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「night dancing」




その都市は光と影がはっきりとしていた

かつてカンパニーというコンツェルンが都市を支配していたのだがそれが突然崩壊、

以後は銃器メーカーであるルドラ=インダストリーがその都市を支配するようになり

その勢力はあっという間に都市全体を覆い尽くした

ルドラの経営戦略は巧みであり確実に利益を伸ばし続けている・・、

結果カンパニー関連企業などの経営は悪化しており

スラム街も依然として存在している状況であり

都市の状況はより複雑なものとなっていった

 

「・・・・・・・」

 

その中、スラム街の一角・・廃墟ビルの屋上に立ち彼方に見える見つめる女の姿が・・

黒みがかった銀髪を片ポニーテールにし、切れ長の蒼い右目と紅い左目を持つ女

漆黒のボディースーツを身に纏いその腰ベルトには日本刀に似た刀を帯刀している

「・・・・・・・」

その瞳の先に移るは繁華街にあるビルの一つ、

その位置を確認し終わったかと思うと女の姿は音もなく消え去るのであった

 

 

────

 

「ほいよ、注文の品・・できているぜ」

 

「ありがとうございます・・、なるほど、スタームルガーセキュリティシックスをベースとしましたか・・」

 

ルドラ本社ビル研究室の一角、乱雑に散らかった書類など気にも留めず2人の男が会話をしている

一人はボサボサの髪を気にせず煙草を口に、薄汚れた白衣を着用している

粗野っぽい口調な彼の名はウルムナフ、

このルドラ本社ビルにて特殊兵器の開発兼副社長という中核を担っている人物

一人は長めの黒髪の男、

目つきはキリっと引き締まっており褐色肌が特徴で紺色のスーツを着用している

彼の名はエドワード、

かつては反ES細胞を殲滅するためのゲリラ組織である「マーター」に所属していた戦士であったが

今はルドラに雇われる身として私設部隊の副隊長を務めている

双方、その企業においては非常に重要な存在と言えよう

「お前の注文に合わせるにはちょうど良い銃だったからな、

軽量で頑丈、小型だが威力は高くメンテナンスも容易なんて・・

開発者泣かせの注文はそうはないぜ?大体俺は一発勝負が好きなんだがな」

「全性能が安定してこその名銃です。

一撃の威力に優れるマグナムでもそれ故に発生する不具合もあるでしょう」

マグナム愛好家のウルムナフに対しピシャリと言ってのけるエド

元よりこの2人が共通の話題を持ちそれを元に盛り上がる事などあり得ないものである

「・・浪漫がないねぇ・・お前・・」

「戦闘にそのような事は不要ですよ、ウルムナフ主任」

「へいへい・・ったく、お前があのリクセンの下にいる事自体不思議だぜ

・・でっ、ファルガンからも物を預かっている」

「・・おや、本人からではないのですか?」

意外そうに言うエド、彼が不在になる事は相当珍しい事のようである

「──女を出迎えに行っているよ

ったく〜・・休みたくても休めねぇ俺と違って身勝手なもんだぜ」

「ほぉ・・、女・・ですか。いささか意外ですね」

「まっ、色々と経緯があるんだよ。お前らが夢幻とドンパチやっている時は不在だったからなぁ

・・・旅行に出ていたんだよ」

「・・しかし、あの頃からだとするならば随分と長い旅行ですね」

「まっ、旅行っても崩壊したニホン列島の調査みたいなものだからな・・。

歩いて回るにゃ小さな島でもそんくらいかかるさ」

「旧ニホン列島・・立ち入りが禁止されているのでは?」

旧ニホン列島、それは今の世界を形作った象徴として衛生写真でのみ確認できる哀れな残骸。

元々は独特な形状の島で自然も豊か、

そして世界で類を見ないほどの異能に優れた民族の故郷であったが

道を誤り核の炎によって全てを焼かれた今ではそれも虚しく聞こえてしまう

「一応はな、まぁ放射汚染は取り除かれて自然系が蘇ってきているらしいから上陸自体は問題はない

・・まぁ相応のコネがいるし・・

そこに住まう人種が全て消し飛ばされたとなりゃ・・好きで訪れる奴もいないだろう。

現に調査チームの話じゃ、足元の土をちょいと払えば骨がザックザク出てくるらしいからな」

「そうですね、今やあそこは衛生映像でのみその存在を伝える物・・。核の愚かさ、そしてその恐怖・・」

「まぁな・・。一度に大量に核搭載ICBMをぶち込まれると島の形が変わってしまうという真実って奴か・・

天災などで地形が変わったという映像は見たことがあるが・・

人災で島の形が歪に変化するってのは人類史上初だぜ」

「・・ニホンという国は、最期まで核被害のサンプルでしかなかったようですね・・」

「まっ、打ち込まれる直前のニホンってのは愚の骨頂な態勢だったからな・・・。それも仕方ないさ。

・・まぁ、その内還ってくると思うが旧ニホン列島で旅をするような女だ、

偏屈には違いないから覚悟しておいてくれ」

「なに、すぐに適応しますよ・・それで、品物は?」

「ああっ、こいつだ・・。ここまで凝ったやつはそうはないぜ」

そう言い取り出すは大刃のサバイバルナイフ

既存品よりも刃はやや長く剛直な片刃であり強度は高い

その反面、柄と握りは木製であり総重量は見た目に反して軽い

それが三つ用意されているのだが・・

「一つはスタンガン、一つは小型精密爆弾内蔵、一つは小型銃内蔵

どれもグリップに仕込んでいる。

仕込み短剣(スカウトナイフ)でここまで仕込んだのは初めてだぜ?」

「銃器の発展と共にこうした小細工をした武器は廃れていくものですからね」

「昔はゲリラに流通したようだが・・こんなご時世じゃあな・・

だが、それなりに楽しませてもらったぜ?刃の方はファルガンが用意した。

素材は何だか知らねぇが軍用ナイフの流れを組んだモデルらしいから安定性は高いだろうな」

「ええっ、確かに。刃形はアーミーナイフのエッジサンプルで見たことがありますね。

鋭さも良好・・、ナイフとしては一級品です」

「そうかい、そりゃよかった。で・・仕込みの説明するぞ?

スタンガンは注文通り、小型ながらかなりの高電圧だ。

ショックで気絶させるなんてもんじゃない

感電死させるぐらいの威力はある・・まぁその分使用回数は少ないがな」

「出力調整は?」

「そんな七面倒くさい事俺がすると思うか?」

「・・まぁ、グリップの感覚を保持しながら仕込む分・・仕方ありませんか」

「そう言うこった。次に精密爆弾だ・・こいつはグリップ内にプラスティック爆弾を仕込んでいる

ルドラの新型爆薬を使用しているから結構な威力だ。

それに科学的には安定しているから火で炙ろうと爆発はしねぇ。

着火は専用のリモコンでのみ起こる

でっ、そのリモコンはグリップの底に付けてある、簡単に取り外しできるからわかるだろう」

「ええっ、これですね・・。わかりました・・火力はどのようなものですか?」

「この研究室の壁を全て真っ黒にする程度・・って言えばわかるか?」

「了解です」

「最後に小型銃だ。スパイ映画よろしく変則的な機構を取っている分コンパクトに纏められたが装弾数は少ない

・・まぁそこらはわかっていると思うが・・」

「銃内蔵のスカウトナイフは装弾数が一発が普通ですからね」

「一応は二発まで装弾している。銃においちゃ手抜きはできねぇからな。

仕込みと言えども精度は高いぜ?

まっ、威力はご愛敬だがな・・」

「マグナムを仕込んで欲しいとは言っておりませんからね、わかっていますよ」

「へっ、まぁこれだけありゃ一人でも戦えるって訳だ。

・・で・・言われた通り社長室と屋上のヘリポートは封鎖したぜ?

爺もユーラシアへ行っているから問題なしだ。
・・だが、本当に来るのか?」

「間違いありませんよ、彼女は必ずきます」

「ルドラに殴り込みとは、威勢の良い奇形者だな」

「彼女はそんな事は気にしませんからね・・それと・・」

「手出し無用、だろ?わ〜ってるよ、時間とともに防火シャッターが下りるようにしておいた

好きにしろ」

「感謝します・・、まぁ、私以外に危害を加えるとは思えないのですけどね」

「他の連中がその女に危害を加えようとしたらそうも言っていられなくなるだろう?

まっ、近寄らないに越したことはないってな・・。

好きなだけ暴れるといいさ」

「ご協力感謝します」

静かに笑いながら一礼するエド、それに対しウルムナフも頭を掻きながら煙草を噴かすのであった

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

深夜

例え日が沈んでもその都市は眠らない

電灯が街を照らし裏の顔を見せている・・

ルドラ社がこの都市を牛耳って以来、夜間でも比較的安全に過ごせるようになっており

大通りにはBARをはしごしているのか酔っぱらいの姿も見受けられる

しかし、それはあくまで繁華街のみ

ダウンタウンなどには灯りがなく未だこの都市の全てが安全ではない事を物語っている

その中、ルドラ本社ビルの屋上ヘリポートにエドはいた

夜風が冷たくヘリポートは風が吹き荒れている

ヘリの到着する予定はないものの視界を確保するためにライトアップがされており

ヘリポート内をくまなく見渡せる

本社ビルよりも高いビルがない分見渡す夜景は絶景なのだが彼には全く興味がない

スーツの上着を脱いだ状態で立つエド、シャツの上には防刃加工がされたベストを着ており

そこにはナイフが装備されている

ベルトにはホルダーが付けられており銃がいつでも抜ける状態、

完全な戦闘スタイルながらも彼の前に敵はまだ見えていない

そこへ・・

 

フッ・・

 

音もなく外壁から何かが飛び上がってきた、

ライトの光量からしてみれば確認できるギリギリのライン・・

だがエドはそれが何なのか理解していた

「──待っていましたよ、いつもながら時間に正確ですね」

静かに声をかける先にいるは漆黒のボディースーツを着たあの女性

ヘリポートの隅で音もなくそこに立ちジッとエドを見つめている

 

「────何故姿を眩ましていた?」

 

透き通った女性の声・・感情は乏しいもののエドへの敵意が感じられる

「『夢幻』の一件とその後始末で少々立て込んでおりまして・・。

失礼させてもらいました」

軽く頭を掻いての謝罪なのだが謝意は全く感じられない

しかしその事に対して女性は眉一つ動かさず・・

「マーターの事は知っている・・が、それは貴様とは関係のない事だ」

「それは違いますよ。一応は世話になっている組織なのですから・・

ルドラにしても、体勢が落ち着くまで余計な騒動を持ち込むべきではないと思ったのですよ」

「───」

無言のまま蒼と紅の瞳が細くなる

そして放たれる氷のように冷たい殺気・・

「まぁまぁ、そう急がずに。

悪いと思っているからこそ、こうして貴方向きのステージを用意したのですよ?ミス・フェイト」

「・・どこだろうが関係ない。月無き今宵こそ、貴様の最期だ」

「気合い十分、ですね。

ですがこちらもフル武装でやり合うのですから・・ただの手合いというだけでは勝負は受けれませんよ?」

「好きにしろ。私を倒せたのならな」

そう言い捨てフェイトの体が跳ねる

その動きは無音、まるで幻でも見ているかのような違和感とともに高速で地を駆け腰に下げたブレードを抜く

しかしそれよりも早くエドはホルダーから銃を抜き素早く照準を定めトリガーを引く

その間1秒足らず、歴戦の戦士だから成せる速射であり真っ向から向かってくるフェイトに対し迷わず発砲

高速で発射される弾丸・・その軌道は美しき女性の眉間目掛け寸分の狂いなく疾駆する

普通ならば正に必殺

だが、その弾丸が貫通する前にフェイトの体が瞬時にして消え去った

まるで霧が霞むかのように消えた股体、

そのあり得ない反応速度は常人には到底理解できないものであった

・・が、それでもエドは顔色一つ変えずに銃を上空に向けて構え躊躇なく発砲する

そしてその軌道の先には無音にて宙より襲い掛かるフェイトの姿が・・

 

「───!」

 

彼女も表情の変化はない、刹那にて放たれる弾丸を瞬時に見つめその腕を振るう

キィンっと鋭い金属音が一瞬奏でられたのだが

それが何なのかを確認する前にブレードを突き立ててその体は急降下しだした

「ふっ・・」

自らが弾丸となりて迫るフェイトに対しエドは微かに口角を上げて飛び退いた

その瞬間に鋭いブレードがヘリポートに突き刺さった

「・・ちっ・・」

無音にて空襲を行ったフェイトなのだが軽く舌打ちをし飛び退いたエドを睨んでさらに駆ける

間髪入れない追撃、対しエドは飛び退いて体勢を整える途中であり若干の隙が残っている

絶好のチャンス、無感情のままフェイトはブレード突きつけるのだが・・

 

チャキ・・

 

それよりも早くエドの銃がフェイトの顎に突きつけられた

「ふぅ・・やはり気が抜けませんね、貴方が相手だと・・」

「────」

硬直する2人、双方後一歩のところで相手を葬れる状態なのだがそれ故に手を出す事が難しい

そんな状態でもエドは涼しい顔つきでありフェイトは鋭い眼光を放っていた

「やれやれ、もう少し愛想良くしても損をするものではないですよ?」

「──必要のない事だ。馴れ馴れしい真似は止めろ」

「ふぅ・・まぁ生粋のアサシンならばそれも無理はありませんか」

「貴様とて同類だろう」

「軍人と殺し屋は似て非なるものですよ・・まぁ、職務内容は大筋で同じですが・・」

祖国を守るためという大義名分があれども、軍人が戦場で行う事は殺し屋が行うソレと大差はない

最も、殺し屋は自身の利益のために標的を定めており

軍人は誰から構わずに殺しまくる一面を持ってはいるのだが・・

「知った事か、貴様は私が狩る」

「好かれたものですね・・、別のお誘いならば嬉しいのですが・・」

「私を犯したければ倒した後に犯せばいい、できるではあればな」

「──それは遠慮しておきますよ。性交渉は双方の合意を元に行うものですから・・ね!」

そう言い、互いに得物を突きつける状態から突如としてエドが体を引いた

刹那にフェイトは鋭い突きを放つのだがエドは銃を宙高くに投げ捨てナイフを取り出してその刃をいなす

「はぁぁぁ!!」

軌道を反らされたフェイトは雄々しく叫び連続で斬り掛かる!

「ふっ!」

対しエドはもう一つナイフを抜いて二刀流となり真っ向から迎え撃つ

それは正しく火花散る攻防、

身体能力ではフェイトが圧倒しておりブレードを巧みに、かつ豪快に扱い畳み掛ける

並の使い手ならば捌ききれずにナマス切りにされてしまうところなのだが

エドは大刃のナイフを使い的確に捌いていく。

その反応速度は奇形者のそれに匹敵しておき猛烈なるフェイトの攻撃を眉一つ動かさずに最小限の動作で流していく

高速でぶつかり合う刃と刃は火花を散らし入り交じる

端から見れば技量は互角・・だが、フェイトの顔からは徐々に苛立ちが感じられるようになった

いくら体力で優位に立っていても動作からしてみれば大振りであり消耗は激しい

対しエドは涼しい顔のまま的確にナイフにてそれを受け流していく

「はぁぁぁ!!」

苛立ったフェイト、何とかエドの防御を崩そうと力を込めてブレードを振るう

スピードよりも威力を重視した重い一撃、ナイフの刃など簡単に折ってしまいそうな勢いなのだが・・

「それを待っていましたよ・・」

完全に読んでいたエド、ブレードが振り下ろされるよりも早くバックステップで距離を空けナイフを持ち直す

グリップを逆手に持ちその柄をフェイトに向ける

・・そこには小さく穴が空いており・・

 

ドォン!

 

そこより火が噴き、鋼鉄の弾丸が発射された

完全なタイミングでの射撃・・

仕込み故に奇形者を仕留めるほどの威力はないのだが彼が狙ったのはフェイトの足

その動きを鈍らそうとしてわざと狙いを絞ったのだ

「くっ・・」

狙いは完璧、ボディスーツの右太股から赤い血が吹き出ており彼女の表情が僅かに曇った

「流石にその身のこなしで暴れ続けられるとこちらが持たないですからね。

一時的とは言え、足を潰させてもらいましたよ」

「貴様・・、その動き・・サーパントか」

「ご存じのようですね、その通り。STFで採用されていたコマンド・アーツ『サーパント』です

本来ならば対多人数で扱う護身技術ですが、貴方が相手では使わないわけにはいかないでしょう」

「───ちっ」

「近接戦闘で負けるはずがない・・っと思っていたようですが、甘かったようですね

今回が一番懐に踏み込めましたがそれ故に注意力が若干落ちていましたよ?」

「舐めるな、まだ勝負はついていない」

そう言い傷を負った足に力を入れて立ち上がるフェイト

「敏捷性が落ちている今の貴方では、私の攻撃を捌くことはできませんよ

それよりも〜・・少々教えて貰いたい事があるのですが・・」

「───」

「貴方が元いた組織・・、奇形細胞を取り扱っていたのはRJ出身の科学者ですか?」

「・・それを聞いてどうする?」

「何っ、現在ユーラシアを始め少々不穏な情報が飛び交っているようですしね・・

それに・・個人的な事でES細胞研究に携わるRJの研究者を探しているもので・・

貴方ほど安定している奇形者ならばもしや・・っと思いましてね」

「応える義理はない」

「──まぁ、貴方の性格ではそうでしょうね・・ならば仕方がありません。

今回はこれでお開きとしましょう。

次回には応えていただけるとありがたいものですね」

「舐めるな!!」

勝ち誇ったかのようなエドに対しフェイトは傷ついた足で地を蹴りブレードを突き立てる

太股からは血が飛び散りその動きは先ほどまでに比べれば鈍いものの

それでも一般レベルを軽く超えた身のこなしである

「いえっ、全然・・」

単調なれど気迫の篭もった突きに対しエドはもう片方のナイフにて切り払う

勝負は一瞬、鋭い突きをかいくぐったエドはナイフの峰を彼女の腹に押し当て・・

 

バチィ!!

 

一瞬閃光が走ったかと思うとその股体は力なく倒れた

「今回も私の勝ち・・ですね。月無き夜にまた逢いましょう」

電撃に気絶したフェイトに優しく声を掛けるエド、

そして彼は止血剤を取り出しそのまま彼女の治療を開始した

 

「──それにしても、やはり気絶させる程度の電流に再改造して正解でしたね・・」

 

2人以外誰もいないヘリポート、その中でエドはため息をつきながらそう呟くのであった

 

 

 

 

─────

 

 

それより数十分後

ヘリポートで応急処置を終わらしたエドはフェイトをそのまま放置して下の階へと降り立った

すでに深夜を過ぎており本社ビルの廊下は薄暗く明かりがついている研究室もチラホラとなった

その中でエドは軽く息をつきながらその中の一つに入る

「よぉ・・、おつかれさん」

小さな研究室内ではウルムナフがにやけながらイスに腰掛けている

そしてその先にある端末にはヘリポートの映像が映されていた

「ここだと思いましたよ、監視カメラにて観戦されるとは貴方も人が悪い」

珍しく苦笑いを浮かべるエド、それに対しウルムナフも煙草を咥えて笑みを浮かべた

「そう言うなよ。爺がいない間は本社ビルの管理は俺がやらなきゃいけねぇらしいからな」

「そうだと思って短期決着をしましたよ。

彼女のブレードはヘリのボディぐらいは安々と切り払えるでしょうからね

・・ですが、この端末でビル内のカメラ画像を見れるのですか?」

その程度の技術は一流の企業ならばそう難しい事ではないのだが

全ての職員が全てを見られるのはそれはそれで具合は良くない

「こいつは俺特製・・って事らしい。

まぁそれでもセキュリティ云々の関係から『サナギ』を経由しねぇと接続はできないがな」

「それはそれは、まぁ女性職員の更衣室にもカメラはあるでしょうし・・その方が安全ですね」

つまりは、色々と風紀を乱す可能性がある・・っと。

彼がそこまで女好きなのかは定かではないのだが、

生活態度の悪さからしてそんな事をしでかす可能性は低くは・・ない

「──てめぇなぁ・・まぁ良い。

それよりもお前がここに来る前にあの女、目を醒まして姿を消したぜ?

一応『サナギ』には社内のカメラチェックをやらせているが無反応だ」

「それはご安心を。一度勝負がついた以上今日はもう撤退したと見て間違いありませんよ」

「ふぅん・・潔いもんだ、でっ・・結局何者なんだ?あの女は?」

「フリーのアサシンですよ、今は」

「今は・・な。でっ・・昔はRJと関わりがあると」

「流石はルドラ社ですね、音声まできちんと録音できていましたか」

「一応はな・・」

「経費も馬鹿になりませんね。

まぁ・・彼女が元所属させられていた組織にそんな人物がいた・・っというところですね」

「させられていた・・?」

「ええっ、彼女は強制的に奇形化させられたクチですよ。手綱もしっかりと・・ね」

「なるほどな・・、でっ、お前が奇形者とやり合うのはそいつが目当てってところか?」

「──そう思っていただいても差し支えはない、でしょうね」

「・・どいつだ?RJなら俺も多少はわかるぜ?」

「いえっ、明確にRJと関わりがあるかは正直なところ謎です。まだ調査中ですので・・」

「─なるほどな。まぁなんかあれば力になるぜ?」

「ご協力感謝します。それにしても・・、きな臭さはぬぐえませんね」

「・・・ユーラシアか・・、まぁ、何があってもいいように準備はしている。

その時がくれば・・頼りにしているぜ?」

「ご期待に応えるよう頑張るとしますか・・。さて、では私はそろそろお暇します」

「あぁ?そろそろ夜が明けるぜ?どこに行くってんだ?」

「ちょっとキツイ酒を・・ね。これも毎回の決まり事なんですよ」

「──やれやれ、本当の変わり者だな」

「よく言われますよ。では・・失礼します」

そう言い、エドは静かに研究室を後にする。

その様子にウルムナフは静かに笑い
煙草を一つ咥えた

 

『・・レット君、あの人・・信用していいの?』

 

その中、端末より女性の声が不意に響いた

「俺達に危害は加えねぇさ。独自の情報網は持っていてもな・・」

『そう・・でも、生身で奇形者に真っ向から挑む人なんて・・』

「ファルガンの奴もそうだろう?優秀な軍人ならそのレベルの奴がいてもおかしくない

現にあいつは軍式体術であるサーパントを使っている」

『・・あの、ナイフを使った防御の事?』

「あぁ、あれはニホンの合気道を軍用に活用した護身術システマをさらに改良をした物だ。

ナイフを使い相手の攻撃をいなして最小限の動きで急所を狙う超高等技術さ」

『そんなの、私のデーターベースにない・・』

「当然だ。そう言う世界じゃねぇと知らない事なんだぜ。

サーパントもSTFでしか扱わなかったものだからな・・まぁ、心配する事はねぇよ。

それよりもお前も早く休め、もう就寝時間は過ぎているぜ?」

『・・わかった、おやすみなさい・・』

「・・んじゃ、俺も一杯ひっかけるか」

端末の電源を切り大きなあくびをするウルムナフ

夜明けの時間が近い本社ビルはそのまま静寂に包まれるのであった





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