「ある日の来客」
いつもの如くなユトレヒト隊館
その日の夕飯を終えそれぞれ入浴をしつつ談笑室で寛いでいる
「中々良い葡萄酒だな・・」
「あぁ、グリーンリヴァー産のプレミアム物だ。教会の改築依頼の報酬のついでに一つもらったんだよ」
錬金灯が照らす部屋の中、上物の葡萄酒をグラスに注ぎ飲み交わすロカルノとクラーク
双方酒豪と言う訳でもなく多少たしなむ程度だ
「ううむ〜、良い匂いがするの〜」
そんな二人を余所に葡萄酒瓶を持ちクンクン匂いを嗅いでいるは竜娘その1のメルフィ
薄い桃色の髪はしっとりと濡れており白い寝巻き姿だ
「メルフィ様にはまだ早いですよ!」
そんなメルフィの隣で未成年(?)飲酒を阻止するはお付の竜娘その2のアミル
「何を言う!ジュースと変わらんだろう!」
「全然違いますよ、ロカルノさんからも何か言ってください〜」
「・・まぁ、甘くはないとは思うが味のバランスは絶妙だ。芳醇な香りが口の中を通りぬける」
ロカルノの説明に口に涎が出るメルフィ、これで数百年生きているわけなのだから
竜の成長は相当に遅い・・っというわけである
「経験だ、飲んでみろよ?」
「ク・・クラークさん!」
「まぁまぁ、俺もガキの頃には飲まされたものだし〜・・そこまで害があるもんじゃないぜ?
・・まっ、メルフィの舌にはまだ早いと思うけど・・」
「なんじゃと!葡萄ジュースぐらい妾にはたやすいものじゃ!」
腕をまくし立てながら葡萄酒瓶を取りグラスに注ぎ出す。
美しき紅の液体が透明なグラスに注がれメルフィは腰に手を当ててグイグイ一気に飲み干す!
「メ・・メルフィ様!」
「・・ぷはぁぁぁぁ!!!うむ!美味!美味じゃぁぁぁあ!!」
某、味の皇並みの絶叫を上げながらグラスを天高く掲げるメルフィ・・
すでに顔は真っ赤になっており・・
「う〜ま〜い〜ぞ〜・・・」
その姿勢のままダウン・・。ガーガ−いびきを立てながら眠りについた
「・・やっぱ早かったな」
「クラークさん、いけませんよ!」
「あはは・・悪い悪い、でもこれで遠慮なくそこの仮面野郎から寵愛を受けれるだろう?
内容こそわからないらしいがうるさくて寝られんって愚痴っていたからなぁ・・」
クラークの一言にアミルの体がピタリと硬直する
「・・まぁ、そういう理由があるならばそれもいいだろう。・・にしても、お前達はヤケにアミルを応援しているな?」
お前達=クラーク、キルケ。
クローディアは人の恋愛事には無関心・・っというか自分の恋愛すら不器用なのでノータッチでありメルフィは論外。
さしずめセシルは四面楚歌状態であったりする・・自業自得なのだが・・
「まぁ〜、そっちの方が似合って良そうだからなぁ・・」
「・・何がお似合いですって・・?」
噂をすれば黄金の髪、素敵な殺気を放つ風呂上りなセシルさんが談笑室に登場する。
スケスケいな白いネグリジェ姿は彼女の本性を知らぬ者ならば思わず見惚れる事間違いない
「キニスルナ」
「キニスルワ」
クラークにゆっくりと近づくセシルさん。臨戦態勢に入るかと思ったその時
”夜分遅くすみませ〜ん”
玄関の方から女性の声が聞こえた、来客の割りには時間が遅い。おまけにここは街から離れた場所にあるために一同は少し驚く
「俺が出よう。・・教会の参拝者か何かだろうかな」
ふらりと席から立ち上がり出迎えに行くクラーク、セシルはチッと舌打ちしながら葡萄酒を瓶ごと飲むのであった
・・・・・・・
「はいはい〜、どちらさんですかっと」
ズボンに手を突っ込みながら玄関の扉を開ける。
多少無用心な対応であるが例え相手が強盗であろうともそれを手を使わずに追い払うだけの力は彼にはある
だが、もちろん相手は強盗なわけではなく・・そこにいるはおそろいなコートを着た金髪娘に黒髪青年。
金髪娘は手織りのマフラーを着用している
「夜分恐れ入ります」
礼儀正しく挨拶をする黒髪青年・・こと、『勇雄騎将』アレス
「リオにアレス・・。どしたんだよ?」
意外な来客に驚くクラーク、それにリオは少し笑みを浮かべ
「団長の御遣い・・っという名目でハイデルベルクへ休暇の旅行に来ています♪」
っと明るく言う。
見る限り清楚な女性であるが『聖嬢騎姫』の字を持つ一流の騎士、そして一流の腐女子である
「お前達が御遣い・・?いつもディ達が来るのに・・珍しいな?」
「ええ・・、たまには遠出でもしたら?って団長が軽く言ったのでお言葉に甘えまして〜」
「俺達はいつもシウォング内にいましたから・・ね」
「なるほどなぁ・・ともかく上がれよ。ちとだらしない状態だけどな」
泥酔しているメルフィがいる以上だらしないことはないので苦笑いするクラークさん
そんな事を知るわけもなくリオとアレスは突然の訪問にも関わらずに快く館内に招かれた・・。
・・・・・・・・・・
「うわ〜、結構素敵な造りですね♪」
談笑室に招かれて内装に感心するリオ、だが何時の間にかそこにはメルフィの姿は消えている
クラークが二人を招いているうちにどうやらアミルが部屋までおぶって行ったらしい
「内装は私が設計して施工したのはクラークだ。こう見えて耐震度も高い」
突然の来客にも関わらずにロカルノは全く動じていない
「強度をしっかりしない建物を造る奴なんざぁこの仕事をやる資格はないさ。まぁかけてくれよ」
「「あ・・はい、失礼します」」
大、小二つのテーブルとソファがある談笑室、座る場所は沢山あるが二人並んで座るのはもはやお約束である
「にしても〜、前もって手紙とかくれていたらおもてなしもできたのに〜」
「セシルさん・・、いやっ、遣いもついででしたのでそれほど気を使っていただかなくても大丈夫ですよ」
「ふぅん・・って事は旅のメインは観光だったのかぁ」
「はい♪たまには遠出するのも気持ち良いので♪」
上機嫌なリオ、存分に楽しんできたらしくすでにホクホク顔になっている
「だいぶ遠出な気がするけど〜・・ハイデルベルクってそんな観光名所・・多かったっけ?」
「人によるさ。それで・・ここに来た訳はなんだ?」
「ええっ、以前の迷宮探索で財宝を換金した一部がまだ渡していなかったということらしいので・・どうぞ、納めてください」
丁寧にアレスが荷物から袋を取り出す。中身は結構ギッシリだ
「わ〜お♪このずっしり感たまんな〜い♪」
それを受け取るはなぜかセシル・・愛しき銭に頬寄せて至福を味わっている
「お前だけの金じゃないだろうが・・、確かに頂いておくぜ。ライには礼を言っておいてくれよ」
「わかりました♪明日シウォングに向けて旅立ちますので伝えておきますね」
「・・忙しい日程だな、だが・・それなりに重量があっただろう?
ハイデルベルクに着いて先に渡しに来た方が楽だったのではないかな?」
「あ〜、アレス君が鍛錬のついでって事でその袋を手首に巻いていたんですよ!
おかげで結構絡まれちゃって・・」
テヘっと舌を出すリオに対しアレスは少し照れながら頭を掻く
「真面目ねぇ・・。ってか美男子がお金ぶらさげて歩いていちゃ・・そっち系のオンナノコからお誘いが来るんじゃないの?」
「夜までしていませんよ、・・まぁそれとは関係なく多少そんな輩もいましたが・・」
「全て完膚なきまでに排除しました♪」
「「「「・・・・・」」」」
一同沈黙、恋人の事になると清楚な女性は黒く染まるのだ・・
「ま・・まぁ、今日は泊まっていきなよ。もてなしはそれほどしかできないけど・・」
「ありがとうございます、では・・一晩お世話になります」
礼儀正しく頭を下げるアレス、いつもの夜は突如として騒がしい夜へと変わっていくのであった
・・・・・・・・・・・
「あっ、リオさん〜、来ていたんですか〜。寝巻きですみませんねぇ・・」
「ああっ、キルケさん♪いいですよ〜、夜中にお邪魔した私達が悪いんですから」
軽い雑談をしている一同にキルケとクローディアがやってくる。
二人とも髪が濡れておりホカホカと湯気が出ている、今まで入浴をしていたらしい
恋人が同じせいなのか、こういうところまで仲が良いモノである
「来客の気配がしましたのでお湯は流しておりません。よろしければどうぞ」
「ありがとうございます・・リオ、先に入って来い」
「え〜、アレス君〜、一緒に入ろう♪」
腕に胸を押し付けながらおねだりするリオ、対しアレスは頭を掻きながら困惑している
「・・知人宅だ。だらしないぞ、リオ」
「まぁまぁ〜、無礼講でもいいんじゃない〜?なんならアレス君、おねーさんが背中を洗ってあげよっか♪」
二コリと笑いながらセシルが言う、聖女の如き容姿でのその提案は本性を知らなければさぞそそられるが
アレスにとってはまったく無効・・そもそもリオが黒化する事が怖いのだ
「結構です」
「・・菌が移るから慎め」
「ロカ・・しどいわ・・(ヨヨヨ・・)」
恋人から言葉の暴力にセシル、凹みながら談笑室を後にするのであった
「・・冷たいなぁ〜、ロカルノさん〜。こりゃセシル捨ててアミルに移る決心ついたかなぁ?」
ヘラヘラ笑うクラーク、それにアミルの顔に朱が一気に乗る
「客人に失礼がないようにしただけだ・・。ディ君やルナの二の舞にならんようにな」
「だ〜ったらなおさらアミルと正式に付き合ったほうが・・(グサっ!)・・・げほ・・」
ロカルノを説得するクラークの後頭部に廊下から飛んできたツララが見事に突き刺さる・・
「・・やれやれ・・。キルケ、クローディア・・クラークの介護をしてやってくれ」
「わかりました〜、うわ・・セシルさん本気ですね・・」
「兄上、口は災いの元ですよ・・」
自分の恋路を妨害する輩にはセシルさん、何気に本気を出す
相手はその気で自分が阿呆な事をしなければ万事うまくいくという事に未だに気付かないのはお約束である
ともあれ、常人なれば致命傷な傷も一騎当千なクラークだけあって痙攣しながら気絶するも心配する人は誰もいなかった・・
「ではっ、私はお風呂をお借りしますね♪」
気を取り直して席を立つリオ、この館の騒がしさに早くも馴染んでいる・・
「ああっ・・アミル、風呂が未だだっただろう?案内ついでに一緒に入ればいい」
「わかりました、ではっ、リオさん。こちらです」
「は〜い、じゃアレス君、またね♪」
二コリと笑いリオの案内をするアミル、以前少し彼女といざこざはあったが今では互いに好感が持てる関係なようだ
「ではっ、アレス君。せっかくここに来たんだ。土産でも上げよう・・」
「えっ、あっ・・・いや・・。そこまで気を使っていただかなくても・・」
「ふっ・・もてなす側の心使い・・っと言うものだ。遠慮しないでくれ」
「・・・わかりました。それでは、お願いします」
相手を立てるためにもアレスは無理に断ろうとはせずにロカルノに招かれる
・・そこにあるものにも気付かずに・・
・・・・・・
処変わって、ユトレヒト隊の大浴場
一介の冒険者宅にあるのには少々豪華でありちょっとした旅館のソレに近い
そこに仲良く肩を並べ湯船に浸かる美女二人・・
控えめながら美しい乳房をタオルで隠すリオ、同じくタオルに隠しながらもその大きさまでは隠し切れないアミル
どちらともなく他愛のない話をしながら体を温めている
「・・リオさんは、アレスさんと仲がよろしいですね」
濡れた紫の髪にタオルを乗せながらそう言うアミル
「え〜、そうですかぁ?まぁ・・二人の愛は永遠ですから♪」
対し惚気に惚気るリオ、頬に手を添えイヤンイヤンと顔を振っている
「ふふっ、羨ましいです・・」
「でも、アミルさんもロカルノさんが好きなんでしょう?お似合いだと思いますよ♪」
「・・ありがとうございます。でも・・ロカルノさんにはセシルさんがいますし・・
私とロカルノさんは寿命が違います。貴方達のような関係にはなれませんよ」
少し寂しそうに笑うアミル、それは彼女にとっての禁断の愛
成就しようとは思わない・・ただ、愛しき人に触れていたい。それが僅かな時間であっても・・
その恋模様にリオは痛く感動をしているようで眼を潤ませている
「がんばってください、アミルさん!」
「あ・・はははは・・、私は今のままでも満足していますよ」
「ううん〜、種族を超えて結ばれる愛・・素敵です・・♪」
儚い想いだからこそ美しい、小説ぐらいにしかなかった関係にリオもセシル派よりもアミル派になったようだ・・
「そう、ですか・・?」
妙にテンションの高いリオにアミルは少し苦笑い・・
「寿命が二人の恋を邪魔するなら永遠の命が手に入ればいいのに・・」
「ふふっ、永遠の命・・ですか・・」
「う〜ん。確か歴史の文献とかには永遠の命を授ける神の剣があるらしいんですけどね・・。
でもそこまでするのは野暮ですか・・」
「・・そうですね、今のままでいいのです。
それに・・ロカルノさんとセシルさんも良い関係なんですから・・波を立たせないほうがいいのですよ」
彼女の決意は固い、近づき過ぎず離れすぎず愛する人と共に歩む
それは他人からしてみればもどかしいのであるのがそれでも、彼女は満足であった。
「処で、ハイデルベルクの旅行は楽しかったですか?」
「ええっ♪ルナちゃんや団長からオススメの場所を幾つか教えてもらったので楽しかったです♪」
ルナとディの意見ならば間違いなくこの館はオススメしなかった事は間違いないであろう
「そうですか・・、大きな国ですから私もまだ全部見て回っていないんですよ」
「へぇ・・。ローエンハイツとか良かったですよ♪美味しい海の幸にアレス君も満足していまし!
あっ、後ルザリアにあるお菓子屋もよかったです!」
「・・普段住んでいると気付かないところが多いものですね」
「そうですねぇ・・。アミルさんだって私の知らないシウォングの魅力とか知っていそうですしね♪」
「ふふっ、そうですね。ああっ・・お帰りの際には声をかけてください。シウォングまでお送りしますよ」
「え・・いいんですか?」
「お二人もお仕事があるでしょう?余りそれを空け過ぎるのもよくありません」
「・・ありがとうございます・・、ではっ、お願いしますね」
「はい、どうぞご遠慮なく・・」
お互い微笑合うリオとアミル、静かに湯気が立つ大浴場の中ホノボノとした空気が二人をさらに暖かくしていった
・・・・・・・・・
一方
「さぁ・・用意ができた・・。どれでも好きなのを持って帰るといい・・」
「・・は・・はぁ・・」
ロカルノの部屋の前で待たされる事十数分、何かの準備をしているのだが何なのかわからないアレスは廊下で静かに待っていた
だがようやく中に通されて呆然とする・・
質素にまとめられたロカルノの部屋、その四面を覆い尽すがの如くに様々な仮面がびっちりとしきつめられており
床にも並べられていた・・
縁日にある面屋を想像してしまうが量はそれの比ではない
「コレクションのほんの一部だ。最近は極東の仮面にも凝っていてな・・ライのコレクションにもない逸品もある・・。
好きなのを一つ選ぶといい」
自慢のコレクションを披露し珍しく上機嫌なロカルノ・・
っというのも館の面々にはこの趣味を誰も理解してくれない、
恋人であるセシルは当然の事ながらアミルですら苦笑いをしている始末なのだ。
彼にとってはこの素晴らしき世界を理解するのは同胞である『ハイデルベルク仮面愛好会』の面々と
王故にお忍びの衣装を必要とし自然とコレクションが増えていった真龍騎公ライ=デェスティヤーのみであった
その家族でありライに近い人間であるアレスともなれば同じ趣味を持っているに違いない・・っと勝手に解釈したのであろう
「あ・・の・・、俺は・・団長や貴方みたく仮面をつける事はないのですが・・」
「なんと・・、・・・・残念・・実に残念だ・・」
珍しく凹むロカルノ、見た事がない彼の落ち込みようにアレスは少し悪い気がしてきた
「あのぉ・・すみません」
「・・気にする事はない。その毛がないのならばこれからその趣味を身に着けていけばいい・・」
「・・えっ・・?」
「君も真龍騎公に仕える騎士だ。その地位はこれからもっと高くなるだろう。
その時・・仮面というものは自ずと君を助ける・・必ずな」
・・そうとも限らないだろう・・?
っと心の中で少し否定しながらも冷静な彼から迸るパトスに完全に飲み込まれている
「そう・・ですか・・?」
「そうだとも、では・・仮面の素晴らしさをレクチャーしよう・・。仮面を愛すれば仮面はそれに応える
この先に迫る来る苦難の壁を乗り切る事に必ず必要となる知識だ・・、そこに座りたまえ」
「・・え・・あの〜・・」
流されに流されるアレス君、仮面をどけた床に座布団を敷かれ正座をする
「まずは仮面の歴史からだ。わかりやすく説明をしよう・・」
四方を仮面に囲まれ、前方には熱弁を振るう仮面オタク
それが善意故に逃げ出す事も出来ずに勇雄騎将の心は次第に蝕まれて逝った・・
・・・・・・・
・・・・・・・
来客を向えつつ穏やかに時間は流れ、何時しか一階の灯りは消え一同夜の時間に移行した
寝巻きを借りたリオは空いた客室で一夜を明かす事になるのだが
愛する男がいないがためになんともなしにもどかしさを感じていた
「う〜ん・・アレス君・・ロカルノさんと何話していたんだろう・・」
お土産をもらっておりその説明をしている・・っと部屋を訪ねた時にロカルノから軽く説明をされたのだが、その様子は確認できなかった
「うう・・、でも・・流石にここでエッチな事しちゃダメだよねぇ・・。お邪魔しているんだし、皆もいるんだし」
親しき仲にも礼儀有り、通すべき筋は通すべきを諦め大きく伸びをしながらベットに倒れこむ
そのままゴロゴロしつつ灯りを消そうとしたのだが・・
”あ・・ん、あっ・・はぁん・・”
・・隣の部屋から妙な声が聞こえる・・
「・・っ!?」
咄嗟に起き上がるリオ嬢・・耳を澄ませて見ると・・
”あっ!兄上・・そこ・・深い・・”
隣の部屋からクローディアと思われる声・・、普段冷静な彼女の元とは思えないぐらい艶やかな声、
そしてかすかに聞こえた”兄上”という単語で二人が何をしているのか理解できた
(うわぁ・・・、義兄妹なのに恋人だって言うからひょっとしてって思ったけど・・やっぱり交わっていたんだ・・)
壁に耳をつけて様子を伺うリオ、清楚な女性が見る見る内に腐女子に変化していく
”ふふ・・クローディアさん・・気持ちいいですか?”
(こっ!この声・・キルケさん!?まさか・・そんな・・)
壁越しに聞こえる声にリオの鼓動は早くなる・・、二人で行うはずの愛の営みの中に第三者の声が聞こえるのだ
”気持ち良い・・。あっ、キルケ・・胸を触ったら・・”
”ふふ・・、乳首がピンって立っていますよぉ・・すごい・・”
”あぁん・・”
(・・・・)
壁越しに三人の営みを聞いていたリオ、しばらくなにから考え込んでいたのだが意を決してか音もなく立ち上がり部屋を後にする
・・そしてそのまま隣の部屋の前に陣取り音もなく扉を少し上げ開ける・・
敏腕秘書クノイチ、レイハ仕込みか定かではないがその身のこなし、
気配を消す様は見事であり中にいる三人はまるで気付いていない
(・・すごい・・やっぱり三人だ・・ふっけつぅ・・)
薄暗く錬金灯が照らす室内からは女性の甘い匂いが充満しておりベットの上でクラークがクローディアを抱いていた
そしてクローディアの隣に座り彼女を愛撫するキルケの姿も・・
「はぁ・・!あぁ・・!兄上・・兄上ぇ!」
眼帯を外し頬を染めながら喘ぐクローディアはまるで別人のようで、大股を広げて兄を迎えいれている
全裸の体は汗ばんでおりそれを舐めとるが如くキルケが舌を滑らせている
「クローディア・・!」
「あぁん!擦れて・・すごい・・です!」
シーツを握りさらに喘ぐ、正常位なれど伝わる快感は凄まじく息を切らしている
(うわぁ・・クラークさんの・・大きい・・)
何気に感心しているリオ・・、クローディアのソコにクラークの息子が激しく動いているのだが
かなり大きさ故にめり込んでいるようにも見える
「はぁ!ひゃ!ああ!・・気持ち・・良い・・ん・・んん・・!」
ラストスパートに入ったのか二人の腰の動きが早くなる!
それと同時にキルケの愛撫も本領を発揮したのかクローディアの唇を奪いながら彼女の美乳を揉みしごく
「んっ!んん〜!!んっ!!!」
室内にはクローディアのくぐもった声と結合部からの水音が激しさを増していく
その卑猥さにリオは思わず生唾を飲み込んで瞬きも忘れて見惚れている・・
「よし・・出すぞ!」
「ん!?んん・・ん!!!」
一瞬眼を見開いたクローディアだが再び眼を閉じ頷く・・
自分ももう持たない、そう言っているのであろう
そして二人の動きは激しさを増し
「・・くっ!!」
「ん〜〜〜〜〜〜〜!!!」
二人同時に絶頂を迎える・・。彼の白濁液はクローディアの胎内で勢い良く出され彼女の膣を満たしていく
「ん・・はぁ・・はぁ・・あんっ」
「クローディアさん・・膣に沢山もらって・・気持ちよそう・・」
唇を解放しながら恍惚な笑みを浮かべるキルケ・・自身もすでに全裸ですでに股間からは蜜がとめどなく溢れている
「あぅ・・すごい・・です・・」
兄の温かみを感じながら微笑むクローディア、その笑みは女としての喜びに満ち溢れている
「あぁ、よかったぜ・・」
そう言いながらクラークは自分のモノを彼女から抜き出す、その動きですら彼女には快楽となりビクッと体を震わせている
「・・はぁん・・中から・・出ています・・」
クローディアの綺麗に整ったソコから真っ白な液体がゆっくりと出てくる・・
未だそれは愛する男のモノを欲しがっているかのようにヒクついているのだが・・
「ふふっ、じゃあ・・いただきますね」
絶頂の余韻に浸るクローディアを余所にクラークとキルケが場所を入れ替わる
「ほら・・」
自分の愛液で濡れている息子をクローディアの前に突き出すクラーク
「・・あむ・・ん・・ぅ・・んむぅ・・」
ソレを自ら咥え込みクチュクチュと音を立てながら綺麗にするクローディア、後戯として愛する兄のモノを綺麗にしてやっているのだ
その間にはキルケはクローディアの秘部に顔を近づけチロリとソコを舐める
「ふぅん!」
絶頂後のクローディアにはそれだけでも強い刺激・・体を震わしてそれに耐える
「すごい・・一杯・・一杯注がれたんですねぇ・・いいなぁ・・」
そう言いながら舌を中にいれこねくり回す
「ふぅ・・んんっ!んん〜!!」
「はぁん・・、クラークさんの精液とクローディアさんの愛液が混ざって・・すごく美味しいです・・」
卑猥な笑みを浮かべながらクローディアの膣からこぼれる液体を飲むキルケ
普段清楚な彼女とはまるで正反対な姿と言える
「体が・・熱いです・・。もっと・・くださいね・・」
再びクローディアの秘部に顔を近づけ、今度はしっかりと食らいつき・・
クチュ・・!クチュ・・・!・・・ンチュ!
クローディアの股を押さえながら強く吸い出す・・
「!?ん・・はぁぁ!ひゃ!はぁん!そんなに・・吸っちゃ・・だめ・・ですぅ!!」
膣のモノを全て吸出しかねないほどの吸引に思わず兄のモノを離し喘ぎ出す!
「ん・・ふふふ・・・」
そんなクローディアの様子を見ながら笑うキルケ、ついでとまでに肉芽まで舌を這わせる
「ふぁ!そこは・・だめ!イった・・ばかりですぅ!」
思わず両手でキルケの頭を掴むが力が入らずなすがままになる・・
「・・そんじゃ、俺は・・キルケを頂こうかな?」
「ん・・はぁ・・はい♪どうぞ・・♪」
自ら尻を高く上げて片手で尻穴を広げるキルケ・・、そこは穢れ一つなく男を迎えるがために蠢いている
「よ〜し、2発目も沢山注いでやるからぁ・・覚悟しておけぇ♪」
そう言いながら再び固くなった息子をゆっくりと埋めていく・・
屈強なソレはねじ込むように中に入り暴れ出す
「ん・・あぁ!すごく大きいです・・・。お尻が裂けちゃいますよぉ♪」
「いつも美味しそうに咥えているだろう?ほれっ、動くぜ!」
「はぁ!ひゃあ!!・・はぐぅ・・すご・・いぃ!」
体の中をかき回される快感にキルケは酔いしれながらもクローディアの愛撫を忘れない
「・・ぁ!ひゃ・・・・うぁ・・また・・イって・・しまいそう・・です・・」
クローディアもキルケからの愛撫に快感に酔いしれ三人が皆満足に交わっている
「あぁ!クラークさん!すごい!すごい気持ちいいですぅ!」
「キ・・キルケ!イッて・・イッてしまいます!あ・・っあぁぁぁぁぁ!!!」
三人の濃い交わりは絶好調を向かえそのまま終わる事を知らず宴はまだまだ続きそうだ・・
(・・すごい・・。三人だと・・あんな事をするのねぇ・・)
食い入るようにそれを見ていたリオ、股間から熱いモノが伝っているのだがそれをも忘れ覗きを続けている
(気持ちよさそう・・。団長も・・皆とあんな事をやっているのかしら・・?・・・ふっけつぅ・・)
身内にも四人ハベらしている人物がいるために同じ様なことをやっているのかと想像するリオ・・
黒い妄想は溢れるばかりである
だが・・
(うわぁ・・すごいすごい・・キルケさん、お尻でクラークさんを・・んぐっ!?)
不意に音もなく手が口を塞がれる、覗きをしていてばいつもアレスに見つかりオシオキを受ける
お約束なパターンでありリオも驚いたのだが体がすでに疼いておりどうしようもなくなりつつあるので特に抵抗はしない
(アレス君〜♪・・ん゛?)
少々キツイオシオキでも今なら嬉しいのだが口を押さえる手の感触が彼の物ではないことに気付く
(リオちゃ〜ん♪)
(セ・・シルさん・・?)
耳元で囁くは間違いなくセシルの声・・だが気配はすでにケダモノ・・
(リオちゃんが覗きするなんてね〜)
(い・・いやっ、これは違うんです!)
気配を殺しながら会話する二人、幸い中の面々は行為に夢中になっており気付いていない模様だ
(ともかく〜、バれるとまずいから私の部屋に行きましょう〜♪)
拒否権なし、口を押さえられながらもリオはなされるがままにセシルの部屋へと連れて行かれた
・・・・・・・・
「でぇ、大方声が漏れていたのに気付いたんでしょうねぇ・・」
「そうなんですぅ」
セシルの部屋に招かれてベットに座るリオ、まな板の上にいる鯛の気持ちが痛いほどわかる状況だがどうしようもできない
「うふふ〜、リオちゃんも意外にやるわね♪」
リオが目を丸くして驚くほど散らかった部屋でなぜかセシルはストレッチをし始めている
「・・でも、セシルさんはロカルノさんとは何もないんですか?やっぱり・・アミルさんに・・」
「ちょいちょ〜い!変な事言わない!おねだりしようかと思ったんだけど〜・・まだアレス君と何か話していたからねぇ・・」
「・・え・・?まだ・・話していたのですか?」
深夜にまで何をやっているのか・・、リオは少し不安になってきた
「そうそう、ロカルノがなんか珍しく興奮していたわ〜。アレス君と共通の趣味なんかあったかしら?」
「え〜・・っと・・。たぶんないと思います」
「・・でしょうねぇ・・。まっ、それはいいでしょう!さて・・それじゃリオちゃん♪」
「な・・なんですか?」
「ヤるか♪」
グッと親指立てて爽やかに言うがリオは当然お断りした提案である
「エンリョシマス・・」
「お互い相方にほったらかしにされて寂しい想いをしている仲でしょう〜?ヤろ〜!ね〜!?」
クネクネと体をくねらせ笑顔で言うセシルだが・・目は笑っていない
「じょ・・女性同士でそんな事をするのは不潔です!」
「じゃあリオちゃんはなんであの三人のを覗いていたの〜?私が背後にいる事にすら気付かないぐらい夢中になって♪」
「そ゛・・それは・・」
「クラークのモノに夢中になるわけじゃないよねぇ・・通常の交わりなんてそこら中に転がっているんだし〜
ずばり!リオちゃんが夢中になっていたのキルケとクローディアの絡み!」
「う゛・・」
妖気を放ちながら指差すセシル、その気迫に反論できないリオ・・っというか図星であるからでもあるのだが・・・
「ふふふ・・図星ね。でもあの二人を見ていてわかるでしょう?女同士っていうのも良いものなのよ?
男のあんな地球外生命体みたいな物体を体に招く事こそ不潔じゃなぁい?」
・・そんな事言いながら恋人のモノが大好物なセシルさん、支離滅裂である
「いあ、だからってセシルさんと肉体関係を持つ事とは関係ないですよ〜!」
「むっ・・、アルシアと違って結構お堅いわねぇ・・。いいわ!こうなったら実力行使よ!」
「ひっ・・アレスくぅん!」
両腕を広げて近づいてくるセシルに怯えるリオ・・恋人に向けて助けを呼んだその時!
「まてぃ!」
バァン!とセシル部屋の扉が勢い良く蹴り破られるとともに勇ましき声が響き渡る!
「ぬっ!?あ・・貴方は!?」
そこにいるは服装からしてアレスに違いないのだが・・顔にはロカルノと似ている黄金に輝く仮面を装着している
「俺の恋人に手を出すな!とぅ!」
問答無用にセシルに襲い掛かり飛び蹴りを放つ!
「きゃっ!って・・うわわわ・・!!」
予想以上の衝撃に吹き飛ばされるセシル、しかもその先は窓・・
パリィィィン!!
凄まじい破壊音とともにセシルは落下していく・・。悪党の最後に相応しい一面だが彼女はこの程度では終わらない・・
「ア・・アレス君!その仮面どうしたの・・?」
「話は後だ!今はあのケダモノを打ち倒す!」
そう言いながら窓から華麗に飛び降りる男・・、仕草からして彼女が良く知る恋人のものとは少し違う・・
「お・・のれぇぇ・・!味な真似してただですむとは思っていないでしょうね!」
月明かりに照らされた庭ではセシルがすでに体勢を整えており怒り心頭のご様子だ・・
「自業自得だ。この悪党が!」
「な・・なんですってぇ!?」
「ディやルナ・・シエルさんを襲い俺の恋人まで傷つけようとするケダモノめ!天やロカルノさんが許そうとも俺が許さん!」
黄金の仮面に月明かりが反射しつつ、男は格好良くポージング
「貴方・・何者!?姿形はアレス君だけど・・、性格が全然違うじゃない・・」
「アレス・・違うな!俺の名前は『トレンディ仮面A-re-s』愛と勇気の使者だ!」
「・・・・」
目が点になっているセシルだが、当の本人トレンディ仮面はやる気十分に魔法陣を展開している
「伸びろ!レイ・ブレード!」
右手に力を集中し具現化される魔導の光、それが剣の形に固定されていきトレンディ仮面は軽快に素振りをする
「いくぞ!パツキンケダモノ!」
「・・へっ、うひゃ!わっ!」
猛烈な突っ込みととも始まる怒涛のラッシュ、呆気に取られていたセシルは途端に防戦一方となっていった
「・・どうなっている・・の?」
その光景をセシルの部屋から見下ろすリオ・・アレスの変貌ぶりに唖然としている
「・・ふっ、順調のようだ・・」
そんな彼女の後ろに現れるは先ほどまで熱弁していたロカルノ・・珍しく嬉しそうな笑みを浮かべている
「ロ・・ロカルノさん!アレス君はどうなっちゃったんです!?」
「何っ、トランス状態にあるだけだ」
「・・トランス?」
「人間誰にでも『変身願望』や『成り切り』という心がある・・それを引き出してくれるアイテムこそが仮面だ。
それをつけた時、人は違う自分を開花させる・・」
「え・・じゃ・・あ、あれはアレス君の違う一面・・?」
眼下で猛然と戦うトレンディ仮面ことアレス、パツキンケダモノに対して圧しに圧している
「あの精神それだけであそこまで極端なものにはならないさ。
あの仮面には試作的に脳を刺激する小型の魔石が三つ仕込んでいてな
装着するとまるで自分がヒーローになったかのような高揚感が現れるんだ」
「それって・・洗脳じゃ・・」
「そこまで強いモノではない。
あくまで誘発させるだけの代物だ。後は装着した者の変身願望と成り切りが後押しをする
それ故今の彼はアレス君であり、愛と勇気の使者トレンディ仮面A-re-sなのだ」
「・・はぁ・・。じゃあ・・アレスである事には違いないのですね?」
「うむ、まぁ異常にハイになっていると思えば良い。あのヒーロー気質も仮面の魔石に刻まれたプログラムさ」
「・・はぁ・・。じゃあ・・あの知らない魔法剣みたいなのも・・」
「彼のポテンシャルの高さだな。ヒーローと思い込んでいるが故に即興で作り出したものだ」
「・・・・そうですか・・、あの・・もしかしてアレス君用に用意していたのですか・・?あれ・・」
用意が良すぎる事にリオがジト目でロカルノを睨む
「まさか・・。元々はセシルを大人しくさせる一環で試作的に作ったのだが・・
君達への土産として彼に仮面の素晴らしさを伝えるためにさっき少しプログラムを書き換えたのだよ・・。
まさかそれで実戦になるとは思わなかったのだがな」
「ま・・まぁ、結果的には助かったのですけど・・ね」
ため息一つ付きながら庭の様子を見る
相変わらずアレス優勢でセシルは反撃すらできていない状況だ
「っ!ま・・まったく!ここまで成り切っていると隙だらけでも!反撃しちゃいけないように感じちゃうじゃない・・の!」
ド鋭いアレスの攻撃に回避しながら愚痴るがどれも紙一重、気を抜くと光剣でなます斬りになりかねないほどの速さなのだ
「どうした!お前の力はそんなものか!」
「うるさい!ロカと瓜二つな仮面つけているから攻撃できないのよ!」
ロカルノの鉄仮面とほぼ同じデザイン故に本能的に攻撃できないセシル、もはや手の出しようがない
「負け惜しみか・・!だが遠慮はしない!皆の恨み・・俺が晴らす!」
光剣を消し大きく構えなおすアレス・・、ソレとともに全身が眩く閃光を放ち出す・・
「や・・やばっ!」
肌で感じる力の波動に危険を感知し逃げ出すセシル
だが、アレスはそれを確実に捉えながら力を手に集中させる!
「食らえ!RIOインパクト!!!」
右手から放たれる力の巨光!
それは凄まじい速度でセシルを追う!
「ひっ・・な・・なむさぁぁぁぁん!」
チュドォォォン!!
大爆発とともに吹き飛ばされる黄金の獣、少しやり過ぎている感はあるのだが被害者の事を考えればそれも仕方はない
「成敗!」
爆発による火の粉を背景に、黄金の仮面を装着したアレスは悪を成敗した事に対する歓喜にいつまでも包まれていた
・・・・・・・
・・・・・・・
翌日・・
「うぅ・・・、なんなんだ・・?このだるさは・・」
食堂でテーブルにつっぷしているアレス、あの後就寝したのだが疲れは全く取れていないようだ
「・・あの・・ロカルノさん。なんかアレス君が疲労困憊なんですけど・・」
「・・ううむ、深層心理の中でヒーローである事を否定していたのだろう。
自分のキャラに合わない事を続けていた故にそのストレスで心労が現れた・・っと言ったところだな」
食後の珈琲を飲みながら落ち着いて推測しているロカルノ・・
「確かに・・あんなの俺のキャラじゃないです・・」
トレンディ仮面でいた時の記憶があるアレス、自分が精神的にハイになっており技名を叫んでいた記憶も
今となって恥ずかしく思えてきてしまう
「でも格好よかったよ♪アレス君♪」
「止めてくれ・・。あの仮面をつけている時は寧ろ気持ち良いぐらいだったのだが外した途端に恥ずかしくなった・・。
あれは俺であって俺じゃないんだ・・」
「でもよ、どうあれあのパツキンケダモノに勝利したんだぜ?それは評価になると思うんだけどなぁ」
「そうですよぉ、セシルさんの暴走を止める人間がまた一人増えたのは頼もしい限りです!」
他人事にホノボノとしている眼鏡&ゴスロリ
昨晩の乱闘騒ぎが起きても我関せずと情事を続けておりその事実は朝になって初めて知ったとか・・
騒がしいのがいる家庭故に多少の爆発音は夜に鳴く虫に等しい・・らしい。
因みにセシルは冷たい風が吹きさらしな自室で療養中、犯行前とは言え少し哀れでもある・・
「セシルさんに勝ててもここまでの疲労に襲われるなら相打ちのようなものです」
「・・相当なストレスだったんだね・・アレス君・・」
「ううむ・・、使い処は少し難しいか・・。まぁ不要ならば部屋に飾っておいてくれ。そのための純金製でもある」
(((妙な事にばかり金かけているなぁ・・・)))
その場にいた面々は彼の道楽にあきれ果ててた・・まぁ王族故にそれはそれで当然ではあるのだが・・
「い・・いえ、せっかくですがこれだけ高価そうなもの、受け取れませんよ・・お返しします」
ヒーロー経験がよほど応えたのか仮面をロカルノに返すアレス
「ふむ・・ならば仕方あるまいか。ともあれ、心労の詫びだ。アミル・・二人をシウォングまで送ってやってくれないか?」
意外にも素直に仮面を受け取るロカルノ・・、本心は今一つよくわからない
「はい、わかりました。でもどうなさいますか?食休みした後に出発します?」
「え〜と・・そうですねぇ・・。ではっ、荷物をまとめますのでしばらくしたらお願いします♪」
にこやかに笑うリオ、隣のアレスもそれに対しては同意のようであった
・・・・・・・・・・
「向こうについたらライ達によろしく言っておいてくれよ?」
しばらく休憩した後、アレスも回復した状態で一同庭に集まり別れの言葉を交わす
「はい♪シエルさんやディ達にアレス君の武勇伝を聞かせてあげます♪」
コートにマフラーを着け来た時よりも大きくなっている鞄をぶら下げながらリオは笑顔で言う
「・・やめてくれ。ともあれ、一夜だけでしたが色々勉強になりました、ありがとうございます」
幾ばくか顔色が良くなったアレス、礼儀正しく礼を述べている
「うむ!何事も勉強じゃ!」
そんなアレスの態度になぜかメルフィが大威張りしている・・・
「お前は二人が来る前に倒れていただろうが・・。まっ、騒がしかったのは詫びるよ・・これがここの日常なんでな・・」
「いえっ、楽しかったですよ〜。セシルさんによろしく言っておいてください♪」
「・・もう傷も治っているであろうが・・、惨めな敗北に凹んでいるのだろう」
だが、彼女を慰める者は誰もいなかったりする
この環境が彼女を強くさせる・・
『それでは・・そろそろ参りましょうか・・。お昼までには向こうに到着しますよ』
「あっ、は〜い♪それじゃ皆さん!お暇しますね〜!」
「ありがとうございました」
一礼しながら竜姿のアミルに跨る二人、アレスは彼女に乗ったことがあり彼が先に乗りながらリオを抱き上げて定位置につく
『それでは・・しばし快適な空の旅をお楽しみください』
スチュアーデスなセリフを言いながら離陸するアミル、二人は館が視界から見えなくなるまで手を振り
ユトレヒト隊の面々もまた、アミルが彼方に消えるまで見送りを続けていた
・・・・・・・
某所の執務室・・
「あ〜、退屈だね〜」
「ちゃんと仕事をしてくださいよ・・」
いつもの如く夫婦漫才(?)しながら仕事に勤しむライ&レイハ・・
言っている事はダラダラだが書類は凄まじい勢いで処理されていく
ほとんど大道芸な仕事だがキチンと処理はされている
「ちゃんとやっているだろ?ほらっ、残りの書類は俺の方が少ない♪」
「・・・、後でミスがないかチェックさせてもらいます」
「ふっ、俺にミスなどあるはずがない・・。そうだな〜、レイハたんの仕事処理能力を上げるためにちょっとゲームしよっか♪」
羽ペンを走らせながら爽やかに笑うライ・・だがこの笑みからは陰謀がにじみ出ておりレイハは警戒を強める
「・・・何を企んでいるのですか?」
「う〜ん、レイハたんが俺より仕事が遅かったら〜、今日抱いてやんない♪」
「・・・えっ!?」
「残りの書類の枚数・・どちらが早く処理できるか勝負だ・・」
「そ・・そんな・・」
彼女にとってはあまりに酷な提案にレイハの冷静な心は大いに揺さぶられる
「問答無用!では・・よ〜い・・!」
執務室に緊迫が走る!
そして・・
「はじ・・」「ただいま戻りました〜♪」
ライの声と同時に執務室に入ってくるリオとアレス・・。
余りに良いタイミングにレイハとライは肩透かしを食らう。
「お・・おう?お前達か。どうだ、休暇での長旅は?」
「はい、楽しませて頂きました♪」
「・・予定休暇よりも早い目に帰ってきましたが・・」
「ああっ、レイハさん。アミルさんに送ってもらいましたのでその分早く帰れたのです」
アミルに乗る事数時間、アレスは竜を操る闘争本能を必死で堪えており
またもや心労状態に・・
「やっぱ竜って便利なんだなぁ・・うちでも買うか?」
「使う予定はありません・・。それで・・アミルさんは?」
「もう帰られましたよ?滞在するのも気を使うみたいですし、ロカルノさんが帰りを待っているからって♪」
「・・ははは、ロカルノもモテモテだな・・」
「ですが、休暇には残りがありますが〜」
「今日一日休ませてもらって明日から復帰しようと思います。その分俺達の穴を埋めていたディ達に休暇を上げてください」
「わかりました・・」
冷静に仕事をするレイハさんだが頭の中では先ほどライが言い出した勝負の事で抱いてもらえないかもしれない事が気が気でなかったり・・
「あっ、そうだ!団長宛てにお土産があるんですよ!ハイデルベルクで有名なお菓子とか!」
「ほぉ・・、流石に飛竜で帰ってきたらまだ食えるだろうなぁ」
「ええっ!でも日持ちしたのもあるので・・あ・・っ」
鞄を開けてお土産を取り出そうとするリオ・・すると鞄から転がり落ちる黄金色の物体・・
「ん・・なんだ?それも土産か?」
「・・ロカルノさんの仮面に良く似ていますね」
「・・・・」
それを見て顔色が悪くなるアレス・・
床に転がるは正しく昨晩装着した黄金の仮面
「リオ・・?」
「・・あ・・あはははは・・・。ロカルノさんからのお土産って事で〜・・・ね?」
「・・はぁ・・、少し気分が優れないので休ませてもらいます・・では・・」
強い疲労感に襲われながらアレス君執務室より退場する
「・・どしたんだ?あいつ・・」
「ええ〜、まぁ、色々ありまして〜」
フラフラと出て行くアレスにレイハとライは怪訝な顔をし、リオは苦笑いを浮かべるしかなかった・・
○トレンディ仮面A-re-s
ロカルノ特製の黄金仮面を装着した愛と勇気の使者
装着するとヒーローとしての高揚感を上げ『変身願望』と『成り切り』を刺激する仮面の力により
『勇雄騎将』アレスが変身(?)した姿であり性格が熱血正義漢に豹変している
完全にノッている状態なので戦闘などもヒーローのソレに近く普段使用しない独特な技を使用する
その能力は普段のおよそ三倍、パツキンケダモノを単独で仕留めるほどの力を有するのだが
変身(?)解除後には本来、性に合わないキャラを演じている事がストレスを与え
異様な心労が残るために彼自身はその仮面に近寄りたくない
top