デス&ユト隊01 「ミッションオブラビリンス」裏


密室で真剣な面持ちの男二人となると、想像されるのは謀略の密談か・・・
それが双方ソレナリのイケ面となれば、妄想されるのは耽美の世界か・・・
しかも、それが片方仮面着用となれば想像されるのは・・・・何?
「コレクションは十分か? 見せてもらおう、龍の字を持つ王の収集力を(クワッ!!」
「存分に見るがいいっ!! そして、驚愕しろっ(クワッ!!」
「「っと、まぁ劇風は置いておいて」」
冷静なロカルノが珍しくノッているのは心沸き立つからだろう。 展示されるのは仮面。
オーソドックスに極東で神舞に用いられるモノ一連に始まり、怪しげなモノまで色々と。
「ふむ、数だけは揃っているな・・・」
「この辺りのシリーズ物は折角だから全部そろえただけで、良い物でもレプリカだしな。
寧ろロカルノにはコチラの方が魅力的だろう?」
「これはっ!!?」
「赤い○星と謳われた将がつけていた仮面。コレを装着すると通常の三倍で動けるとか」
「なっ、なんと!!?」
仮面に魅入られたロカルノは、己が装着していた仮面を外しその仮面を装着しようと
「でも、着けてしまうとマザコン,シスコン,なによりロリコンになってしまう
呪いがかかってしまうとか・・・しかも、その男に準えて妹に修正されるらしい」
「うぬっ、それは・・・非常に残念だ(ガックリ」
歴史のみならず歴戦の気配を残す仮面は仮面マニアには垂涎の代物である。
装着寸前で止まったロカルノは逡巡すること暫し、自分の仮面を付け直す。
「次はコレ。捨国の王子が王国を継いだ妹を護る為に装着した代物だ。
妹に騎士が出来きてソレと決闘後を行った後は、仮面を捨てて
『○消しの風』と名乗る一介の騒動解決人になったとか。
俺は実にロカルノに相応しい仮面だと思うぞ」
「ふむ・・・(ピタ」
その仮面を装着しようと顔を近づけたロカルノは寸前で停止。
「如何した?」
「呪いなどはあるのか?」
「そういった類の話はないな」
「なら問題ない(すちゃ。 ・・・ふむ、コレは中々良い物だが、つけていると
溺愛してくれる男装の麗人とエレガントで狡猾な友人が必要な気がする・・・」
色々な意味で、ハマリすぎである。
「次、これは如何? 野望の残滓である己の運命を儚んで世界を恨み
大戦を起こして世界を滅ぼそうとしたエリート部隊隊長の仮面だっ!!!」
「・・・確かに、恐ろしいまでの怨念を感じるな(汗」
「おう、だからネタで此処においてあるだけで封印予定。」
「・・・(汗」
「この仮面は如何だ? ロカルノにはあわなさそうだけど」
「ふむ、確かにイイ感じだが何故か趣味に合わないな・・・」
「でも、このネコ仮面(仮 の逸話は凄いぞ・・・」
幻痛の名の暗殺部隊隊長のものだったが・・・話変わり、鷹の字で呼ばれ自称
『可能を不可能にする男』の英雄がいたが大戦の際に敵の攻撃から恋人の
巨乳女将軍を護って死んでしまう。
数年後、祖国を護るため活動する巨乳女将軍に立塞がる幻痛の名の暗殺部。
幾度の激闘の果てに巨乳女将軍はその暗殺部隊を殲滅し、その隊長を捕縛したが
その隊長が、鷹の字の隊長と瓜二つ。 しかし彼は全く別人だと言う。
処刑することも出来ず連れて戦場を巡っている内に彼は彼女の仲間になるが、
ニ度彼女が絶対絶命の危機に陥った時、過去をなぞるように彼女を護る彼。
しかし、今度は彼は死ぬ事無く健在で記憶が蘇り『可能を不可能にする男』
の決め台詞で以降も彼女を護り続けたとか・・・
「いい話じゃないか。・・・何故か相応しい者が側に居る気がするな」
「ゆずろうか? その人にあげる為に」

「・・・っくしょん!!! ???」
と某教会では、風邪の気配もないのに行き成りのクシャミで首をかしげる神父が

「次はコレだっ!!!」
「・・・これは寧ろ仮面ではない。仮装だっ」
「でも、このアフロとサングラスが漢心を擽るシビれる憧れるぅ!!!  何より、
装着すれば最強無敵っ!!! 真面目でもギャクキャラにしか成れないのが難だが・・・」
「・・・・・・目立つな」
それでも何気に装着乗り気なロカルノさん・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・
「だが意外だな。ライも仮面収集家だったとは」
「そのつもりは無かったんだけどね。
立場上、素顔じゃ行けない処もあるわけよ、正体ばれててもな。その対策に。
でも、造ってみるとコレが中々奥が深くて、ピッタリなものがなくてな・・・
参考までに色々集めてみたわけだ。武神や獣神はデザイン的に俺好みだな。
派手なのが難点だけど・・・それで考えてみたのが、これっ!!!」
「・・・ほほぅ、中々良いデザインではないか。無骨で地味でも獣の鋭さが出ている」
「何より、蒸れないのがイイ!! 眼の処にはクリスタルが填っていて防具にも・・・」
「そのアイデアはいいな・・・」
薄暗い室内、仮面男二人が仮面談議に華を咲かせる・・・
オチ? そんなものは、ナイ!!


依頼により希望都市へ訪れたユトレヒト隊以下八人は装備が整い、
任務後に安全が確保されるまで『屋敷』に滞在することとなった。
その追加装備で出来るまでのある日
「今日、軍の視察に行くんだけど皆も行かないかい?」
朝食の場でライがいたって平然と切出した提案は、丸で近所へピクニックな感であり
その実は国力を推察されかねないので打首獄門級なトンでもない内容だったりする。
 「って、バカ殿、あんたバっカじゃないっ!!?
自分の言ってる事分ってる? コレものよ、コレ(クイックイッ」
と、珍しく真っ当に眼を見開いてテーブルに片手着きもう片手で首を斬る仕草のセシル。
「・・・バカは手前だ。俺はこの国で一番偉い身分様なんだぞ」
 「でも、全然それらしくないのよねぇ・・・」
「自覚しとるわい・・・(orz。 ・・・以前に、据え置いたのはアルシアの癖に」
「しかし、一代も経過していないというのに無からコレだけの都市を築き上げた国の
その軍というのは非常に興味がある。許されるなら見て見たいものだ・・・」
「それは言えてるな。ココは独立愚連隊気味なのにライが王様だもんなぁ」
「ハッハッハッ、褒めても何も出ないぜ(きらりーん」
 「「・・・(ムシャムシャムシャムシャ・・・」」
 「みぃ・・・(ムシャムシャ・・・」
悦に浸って見せる主を一瞥し、朝食をモリモリ食べる獣娘's。
それに倣い盲目の猫少女も頑張って食べる。何であれ、アットホームである。
結局、ライがデスクワークとこなした後で軍駐屯地へ赴くことになったのは
ライを筆頭にシエルと、クロムウェル,ロカルノ,セシルとなった・・・。
歩いて行くのも手間なので馬を駆って半刻、街を経由して着いた場所は街外れの
簡素な塀に囲まれた地。独身寮や各種倉庫,事務所,雨天訓練場まで備えている。
 「・・・何よ、全く軍隊らしくないじゃない」
「これでは丸で・・・」
「まぁ具体的な数字は言えないけど、ウチは専業軍人と兼業軍人が半々だからな。
しかも専業軍人は等分して地方駐在と都市防衛,遊軍の問題解決人に分かれるし。
だから、ココにいるのは主に都市防衛と見習い連中だな」
「・・・それにしては女性が多いな」
「ウチは文官,武官共々に男女比半々だからな」
明らかに部外者を含む建物間を歩く一行をとがめる者はいない。
時折シエルの存在に気付きビシッと敬礼する団体は可也いるが・・・
そうやって一行が着いた先は訓練場。様々な種族の者が様々な得物を手に訓練に励む。
「・・・武具は統一してないのか」
「元々即戦力で立ち上げたから、始めは個人に応じた持ち合わせの装備だったんだ。
それが今も続いて、個人個人が能力に応じた装備,戦闘タイプってのがココのスタイル」
「それが強さの秘密か・・・」
盾だけを持った者が駒のような行動力で得物をもった数人相手に立ち回っている。
それでも盾の者はダメージこそ与えられないものの圧倒的に圧していた。
別の処では弓の者が接近戦に持ち込まれていたが、瞬間弓へ魔力を与え強度を増すと
弓を得物代りに剣と張合い再び距離を得て射撃に移る。
全身装甲な巨漢が獣娘達から波状攻撃を喰らいてんてこ舞い状態な光景までも。
ライ達に気付き、それでも訓練を続けたり、その場で会釈で済ませたりと反応も色々。
その中でライ達の側へ来て整列し敬礼する面々もいる。
・・・寧ろシエルに敬礼している面々が多いことは、この際置いておいて
「遠地から友人が来たんでね、折角だし視察に来た(ニヤリ」
「クラーク=ユトレヒト、ハイデルベルクのプラハで冒険者チームのリーダーをしている」
「ロカルノだ。クラークの仲間だ。役回りは参謀だな」
「セシル=ローズ、以前は金獅子と呼ばれておりましたが
現在はユトレヒト氏のチームに身をおかせていただいています」
パンツスーツ姿の凛々しく聖女騎士な感で自己紹介するセシルに、その本性を知る
ライ,クラーク,シエルは思わず飛退いてセシルから距離を取ってしまう。
その心境を表せば、「「「キモっ!!?」」」の一言。
初対面の軍人達にはそんな事が分ろうはずもなく、セシルへ尊敬の眼差しを・・・
きっとパッキンケダモノの本性を教えた処で冗談にしか取られないだろう。
気を取り直し、ライは改めて
「まぁ、視察といっても俺とシエルはいつも通り訓練監督もするから」
「俺も手合わせしてもいいぞ。そのつもりで得物を持ってこさせたんだろ?」
「まぁな(ニヤリ」
「ふむ、なら私も望む者がいればしようか」
「私(ワタクシ)も結構ですよ」
・・・それが猫被っていると分っても、分っているだけに聖女騎士なセシルはキモイ。
確実にそんな心境の3人を他所に、訓練は再開された・・・
刀を持つクラークは、ライと雰囲気が似るためか共々堅実に希望者が集りボチボチと指導。
ロカルノは仮面の貴公子という格好がミステリアスなのか、ソコソコに希望者を集め
「ふむ、これだけの数を見るのは手間だな・・・まとめて面倒みるとしよう」
「「「「「よろしく御願いします」」」」」
軽装で槍のロカルノVS異種混合小隊(戦斧の重装兵,槍の翼人娘,短剣の獣娘,大剣の戦士)
「こういった場合は先ず、先取攻撃」
!!?
距離を取った瞬間、ロカルノはその場から欠き消え
 「ッ!!?」
「狙うのは動きが早いもの」
吹っ飛ばされ尻餅着きキョトンとする獣娘。早々の脱落者に動じる事無く
大剣の戦士と戦斧の重装兵は背合わせで備え、槍の翼人娘が空から警戒する。 しかし
「戦況を見渡せる者。空を確保した事が油断につながったな・・・」
 「うわっ!!? 空まで追ってくる人って結構いるんですね・・・」
ロカルノに背中へタッチされ、槍の翼人娘は緩やかに着地で脱退。
「参ったなぁ、この人メッチャ強いよ・・・」
「・・・・・・」
「悪いがソチラが整う前にさせてもらった。コチラは一人なのでな」
早々に二人を落とされたせいか、戦斧の重装兵と大剣の戦士に隙はなくロカルノに向う。
しかし、それもロカルノが大剣の戦士が戦斧の重装兵の壁となるよう立回り得物を落し、
完全防備に見えた戦斧の重装兵も介者剣法で背後から装甲の隙間をチクチク
「・・・(降参」
 「参ったなぁ、手も足もでないだなんて・・・」
「私が奇襲をかけなければ勝機がないくらいだ。十分強い。」
「本当は奇襲かけられちゃぁダメなんですけどね・・・」
希望都市の気質なのか、既にロカルノは指導者の地位を確保していた。
そして、もっとも商売繁盛なのはセシル&シエル
 「シエルさん、人数も多いことですし私達二人で見ましょう」
 「キモイ。 ・・・見るなら勝手に見ろ。私は一人見る」
 「まぁ、つれないですね。あんなにも仲良しになった仲だというのに・・・」
ぴと
 「っ(ぞわわわわっ!!? 触れるなっ近づくなっ、パッキンケダモノめっ!!!」
物腰が柔らかく見え凛々しく聖女な金髪のセシルと、寡黙で凛々しく爆乳に
威圧感があっても面倒見が良く姐御な黒猫なシエルは、金と黒の色合いもあって
二人並ぶだけでも非常に絵になる。故に、セシルの本性など知ろうはずもなく
シエルがセシルを台所の宿敵並に毛嫌いしている理由など分ろうはずもない。
 「そんなに嫌われてるなんて、私悲しいです。何が悪かったのかしら?
もしかして先日食べてしまったお菓子の件? それなら今度、お茶しましょう」
 「・・・・・・・」
何妄想を喋っているか と。 勝手な事をのたまうのはどの口か と。
シエルがセシルを見る眼は最早、ハイエナを見る黒虎みたく鋭く剣呑。
それでも、見た目で騙されている周囲は何とか二人の仲を取り持とうと必死に
 「シエルさん、私達はツワモノ二人の相手もしてみたいですから・・・」
 「それなら、私とライでする。私達のコンビネーションは他の追随を許さない」
 「・・・(ひくっ。 あ〜〜いえ、それは・・・」
シエルはライにベタ惚れ。確かに、御互いを護り御互いの動きを活かすこの二人の
組合わせなら生半可な集団で太刀打ち出来ない処か、動きも踊るように美しい。
しかし、それはシエル親衛隊の望む処ではない。エロ龍、死すべしっ!!!
その点、セシルなら見た目も麗しくシエル×セシルでも全然OK、処か大歓迎?
 「そんな頑なにならなくてもよろしいのではないですか。シエルさん♪」
 「っ!!?」
斬!!! とシエルに揮われる訓練用三刃爪はセシルが瞬間その場にいた空を斬り
その向うにセシルが着地する。その手には抜き身の訓練用ディフェンサー。
 「あら、皆さん。シエルさんはスッカリその気のようですよ♪」
 「ほざけっ!!! 誰が貴様などっ」
襲い掛かるシエルの攻撃をセシルはヒラリ♪クラリ♪と避けて誘導し、
シエルがセシルを強襲している事に気づかない周囲は二人に襲いかかって
ものの見事に余波に巻き込まれ倒されていくのだった。
シエルとセシル二人のコンビネーションと勘違いしたまま・・・
尚、この後でもシエルがセシルを変わらず毛嫌いしているのは言わずもかなである。


8人の客を迎えたことで、屋敷は計19人の大所帯となってしまった。
配部屋の方はミィをルナと同室にしたり等で問題ないのだが、
なんせ人数が人数だけに食事問題と同様に汚れ物も溜まる溜まる。
ジャブジャブ・・・
「・・・まぁ、今更だからな」
ジャブジャブ・・・
「本当今更ですけどね・・・」
と、アレスとディは二人して日が当る裏庭で大人4人抱えの箱 洗濯装置の前で待つ。
唯でさえ大所帯なのでこういった装置は便利な事この上ない。
例えソレが内桶が魔法で回転するだけで排水等は手動だったとしても。
兎も角、適度に「すすぎ」が終り、水栓を開けて水を抜きながら脱水へ突入に
「回れ回れっ(ぬうおおおおっ!!!」
「回れ回れっ(おりやあああっ!!!」
さっさと終らせたい二人は気力投入にハッスルハッスル。
それにあわせて洗濯装置の回転も上がる上がる。もう、スゥンゴイ勢いで絞られていく。
 「うわぁ、賑やかですねぇ♪」
 「如何なさったんですか?」
 「・・・(頷」
とやって来たのは、キルケ&アミル&クローディアの家庭的なお客さん。
まぁ、裏庭で男二人が騒ぎ踊っていれば客ならずとも気になるわけで、
因みに最も引寄せられそうなルナ&ミィ&メルフィの御子様組はルナがチクって遁走。
「いえ、単に洗濯しているだけです。なんせ大所帯なものですから(苦笑」
「コレの御陰で洗濯板を使う必要がなく布地を痛めなくてすむのはいいんですが、
監督している間の暇潰しがてら・・・テンション上げると回転が上がるもので(照。
・・・アレスさん、水が出なくなってきたので止めていいんじゃないですか?」
「そうだな。」
アレス&ディ共々魔力供給停止しても、勢いついた洗濯槽の回転は直には止らない。
中を覗きこんでみれば、壁にへばりつき全然湿気っていても綺麗になった洗濯物が
 「真っ白っ!!!」
 「便利なんですね」
 「大したものです・・・」
それだけの洗濯物を手動?で洗濯するに要する時間は想像に易く
女性客人三人の感想は各々違うものの、感心の一言。正に、一家に一台。
「イイ洗剤もあるので随分と楽になりました・・・(しみじみ」
「それでもシツコイ油汚れやドロ汚れは漬け置きなり揉み洗いしなくちゃ
いけないんですけどね・・・(しみじみ」
 「「「・・・・・・(汗」」」
めっちゃ所帯じみている青春真っ盛りの青年&少年に女性が何を言えよう・・・
そう駄弁っている間に洗濯槽の回転は落ち、二人が中を解しつつ出すのは
シーツに、タオルに、シャツ,ズボンのみならず女性モノの服も。そして
二人が平然と桶ごとに仕分けていくものには明らかに紐な女性モノの下着やブラジャーまで
 「っっ、うわぁっ、ダメですよっ!!!」
 「こ、これは私達が・・・(アセアセ」
 「・・・・・・(呆気」
「「???」」
 「・・・ダメですよぉ、男性が女性の下着触っちゃ(照」
「ああ、そういう事・・・大丈夫です、もう慣れているので」
「今更ですしね・・・(疲」
アレスとディはヒョイっと下着を奪い返すと桶に入れ選別を続ける。
その姿はまるで僧侶のように達観しており、劣情の片鱗も見えない・・・
「第一、エッチィな下着でも中身がアレだと思うと・・・(オェ」
「あれ・・・アレか。本来ならそそられるんだろうが・・・実体を知ってると萎えるな」
と、ネットの中から出されたのは黒レースなエッチぃランジェリ〜〜。要、丁寧モノ。
 「・・・ソレ、私ノデス」
 「「・・・・・・」」
「「・・・・・・(ハイ?」」
アレスとディが鈍い動きで視線を動かし確認した其の下着の主は
俯き加減で真赤になったキルケ嬢。それを理解し以下省略で真赤になるアレス&ディ。
「・・・ゴメンナサイ」
「・・・ドウゾ」
 「・・・・・・(照」
自分の下着を奪い取ったキルケは脱兎に、残された四人の間に虚しい風が吹く。
「イヤァ、ナカナカニ新鮮ダナ」
「ソウデスネー」
 「御二方とも無理がありますよ・・・」
「これからは気を付けましょう、御互い・・・」
慣れというのは恐ろしいものである。全く・・・


装備が整い10人が任務へ行っただけで、屋敷は子供の率が増えても静かになった。
それでも居残り組の騎士団の面々は日課の朝錬を怠ることなく真面目に励む。
アレスVSリオ,カインVSディ&ルナ、制限付きでも激しい事この上なく一進一退。
それを尊敬の意をもって見学する者が一名。
・・・愚直なまでに積み重ねた鍛錬は、それだけで一動作すら技に昇華する・・・
アレスは攻撃に、リオは防御とサポート傾向の万能型魔法騎士。
演舞ではなく其の派手さはないものの、極力無駄な動きを省き
ミスを含め全ての動作が次の動作への布石である動きは、丸で動きが約束された舞踊。
それを、若輩の子供であるディとルナですらこなす。
ディは戦魔導士を名乗るだけあって魔法の刃を用い本職さながらの剣技で接近も、
ルナは魔法が使えずとも力と侍の御技をもって攻撃を斬伏せ前へ。
・・・流石にアレス達と比べれば、まだマダまだ付入る粗が見られてしまうのだが。
そのアレス達ですら、カイン すなわちライ達に比べて手数が少ない感が否めない。
トップギアで動き続けること暫し、各々が距離を取ることで一息つく
 「おはようございます。皆さん御早いですね」
「哀しいけど、これも日課だからね〜〜♪」
 「お客さまにナンパしちゃダメですよカインさん。
アミルさんにはロカルノさんという意中の人がいるんですから」
「リオ・・・いくらカインさんでも其処まで節操無しじゃないぞ」
「ハハハ、何気に毒舌だね・・・(汗」
「「「・・・(ナンパするつもりだったな)」」」
 「・・・(くああああ」
 「???」
細めてジト眼でカインを見るアレス,リオ,ディと私ァ知〜ラナイと欠伸するルナの
言葉ない会話など慣れてないアミルに分ろうはずもない。分が悪いと思ったかナンパ男
「そういえば君は飛竜に化けるんだってね」
 「いいえ、飛竜が本来の姿なんです。」
「へぇ・・・、普段からこうやって意思疎通が出来れば乗竜も易いね。
まぁ、聞き分けない子を従えさせるのもソレはソレでオツなんだけど・・・」
 「はぁ・・・(引」
ハンターの気が洩れるカインにアミルならずとも引く。
まぁ、カインにとってはナンパも乗馬,乗竜も対して変わらないかもしれないが・・・
「カインさんは乗馬のスキルを?」
「ふふん♪ 僕は由緒正しい武門の出だからね乗馬は当然、下等竜の経験もあるよ。
馬は兎も角、竜は乗り潰しちゃうから竜騎士には成れないけど・・・」
 「「・・・(引」」
思わずアミルがリオの影に隠れリオがアミルを庇っても、それは仕方がない。
『足』に『鎖』が着いているとはいえ未だ『現役』で、『女』にとってキケンな
『男』であることには変わりないのだから。全くでもって全くである。
「冗談はさて置いて、僕は支配して能力以上を強引に出させる性質だから・・・
其の点、彼・・・ライは相手と対話して人馬一体に限界を突破するタイプだね。
・・・君たちは一体、どんなタイプだろう」
騎士たる者、乗馬のスキルを持って当然。求められるのはそれ以上の能力。
ルナですら馬に乗るくらいは出来る。性分故に自身で走った方が速いが。
カインがアレスへ眼で語るのは、一漢としての嗾け。未知へ挑戦してこそ・・・
「・・・アミルさん、貴女をロカルノさんから御借りしたい」
 「アレスくんっ!!?」
「勘違いするな。飛竜の立場から俺は竜騎たるに値するか見てもらうだけだ」
 「・・・(ぶぅ」
「折角だから、この際にリオも乗らせてもらったら如何だ?」
 「え? えっと・・・いいんですか?」
 「アレスさんとかリオさん,ディ君なら乗られても大丈夫だと思います」
流石に下等竜を乗り潰したと公言したカインは避けたいらしい。
アレス,リオ,ディに至っては普段の付合いから、以上に付合いある某パッキンより
親密感が持てる分、脈を感じる。ルナは・・・当人の名誉のため省略。
メルフィとはイイコンビになるかも(ヲゐ。
 「あ〜〜、それは私、辞退します。何か違うんですよね・・・私の性分と」
「僕も辞退します。空駆ける翼は自前のがあるので」
ルナに至っては端から興味ないのでワンコ状態に後足で耳をシッシッシッと掻いていたり。

朝の清浄な大空をきる二つの影があった。
それは滞空の飛竜アミルと騎乗するアレスとサポートの為に背に燐光翼を備えたディ。
 『では、行きますよ?』
「ああ、遠慮はいらない。思いっきりやってくれ」
 『・・・、いきますっ!!』
ディをその場に残し、飛竜が加速していく。生身で可能な限界まで加速すると
更に魔法で加速を行いその速度を上げていく。
 『・・・大丈夫ですか、アレスさん?』
「大丈夫。 ・・・こうすれば、まだまだいけるっ!!!」
アレスがアミルまでも含めて張った空気抵抗を除く障壁で
二人?は音速に達し空気の壁を突き破って空に白い軌跡を描く。その視界に入り
急速に膨張 もとい距離を詰めるのは空の青に白が生える無数の標的大パターン。
 『あれは?』
「ディが用意してくれた的。あれをブッた斬るっ!!!」
 『・・・、はいっ!!!』
アレスの意図を理解し、アミルは翼を狭めた突撃体勢から強引に翼を広げれば
それにそって障壁が伸び、長く長く生えていくのは風の大太刀。『ソニックブレード』
通り過ぎた側から名刀に斬られたように間を置いて両断される標的。
「アミルさん、Uターン。次は纏めてブっ飛ばすっ!!!」
 『はいっ!!!』
標的は微妙にずれて配置されてあった。斬るのは兎も角、穿つのは難しい。
しかし、今のソニックブレードにある動作を加えれば高速広域攻撃が可能。
伸ばす両翼に生えていくのは二刀流のソニックブレード。
それに加えるのは横回転の螺旋の動き。すなわち、『スパイラルダイブ』
『「うおおおおおあああああっ!!!」』
吼える二匹の戦獣に全ての標的を砕くに収まりきらず、空を大螺旋槍が穿っていった・・・

朝早いにも関らず、其の部屋に人の気配はない。
まだ寝ていると言ってしまえばそれまでだが、ベットの上はシーツもろ乱れなだけで
人の膨らみは一切見えず・・・てか、着布団すらない。そのベットの向側、壁との隙間
 「・・・z・・・z・・・フミッ・・・z・・・」
着布団に包まれスッポリ嵌った猫少女・・・屋敷に滞在の間ルナと相部屋になったミィ。
尚、ミィがルナに押し出されたか寝相の悪さでこの状態になったかは当人達の名誉のため
伏せるとしても部屋の主たるルナは朝練の為に既にいない。
おバカとはいえ、客人を起こさないルナの心使いは大したものである。もっとも、
 「フミッ・・・ミィ・・・、・・・・・・(クシクシクシ」
朝のお勤めがあったのでミィも習慣的に早起きである。てか、生活習慣が行動を
共にしているルナと一緒である以上、ルナが起きればミィも起きる。
兎も角、伸び一つ順調に起きたミィは毎度ベットで犬ルナにくっ付いて寝たのに と
起きた場所に首を傾げつつ、盲目にも関らずベットメイキングを行い、着替えてから
洗面所で朝の身だしなみを得て居間から台所へ。其処に居る気配に御互い会釈しつつ
 「ミィ、おはよう、ございます」
 「はい、おはようございます、みぃちゃん」
返事は非常に優しげな女性の声。金髪に碧と赤紫のオッドアイが特徴的な正に優美女で
子供ならずとも見惚けるが、心眼でモノを捕らえているミィには其処まで分らない。
 「ミィ、手伝う♪」
 「じゃあ、お鍋とヤカンにお湯を沸かしてくださいね。」
 「ミィ♪(シタッ」
二人がシチューやサラダの具を刻んだりの下ごしらえをしている間に、訓練を終えた
カインやリオ,ルナもやって来てテキパキ着々と朝食の準備が整っていく。 因みに、
優男カインは全く朝食の準備を手伝う事無く珈琲を淹れる程度しかしないのはお約束。
そうしている内に寝惚け眼なままの竜少女メルフィも居間へ到着し
朝訓練の延長で遅れたアレス,ディ,アミルを待った上で穏かに朝食は始った。
「塩取って」等の食事に関する事以外無言でハムハムハムと食べ続けること暫し
皆が朝訓練をどんなレベルでやっているかを知らないメルフィ。
 「処で、ウルサイのがいないのに其処の男は朝っぱら何疲れ果てているのじゃ?」
その視線の先には這々体でも頑張って食べ物を腹に詰め込むアレス。
素朴で飾り気がなくとも、こんがり焼いたパンにシチュー,サラダのメニューは
十二分に御馳走で美味しいにも関らずアレスは全然不味そうである。
「・・・初めてなのに調子乗りすぎた。これじゃあ丸でケツの青い小僧だ・・・(orz」
 「???」
「メルフィ様、アレスさんは先程竜に乗られたんです。私を相手に。
それで竜騎士の素質は高く、初めてなのに色々技を試されて無茶を・・・
ロカルノさん程ではありませんが、初めてなのに上手だったので
だから少しで止せばいいのに私も調子に乗ってしまい、されるがまま・・・
メルフィ様との相性はいいと思います」
 「・・・妾とアレスのいいかもしれんのは分ったが、何あせっておる?」
 「わ、私は別に焦ってなんか・・・」
真坂、竜の本性をむき出しに暴れてしまったともいえない。
ロカルノがバランス型なら、アレスは竜の暴性を解放する強襲突撃型といえるだろう。
「ははは、丸で旦那様を愛しているのにツバメと浮気してしまった若マダムみたいだね」
 「「っ!!?」」ぴしっ めきゃ
カインの感想に、アミルが飲もうと手に取っていたコップに罅が入った。
リオの持つスプーンが手の中で手品みたく一気にひん曲がってしまった。
 「そ、そ、そ、そんな、私はっ!!!」
 「な、な、な、なんて事をっ!!!」
「ニュアンスがちょっと違うかな。寧ろ、チェリー君の手ほどきをした若マダムとか?」
 色々な意味で興奮し顔色を赤白させ全身わななくリオとアミル。
リオは本命の座を主張し目付きがやばくなってるしアミルは顔を必死に振って否定するし、
全ての元凶であるナンパ男は見物見物♪と飄々としてるし。
「アレスさん、如何にかしないとヤバイですよっ!!!」
「俺は何も聞いてない・・・聞こえない・・・」
アレスは最早しゃべりんでテーブルに突っ伏して屍化しかかってるし
 「妾らには難しい話みたいだし、サッサと御暇するか・・・」
 「わん・・・」「みぃ・・・」
オコサマ少女達はこの時ばかりは子供の座に甘んじ巻込まれる前に撤退しようとするし
 「嫉妬深い女の子は嫌われますよ〜〜(ほえほえ〜〜」
ピシッ!! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
 「ひっ!!?」
暢気なヒルデの毒舌をトドメにリオは黒化してターゲットロックオンしまうし、
それにアミルは萎縮して硬直に逃げられなくなってしまうし、それにカインは
修羅場〜♪と高みの見物だし、ヒルデは意にもしていない。
「・・・・・・、もう、勝手にしてくれ・・・」
「・・・・・・(汗」
もう、ダメぽ?


ルナ,ミィ,メルフィは見た目通りの少女である。いわば、遊びたい盛りの。
それこそ、草原で転がるだけでも楽しめてしまう。でも遊び尽くしてしまった。
屋敷の気質上に街へ出難く三少女は屋敷の周辺で遊んでいたのだが
今や屋敷の気質の権現たる者達が任務で屋敷にいない。→ 獣は野に放たれたっ!!!
誤り。保護者がいなければ子供の行動を妨げるものはいない。
仮の保護者(カインとかアレスとかリオとかディ)? そんなものお飾りです。
御偉方にはそれが分らないんです。
話題及第、戻。屋敷を飛び出した三人は、銀狼ルナにミィとメルフィが騎乗し林の路を
 「行け行けゴーゴーじゃぁ♪」
 「ミィミィ♪」
街へ向けて疾駆する。ルナだけあって初心者の二人が乗っていても安定しているのは
流石、手放し状態にミィが軍資金をメルフィが刀を抱え持っていても全然に全然。
因みに、軍資金も刀(逆刃刀)もルナのものである。今回二人の護衛気取りである
銀狼少女は意外にも金持ちなのだ。 だって、獣娘だけに殆ど使い道ないし。
逆に相棒の少年は多趣味に金欠で獣娘相手に借金まで・・・利子が無いのが救い?
あっと言う間に街手前へ到着した三人は、人に見られぬようルナが娘へ変化した後に
街へと繰り出すのだった。
 「おお〜〜、にぎやかじゃなぁ〜〜」
 「ミィ? ミィ?」
 「わん、皆、元気♪」
もの珍しく楽しそうに途切れぬ人波を見る二人にルナも至極満足気。
 「それで、ルナのお奨めは何じゃ?」
 「ミィ・・・ルナのお奨め・・・(ワクワク」
 「ルナのおすすめ? おすすめ・・・おすすめ(う〜〜ん」
ルナはおバカ犬ではあるがアホではない。自分がこの街を案内するには不向きな位
自覚している。普段はその役はディなのだから・・・でも今は修羅場の始末中。
単に見捨てたともいう。
今回それが裏目に出てしまったわけだが、それはさて置き
今回求められているのは、子供向きな秘密基地的な処ではない。一般人好みな場所なのだ。
二人が心配するほど悩み苦しんだ銀狼少女は、ピカーンとヒラメキの電灯煌かせ
 「わん、おとなのイイ処、知ってる人の所、行く」
ルナが簡単な街案内がてら向った先は都市中央にある役所。その建物の中でも
向った先は事務課でも観光課以下諸々でもなく、簡単な諸々の問題を扱う庶務外課。
その窓口を躊躇する事無く誰にも咎められる事無く迂回し入っていった其処にいたのは
騎士と見紛うばかりに凛々しい礼服に簡素な武具を備えた人々。
それは優しげな双剣士だったり、イケ面兄貴な槍士だったり、長刀もつ侍だったり
ローブ姿で紫毛の女魔術士だったり、男装の麗人な戦士だったり・・・
その誰もがルナ以上の力を有し、ルナを筆頭に入ってきた三人少女に各々友好的な会釈。
其の中でルナが向った先は、片腕籠手にレイピア持つ長い黒髪で優しげな女性。
例えるなら、リオが優等生で元気に優しい学園のアイドルで好かれるタイプなら、
彼女は同じ優等生でも大人な感で落ちつき麗しく憧れられる影アイドルといった感?
――何気に、リオより彼女の方がアレスに合いそうだなと思ったのは此処だけの話――
 「ルナ、どうなさったんですか?」
 「シア、これ友達。ミィ、メルフィ。案内、頼むのいい?」
 「いいですよ。私はローレンシア=アインベルト。ルナみたいにシアと呼んで下さい」
と彼女が手を出しながらの笑顔はチャーミングで、子供が遠慮なく懐ける感。
ローレンシア=アインベルト。アレス達と同年代である彼女は没落貴族の子女であり、
様々な経験を経て希望都市へと辿り着いた。万別こなせる優等生なタイプであるが
逆に決手もなくダメージに弱いので一自警団員に甘んじているが、安定した日常の中で
その日常を護れることは彼女にも周囲にも幸いといえる。 所謂、お巡りのお姉さん。
 「ミィ、シア、よろしく♪」
 「今日限りかもしれんが、世話になるぞ」
ニコヤカに手を交わす少女二人に黒き細剣の乙女。それを見る銀狼少女も何処か嬉しそう。
仲のいい友人同士が仲良くなることは、その間に立つ者にも喜ばしいことである。
それを見ていた面々の中で優しそうな双剣士は誠実そうな顔でうらやましいのか
「じゃあ、俺もゲフッ!!?」
瞬間、冷徹な侍のルナが逆刃刀の鞘先を牙突に叩き込むのは、その双剣士の鳩尾。さらに
「ゲフッ!!? がっ!!?」
男の身体が前屈みになった処で鞘先打上げにアッパーで空に打上げ伸び切った処を
鞘入り逆刃刀を用いた横薙ぎの棍術で脳天を床に叩きつけて沈黙。
正に必殺コンボ炸裂でKO!! 暫しの間をおいて周囲から立つオオー―と感嘆と拍手。
毎度となりつつある光景に最早誰も慌てず放置状態である。
そもそもローレンシアと彼の青年は公式に付き合っているのだが、
彼の青年はエロゲーの主人公並にヘタレなので色々な女の子に襲われているのだ。
だから、ルナはローレンシアを傷つけかねない彼の青年を一端に毛嫌いしている。
本編と関係ないことなので如何でもいいことだが。
 「がうっ、皆いく!!!」
 「え、あ、でも・・・」
 「・・・放って置いても死にはせんだろ。ルナも手加減しておるっぽいし?」
 「ミィ? ミィ?」
後ろ髪ひかれるローレンシアをひっぱりおすルナとメルフィに
ソレを突付いていたミィも直に後付く。
地に伏し未だプスプスと煙を上げる無様なボロクズに用は無かった。 誰も・・・・・・

一行が向ったのはガールズストリート。そこにあるのは所謂女の子のため店々であり
揃えられている店の商品は店々ごとに千差万別、値段もリーズナブル。
その中でも先ず向ったのはブテック。
基本的にルナは少女侍、メルフィは巫女、ミィはシスターの格好がデフォルトである。
ゴスロリ着ーの、旗袍服(チャイナドレス)着ーの、ストリートファッションきめーの
其処で御互いを着せ替え人形がてらにウィンドウショッピングを楽しんだだけではなく
似合うものをそれぞれに数着づつ買って散発に店の上得意になっちゃったり。
次に向った先はアクセサリーショップで
猫首に白綿珠つけーの、犬耳にイヤリングつけーの龍角のリボンくくりーの・・・
三人少女はチャーミング度がレベルアップした♪
大詰はファンシーショップ。ここにおかれてあるのはヌイグルミや
アクセサリーショップに置けないような置物などの小物である。
猫が猫をかかえーの犬が犬にだきつきーの、小龍が飛竜はネェカーと吼えーの・・・

散々楽しんだ三人の少女は昼過ぎでもあり、未だ仕事がある黒き細剣の乙女と別れ
中央緑地公園へとやってきた。ここは人工的に造られた広大な庭園とはいえ
計算しつくされた豊かな自然があり、路には各所で色々な屋台もあって
休憩にはもってこいな場所である。それの大樹の一つの下に一時の居を構え
 「二人、此処で待つ。私、何か食物買ってくる♪」
 「ん〜〜、すまんなぁ、散々散発させたのに・・・」
 「ミィ・・・」
唯我独尊なメルフィですら頭を下げるのは、ルナを友と認めているから。
服,小物まで買ってもらった上に食べ物まで奢ってもらえば気も引ける。
でも無問題。若くして高給取りでありながら犬なルナは買食いくらいしか使い路がない。
つまり意外に金持ち。今回の散発でも大して使っていない。非常に羨ましい限りである。
 「わん、気にしない♪ 皆楽しい、ルナ楽しいわん♪」
と、ルナは四脚歩行しそうな勢いで注文も聞かずに行ってしまった。
まぁ、其の辺りは教育?の甲斐あって、適度な量を種類だけ買ってきて
皆で分け合い楽しみながら食べられるようにする子だから・・・
後に残されたのは当然、ミィとメルフィと大入りの買い物袋。
野外のこんな処で広げるわけにもいかない。
 「・・・なぁ、ミィよ」
 「ミィ?」
 「ルナがおらんと、急に寂しくなったな・・・」
 「ミィ〜〜〜(凹」
 「・・・探しに行くか?」
 「ミィ・・・ミィ〜〜(考」
 「待人、すれ違う可能性が高く、待つが吉ですよ」
 「ふむ、そうか・・・なら仕方がないな・・・って」
 「「だれ!!?」」
少女二人が横へ振り向いた其処には、茣蓙に座り前に水晶珠をおいたローブの人。
ローブから僅かに覗く口元は、艶やかな唇で優しそうに大人な女性の感。
 「さて、私は何者でしょう?」
 「・・・、魔法使いっ?(ビシッ」
 「ミィ・・・占い師?(したっ」
 「そう、黒猫のお嬢さんが正解に近いかな? 正しくは『時詠』だけど・・・」
 「『時詠』? 何だソレは?」
 「権力者の寵愛を受けなければ何も出来ない処か、
疎まれ禍の元にされてしまう虚しい存在・・・」
己が『時詠』だと自嘲気味にいう彼女は、ローブで殆ど姿が見えないにも関らず
若造にはたまらないほどの色気を醸し出している。少女の二人にか余り関係ないが。
 「ミィ・・・(てしてし」
 「私を慰めてくれるの? ・・・ありがとう
此処で出会ったのも何かの縁、貴女方を占いましょう」
 「ほうほう、では妾から」
と遠慮なく手を出すのはメルフィ。全く、遠慮も何もあったものじゃない・・・
 「別に手を見る必要はないのですけれどね・・・刻まれるのは軌跡。
飛竜のお嬢さん、貴女は生命線が異様に長いですが頭脳線は短いです。
自分の環境に甘える事無くもっと勉強しましょうね。ラッキーアイテムは扇」
 「ア〜ア〜、キコエナ〜〜イ」
手を取り掌の皺を指でなぞり的確な説教?する『時詠』は、
寧ろ覗込んでいるミィに教えている感。
 「次は黒猫のお嬢さんね」
 「ミィ。・・・ミィ?」
出された掌を『時詠』は診ることなく両手で優しく挟む。
 「・・・貴女自身は大した力がなくとも、大いなる者達に恵まれています。
努力を怠る事も無ければ慢心する事もない・・・マスコット的地位ですが、
志を貫けば周囲は喜んで力を貸してくれる事でしょう。貴女の未来に幸あれ。
盲目の貴女へ、御守代りにコレを上げましょう。健常者には邪魔ですが・・・」
と、『時詠』はマントを脱ぐ事無く頭の部分に手を入れてゴソゴソと、
外しその手に乗っているのは光沢ある帯状の黒布。それをミィにつければ
目の部分を覆うのは中央に大きな一瞳「真実の眼」が銀で意匠化された神秘的な眼帯。
ミィ当人は触り心地が快いのかペタペタとソレを触る様は容姿もあって神秘的でも
激プリチー。
 「ありがとう・・・♪」
 「これで起る出来事が貴女にとって不快なら、遠慮なく捨ててくださいね」
 「ミィ、大丈夫♪」
 「は〜〜、お前も盲目だとは・・・ミィだけずるいぞー妾にも何かクレ〜〜」
正体は何であろうと所詮はお子様であった。気付いた事は呆気なくスルーし次の興味へ。
 「あははは・・・、では貴女にはこの水晶珠を上げましょう」
 「うぇ? 商売道具を貰ってもいいのか?」
 「私の時詠の能力は天性のもので、水晶珠に依存しているわけではないのです。
今は一寸高級な程度のものですが、大事に持っていればいずれ神性が宿り一神具に
値するものとなります。その時になったら貴女に縁ある者へ贈るといいでしょう」
 「へえ〜〜ほぉ〜〜」
水晶珠に逆転して移る風景が面白いのかメルフィは生返事。
それでもいいのか、各々の品に喜ぶ二人に時詠は満足気に頷くのだった・・・

 「二人、御待たせ♪ わぅ???」
 「おお、ルナ」
 「ミィ♪」
さぁ、行く時と違うモノを探してみよう。 →ミィの眼帯,メルフィの水晶珠
 「ソレ、如何した?」
 「おお、其処の時詠とやらに・・・って」
 「「いないっ!!?」」
 「???・・・残り香だけ。 ・・・食べる?」
 「・・・頂こう」
 「ミィ♪」
過ぎ去った事には気にもしないのが子供の特権。
ルナの膨大な戦利品を皆で分合い腹を満足させるのだった・・・
その後、適度に残した軽食で小動物釣りを楽しんだ三少女は日が暮れる前に帰り
メルフィがアミルに無駄使いしてと説教されたりするが、それは克割。
リオの機嫌? そんなもの、一休みしたアレスが手を出せば砂上の楼閣が如く・・・


御大達がいないからと調子乗ると碌な事が起きない(カインが何かしら仕掛ける)ので
結局、普段と変わらぬ日々を過し・・・迷宮へ赴いた10人は誰一人欠ける事無く帰還した。
無論、誰一人重傷を負ったものなどいるはずもない。
主の仕事が終ったユトレヒト隊は、今回の件で何らかの後遺症の懸念に対して念のため
更に数日シウォングの屋敷にのんびりと滞在する事となった。
穏かな昼下がりの午後、居間に揃った一同は事の後だけあってラフな格好
男勢は揃いも揃って作務衣でもビシッとキめているし、
女勢は浴衣着ーの、旗袍服着ーの、シャツパンツで居ーの、普段と変わらぬ娘も居ーの
優雅なティータイムを過していた。もっとも、フルメンバー×2で席間に余裕を作る為
ルーはライに、ミィはシエルに、メルフィはアミルの膝上に座っちゃたりしているが、
それはそれでより一層とホノボノとしたイイ雰囲気。
しかし、皆の側に置かれてあるそれぞれの得物の違和感が際立つ。得物を持っていないのは
非戦闘員や魔導士系のルー,キルケ、アルシア位である。セシルも指示聞かず持ってない。
まぁ、何か起っても自己責任である。
「え〜〜、今回の御茶会に集ってもらったのは迷宮の鹵獲物の鑑定分配を行う為です。
つーわけだからセシル、テメエがガメたモノを全て出せ。キリキリ出せ、キリキリ」
「・・・出すんだ、セシル」
 「え〜〜、ろかまでぇ〜〜」
「元々、わけわかんねー場所からパクってきたもんなんだぞ?
何があるか分かんねーだろうがっ!! ン事もワカンネー程テメエはケダモノかっ!!?」
 「・・・、チッ」
セシルが懐からゴソゴソと持出すのは大粒小粒の宝石,金貨に魔導杖数本。
奴の乳間は魔空間かっ!!?
因みに、爆乳黒猫嬢シエルの乳間は引力空間でありまっする!!!
更にルーが収納空間からドサドサと出した金銀宝石財宝と魔導杖などで、
有に数人が寝れる広さを誇るテーブルの中央であっという間に山が出来てしまう。
 「ホレ、ディ鑑定しろ」
「はいはい・・・」
男の膝上で至極満悦な老獪ロリ魔女師匠の指示に、残念な金髪少年は
毎度に毎度で今更に、文句一つ溢す事無く選別していく。
魔導杖は魔導杖ばかりで、金貨は金貨ばかりで、宝石は宝石ばかりで、
アクセサリーはアクセサリーばかりで、更に宝石とアクセサリーの謎な群・・・
「一応全部ホンモノぽいですねぇ・・・クリーニングの必要がありそうですが」
 「んじゃ、コレも〜らい♪」
とディの言葉を遮り皆が止める間も無くセシルが手を伸ばすのは、
謎に無分別の中からいかにも本物らしい魅了する輝きの大粒紅玉の指輪。
それをサクッと自分の指にはめてしまった。
 「うふふふふ、如何? 似合う?」
「あ〜〜あ、僕は知りませんからね〜〜」
「セシル、お前気づけよ。明ら様に怪しいだろうが。何でこの分類だと思っているんだ?」
「全く・・・(呆」
「・・・(ニヤニヤ」
 「「・・・(ニヤニヤ」」獣娘×2
「「「「「お前は既に呪われているっ!!!」」」」」
 「な、ナンダッテー!!? ぐあっ、行き成り身体が重くだるく・・・抜けない!!?」
ピロリーン♪ セシルは呪われまスタ。 力,素早さ,体力が1/2になります。
氷狼刹があれば剣の加護で自力で抜けたかもしれないのに・・・自業自得。
「丁度いい。当分そのままで大人しくしていろ」
「皆、セシルの呪いは解かなくていいからな〜〜」
は〜〜い♪ と応えるのはアルシア,リオにキルケ。
 「・・・ミィ、セシルは因果応報だから反省させなければならない。
オシオキだから呪を解いてやらなくていい」
 「ミィ・・・ミィ。(したっ」え〜と・・・は〜い。
 「ゲフッ・・・・・・(沈」
セシル、沈黙。丸でシカバネのようだ・・・誰も助けないし救う気もない。
四人に掛っては、アイテムに掛っていた造りものの呪もものの数ではなく速攻で解呪され
ユトレヒト隊は最初の規定とは違い鹵獲半分の値打ち分一財産を換金してもらい
懐はホクホクであった・・・
「処で、ミィのこの眼帯だけど・・・」
ひょいっと
 「ミィッ、ミィ〜〜」とっちゃヤ〜〜
丸で餌を取られ仔猫みたくミィはライにお気に入りの眼帯を取られシエルの懐で暴れる。
「ああ、すまん、直ぐ返すから一寸貸してくれな」
 「ミィ・・・」すぐ返してね・・・
「この通り、全く光が透けないコレは完全に盲目者用の代物。
能力鋭化などの加護は在るけど魔眼封じってなわけでもない。
コレを如何視ますかね、仮面マニアのロカルノ氏?」
「一目で気になったから直に調べてある。そうしたら名鑑に載っていた。
『星詠の眼帯』某国で星詠と称えられた盲目の時詠が愛用していた代物。
この一つ眼が特徴だ。星詠がなくなったと同時に後継者達に受け継がれる
事無く紛失して、関係者の間では色々な推測が飛交ったそうだが・・・」
と、ライから『星詠の眼帯』を受取り観るロカルノは何処と無く羨望の感で・・・
「はいはい、何であれ子供が貰ったものだからな」
 「ミィ♪」お帰り♪
眼帯が返って来たミィはお気入りのヌイグルミが返って来た女の子みたく喜び、
取り上げられたロカルノは反対に玩具を取上げられた残念な大きなお友達の感。
「話によると、自ら卑下して時詠と名乗る盲目の占師から直々に頂いたそうですよ」
 「ミィ」は〜い
「・・・モノがモノだから経緯は如何あれ、『星詠の眼帯』の主がミィになった事で
一悶着起きるかも知れない。変に権力を持つ者は、在るだけで気を病むものだからな」
ロカルノが言わんとしている事は、流石経験者だけある。
「まぁ、その時になったら知らせてくれ。ルナでも送るから」
 「がうっ!!!」まかせろっ!!
 「ミィ♪」ありがとう♪
何が起った処で、ミィの心を蝕む事などありはしない。
何故なら、彼女自身に戦う力はなくとも其の力を持つ者に恵まれているのだから。
彼女が癒しの聖女で有る限り、其の力は彼女と共にある。


希望都市の彼の屋敷は極めて快適である。どのくらい快適かというと
 「・・・z・・・ナ・・・z・・・」
 「・・・z・・・ミィィ・・・」
 「・・・ぺっとっ!!!・・・z・・・z・・・」
 「・・・z・・・z・・・ワフッ・・・z・・・」
厳粛な空気漂うはずである執務室であるにも関らず来賓用ソファの上
黒猫姐シエルを挟んで仔黒猫ミィと竜小娘メルフィが抱着き、その膝上では膝掛代りに
白犬なたれルナが三人の膝上で伸び、四人?は揃いも揃って居眠っていた。
ライとレイハのジト眼すら何処吹く風に・・・レイハの眼ははにゃ〜んな腑抜けっぽいが。
「ぶっちゃけ、此処で昼寝って如何なもんよ? 今更だけど・・・」
 「それは仕方ないでしょう。居間にはパッケダが占領しているので・・・(はにゃ〜ん」
「ぶっちゃけ、仕事が進んでないんだけどね」
 「頑張って、がんばってください(はにゃ〜ん」
「いや、俺じゃなくってレイやんのが・・・」
 「え゛っ、ナンデスト!!?」
「笑止っ!! 何処ぞの誰かさんが腑抜けている間に、俺は十の昔に済ませてあるわっ!!!」
 「くっ、私としたことが・・・不覚(がくっ」
やり手のスーパー(?)忍秘書レイハ、その天敵の一つはプリチーなものであった・・・

居間、そこは皆が集う憩いの場 であるはずであった。
しかし今、其処を占領しているのは外ズラ良く金獅子の字を持つが実体は獣なケダモノ
新種発見妖怪、別名パッキンケダモノクッチャネ
 「ね〜、オヤツまだ〜(ぼりぼり」
ソファーで横になり雑誌を読みながらスナック菓子をボリボリと喰らうソレに
返事するのは居間に繋がった台所から
 「たった今焼き始めたばかりですよ〜」
 「セシルさん、お暇なら皆を呼びに行ってきてもらえませんか?」
 「え〜、暇じゃな〜〜い(ぼりぼり」
メイドなリオとキルケに応えるセシルはメッチャ暇そうである。事実、何もせず暇である。
云うなら、暇潰しに忙しい状態である。
其処へ連れ添ってやってきたのは、ライを始めにアルシアとロカルノ,アミル。
「確かに、自分の家と思って寛いでくれとは言ったけどな・・・
・・・親しき仲にも礼儀ありって知ってるか? パッキンケダモノクッチャネ」
 「何気に増えてるー!!? てか、要らん事言うなバカ殿ーっ!!!」
「ライの言う事には私も大いに共感を持てる。
そんな姿を見せられれば百年の恋も冷めるというものだ・・・」
 「「・・・(くすくす」」
 「ろかまで・・・(がーん」
「てか、クラーク達を少しは見習え。俺が何も言っていないのに
馬小屋とか裏小屋に手を入れてくれているんだぞ」
それにアレスとディも手伝っているが、省略。
 「はっ、そんな事言ったらシエルたんだってペット扱いじゃない?」
「健気ぇで寡黙なシエルを厚顔で我侭なテメエと一緒にするなっ!!!
てか、テメエをペット扱いなんざペットという存在に対して侮辱だ。
シエルはアレでも俺達へ蛋白源を供給してくれる名ハンターなんだぞ。
それに対してテメエは如何だ? 迷惑をかけるばっかりで見苦しいだけっ!!!」
 「美ぃ〜い私に対して其処までいう!!? 私は呪いの指輪で満足に動けないのに!!?
ろか〜〜、今の聞いたでしょ? バカ殿が私をイジめるのぉ〜〜」
「・・・・・・」
 「・・・ねぇセシル、ちょっとバンザイしてくれるかしらぁ?」
「??? ・・・(ばんざーい」
 ぶにっ♪
「・・・・・・(逸目」←ロカルノ
 「・・・・・・(合唱」←アミル
ぷにっ など可愛らしい擬音ではない ぶにっ♪ である。ぶにっ♪
セシルの臍丸出しな格好の脇腹肉をアルシアが摘んだ時に生じた音は。
「・・・、かなりヤバイ?」
 「典型的な運動不足ねぇ。まぁ当然かしら。ライ達と同じだけ食べて殆ど動いてないし」
  う、うわあああああああああっ!!!???
呪の大紅玉指輪「ペナルティブラット」(← 一同会議で命名)もなんのその、
元の3倍スピードで脱兎に遁走したパッキンケダモノの悲鳴は屋敷中に響き渡り
健気な惰眠の幸せに浸っていた小動物+αを叩き起こしただけでなく街まで響き渡り
謎の怪声として一時賑わせたとか賑わせなかったとか・・・
コレが、ユトレヒト隊が希望都市を去る切欠となったかは秘密である。

――― 「デス&ユト隊01 ウラ」もしくは「仮面奇譚 序(嘘」、E N D ―――


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