぶれに+未だに寝惚け眼な女客人。
その格好も軍服な戦闘服から寝起きから着付け直され寝巻きの白浴衣。
サイズは少し小さめなのか、その豊胸の谷間クッキリ〜〜♪
 「ううんっ!!」
 「兄上・・・」
「な、何? 別に見惚けてはないぞ!!」
 「ええ、未だ ですけど」
 「そう人を見るのは失礼かと」
チラチラと様子を伺うクラークに釘刺す二人。別にクラークは告白通り見惚けていた
わけではなく、昨日のツワモノぶりから一転に無防備な感ゆえ様子を見ていたのだが。
・・・二人はそれに気付いていないらしい。 大人では有得ないほどの無垢ぶりに。
そして、それにボ〜〜っと見惚ける者がもう一人。
「昨日の今日で・・・喧嘩をふっかけないのは結構だが、そう見続けるのも失礼だぞ」
 「え? ロカルノ、彼女に違和感 感じないの?」
「??? 何を言っているんだ、お前は?」
ロカルノとてその違和感を感じていないわけではない。しかし、それを異常と取るか
個性と取るかの違いなだけ。これでもケダモノの主(誤)なだけに、今更 である。
 「あ〜〜〜、悪い。 如何も朝は苦手で・・・丸で子供みたいって良く言われる」
「「「「・・・・・・」」」」
そのホニャラ〜〜な感はまるで何処ぞの姫君なまでの抜けっぷり。
否、普段の凛々しい感と違い表情が余りにも無垢で優しすぎるのだ。
聖女みたく、まるで全ての罪を受け止めても微笑んでいられるかのように。
 「俺が今着てるコレって、クローディアのか?」
 「は、はい。」
 「浴衣って中々イイものだなぁ・・・ありがとな」
 「いえ、気に入って頂き恐縮です。」
 「俺達の傷、治してくれたのはキルケ?」
 「はい、そうですけど見た目傷を塞いだだけなので激しい運動をなされると
 傷が開いてしまうので当分は安静にしていだかないと・・・」
 「・・・だろうねぇ。イヤイヤ、これだけ傷を塞いでくれただけでも感謝もの。
 後は自分で如何にかするから。傷が癒えるまでうかうかもしていられないんでね」
 「自分で如何にかって・・・(汗」
退魔士とはいえキルケも戦闘でなければ並より上の魔導士である。
それが癒しきれなかった傷を治す と?
質素でも栄養ある朝食も終わり、今後の方針を決めようとその前に
 「先、傷だけでも完治させてしまおうか。俺だけも何だし・・・セシル、かもん。」
 「えっ、私も?」
もはや用無しに朝寝しようとしたセシルを呼び止めるのはイリアに
二人連れ立って部屋の中で最も開け、物がない場所へ。
「・・・キルケの術は、魔導により患部の治癒力を促す。
だが、俺の術は外気を掻き集め己がモノとして命そのものを活性化させる!!!」
聖女の表情から一転、モノノフの顔へと戻ったイリアの周辺へ展開する魔法陣。
足元から八方へ、更に星の角より生じた光柱は二人の頭上で交わり球上へ。
そして集う。その凝集に燐光とまでになった気が。
「魔女で師匠級というのがいたが・・・世界は我、というヤツだな」
「ほぅ、流石。 魔導士としては支配者級か?」
昨日の戦闘センスの上にこの魔導のセンス。
専門魔導士ではないため術的には単純なハズなのだが、術そのものが
当人の意志へ呼応して高度な術へと自己進化。故に師匠級ではなく支配者級。
関心して見るクラークとロカルノに対し、クローディアとキルケは
 「あの格闘の上に魔導まで・・・勝てない・・・女としても(泣」
 「ああ、イリアさん・・・私のクラークさんを取らないでね(泣」
相手は生身(?)ではなく虚の女なので、その心配は杞憂でしかないのだが
娘達がそんなことまで知るはずもなく、皆が見守る前で既に自動制御に
二人の闘女神は目を閉じ向かい合ったまま光に煽られ、剥き出しの腕や脚
四肢から身体へ絡みつく光に悩ましく熱病に魘されるが如く肉体を震わせ・・・
球型魔方陣の中、触手の如く柔肌を貫き這いずり廻っていた光は事を終らせ
用済みな感に撤収、と共に収縮消滅する魔方陣。
二人の闘女神はそこから解放され空から崩れ落ちるように地へ。
二人は情事の後のように汗ビッショリで抱き合い座り込んだままピクリとも動かず・・・
「・・・二人とも大丈夫か?」
 「ああ・・・一応ね。 傷は完全に癒えたけど・・・誤った。 体力空っけつ。
 つーわけで出発は後日に、もう数日泊めてもらえないかい?」
「それは構わない。こちらもゆっくり準備ができる。」
 「悪いね、ロカルノ。手間かけさせて」
「今更・・・私の相方も迷惑かけまくっている事を思えば、な」
 「面目ない・・・」
イリアに抱締めたれたセシルが抗議にジタバタ暴れているが
体力が尽きてしまった身体ではソレすらままならず、恰もか弱き娘のよう。
旅の準備のために客を含め急遽休日な日となってしまったのであった。
兎に角、ツカイモノにならない大の女二人を居間に放置に部屋を完全に片付け。
客は差し置き元々いたセシルが役立たずになっていても全く支障がないのは
日頃の活動の賜物(?)といえるだろう。 あえて誰、とは言わないが・・・
クラーク達の屋敷にも、そのモデルがモデルだけに立派な風呂がある。
人数の割に中々に広く優々と湯を称える湯船と洗場なのだが
大抵は、身体を洗うのが早い男性陣が先に女性陣が入るのが常なのだが
今日も常に習い、先人切ってクラークが
「〜〜〜♪ 〜〜♪」
鼻歌を奏でつつ脱衣室で服を脱ぎ脱ぎ。全裸でいざ風呂へ。そして戸を
ガラリ
 「よう(スチャ」
「・・・・・・はい?」
湯船に浸かり麗乳を隠す事無く湯にぷかぷかと浮かして応えるのは黒髪の美女。
男にその黄金律な女の身体を曝しても全く動揺しないのは余裕か無垢すぎるのか・・・
 「・・・・・・、どしたの?」
「てっ、てっ、何でイリアが此処に!!?」
慌て一応前を隠した処で、今更マヌケな格好であることは変わりはない。
 「そりゃ、先に入れって言われたからな」
「・・・誰に?」
 「セシル」
「ぬ・お・お・お・お・お・おっ、せぇ〜しぃ〜るぅ〜!!!」
激怒に手をワナワナとさせちゃったので前を隠すものが落ちゃったり
 「んで、如何する? 一緒に入るか?」
「・・・・・・はい?」
たゆん♪ ぽよん♪
と、湯船に背を預けいた状態からうつ伏せに縁に腕のせ枕に、その向うには
黒髪がうねる白い背と丸く柔らかそうな臀部とムッチリな太股・・・
モノノフ、聖女、そして今目の前にいるのは妖婦。当人にはそのつもりはないのだろうが
湯で火照った肌に気だるそうな表情は正にそれ以外何者でもなく
 「だってなぁ、何時までも全裸でツ立っていても仕方がないだろ?
これだけの風呂、一人で入るのも何だし・・・別に俺は気にしないけど」
「俺が気にするって!!!」
 「へぇ・・・そういうの、気にしないタイプに見えたんだけどなぁ」
「水浴びなら兎も角、風呂で二人っきりは流石に・・・」
イリアは御誉辞抜きでも美女ある。しかもその肉体は食指そそりまくりにムチムチ。
クラークに幾らその気がなくともこの状況ではそれを何時まで保つことが出来るか。
 「二人っきり? 皆も来るけど・・・」
「・・・へ?」
と、戸を開けて入ってくる三つの気配。ギギギと錆付いた動きで顔のみそちらへ向けると
お約束にお約束な面々
 「兄上・・・幾ら兄上でもこれは・・・」
 「クラークさん、私というものがありながら ノゾキ だなんて・・・(オヨヨヨヨ」
「ち、違うっ! ふ・・不可抗力じゃないか!! 俺が悪いのか!!!」
 「ほんとに不可抗力〜? 意外にわざとだったりして・・」
「セシル手前、何言うっ!!!」
 「確かにクラークは女性に対しては真面目だけど、相手が美女。
第一、フル○ンじゃあねぇ・・・しかも、お元気?」
 「「・・・・・・、オヨヨヨヨ・・・」」
「チクショウ、どうせ全て男の俺が悪いんだっ。うわああああん!!!」
相手はオ下劣ケダモノ女に妹分に彼女。
如何みても勝ち目は無いので、歴戦の英雄は一目散にランナウェイ。
 「・・・、別に一緒に入りゃいいのに」
 「「!!?」」
 「お、恐るべし妾龍イリア(たじ」
 「???」
・・・寧ろ、関して気にしなさすぎ?
と邪魔者が消えた事で娘達は一同にして集い、女の子数人集ればカシマシ。
別にプロポーション云々など気にする事無く好奇の目に曝されていても平然に
湯船の縁に凭れるイリア,同様にそれでも身体は戦士の筋肉を秘めたセシルに対し
キルケやクローディアは如何しても見劣りする感の身体をタオルで隠したまま。
 「・・・お二人ともプロポーションいいですね。如何してなんですか?」
 「うふふふ、私はロカルノに愛してもらってるからよん!!!」
 「それを言うなら私はクラークさんに・・・」
 「・・・・・・(沈」  ブクブクブクブク・・・
 「・・・別に俺は誰にも愛してもらってないけどなぁ」
 「「!!?」」
 「い、イリア殿は誰かお好きな方いらっしゃらないのですか? ライ殿とか・・・」
 「ライには流石に・・・(苦笑。 男かぁ・・・別に恋愛感情は持たないなぁ
 女同士で乳繰り合う趣味もないけど」
 「はぁ・・・(困」
 「それでそのプロポーションっていうのもちょっと反則よねぇ」
 「「・・・(頷」」
 「その辺りは・・・俺自身、反則の存在だし」
 ???
 「まぁ、人には色々あるって事で(苦笑」
 「それでも面白くないわよ。あんたにゃ何か萌え〜な対象は無いわけ?」
 「どこぞのケダモノ女じゃあるまいし・・・でも、少年は苦手かなぁ。
 健気に頑張ってる子に迫られるとド〜にも拒否できなくってさ」
 「しょ、ショタ!!? さすが、妾龍イリア(たじ」
 「なんでやねん・・・」
イリア含め全員が湯立って意識朦朧な状態でも、誰一人引く事がないのは女の維持か。
・・・単に熱でもはやトチ狂ってるだけともいう。
出来上がった湯上り娘達を居間に、男コンビも早々に風呂を上がり程よく晩餐となった。
作手(ロカルノ)が本格指向のコック並であるだけに、主菜にサラダ,スープ等が並ぶ。
 「いやはや・・・豪勢なものだ」
「ライ達の食事が見目質素なだけ。中身的にはそう変わらないはず」
 「へぇ・・・盛り付け程度にこれだけ変わるとは」
和気藹々に始った食事に皆舌鼓をうつ。
「処で、早々に出発の準備を進めたが・・・足は如何するんだ?
既に皆行くみたいになってるけど」
リーダーたるクラークの疑問も尤もに、イリアの荷物は僅かに荷物のズタ袋と得物のみ。
自身の路銀で皆の分まで馬を調達してくれるのなら問題もないのだが、心苦しくもある。
 「??? 俺は最初っからそのつもり。
まぁ心配無用。俺の脚が皆の分を集めてるはずだから」
「・・・脚?」
皆の視線が集中するのは、また浴衣姿に前あわせから零れる白い脚線美。
 「そ、脚。」
それに応えイリアはニヤリ笑いに己の脚をぺしぺしと叩くだけであった・・・
無難にその夜を越し、戸締りがすんだ屋敷の前に小荷物を携え一同が集う。
各々衣装も旅に適したものであり、イリアもマントから顔と腕を出した格好だが中は毎度。
「・・・そういえば、イリアは何で此処まで来たんだ?
他に仲間も来てなく、独りの用だし・・・」
 「俺一人じゃなく仲間と来てるよ。もっとも人じゃないけどね・・・」
そして朝の空気の中に響き渡るイリアの口笛に、何処か遠くで応える嘶き。
暫しの間をおいてやって来たのは一頭率いる馬の集団。
「野生の・・・馬?」
 「俺の脚となってくれた一頭以外はね」
進み出る一頭はイリアに頭をさげ
「ブルルルル・・・・・・」(姐御、使えるヤツを集めて来たが・・・)
「ひふ、みの・・・一頭足りない?」
イリアに一頭、クラークに一頭、ロカルノに一頭、セシルに一頭、クローディアに一頭
 「・・・馬乗れなさそうなキルケはクラークと一緒だから問題無しっ!!!」
・・・・・・
 「な、何で誰も異論を言わないんですか? 私だって一人で馬に乗れますよぅ」
 「じゃ、クローディアとクラークで」
 「私は兄上といっしょでも・・・(照」
 「それはぁっ(悶」
それはそれで困る難儀な娘・・・結局、キルケとクローディアで無事一頭になったとさ。
ダンケルクへ馬で駆ければそう時間がかかる道程でもなく順調に進み夕方には到着。
「ふむ・・・意外に早く着いたな・・・」
 「まぁ、駿馬が揃ってたからな」
「ブルっ」(恐縮です・・・)
「ともあれ、会見するには遅すぎる時間だな・・・」
 「あ〜〜、会見できるに越した事はないけど出来ればそういったモノと関係なく
 住民の国事情が見たいのが本音でね。 時間自体、そうはないし・・・」
「・・・、では皆は宿を取っていてくれ。」
 「??? ロカルノは如何するんだ?」
「予定が未定だった分、そこに差し込む隙があるという事だ」
と笑みを残し去った仮面の貴公子は、皆が宿を取り一息ついた処に合流。
 「・・・、で、首尾は如何?」
「ふっ、上々と言った処だな。今夜は私に付合ってもらうぞ」
 「それは全然OK。」
「時間も勿体無い。早速、会食へ・・・その前に衣装を整える必要があるな・・・」
 「???」
イリアの軍服っぽい戦闘服も出来なくもないが、それでは余りにも野暮ったく・・・
どちらにしろ他の面々もそういった類のドレスなんぞ持ってきているはずがない。
一同揃って王族の御用達の衣装屋へ。入った時は機能性重視であった格好も、出てきた時は
イリアは黒に金龍飾りの旗袍服。生脚の太股にベルトで固定した短剣が中々のアクセント。
セシルは色気満点肩モロだし蒼系のイブニングドレスと肩に半透明のケープを。
キルケは赤系の優雅なドレス。着飾っているので本当に姫君の如く・・・。
クローディアは椿模様の豪華な着流しで、顔半分を黒髪で隠し・・・。
男はタキシード姿は当然に、ロカルノはそれでも仮面を装着。
出迎えの馬車に揺られ向かった先は、客を選ぶ料理店。
文句一つ言われること無く通された先は一室であり、待っていたのは一組のカップル。
ロカルノに似た銀髪に優しそうな顔立ちの男と銀髪の巻き毛の貴族怜嬢な女。
そして含み笑いのロカルノが仲立ちに
「紹介しよう。私の弟、ヤスパール=カルディーノとその妻リンディス」
さり気無く紹介するのはダンケルク王夫妻。 その意図を察し、
 「私はイリア。シウォングから来ました」
正体、身分などは一切抜き。イリアが一個人として差し出すその手を握手。
「初めまして、イリアさん。こんな形ではありますが、会えて良かった」
 「こちらこそ。当初は物見だけ済ませて帰るつもりだったので・・・」
全てを察した男面々に対し、残された三人娘は疑問符。クラークの合図で黙ってはいるが。
つまりは、ダンケルク王夫妻は完全お忍びで此処に来ていると。護衛すら付けず・・・
ようやくソレに察し
 「久しぶりね、ヤス。 元気してた(ペシペシ」
 「貴女、砕け過ぎですわよ。」
 「「あははははは・・・(汗」」
「「はぁ・・・(呆」」
約一名は相手が何者であろうと大して変わらない気もするが
それでも何とか普通に会食は始り、それぞれの国事情を話しつつ料理を楽しみ
時間は過ぎていった・・・
会食が終れば、ほろ酔いの身体を覚ましつつ夜の街の散歩へ。
特に行き先も決めずぶらぶらと月下を歩きつつ
 「・・・異邦人の俺が言うべきことじゃないかもしれないけど、いいのか?」
「勿論、よくはありませんよ。 昼間はともかく夜は・・・
その点、今日は皆さんもいられるので安心できます」
先を行くのはロカルノ,セシルに、中にヤスパールを挟み、後にクラークを間に二人娘。
意識せずとも最も 護らなければならない者が中心にいる配置である。
気心が知れているだけに多少のわがままも許される最高の警護でもあった。
そんな油断か、気つけばゴロツキが集り・・・行く手を塞ぐ。そして退路も。
その身なり故、格好のカモと見たのだろう。 正体など知らずに・・・
「我国ながら情けないですが、こういった処も見れますしね・・・」
 「この手の輩は台所定番の害虫と一緒。退治しても外からやって来るもんですよ。
 まぁ、同様に程よくいるだけ健全な国って事なので・・・」
「オウオウ、何ゴチャゴチャ言ってるテメエらっ!!!」
苦笑いの面々に囲まれ話を続けるヤスとイリアにゴロツキもいらつく。
世間知らずの貴族連中かと思い嚇しがてら包囲しても、怯える予想に反し全く平然。
寧ろ、路を歩いていたら台所定番の害虫に出くわした感? と前にでるのはリンディス
 「邪・魔・ですわよ。お引きなさい」
完全見下しにその口調は命令以外何ものでもなく・・・見るも煩わしい と。
「こ、このアマ・・・おう、兄ちゃん達よぅ
有金全部と女残したら見逃してやってもいいぞ」
「ヤスとリンディス、イリアは除き一人潰一秒として・・・」
「半分は俺とクローディアで。」
「・・・ふむ、では半分は私とセシルで。」
 「何言ってるの。こんな連中、一人でも十分!!!」
「だろうが、コチラが多ければ掛かる時間も減る」
のうのうと片付ける事前提に話続ける面々に、ブチキレに刃物持ち出し
「テメエら・・・身包み剥ぐだけじゃすまさねぇっ!!!」
と下種が襲い掛かって来たところで双方に刃物の有無など関係なく、中略に
思惑と反対に繰り広げられたゴロツキ瞬潰の光景に次出てきた言葉は
「ば、バケモノめ・・・」
ある者は怯え、ある者は退き・・・それでも全く動かない四人
中でも女三人に囲まれている優しげな銀髪男を押さえれば如何にかなると思ったか
ヤスに狙いを定め襲い掛かるゴロツキ数人。 それを除けようと出るイリア,キルケ
を一挙で抑えたのはリンディス。
 「彼方がた、着眼点はよろしくってよ。でも・・・」
ゴトッ
っとそのスカートの中から堕ちるのは鋼鉄の星。流石に他の面々も目が点
 「「・・・はい?」」
 「所詮、下種の考えっ!!!」
・・・人は急には止れない。 揮う腕に星 モーニングスターは飛び、害虫
ゴロツキを諸共潰し飛ばしつつ
「へぷっ!!?」 「ごっ!!?」 「はぎゃ!!?」
慌て頭を下げた面々以外のゴロツキなぎ倒し・・・そして、死屍累々の中
呆然と立ち尽くす面々を前に、リンディスは優雅にもモーニングスターを片付けた。
 「・・・なぁ、どう考えてもモーニングスターはスカートの中に収まらないだろ?」
 「高貴な者に不可能などございませんわ」
 「スカートの中身見せなさい!きっと次元が歪んでいるのよ!」
 「お止めなさい!義理の姉ともなる貴方でも許しませんわよ!」
「・・・リンディス、私はまだこいつと婚約なぞしていない」
何事も無かったかのように雑談を続け進む一行を止められるものなどありはしない・・・
そのうち一行が辿り着いた先は、王城と街を隔てるようにある緑地の公園。
そして城を護るかのように立つのは竜騎士の像。
 「・・・これは?」
「我が救国の・・・そして国名となった英雄像です。」
古くからこの国は存在はしていたが元々はダンケルクという名前ではなく
別の名で存在していた
しかしある時、他国より侵攻してきた邪神により国は壊滅的な被害に陥る。
ついには国を支えてきた王も倒れ、住民は死を覚悟した。
その中、一人戦意を失わず主である姫を守る騎士団の団長である竜騎士ダンケルク。
幼馴染でありお互い密かに想いを寄せていた姫の為に身を挺して邪神と刺し違える
覚悟をし、姫に避難をしてくれと頼む。
しかし姫は今まで自分へ尽くしてくれた優しい男を失うのを拒み共に最後を迎えようと
すがるのだが、竜騎士ダンケルクは自分のことを忘れてくれと静かに言い大空へ。
ダンケルクは捨て身の特攻により邪神と差し違え・・・
その後、姫は彼のことを忘れられず元の場所に街を立て子を産み国へと発展させる。
国名はダンケルク、表の門では今でもその英雄である竜騎士の像が雄々しく立っており
その銅像の中にはダンケルク初代王妃の愛用していたティアラが眠っていると
言われている。そして手にはダンケルクが使用したとされる神槍が。
その槍を持つ者こそダンケルクの真の戦士として認められるとされている。
しかし、不思議な力にて未だにその神槍を抜いた者は存在しないという・・・
それでも、槍を抜けるかはカルディーノ家の成人の儀式で執り行われる。
 「へぇ・・・だから奇妙な気を感じたわけか。 得物としてはさて置き
祭器としてはまだまだ現役っぽいし・・・ロカルノはコレ抜けたりしたん?」
と、イリアは格好をチャイナドレスそのままに格好が際どくなるにも構わず
銅像の槍をペタペタ
「ふっ、それは如何かな・・・」
と細笑む仮面の貴公子の前、イリアが手にした槍が・・・
 「・・・・・・」
「ん? どうかしたのか?」
 「い、い、いや、何でもないっスよ!!!」
「???」
 「ま・さ・かぁ、壊しちゃったとかぁ?」
 「っ、まだ壊してないわいっ!!」
・・・まだ?  一体、イリアは何を仕出かしたのか!!?
「槍の儀式も成功例がない分形骸化となってますから、壊しても大丈夫ですよ(苦笑」
 「ヤスさんまで・・・だから壊してないんだって(泣」
確かに見目は全く大丈夫なわけで・・・
後日、衛兵が掃除点検で神槍に触ってもピクリともしなかったとか。
ともあれ、6人は王夫妻を問題なく送り届け無事、その日は終った・・・
・・・まさか妾龍来訪によってそれが目覚めたとは誰も気付かず。

 「・・・・・・はぁ、到着早々曇りってのはなぁ。」
「天候ばっかりは運任せだからな」
朝一に宿の食堂へ集い思わずぼやいてしまった処でコレばっかりは如何しようもない。
 「あら、萌えな子掻き集めてくれたら私が変えてあげるわよ? 雪に・・・」
・・・・・・
 「・・・、雨振る前にちゃっちゃと観光すませてしまおう」
「観光か・・・ふむ、では市場を巡りから始めるとするか」
 「さり気無く無視っ!!? (が〜〜ん」
 「セシルさん、それはより悪くなってますから・・・」
 「ちょっとした冗談じゃない。」
「・・・全然冗談に聞こえないのは気のせいか?」
 「私も・・・です・・・(汗」
もはや天敵×2に、今回バッカリはケダモノ娘も見事に出鼻を挫かれ
悪さも出来そうになかった。
文字通り市場を散策すること暫し、得るものは多く
・・・包囲が強固に何も出来ず凹みまくりな約一名はさて置き・・・
「イリア、満足してもらえたようだな。」
 「おうよ。全季節見て見たい気もするけど・・・十分かな」
「一体何を企んでいるのやら・・・(苦笑」
 「クラークさん、私は何も企んでマセンヨ〜〜。 冗談はさて置き
 折角友好条約を結んで何もしないってのも面白くないから
 技師送らせてもらおうかなっと まっ、そういうこと」
「ほぅ・・・それで、検討の結果は?」
 「大凡、農耕,牧畜系かな? 後はヤスパール王の希望次第といった処」
「ふむ・・・確かに祖国ながら、比べて生産力が乏しいのは否めないからな」
 「〜〜〜〜〜〜」
二人の間に挟まれ小難しい話をされているので、セシルはもはや這々体。
金獅子から強姦ケダモノ女までの異名をもつツワモノの意外な弱点露呈か?
・・・意外でもないか。 冗談はさて置き
「・・・でも、天気全く良くならないな。朝より暗くなってる・・・か?」
 「・・・嫌な気配も感じるし。 まさか・・・」
「まさか・・・そんなはずは・・・」
イリアとは別に、何を思い出したか仮面の貴公子ロカルノにありありと浮かぶ動揺。
そして、それに応えるかのように暗雲立ち込める空にギョロリと巨大な目玉が見開く。
 「な、何よあれっ!!?」
 「物の怪っ!!?」
 「でも、感じる気配はそんな生やしいモノでは・・・(ガタガタブルブル」
「同じだ・・・救国の英雄が倒した邪神の話と・・・」
 「・・・倒しちゃいなかったって事さ。仮にも神をそう安々と倒せるものじゃない。
英雄に瀕死に追い込まれ永眠したんだろう」
検討をつけた二人は顔色が悪く・・・
「・・・このままじゃ埒が開かない。一旦宿へ戻って策を練ろう。」
流石はリーダー、クラークに促され皆は宿へ。
しかし、待っていた使者に即一行は城のヤスパール王の元へ。
「ヤスっ!!!」
「・・・はい、先ほど王座へ直接思念で降伏勧告が送られました。
頃は丁度空に目が現れた時。 ・・・神話の・・・再来です」
一帯を支配するのは沈黙。まさか神話と同じことが起きようとは誰も思わないだろう。
その中で最初に口を開いたのはイリア。
 「・・・もしかしたら、アレを起こしたのは俺かもしれない」
「・・・如何いう事ですか?」
 「力には相応の力が現れる・・・つまり、こういう事」
!!?
一度目を閉じ、ゆっくりと開けたその目は金色の龍眼。立上る気も人のモノにあらず・・・
また目を閉じ再び開いた時には元通りに。
「・・・つまり、イリアの存在がアレを目覚めさせた と?」
 「・・・否定はしない」
 「何、バカな事言ってるのよっ!! そんな事、あるわけが・・・あるわけが・・・」
根源が目の前にあるとあって、流石のセシルも動揺する。
 「敵が何であれ、関係ありませんわ。我が軍総動員で」
と、意気込むのは王妃ながらにしてダンケルク軍最高指令官でもあるリンディス。
 「・・・止めておいたほうがいい。眷属との消耗戦で勝目がないのは見えている」
 「何を愚かな・・・」
金色の龍眼が何も言わせない。これは人同士の戦争ではないのだから。
「力には相応の力が現れる というなら、原因は俺にもある」
 「???」
クラークの翳す右手に、痣の字より紅炎とともに出現する真紅の刃の剣
「鬼神剣『九骸皇』。太古より雄なる者を狩りし剣」
 「それを言うなら、私はブレイブハーツ『氷狼刹』の主よっ!!!」
負けじとセシルが抜き放つ刃に、その珠が蒼い光を放ち応える。
「原因はこの際何でもいい。今、邪神が蘇り、竜騎士はいない。
しかし、これだけの仲間が入れば決して引けは取らない。 違うか?」
 「・・・ああ、そうだな。」
妾龍 戦騎龍妃イリアが浮かべる笑みは何処か寂しく・・・
一行は邪神対策に急遽、王城へと泊り込むこととなった。
夜のベランダから臨む空には未だ目玉が気味悪くあり
城下はそのせいで戒厳令が敷かれているにも関らず未だ騒がしい。
その光景を眺めるイリアに迫る影・・・
「・・・もう休んだら如何だ。 恐らく、全ては明日一日だけで決まるのだから」
 「ああ。・・・明日は露払いを頼む」
「何を・・・決戦に臨む時は皆でだ。」
 「ふっ・・・。どうやってあそこまで行く? 
竜騎士は天駆ける竜がいたからこそ邪神と戦う事ができた」
「ならば如何すればいい・・・」
 「俺がアレをブッ倒す。 それが出来なくとも、地に叩き堕とす」
「イリアにもアレに刃を届かせる術は・・・」
 「あるんだよ、俺には・・・反則の存在なんでね」
「・・・・・・・・・」
 「つーわけだから。 ・・・それと、セシルにゃ黙っておいてくれ」
「・・・ああ。」
知れば止めるのは目に見えている。仲間思い故に全てを押付けられる性分ではないから。
・・・しかし、セシルは聞いていた。抜出す相方を怪しみ、後を追って来たため。
これから神話になぞらえ起こるであろう出来事に身体は否応なくも・・・

翌日、再び邪神の思念に対しヤスパール王の返事は確固として徹底抗戦を宣言。
・・・その辺りも、邪神は巧みであった。 直接王のみと交渉することで
戦いに関する責任 国民の恨み辛みは王のみに集中する。長引けば・・・
何処から現れたか宣言と共に城下にうろつくのはサイクロプス達。
だが、その獲物 都市民達は既に城内へ避難済みであり
ダンケルク軍と各所で小競り合いが始っていた。それでもマトモに被害が出ていないのは
リンディスの日頃の教育の賜物と、最近大きな戦を経験したかのような戦騎龍妃の指示。
そして・・・
「この街並みに貴様達の存在は相応しくない・・・散れっ!!!」
重装騎士ロカルノがその間を駆け抜け瞬後、挽肉に液化する一目鬼達。
 「雑魚が幾ら出てきた処で・・・大将出てこい、大将っ!!!」
聖騎士セシルを一目鬼達は包囲するも揮う魔剣に氷の彫刻化。 そして、粉砕。
ついでに周囲の建築物まで粉砕されちゃったりしているが・・・大目に見よう。
 「・・・動きが鈍い。」
一目鬼の豪腕は女侍クローディアを捕らえ・・・ず、ボトリと首が転げ落ち倒れる。
俊足の神速抜刀の前では幾ら豪腕であろうと敵ではない。
 「きゃあああああっ!! こないでえええええっ!! 『ブラッティーハウリング』っ!!!」
一見不利に追い詰められていると思いきや、弱点克服で一言霊のみ魔導発動に瞬殺。
コスプレ退魔士キルケ。頼りなかった娘も今や一端の戦士であった。
 「いやあああんっ、犯されるぅっ!!」
・・・悲鳴に逃げ惑いつつサクサクと細剣,突剣で切裂く姿をそういうなら。
退ぞかず、ただ前へ進む。その者が歩いた後にはただ屍が残るのみ。
「この程度・・・何時まで御遊びを続けるつもりだあああああっ!!!」
剣聖帝クラークの戦叫に怯えの色を見せる一目鬼。 だが、容赦はしない。
相手は所詮、駒。これは倒す敵ではなく駆逐すべき物でしかないのだから。
 「全く・・・デカイのは好みじゃないんだけどね」
踊る戦騎龍妃イリアの周囲をリボン状の魔法刃が幻想的に舞う。
一目鬼が近づいた処で、接近まで許されずコマ斬れとなるだけ。
神話と異なり一騎当千が揃う今、邪神の軍などものの数ではなかった。
一騎当千達のみならず、兵達も知恵を駆使して袋叩きに各個撃破。
数十体どころか百体以上、一国滅ぼせるだけいた一目鬼はモノの数刻で数少なく
故にか、暗雲の目玉はカッっと見開きその瞳の奥では禍々しく光りが瞬き始め・・・
 「首尾は如何よ?」
「あんなもの、幾ら斬った処で自慢にすらならない」
 「ホント、もっと骨のあるヤツはないの(ウガーっ!!!」
「と、言ってられそうにもなさそうだけどな・・・」
 「「・・・・・・」」
地上、街の一角へ大凡駆逐を終えた集い天を仰ぐ。手届かぬ場所から見下ろす御大を。
 「ああ、奴さん俺達の存在にキれたみたいだぜ? 一気に焼き尽くすつもりだ」
!!?
 「まぁ、同時に実体化しているわけだから、こちら側のチャンスでもある。」
「でも、どうやって? 神すら斬る『九骸皇』ですら、あそこまで刃は届かない。
キルケやセシルでも、あそこまでは届かないだろ? 竜でもいなければ・・・」
 「届くさ。 何故なら」
 「ダメよっ!!!」
一瞬イリアの言葉を遮ったのは誰かと思いきや、それはセシル。らしくなく動揺し。
 「・・・何故なら、俺が反則の存在だから」
「・・・金色の龍眼程度で『反則の存在』なんて
いうんじゃないだろうな。真龍騎公だってなるぞ」
 「男と違って女はね、これから更に化けるのさ」
と、金色の龍眼になったイリアの黒髪が更に延び、寄り合さると龍尾の如く。
剥き出しの柔肌な腕は変形に鱗が生え、狂暴な龍の腕のごとく。 
スリットから覗かせる生脚にも同様に膝上まで龍のそれにブーツを履いたかのよう。
 「そ、その姿は丸で・・・悪魔」
 「はぁ、どうせなら龍人といって欲しいなぁ」
それでも姿は変われど浮かべる笑みは変わらず、イリア自身の笑み。
 「イリア殿、貴女は一体・・・こうも都合よく似たような存在がいるわけが・・・」
 「まぁ・・・ね。 俺は、肉体を持った精霊みたいなものさ・・・」
 「・・・イリア、貴女が何者でもいい。 だから・・・行っちゃダメ」
脳裏によぎるのは神話に準えたシナリオそのもの。
 「俺が行かなければ皆、確実に死ぬ。」
 「でも、貴女一人を犠牲になんか出来ないわよっ!!」
 「・・・別に、俺は犠牲になるつもりはないよ。」
腰の鞘に戻した短剣に代わり、手から生えるが如く召喚されるのは神殺の神剣『神狼牙』
セシルが止めようと腕を伸ばした時には既に遅く、すり抜けるように空へ。
皆が成す術もなく見守る中、昇龍は邪神に達し瞬後、閃光と共に起こる大爆発。
 「っ!! イリアー―――っ!!!」
その慟哭に応えるかのように、邪神が消えた空の雲間から射す光が
大地を照らしていった・・・・・・
・・・・・・

屋敷の一室、主たる男は未だベットに、其処へやって来たのは秘書嬢。
 「今日は陽射しが良いので窓を開けておきます」
「おう、すまないな。しっかし、流行風邪程度でこんなにも寝続けてしまうとは・・・」
 「そういうものですから・・・それでもようやく元気になられたみたいですね」
「おかげさまで、な。 ・・・あっちの方も」
 「あっ・・・」
時既に遅く、秘書嬢が気配に気付いた時には腕引かれて男の懐の中に。
「すっかり御無沙汰だったし、その分タァ〜〜っぷり可愛がってやる(ニヤソ」
 「そんな・・・病み上がりなのに・・・だ・・・めぇ・・・」
秘書嬢に抵抗の意思など全くなく、男のなすがままに弄ばれようと

 「っ、バカ殿があああああああっ!!!」
轟!!
雄叫び上げ開けっ放しの窓から飛び込みがてらに男だけをブっ飛ばすのは金髪のケダモノ。
更にマウントポジションに男 ライを殴り殴り殴る。
秘書嬢レイハたん、クノ一のクセに事態についていけず目が点に唖然。
「って、突然に何さらすんじゃワレーっ!!!」
 「っさいっ!! あの世で詫びろぉっ!!!」
投げ飛ばしに金髪のケダモノ セシルは壁を蹴って更に強襲。
それを迎え撃つのは、もはや病み上がりとは思えぬほどの活気を見せるライ。
騒ぎに屋敷の面々、妖艶嬢アルシアとか幼嬢ルーが駆けつけるまで
ガチンコファイトは続けられ・・・・・・
「んで、殴りこみとは一体どういうつもりだ?」
 「はっ、バカ殿に天誅をくれてやるためよっ!!!」
レイハは執務仕事に場を離れ、監視と手当てにアルシアとルーを隣に控えつつ
ベットに座り見下ろすライに対し、グルグル巻きで床に転がされたセシルは
それでも咽喉笛に喰らいつかんばかりに吼える。
「少なくとも手前だけには天誅を喰らう覚えはないっ!!!」
 「イリア見殺しにして何言うか、クサレ王っ!!!」
「イリア見殺しって・・・何それ?」
 「手前、死なす、絶対死なす、万回死なす(ウガー」
 「セシル、イリアに会ったの!!?」
 「会ったわよ。特使としてやって来て・・・私達を助ける為に邪神と・・・」
目に涙浮かべるセシルに、アルシアも顔が青ざめていく。
親友以上の仲であってもその正体を未だ知らぬ故に。
「な〜〜にを勘違いしてるか知らないけどな、イリア帰って来たぞ」
 「「・・・はい?」」
「だって、ほら・・・」
とライが指差す先には壁に立てかけられた『神狼牙』。
 「でも・・だって・・・ええ!!?」
「あの程度の邪神に負けるかよ。 眷属だって、皆が強すぎたんじゃなくって
以上に目覚めたばかりで弱かっただけの話。だから邪神も瞬殺に帰ったと」
 「じゃあ、何で私達の処に戻ってこなかったのよっ!!!」
「今生の別れみたいに言ってしまった手前、恥ずかしかったんだろ?
全く・・・本当に、一応しか反省してねーな、おめーは(苦笑」
 「!!?」
その男の笑みに重なるのは求める女の・・・
 「で、御主、コレ如何する?」
「・・・お仕置きがてら、梱包して手紙添えて送り返すか。」
 「それはちょっと・・・」
 「ちょっとしたオチャメじゃない?」
安堵一転、意図を理解して青ざめる金髪悪魔ズの顔。
「だって・・・なぁ、コレ相手に吐気こそ湧いても食欲(?)は湧かないし。
手篭めにするとなったら、寧ろ俺に対するお仕置き?」
 「なっ・・・こんな美女を捕まえて失礼なっ!!!」
「と言うわけでルー、一緒に梱包する蟲の手配をよろしく〜〜♪」
 「ふむ、一週間ぐらいか? 向うに到着する事には出来上がっているだろうサ」
 「ななななな・・・(汗」
「・・・精々、楽しんでくれ セ・シ・ル♪」
 「・・・・・・(ガタガタブルブル」
アルシアの怯えっぷりからお仕置きの過酷さは想像に優しく。
 「いっ、いやあああああああっ!!! たぁ〜すけてぇ〜〜イリア〜〜!!!」
こればっかりは早とちりもいい所なので、庇いようがない。
そして、その日から数日後。
ロカルノの元に届いたのは、人一人がやっと入れる程度の箱。その上フタを開け
「・・・ふむ。イイ仕事しているな」
漏らした感想に抗議の呻声が何処からともなく響く事を思えば、全然大丈夫っぽい?
ちゃんちゃん♪


ダンケルク国
蘇りかえりし神話の邪神を、若き王と王妃の元に集った一騎当千達と志ある兵達が
その軍勢と共に差して被害無く倒したのは有名な話である。
しかし、神話に準えたが如く邪神と直接対決し倒したのは妾龍と謳われた者
である事を知るのは、ダンケルク王夫妻と一騎当千達 ユトレヒト隊だけであった。



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